5155.円安と地方創世



石油価格が下落してきたことは日本経済にとって良いことであるが
、円安は日本経済にどう影響するのであろうか?

池田氏によると、今の円レート1ドル=110円の水準とは、実質
はプラザ合意前の水準で、1ドル=240円程度にまで円安になっ
たようなものであるという。

事実、海外に行き、物を買うとき円レートで見ると、1980年前半と
同じようなことになるので、非常に日本が貧乏になった感覚を受け
るので、実感としてもそう思う。海外旅行が随分、高くなったと思
う。

この20年間で欧米はインフレであり、日本はデフレのために円の価
値がほとんど変わらないが、外国の通貨はインフレで通貨価値が下
がっているためにこうなる。

ということで、日本は海外への輸出で今までは無理を思われた農産
品などでも十分な競争力を持ち始めてきたことになる。事実、果物
類は、徐々に香港やシンガポールなどに出ている。

この農産品が輸出できるということは、地方創世には、1つの手が
かりを与える事になるが、農業県である秋田県でも、農林水産業の
県内総生産に占める割合は3%でしかない。このため、農業振興し
ても、専業農家を増やすことができても、県外からの社会増を期待
できない。

農業振興だけでは、残念ながら、地方創世はできないという現実が
ある。もちろん、専業農家が増えて、兼業農家が減る事になるとい
う良い面があるが、人口減少を止めることにはならない。

地方創世では、5つの重点分野(地方移住や雇用、子育て、公共施
設や行政サービスの集約、地域間の連携)を示したが、この中で一
番大きなものが雇用対策である。

雇用問題にどう対応するかというと、農業、観光、福祉の産業基盤
を強化するというが、農業は専業農家の拡大はできるが、兼業農家
はなくなるので、雇用増加には結びつかない。

福祉は、今後地方の老齢人口も減少するので、現在より福祉産業は
衰退することになるので、明らかに雇用減少になる。

観光業も地方の温泉がどこも衰退しているので、新しい観光資源を
見つける必要があるが、そう簡単ではない。雇用が劇的に増えると
は考えにくい。

雇用がないと、地方への移住はできないし、子育て支援も無駄であ
り、上手くはいかないはず。

何かのブレークスルーがないと地方創世もうまくいかないはずだ。

さあ、どうなりますか?


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地方創生、5分野に重点 観光振興にビッグデータ 
2014/10/11 1:03日本経済新聞 電子版
 政府は10日、地方創生の司令塔「まち・ひと・しごと創生本部」
(本部長・安倍晋三首相)の会合を首相官邸で開き、2020年までの
「総合戦略」の重点分野として、地方移住や雇用、子育てなど5分
野を示した。公共施設や行政サービスの集約も掲げ、人口減少下で
も存続できる地域づくりを促す。
 会合では50年後の展望を示す「長期ビジョン」の論点もまとめた
。総合戦略と長期ビジョンは年内に取りまとめる方針で、首相は会
合…
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初年度20市町村前後に派遣=地方創生のシティマネジャー
2014 年 10 月 9 日 15:01 JST 更新
 政府の「まち・ひと・しごと創生本部」は9日、自治体の地域再
生の取り組みを支援するため、国の官僚などを2015年度から自
治体に派遣する「シティマネジャー」(仮称)の取り組みで、初年
度は中央省庁から20市町村前後に派遣する方針を固めた。地方創
生に熱意のある首長のいる自治体の中から、地域バランスなどを考
慮して選ぶ方針だ。 
[時事通信社]
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円はプラザ合意前の水準に戻った
池田 信夫
2014年10月10日11:10agora
竹中平蔵氏が次のように主張している。
中小企業を対象とした日本商工会議所のアンケート調査では、多く
の企業が1ドル=100〜105円が妥当と考えており、9月の円安は行
きすぎだと考えているようです。私は、必ずしもそうは思っていま
せん。
リーマンショック前の水準から判断すると、1ドル=110円というの
は決して「行き過ぎた円安」とは言えないのです。リーマンショッ
ク前の株価最高値は約1万8000円(2007年)ですが、その年の平均
為替レートは1ドル117.7円でした。
これは間違いである。経済学的には、為替レートの水準は実質実効
レートでみるのが正しい。それによれば、図のように現在の円レー
トは(ドルとの比較では)リーマンショック前を下回り、プラザ合
意前の1ドル=240円のころに近い。
これをまだ高いとみるか安すぎるとみるかは諸説あろう。日本企業
の国際競争力はプラザ合意の前より低下しているので、まだ下がる
という見方もありうるが、それは竹中氏の考えているように株高を
もたらすとは限らない。1ドル=110円以上の円安は、岩田一政氏も
いうように自国窮乏化である。
竹中氏はマイルドなリフレ派だが、最近は金融緩和をいわなくなっ
たようだ。彼のいっていたようにアベノミクスでデフレは終わり、
需給ギャップは縮まったが、それは需要が増えたからではなく、供
給が減ってコストが上がったからだ。ニューズウィークにも書いた
ように、コアCPIの上昇率はほぼエネルギー価格の上昇に見合ってい
る。
アベノミクスが失敗した最大の原因は、2009年以降、原油価格が2.5
倍になる中で、民主党政権が原発を止めた上に、さらに円安誘導で
輸入額を激増させたことだ。LNGの輸入額は震災前より毎年3兆円以
上増え、GDPの0.5%を吹っ飛ばした。この供給制約で、日本は今年
ほぼゼロ成長だ。それでも安倍政権は、原発に手もふれない。これ
が日本経済の混迷する最大の原因である。
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岩田元日銀副総裁:円安は「自国窮乏化」−08年と類似
  9月22日(ブルームバーグ):元日本銀行副総裁の岩田一政日
本経済研究センター理事長は、今の円安は行き過ぎとの見方を示し
た上で、現在の情勢は、円安が「自国窮乏化」につながり、景気後
退に至った2008年前半に似ていると警鐘を鳴らした。
岩田氏は19日のインタビューで、「日本経済の全体のバランスを見
て、ファンダメンタルズに近いレートと言われれば、1ドル=90−
100円ではないか」と指摘。現在の水準は「円安方向にやや行き過ぎ
になっているのではないか。経済全体に与える影響もプラスとばか
りは言えず、むしろネットでマイナスということもあり得る」と述
べた。
19日の東京市場でドル円相場は109円台に乗せ、08年8月以来の水準
までドル高円安が進んだ。日銀の黒田東彦総裁は同日、20カ国・地
域(G20)財務相・中央銀行総裁会議に出席するため訪れたオース
トラリアのケアンズで、「今の動き自体について何か大きな問題が
あるように思っていない」と述べた。
黒田総裁の円安容認論に対し、同じ元財務官の渡辺博史国際協力銀
行(JBIC)総裁が同105円程度だった3日、「これ以上円安にな
ること自体がどちらかというとマイナスになる産業が増えてきてい
る感じがする」と述べた。
自国窮乏化の先例
岩田氏は「円安が進み、エネルギー価格も上昇ないし高止まりする
と、交易条件は大幅に悪化する。企業の仕入れ価格は大きく上がる
が販売価格はあまり上がらず、利潤が圧縮され賃金も抑制される」
と指摘。その上で「実質所得の国外流出が輸出や生産、所得の増加
といった効果を上回ると、経済全体として消費者の効用の水準は低
下する」という。
それが実際に起きたのが08年前半。円相場は現在とほぼ同じ100円台
後半から110円程度で推移。円安と原油価格高騰で消費者物価(生鮮
食品を除くコアCPI)は上昇を続け、同年夏に前年比2.4%上昇と
ピークを付けた。そうした状況下で景気は08年2月に後退局面に入
った。
岩田氏は「相対的に拡張的な金融政策と原油高騰の組み合わせで、
08年前半は言ってみれば自国窮乏化の状態にあった。交易条件の悪
化は、消費者からすれば産油国から増税されるのと同じだ。しかも
、今年8月の景気動向指数の結果次第で、テクニカルな意味で景気
後退と認定される可能性がある点も、08年前半との類似点の1つだ
」という。
その上で、「今は幸い、地政学リスクがあるにもかかわらず、原油
価格は落ち着いているので多少は救いだが、水準としては高いので
、自国窮乏化のリスクが徐々に表れている」という。
消費増税はやるしかない
安倍首相は年内に来年10月の消費再増税の是非を決めるが、景気の
低迷から延期論も浮上している。しかし、岩田氏は「今の税・社会
保障制度を維持すると、政府債務のGDP比率はどうしても発散す
る。そういうことを考えると、やるしかないというのが私の見解だ
」と語る。
岩田氏は日本経済は3つのリスクを抱えているという。1つはフィ
スカル・ドミナンス(財政支配)。「民間部門が国債をこれ以上買
いたくないと思った時、それが始まる。それまでは中央銀行が長期
金利をある程度コントロールできるが、それが外れてしまうと、デ
ットのダイナミクスが金利を決めていくようになってしまう」とい
う。
次が長期停滞。経済成長は労働投入、資本投入、全要素生産性の3
つで成り立っているが、労働投入は中長期的にマイナス。「資本投
入も良くてせいぜいゼロ。全要素生産性が現在の0.7%程度のままだ
と、われわれの標準予測では今後50年、平均してゼロ成長が続く」
という。
岩田氏は「社会保障制度を改革しなければ、少子高齢化により、働
く世代の税と社会保障の負担が増えていく。働く世代の貯蓄率は下
がり、可処分所得は減る。そうすると1人当たりの実質消費水準も
下がっていくが、それでもいいのか」と問い掛ける。
財政破綻
3つ目のリスクは、消費増税を見送った場合、まずフィスカル・ド
ミナンスが起き、それが財政破綻につながることだ。「いつ民間が
国債を持ちたくないと思うか、1つのめどはネットの貯蓄だ。まだ
国債の吸収余力は残っているが、あと10年か、最悪だと5年以内か
」という。
さらに、「悪いショックを与えると、市場は期待で動くので、悪い
方に流れると誰も止められない。消費増税は短期的に見れば明らか
に景気にマイナスの影響があるが、財政破綻は欧州で現実に起こっ
ており、日本も潜在的にそういうリスクを抱えている」という。
こうした状況を打破するのは財政政策でも金融政策でもないと岩田
氏はいう。「長期的に実質消費水準が下がっていく事態をブレーク
スルーするのは成長戦略しかない。生産性を上げる一番大きな要因
は開放経済だ。その点、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)が
重要だし、投資で言えば法人税率引き下げだ」と強調。「ハードル
は高いが、もしここでもたつけば、長期停滞の道を結果的に選択し
てしまう」と語った。
金融政策はほぼ限界
金融政策については「マネタリーベースを倍増する政策は技術的な
意味で限界まで打ち出されたと思う」としながらも、需給ギャップ
の改善の遅れに加え、これまでの円安効果の剥落により、コアCP
Iは今後「1%を切る可能性がある。日銀は2%を物価の安定と位
置付けているので、そういうリスクがあれば追加緩和をやるしかな
い」とみている。
岩田氏は、日銀が物価目標を達成するには「2年という期間は短す
ぎ、少なくとも5年はかかる」と指摘。「中央銀行が2%を目標に
すると宣言したら、その途端に人々の期待が2%までジャンプする
かというと、そうではない」とした上で、日銀は2年で達成すると
いう目標を撤回し、5年程度の中期的な目標に修正すべきだとの見
解を示した。
更新日時: 2014/09/22 11:55 JST





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