5136.米露の対決になるか



イスラム国への有志連合やスコットランド独立の話が大きく、ウク
ライナ東部の紛争の話題が小さくなっている。しかし、第3次世界
大戦になるとしたら、欧米対露が直接的に対決することになるウク
ライナ問題が直接的な原因となることは、確実である。すでに黙示
録の時代になり、かつローマ法王も心配する事態になり、ウクライ
ナの状況と欧米の動きは非常に気になる。その検討。津田より

0.停戦締結後の動き
米国は、対ロシア制裁対象を北極海の石油開発やシェールプロジェ
クトに拡大し、ロシア国営企業への資金融通をさらに制限する追加
制裁措置を打ち出した。一方、欧州連合(EU)は、対ロシア追加
制裁を発動した。同国石油最大手ロスネフチなどエネルギー大手3
社の資金調達を新たに制限する。

米国と欧州連合(EU)の追加制裁を発動したのに対し、プーチン
露政権が報復措置の構えを見せているが、なかなか報復が難しいよ
うである。

停戦から平和条約を目指して、ウクライナ議会は16日、東部の2
州に特別な地位を認める法案を可決した。東部2州は経済と投資面
で特別な扱いを受けロシア語を第2公用語とする権利を得るが、連
邦制には、しない意向のようである。このため、親露派の主張との
間には、大きな乖離が存在している。逆に親露派は益々独立の方向
に傾斜し始めている。

このため、ウクライナでの停戦も、ドネツク周辺で14日、激しい戦
闘が勃発し、政府軍と親露派との停戦崩壊の懸念が高まっていた。
このため、停戦を確実にするために、和平協議が19日夜、ベラル
ーシの首都ミンスクで開かれ、ウクライナ政府と親ロシア派は20
日未明、双方が15キロ撤退し、30キロの緩衝地帯を創設するこ
とで合意した。

24時間以内に、双方が撤退して幅30キロの緩衝地帯を設置し、
欧州安保協力機構(OSCE)監視団を配置するのが柱だが、順守
されるかには不透明感も漂う。親露派は実施する予定はないようで
ある。ウクライナ軍が勝手に緩衝帯を作れば良いと言っている。

1.ロシア製兵器の補給
停戦を、なぜしているのかだが、双方ともに補給を行うためのよう
に思っている可能性が高い。最初の停戦でウクライナ政府軍がその
停戦期間中に、東部に軍部隊を増強して、優勢になったことで親露
派は追いやられてしまった。しかし、現在、ウクライナ軍自体がほ
とんど、東部にいて、かつ兵器も東部にあり、補強ができないよう
である。それもウクライナ軍は、今まで、ロシア製兵器を利用して
いた。このため、補給して欲しい兵器はロシア製である。

CIS諸国研究所イーゴリ・シシュキン氏は、「ウクライナ軍はウクラ
イナ南部・東部で大敗を喫し、追加動員だけで戦況を改善すること
は不可能になっている。新たな装備が必要なのだ。ウクライナの工
場は緊急的に武器の供給を行うことが出来ない。こういうわけで、
旧ワルシャワ条約機構諸国からウクライナに古いソビエトの武器が
供給されている、との報告が上がっているわけである。

米国はクロアチアに対し、米国の支援と引き換えに、ウクライナに
Mi-8ヘリを供給するよう提案した。これもその一例である。同じよ
うな仕組みで他の国々も行動している可能性がある。兵器といって
も西側の最先端兵器ではないわけである。そんなものを与えられて
もウクライナ軍側に経験がなく、満足に扱えない。むしろソビエト
の武器である。それならウクライナ軍人にも馴染みだからだ」と。

このため、そのような兵器の補給を諸外国に依頼することが、今度
のカナダと米国への訪問であるようだ。ウクライナのポロシェンコ
大統領は、期待を込めて訪米した。

しかし、ウクライナのポロシェンコ大統領は18日、米上下両院合
同会議で演説し、「ウクライナは自由と民主主義の国家になること
を決意した」と述べ、「別の国はこのウクライナの決意を罰しよう
と決めた。世界はこのような行為を決して認めるわけにはいかない
」と続けた。オバマ大統領はウクライナに米国の全面的な支援を約
束した。

しかし、米政権が18日発表した5300万ドル(約58億円)規
模の支援パッケージには、軍事面の支援は、暗視ゴーグル、防弾服
、対迫撃砲レーダー装置といった防護装備で、重火器などの武器は
含まれていない。それはそうだ。米国の重火器を持って行っても、
ウクライナ軍が使えない。米国兵器を使える元米軍兵士、雇用兵も
送り込む必要がある。これをしなかった。

オバマ大統領は、「我々とウクライナとの間の貿易高は、大変少な
い。地政学的観点から見れば、ウクライナで起きている事は、我々
にとって直接的な脅威ではない」と述べ、米露代理戦争にしないよ
うにしている。

しかし、ロシア軍機6機が、米アラスカ州西方沖の米国の防空識別
圏に進入し、米軍機が緊急発進(スクランブル)していた。ポロシ
ェンコ大統領のカナダと米国の訪問に対して、ロシア軍は、一連の
外交上の動きをけん制する狙いがあったもようだ。しかし、その懸
念はなかったようである。米オバマ大統領は、ロシアの台頭を止め
ることはしないようである。もし、対抗するなら、それは第3次世
界大戦に一歩、近づいたことになるので恐ろしいが。

2.ロシアの動き
反対に、ロシアは、人道支援物資を積んだトラック車列の第3便を
20日朝に中心都市ドネツクに到着させて、軍事的な補給を確実に
した。今までは、ロシアの物資は8月22日、9月13日のルガン
スクだけであり、ドネツクに直接届けられるのは初めてである。補
給を確実して、停戦が崩れた時に、ロシア軍を再度、ウクライナに
投入することができるのである。

前回のウクライナへの侵攻時、多くの犠牲が出たようである。ウク
ライナのヘレテイ国防相は、8月下旬のロシア軍侵攻で激戦地とな
った東部ドネツク州イロワイスクで、ウクライナ兵107人が死亡
する一方、ロシア兵も推定300人以上が死亡したとした。特にロ
シア空挺部隊の隊員のようである。

次回の侵攻時は、補給での問題がなくなり、速やかに前線に移動で
きることになる。事実、NATO欧州連合軍のブリードラブ最高司
令官は、ウクライナに侵入したロシア軍部隊の多くが撤退したとさ
れることについて「間違えてはならない。部隊はすぐに(ウクライ
ナに)戻れる近さにとどまっている」と述べ、警戒を解くべきでは
ないと強調した。このように、いつでもロシア軍は戻れるのである。

3.ロシア対応策へ
ウクライナ東部情勢が緊迫する中、西部リビウ州で、米国を含む
NATO加盟国などがウクライナと合同軍事演習「ラピッド・トラ
イデント」を開始した。年次演習だが、ロシアによる南部クリミア
半島編入などウクライナ危機後では初めて。演習には、米英独やカ
ナダなど計15カ国の約1200人が参加。うち米国は欧州軍の約
200人を派遣し、ヘリコプターも投入した。NATO非加盟の旧
ソ連構成国ではウクライナのほか、グルジアとモルドバが加わった。

しかし、ロシアが再度、ウクライナに侵攻したら、それを止めるこ
とは容易ではない。ウクライナ軍がロシア製体系にありながら、そ
の本家と戦うことは、補給面でも技術面でも、ともに劣ることにな
り、不利である。その上、兵力数の面でも差が大きい。

このため、米国は、ポロシェンコ大統領の求めには応じなかったが
、対露戦略を変更する検討を開始した。政権が掲げてきた米ロ関係
改善を図る「リセット(見直し)」外交を転換し、安全保障上のリ
スクへの対応を重視する長期戦略を構築する。

対ロ経済制裁も当面は解除しない方針で、また、今年秋のプーチン
大統領の訪日について「安倍晋三首相との会談結果がどうであれ、
ロシアを孤立させる国際社会の結束に反する」と指摘した。さらに
、ロシアの力による一方的な現状変更を受け入れないことが、対中
けん制に資するとも述べた。

日本の対ロシア外交も見直しを迫られることになる。

ロシア対欧米日の対立が深まり、その分、中国への圧力が弱まるこ
とになる。それを利用して、中国は経済改革に取り組む余裕が出て
くることになる。

このため、日本は対中国外交も見直しを迫られることになるし、中
国もロシアに世界の目が行く間に、米国を経済的に抜くことができ
るので、漁夫の利が期待できる。中国にとって、非常に良いことに
なる。

将来の中国の覇権獲得に有利になると、中国は見ているようだし、
日本は中国との差が広がり、将来、屈服する可能性が出てくること
になる。

また、ロシアは、イスラム国問題でも米国とは組まずに、独自の立
場をキープすることになる。

さあ、どうなりますか?


参考資料:
5129.ロシアと米国の意地(p0310)
http://www.asahi-net.or.jp/~vb7y-td/260914.htm

5125.1930年の世界に
http://www.asahi-net.or.jp/~vb7y-td/260910.htm

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双方15キロ撤退で合意=ウクライナ政府と親ロ派
 【モスクワ時事】ウクライナ東部の戦闘をめぐる和平協議が19
日夜、ベラルーシの首都ミンスクで開かれ、ウクライナ政府と親ロ
シア派は20日未明、双方が15キロ撤退し、30キロの緩衝地帯
を創設することで合意した。
 ウクライナ政府代表のクチマ元大統領が明らかにしたもので、イ
ンタファクス通信が伝えた。双方は5日の和平協議で停戦合意をま
とめていたが、撤退問題が明確にされず、親ロ派の攻撃が続いて死
傷者が出ていた。(2014/09/20-10:28)
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ロシア機、米加の防空識別圏に進入=ウクライナ大統領の訪問けん制
 【ワシントン時事】戦闘機を含むロシア軍機6機が今週、米アラ
スカ州西方沖の米国の防空識別圏に進入し、米軍機が緊急発進(ス
クランブル)していたことが19日、分かった。また、これとは別
に、ロシアの戦略爆撃機2機がカナダ沖の防空識別圏に入った。米
本土防衛を統括する北方軍・北米航空宇宙防衛司令部(NORAD
)が明らかにした。
 ウクライナのポロシェンコ大統領は今週、カナダと米国を訪問し
、ロシアの介入に対抗するための支援を訴えており、ロシア軍には
、一連の外交上の動きをけん制する狙いがあったもようだ。
(2014/09/20-09:20)
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ウクライナ停戦合意、順守困難か=「24時間で双方撤退」
 【モスクワ時事】ウクライナ東部をめぐる和平協議で、ウクライ
ナ政府代表と親ロシア派は20日未明、戦闘の完全停止に向けた9
項目の覚書に署名した。24時間以内に、双方が撤退して幅30キ
ロの緩衝地帯を設置し、欧州安保協力機構(OSCE)監視団を配
置するのが柱だが、順守されるかには不透明感も漂う。
 今回の覚書の背景には、5日に停戦合意に達したものの、肝心の
撤退問題があいまいなまま残され、双方の戦闘が続いたことがある。
結果、政府軍や親ロ派だけでなく、市民にも死傷者が出た。ウクラ
イナとロシアなどは「停戦はおおむね順守されている」と主張した
が、実態とかけ離れていた。
 覚書では、停戦は双務的と確認した上で、19日時点の支配地域
の境界線から口径100ミリ以上の重火器を15キロ以上撤退させ
、幅30キロの緩衝地帯を設置するとうたった。双方の多連装ロケ
ットランチャー「BM21グラード」(122ミリ)で無差別に死
傷者が出たことが念頭にある。
 しかし、親ロ派幹部は「ウクライナ政府軍が30キロ撤退するこ
とで合意した」と曲解。覚書に「(ロシア人など)全ての外国人民
兵の撤退」も盛り込まれたが、親ロ派が率先して撤退に応じる気配
はない。また、緩衝地帯ができても、わずか24時間でOSCE監
視団が活動開始するのは容易ではない。(2014/09/20-19:14)
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ポロシェンコ大統領「ウクライナでの戦争は。自由世界のための戦
争だ」
20 9月 2014, 15:59VOR
  ウクライナのポロシェンコ大統領は、米国議会両院合同会議で「
燃えるような」演説を済ませた後、オバマ大統領と大統領執務室で
会談した。こうした事すべては「鳴り物入り」で行われたが、新聞
Wall Street Journalによれば、それでもやはりウクライナ大統領は
「何もお土産を持たず手ぶらで」キエフに戻る事になった。
  ホワイトハウスは、戦争によって荒廃したウクライナへ、さらに
700万ドル拠出すると発表したが、ウクライナ軍への武器援助に
ついては、常にこれを斥けた。この事は、キエフ当局の慢性的な政
治的無能さを証拠立てるものと言える。
 先週、オバマ大統領は、メリーランドでの資金集めのイベントで
「我々とウクライナとの間の貿易高は、大変少ない。地政学的観点
から見れば、ウクライナで起きている事は、我々にとって直接的な
脅威ではない」と述べた。
 しかしポロシェンコ大統領は、間接的ながら、これに反論し「ウ
クライナ人は、自国を救おうと非業の死を遂げているが、これは欧
州の戦争であり米国の戦争である。自由世界を守る戦争なのだ」と
強調している。
   RT
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ロシア物資、ドネツク初到着=またウクライナ同意なし
 【モスクワ時事】戦闘が続いたウクライナ東部向けのロシアの人
道支援物資を積んだトラック車列の第3便が19日夜、両国国境を
通過し、20日朝に親ロシア派が支配する中心都市ドネツクに到着
した。ロシアのメディアが伝えた。
 ロシアの物資の到着は8月22日、9月13日のルガンスクに次
ぐもので、ドネツクに直接届けられるのは初めて。今回もウクライ
ナ政府の同意や、赤十字国際委員会(ICRC)の随行はなく、ロ
シアはなし崩し的に国境管理を無視している。(2014/09/20-17:02)
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米、対ロ政策再構築へ=リセット路線を転換−プーチン訪日にも反対
 【ワシントン時事】オバマ米政権が、ロシアによるウクライナ軍
事介入などを受け、対ロシア政策の抜本的な見直しに着手したこと
が20日、分かった。政府当局者によると、政権が掲げてきた米ロ
関係改善を図る「リセット(見直し)」外交を転換し、安全保障上
のリスクへの対応を重視する長期戦略を構築する。日ロ関係にも大
きな影響を与えそうだ。
 対ロ政策の見直しは現在、ホワイトハウスの国家安全保障会議(
NSC)内で進められており、年内にまとまる見通し。オバマ大統
領が「古い冷戦思考にとらわれている」と非難するプーチン・ロシ
ア政権が続く限り、協力や連携を促進する関与政策の維持は困難と
判断した。
 北大西洋条約機構(NATO)の態勢強化と併せて、ロシアのエ
ネルギーに依存する欧州経済の改革にてこ入れするなど、包囲網の
形成を一層進めるとみられる。対ロ経済制裁も当面は解除しない方
針で、主要8カ国(G8)の枠組みも事実上消滅することになる。
 また、政府高官は取材に対し、今年秋のプーチン大統領の訪日に
ついて「安倍晋三首相との会談結果がどうであれ、ロシアを孤立さ
せる国際社会の結束に反する」と指摘した。さらに、ロシアの力に
よる一方的な現状変更を受け入れないことが、対中けん制に資する
とも述べた。(2014/09/20-15:41)
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米に軍事支援の拡大要請 ウクライナ大統領、露の「裏切り」非難
2014.9.20 05:00   
 ウクライナのポロシェンコ大統領は18日、米上下両院合同会議
で演説し、ロシアに立ち向かうため軍事支援を拡大するよう米議会
とオバマ大統領に訴えた。
 ポロシェンコ大統領は「ウクライナは自由と民主主義の国家にな
ることを決意した」と述べ、「別の国はこのウクライナの決意を罰
しようと決めた。世界はこのような行為を決して認めるわけにはい
かない」と続けた。オバマ大統領はウクライナに米国の全面的な支
援を約束したが、米政権が18日発表した5300万ドル(約58
億円)規模の支援パッケージには、ポロシェンコ大統領が求めてい
た一部の軍用品が含まれていなかった。
 オバマ大統領は、ポロシェンコ大統領とホワイトハウスの大統領
執務室で会談後、「実戦型の治安部隊を築き」、経済を安定させる
手段を米国はウクライナに提供し続けると表明した。
 米議会での演説でポロシェンコ大統領はロシアによるクリミア併
合を「現代史において最もひねくれた裏切り行為だ」と非難した。
(ブルームバーグ)
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ウクライナ戦闘の犠牲者2900人超=「暴力の支配」憂慮−国連
弁務官
 【ジュネーブ時事】ザイド・フセイン国連人権高等弁務官は19
日、人権理事会にウクライナ情勢に関する報告書を提出、ウクライ
ナ東部での戦闘による市民らの死者数(政府軍兵士除く)が3日時
点で少なくとも2905人に上ったと明らかにした。このうち28
人は子供という。負傷者は7640人。
 報告書で弁務官は「(激しい戦闘が続く)ドネツク、ルガンスク
両州では、法の支配が暴力の支配に取って代わられた」と憂慮を表
明。多くの非戦闘員が戦闘の巻き添えになっている深刻な状況を訴
えた。(2014/09/20-06:33)
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ウクライナ 停戦成立でも真の和平は遠く 
日本は更なるジレンマへ
2014年09月19日(Fri)  廣瀬陽子 (慶應義塾大学総合政策学部准教授)
9月5日、ウクライナ東部で続いていた親ロシア派とウクライナ政府
の間に停戦が成立し、混乱終結の可能性が見えてきた。だが、停戦
は平和や問題解決を意味するものではない。
 本稿では、停戦の意義と共に、継続する様々な不安要素や真の和
平の難しさについても考えて行きたい。
形勢逆転、盛り返した親露派
 6月にウクライナ大統領に就任したペトロ・ポロシェンコは東部ウ
クライナでの戦闘に、当初から強気で攻勢を仕掛け、8月に入ってか
らは、政府軍がかなりの領域を奪還し、親露派を追い詰めているか
に見えた。筆者がキエフで間近に見た8月24日の独立記念日の軍事パ
レード、ポロシェンコの演説も熱気に満ち、まさに勝利は目前だと
いうような人々の興奮が伝わってきた。少なくとも、この時、政府
軍が敗走することになるなど、誰も考えていなかっただろう。
 ところが、8月28日頃からロシア軍の大隊が公然とウクライナに入
り、東部の計10都市でウクライナ軍と直接戦闘を繰り広げたのだ。
劣勢だった親露派はあっという間に盛り返し、さらに支配地域を拡
大し、29日にはクライナ東南部、アゾフ海に近い要衝の港湾都市マ
リウポリを「ほぼ包囲した」と報じられた。
 マリウポリを掌握することは、ロシアにとって非常に大きな意義
がある。何故なら、マウリポリは6月半ばにウクライナ軍が親露派か
ら奪還してから、ウクライナ政府がドネツク州の暫定州都としてい
た地であるだけでなく、ロシアが3月に併合したクリミアに陸路で到
達する回廊構築の足がかりにもなる地だからである。ロシアからす
ると飛び地となるクリミアには現在、本土と結ばれる橋の建設が進
められている。
停戦発効後も散発する戦闘
 このように形勢が逆転するなか、「テロリストとは交渉をしない
」と親露派との交渉を断固拒否してきたウクライナ政府も、親露派
と和平を結ぶ以外の選択肢がなくなった。ロシアのプーチン大統領
、ポロシェンコ大統領は共に停戦および和平を進めて行くことで合
意し、9月5日にはベラルーシの首都・ミンスクで4者(ウクライナと
親ロ派、ロシア、欧州安保協力機構(OSCE))による和平の調整に
あたる「連絡グループ」の会合が開催された。
 「テロリストとは交渉しない」と言い続けていたウクライナ政権
が、親露派と同じ交渉のテーブルについたことは極めて大きな転換
点であるといえるが、ウクライナ政権の代表として交渉に臨んだの
はクチマ元ウクライナ大統領であった。つまり、ウクライナ政権側
は、現職者を交渉にあたらせないことで、面子を何とか保とうとし
たと考えられる。他方、親露派を代表したのは「ドネツク人民共和
国」のザハルチェンコ「首相」とプルギン「副首相」、ルガンスク
「人民共和国」のリーダー格であるプロトニツキーであり、仲介者
としてズラボフ駐キエフ・ロシア大使とOSCEのタリヤヴィニ特別代
表が立ち会った。
 プーチン、ポロシェンコ大統領双方が独自プランを持っていたこ
ともあり、交渉は難航し、議論は4時間以上にも及んだが、結局、12
項目からなる覚書が調印され、ウクライナ時間の5日午後6時(日本
時間6日午前0時)に停戦が発効した。覚書は9月3日にプーチンが提
示した段階的な停戦案が基礎となっており、双方の全捕虜の交換、
OSCEによる停戦の国際監視、市街地からの軍部隊の撤収などが含ま
れている。
 このような停戦は、ウクライナ政権にとってもちろん屈辱的であ
ったが、ロシア軍の支援で親露派が進撃を進める中、もはや選択肢
はなかった。ポロシェンコ大統領は停戦を受け、「ウクライナの主
権や領土の統一にとって重要だ」と発言し、統一ウクライナ維持が
最大の目的であったことをうかがわせると共に、東部の二州での経
済や言語使用の自由を認める考えも表明した。プーチン大統領も停
戦を歓迎した。
 しかし、実態は停戦状態とはほど遠い。捕虜の交換は比較的順調
に行なわれており、ロシア軍も少なくとも7割程度が撤退したとされ
ているものの、東部では散発的な戦闘が停戦発効直後から発生して
おり、ウクライナ軍、親露派の双方に攻撃情報が出ている。一般人
はもちろん、停戦を監視しているOSCEも危険にさらされ続けている
状況だ。後述のように、関係者の今後の展望にも大きな乖離がある。
 しかも、ロシア側からの親露派への物資供給は続いているし、ウ
クライナ政府もNATO加盟国の5カ国、つまり米国、フランス、イタリ
ア、ポーランド、ノルウェーから近代的兵器の供給や軍事顧問の派
遣を受けていることを明らかにしている他、グルジアもウクライナ
に防弾チョッキやヘルメットを含む人道援助の供与を行なっている
ことを発表している。諸外国も停戦の実効性に疑念を抱いているの
は明らかであるし、「停戦」中に戦闘態勢を立て直して、また攻勢
に転じるつもりだとお互いに批判し合っている。
欧米のロシアへの不信と気遣い
 そのような停戦への疑念は欧米の対露不信感と直結している。停
戦が発効した9月5日、米国とEUは対露追加制裁の準備が整った事を
発表したのである。追加制裁の内容は、EU金融市場へのアクセス制
限、武器禁輸、軍事転用可能な民生品の輸出制限、エネルギー分野
での技術輸出禁止などで、既に発動している経済制裁の内容を強化
した形となっているほか、ウクライナ東部の親露派に関与する24人
にも渡航禁止、資産凍結も実施している。ただ、その追加制裁はす
ぐには発動されず、発動するか否かはウクライナ東部での停戦とそ
れに続く緊張緩和の状況次第だとされた。停戦発効その日の追加制
裁の用意の発表に、ロシア側が反発したのは言うまでもない。
 だが、ロシアの停戦における姿勢を様子見していた欧米は結局追
加制裁の発動に踏み切った。一応の停戦は守られているものの、散
発的な武力衝突やロシアからの補給が続いていることから、9月10日
にEU高官の間で長時間にわたる議論が行なわれ、11日にEUは対露追
加制裁の発動で合意し、12日から適用することとなった。その内容
は8日に承認されたものと同じである。なお、EUはロシアがウクライ
ナ危機に関して政治的解決に向け、積極的な行動をとる場合には、
追加制裁の即時撤回の用意があるともしている。
 また、NATOも5月くらいから東欧地域の対策を重視しはじめ、6月
頃からはロシアの動きに対し、新しい対露政策を検討していたが、
様々な形で対露政策を強めている。たとえば、9月8日から10日まで
は黒海のウクライナ沖でウクライナ軍と米軍などが海上合同軍事演
習「シー・ブリーズ」を行なった。15日からは26日までの予定で、
ウクライナの西部・リヴィウ州において米国などNATO加盟国やウク
ライナ・グルジア・モルドヴァというNATO非加盟国ながらの親欧米
路線をとる旧ソ連諸国の計15カ国・約1200人による合同軍事演習「
ラピッド・トライデント」が始まった。米国は以前から予定されて
いた演習だとしてロシアを牽制する意図を否定するものの、ロシア
はもちろんそのようには受け取っていない。
 その一方で、ロシアに対する気遣いも見られる。たとえば、EUと
ウクライナは、9月12日に、EU連合協定の柱となる自由貿易協定(FTA
)の仮発効を今年11月の予定から2015年末まで延期することで合意
した。これはEUとウクライナ、ロシアが12日の閣僚級会議で決めた
もので、同協定のロシア経済への影響を危惧するロシアに配慮し、
実効的な停戦を促進することを優先したと見られている。ただし、
EUへ輸出時の関税削減というウクライナが既に享受している優遇措
置は継続される。
日本も更なるジレンマへ
 先月の拙稿「マレーシア機撃墜事件で悪化した日露関係」では、
日本が8月5日に発動した対露追加制裁への報復措置を例外的にロシ
アが見送ったと書いたが、その後、8月22日にロシアは対日報復措置
を発動した。具体名は明かされていないが、日本政府当局者や国会
議員計23人のロシア入国を制限するという措置である。
 だが、その一方で、ロシアのラブロフ外相が8月25日に「秋に予定
されていたプーチンの訪日の予定は変わらない」と発言するなど、
ロシアは日本に様々なボールを投げて日本の出方を見ているようだ。
日本が4月に予定されていた岸田外相の訪ロを延期したままにしつつ
、追加制裁まで行なっている中で、事実上プーチン訪日は不可能に
思える中でも、ロシア側は日本との関係維持の窓はいつでもあけて
待っているというポーズを示したのである。つまり、日本がプーチ
ンに対して明確な招待の意思を再度示し、歓迎するのであれば、プ
ーチンは間違いなく訪日するはずだ。選択権は日本が握っており、
全ては日本の態度次第であった。ロシアはそんな日本を試している。
 だが、日本はまた、米ロ間のジレンマに苛まれている。米国は公
には、プーチン訪日は日本に任せるとしているが、日本は米国の本
心を察し、ロシアが開けている窓に向き合えていないのである。
 そんな中で、プーチンの側近の一人であるマトビエンコ上院議長
は9月10日に、日本の漁船にも許可されてきたロシア水域での流し網
漁業を段階的に禁止する法案を議員立法で下院に提出すると述べた。
これも、事実上の対日報復措置だと見られている。
 また、9月11日のロシア政府が発行している『ロシア新聞』には、
アファナシエフ駐日大使がプーチンの訪日は延期されると発言した
内容を含むインタビュー記事が掲載された。これに対し、岸田外相
は同日、延期は決定していないと反論したが、この動きも日本に選
択を迫る圧力とも考えられるだろう。何故なら、このままだと訪日
は実現しないという事実上の圧力をかけながらも、現状では一大使
の個人的見解という見方も出来るため、日本の出方次第ではプーチ
ン訪日を実現することも可能だからだ。
 そのような状況のなかで、岸田外相は訪問先のドイツで、9月9日
にカウンターパートのシュタインマイアー外相と会談し、ウクライ
ナ危機に対し、ロシアの協力を共に求めていくと共に、G7メンバー
として対露追加制裁についても検討するという意向を表明した。日
本もドイツも、ロシアとの関係を重視したい、つまり対露制裁は極
力避けたいという立場を共有しており、本会談では日独がロシアに
対してどのような姿勢をとるのかが注目されていたが、ロシアにと
っては望ましくない展開となった。日独両国もやむなく対露強硬姿
勢を示したと言って良い。
 何故ならその直後の10日、かねてよりプーチンと懇意にしている
という森元首相が訪ロしてプーチンと会談し、安倍首相の親書を手
渡したからである。これに対しプーチンはポジティブに反応し、ウ
クライナ問題で悪化した日露関係に意欲を見せたという。この(安
倍首相本人ではなく)森元首相を派遣したことは、米ロ間のジレン
マに苛まれている日本政府にとって、双方の顔を立てた措置である
のは間違いない。
 それでも、日本はジレンマのなかで、欧米との協調路線を優先す
る選択をとった。9月18日に、翌19日に対露追加制裁を発動すること
が発表されたのだ。追加制裁の内容については、既に発動してきた
日本入国査証(ビザ)発給停止や資産凍結の対象者の拡大に加え、
日本がこれまで必死で避けてきた、ロシアの聖域である「エネルギ
ーと金融」分野での制裁も検討されているという(9月18日段階)。
9月末のアメリカ・ニューヨークで行なわれる国連総会の折に外相会
議の設定を試みるという報道もあるが、特に、エネルギー部門にま
で制裁が拡大されれば、今秋のプーチン訪日は絶望的だと言って良
い。
未承認国家になってしまう可能性も
 最後に、曲がりなりにも停戦が合意された現在ですら、ウクライ
ナの今後の展望は決して明るくないことを指摘しておきたい。
 まず、前述のように、停戦が合意されたあとも、局地的な武力衝
突が多々発生し、連日死傷者が出ているという現実がある。
 次に、やはり本稿でも述べたように、「停戦」中に戦闘態勢を整
え、相手のすきをついて再び攻勢に出るという作戦をウクライナ/
アメリカとロシアのどちらか、ないし両方が考えている可能性も否
定できない。
 そして、一番厄介なのは、停戦が平和を意味しないということだ
。現状では、和平後のウクライナの姿についての政権サイドと東部
親露派の主張が全く乖離している。ロシアは東部への影響力を維持
したいと考えており、ロシアが主導する関税同盟に東部だけでも入
れるような経済的自由や高度な政治的自立性を東部の所謂「ノヴォ
ロシア」に持たせる事を目指している。事実上の国家とも言うべき
地位だといえよう。そして親露派もここにきてウクライナ領に残る
つもりはないとし、独立を主張している。
 だが、ポロシェンコ大統領は、「特別な地位」を東部に付与する
とし、実際にウクライナ議会は9月16日に東部に3年間の自治を認め
る内容を含む「特別な地位」を与える法案を可決した。加えて、参
戦した親露派兵士の恩赦を与える法案も可決したが、政府サイドに
ウクライナの連邦制や領土割譲を認めるつもりがないことは明らか
だ。議会で可決された法案にしても、「自治」のレベルは今後の争
点となるであろうし、何より3年という期限付であることはネックに
なりそうだ。今後、停戦後の東部の地位について交渉が始められる
ことになっているが、現状では双方が合意に至る結論を導くのは難
しいだろう。
 そして、最悪の場合は、他の旧ソ連の未承認国家(国家の体裁を
整えつつ、他国からの国家承認を受けていないため、国家とはいえ
ない地域の事。筆者の新刊『未承認国家と覇権なき世界』NHK出版、
2014年8月、に詳しい)のようになってしまうだろう。他の旧ソ連の
事例、すなわち、アブハジア、南オセチア、ナゴルノ・カラバフ、
沿ドニエストルのように、紛争ないし内戦のあと、ロシアの介入で
分離主義派が武力的に勝利し、停戦後の地位についての合意が成立
しないがためにそのまま紛争は凍結し、分離主義派が選挙する領土
は未承認国家として残存する――。地域の不安定要素となってしま
う可能性は低くないといえそうだ。
 このように停戦は決して平和を意味しない。軍事的にも、政治的
にもしばらくはロシアや米国をバックにしたウクライナ国内外の対
立は続きそうである。
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クリミア併合から半年 ロシア軍、着々増強 NATO演習けん制も 
2014年9月19日 tokyo朝刊
 【モスクワ=常盤伸】ウクライナ南部クリミア半島では十八日、
ロシアによる併合から半年を迎えた。ウクライナ東部での危機を受
け、ロシアと欧米の対立が深まる中で、プーチン政権はクリミア半
島での軍備増強を着々と進めている。
 ショイグ国防相は十六日、クリミア半島に駐留しているロシア軍
部隊の大幅な増強方針を明らかにした。ショイグ氏は軍幹部との会
議で、「ウクライナで緊張が高まり、外国軍のプレゼンスがロシア
国境の近接地域で増した。クリミアでの適切な軍事力の展開が最優
先事項だ」と警戒心をあらわにした。
 ロシア通信は十二日、ロシア空軍は既に、スホイ30戦闘機をロ
シア海軍の黒海艦隊の司令部のあるセバストポリ近郊のベルベク空
軍基地に二十機以上配備したと伝えた。クリミアの空軍基地設備の
近代化も進めるとしている。海軍は黒海艦隊に今年から二〇一六年
まで、潜水艦を毎年二隻ずつ追加配備する予定だ。 
 ウクライナ西部リビウでは北大西洋条約機構(NATO)加盟の
米国など十五カ国が、ウクライナ軍とともに大規模な軍事演習を行
っている。今月上旬には黒海で米国やカナダなどが合同演習を行い
、ロシア側はクリミア半島からミサイルを試射し、けん制。ロシア
空軍機がカナダ軍艦船に異常接近する事態も起きた。
 プーチン氏が併合を決断するに至った重要な背景には、クリミア
半島がNATOの影響下に置かれることへの危機感があったとされ
、三月の併合以降、プーチン政権は実効支配を強めている。
 また、クリミア自治共和国で十四日に行われた議会選では、与党
統一ロシアの圧勝となり、七十議席(定数七五)を獲得。インタフ
ァクス通信は十八日、約二百万人のクリミア住民の97%がロシア
のパスポートを取得したと伝えた。
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初の米ウクライナ首脳会談、武器供与で温度差 米は「代理戦争」懸念
2014.9.19 09:55sankei
 【ワシントン=加納宏幸】オバマ米大統領は18日、訪米中のウ
クライナのポロシェンコ大統領とホワイトハウスで会談した。6月
の就任以来、ポロシェンコ氏の訪米は初めて。ウクライナ側はロシ
アの介入に対抗するための武器供与を求めたが、米側は慎重姿勢を
崩していない。
 オバマ氏はポロシェンコ氏との会談で、「安全保障面と経済面で
の支援を続けることにより、国際社会とともに外交的な解決を目指
す」と強調。ポロシェンコ氏は謝意を伝えた。
 米政府は同日、ポロシェンコ氏の訪米に合わせてウクライナに
5300万ドル(約57億6千万円)の追加支援を発表。支援総額
を2億9100万ドルとした。
 ただ、米政府が今回発表した軍事面の支援は、暗視ゴーグル、防
弾服、対迫撃砲レーダー装置といった防護装備で、重火器などの武
器は含まれていない。
 ポロシェンコ氏はオバマ氏との会談前、米上下両院合同会議で武
器供与を要求。ロシアや親露派勢力との戦いを「ウクライナだけで
はなく、欧州や米国、自由世界にとっての戦争だ」とも強調した。
 オバマ政権は武器供与がロシアとの緊張を高め、ウクライナが東
西の「代理戦争」の場となることを懸念。対ロシア制裁の段階的な
強化の一方、ウクライナへの支援を人道支援や防護装備にとどめて
いる。米議会では野党共和党を中心に武器供与を求める声が強まっ
ている。
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ロシア大統領「制裁はWTO違反」
9月19日 8時50分
ウクライナ情勢を巡って欧米がロシアへの制裁を強めていることに
ついて、ロシアのプーチン大統領は、貿易の自由化を目指すWTO
=世界貿易機関の原則に反するとして批判し、自国経済への影響を
慎重に検討したうえで、対抗措置を取る考えを示しました。
アメリカとEU=ヨーロッパ連合は、ロシアが引き続きウクライナ
東部の情勢を不安定にしているとして、防衛や金融、エネルギーな
どの分野でロシアに対する制裁を強めています。
こうしたなか、プーチン大統領は18日、メドベージェフ首相や上
下両院の議長、地方の知事らを集めて国家評議会を開き、「制裁は
すべての国が平等に市場にアクセスできるというWTOの原則に反
する」と述べて、欧米を批判しました。
そのうえで、ロシアが警告している対抗措置については、「自国の
国益と発展という課題を考慮する」として、自国経済への影響を慎
重に検討したうえで実施する考えを示しました。
ロシアでは、欧米による制裁と原油価格の下落などによって、通貨
ルーブルが16日、ドルに対して最安値を記録し、ことしのGDP
=国内総生産の伸び率の見通しもプラス0.4%と低迷して、メド
ベージェフ首相も今後3年間厳しい予算編成になると認めています。
プーチン大統領には、欧米の圧力に屈することなく、自国経済への
影響を抑える姿勢を示すことで、ロシアで広がる景気後退への懸念
を和らげるねらいがあるものとみられます。
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ロシアは最も危険な隣国だ
2014.09.18(木)  Financial Times
(2014年9月17日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
ロシアは悲劇であり、脅威でもある。セルゲイ・カラガノフ氏は今
週、本紙(英フィナンシャル・タイムズ)への寄稿で、現在モスク
ワで働いている自己憐憫と自慢とが入り混じった感情について興味
深い洞察を提供してくれた。それは不穏であり、気が滅入るような
話だ。
独裁者が支配する核武装した元超大国の怖さ
 西側の政策立案者は、「イラク・シリアのイスラム国(ISIS)」
の方が大きな脅威だと考えているようだ。だが、ロシアは核武装し
た元超大国の残党であり、道徳心のない独裁者に支配されている今
、筆者はロシアの方が恐ろしい。欧州にとって、そして、きっと米
国にとっても、今のロシアにどう対処するかという問題以上に大き
な外交政策上の課題はない。
 カラガノフ氏によると、西側は「自らを冷戦の勝者と称した」。
もしかしたら、このコメントの中に悲劇の発端を見いだせるのかも
しれない。西側は単に、勝者を名乗っただけではない。実際に勝者
だったのだ。
 防衛同盟がソ連を倒したのは、より良い生活を提供したからだ。
かつて楽観的だった多くのロシア人を含め、あれだけ大勢の人がソ
連という監獄から逃げたいと思ったのは、このためだ。
 だが、代々続くロシアの独裁者の最新メンバーであるウラジーミ
ル・プーチン大統領は「ソ連崩壊は20世紀最大の地政学的悲劇だっ
た」と述べた。ソ連崩壊は実際はチャンスであり、中・東欧の多く
の人がこれを両手でつかみ取った。
 新たな生活様式への移行は、必然的に困難なものになった。彼ら
が今暮らす世界は、極めて不完全だ。だが、彼らは概ね、洗練され
た近代性の世界に加わった。これは何を意味するのか? 知的、経
済的な自由を意味する。公の生活に自由に参加する権利を意味する
。そして、法の支配を受け、国民に対して責任を負う政府を意味す
る。
悲劇的な結果の責任の一端は西側諸国にある
 西側諸国はあまりに頻繁に、こうした理想に従うことに失敗した
。だが、西側は今も道しるべだ。1990年代前半には、多くのロシア
人にとって道しるべだった。ロシアの文化とロシアの勇気を崇拝す
る者として、筆者は恐らく願いを込めて、ロシアが崩壊したイデオ
ロギーと国家、帝国の残骸から抜け出す道を見つけることを期待し
た。
 それが難しいことは分かっていたが、我々のためだけではなく、
ロシア自身のためにも、ロシアには西側の価値観を選んでほしいと
思っていた。専制政治のサイクルの継続というもう1つの道は、あま
りに気が滅入るものだった。
 元ソ連国家保安委員会(KGB)中佐のプーチン氏を後継者に選ぶこ
とで、ボリス・エリツィン元大統領は後者の結果をもたらした。プ
ーチン大統領は今のところ、人気のある専制君主かもしれない。だ
が、専制君主であることに変わりはない。彼はまた、元KGB議長でソ
連最高指導者のユーリ・アンドロポフによる近代的な独裁政治を目
指すプロジェクトの継承者でもある。
 国家の忠実なしもべとして、プーチン氏は結果だけが重要だと考
えている。嘘は国政術の1つの手段に過ぎない。ここ数カ月、その明
白な真実が見えなかったのは、あえて目をつぶっている人だけだ。
 この悲劇的な結果の責任の一端は西側にある。西側諸国は1990年
代前半に、ロシアが必要としていた支援を素早く提供できなかった。
代わりに西側は、愚かなことに、誰がソ連の債務を払うのかという
問題に専念した。西側は一握りの集団の利益のために、ロシアの富
の窃盗を受け入れたのだ。
ソ連崩壊の理由と向き合うことを拒んだエリート層
 だが、それ以上に重要なのは、ソ連崩壊の理由と向き合い、その
後、新たに出発することをロシアのエリート層が拒んだことだ。抑
圧と嘘というスターリンの忌まわしい機構の現実と向き合って初め
て、彼らは新しいものを築くことができたはずだ。
 姿を現した国家は、最初から見込みが大きかった結果だった。ロ
シアは自国が敵に取り囲まれていると考えている。外交関係はゼロ
サムで、他国の成功はロシアの失敗を意味する。この見方では、も
し達成されたなら(それが非現実的な可能性であることには筆者も
同意する)、豊かで民主的なウクライナは悪夢だ。
 モスクワのエリート層にとって、それを防ぐことは、カラガノフ
氏の言葉を借りれば「ロシアの存続にとって欠かせないと思われる
領土に他国が勢力圏を拡大するのを食い止めるための闘い」だ。で
は、ロシアの存続を脅かしているのは誰か? それは「多くの人が
想像するよりも弱い」西側だという。そのような弱い西側が悪役を
演じているわけだ。
 モスクワから見ると、西側の政策はまるでベルサイユの政治だ。
だが実際は、西側の立場は2つの単純な原則に基づいている。1つ目
は、国には自ら選択する権利があるということ。2つ目は、国境は武
力によって変えてはならないということだ。
 ロシアは両方の原則を拒否している。元衛星国・属国が北大西洋
条約機構(NATO)加盟に熱心なのは、ロシアがこれらの原則を受け
入れないということを確信していたためだ。NATOはこれらの国に加
盟を迫る必要はなかった。各国が加盟を懇願した。もしかしたらこ
れらの国は、ロシアの「重要な利益」の理解がいかに広く、そうし
た利益を守る上でロシアがいかに無慈悲になるか分かっているのだ
ろう。
 時として、ロシアのエリート層が抱く見解は、パロディーに近い
ものになる。モスクワの多くの人が欧州との政治同盟が不可能だと
考える理由の1つは、欧州がキリスト教と「伝統的」な規範を捨てつ
つあることだ。これが言わんとすることは、同性愛の受容である。
 だが、筆者は少なくとも、プーチン氏がその消滅を嘆き悲しんで
いるソ連がキリスト教を情け容赦なく迫害したことを覚えている。
ロシアのエリート層がこの西側の悪の巣窟を愛していることを覚え
ている人もいるかもしれない。
 「我弱者をいじめる、ゆえに我あり」。これがプーチン大統領の
一部の暴挙の背景にあるモットーのように思える。だが、馬鹿げて
いるからと言って、その深刻さが減るわけではない。西側はロシア
にとっての脅威ではない。それどころか西側は、ロシアとの良好な
関係に重大な利益を持つことをよく知っている。
 しかし、侵略を無視するのはそう簡単ではないし、そう、どれほ
どその言葉が嫌いであっても、これは侵略だ。同時に、ロシアほど
重要で潜在的に有益な大国との敵対関係は悲惨だ。
西側はポスト冷戦の最後の幻想を捨てろ
 この苦境に対する解決策はあるのだろうか? すべての可能性――
追加制裁、ウクライナに対する莫大な経済支援と場合によっては軍
事的支援、あるいは全く何もしないこと――はリスクを伴う。だが
、西側諸国は、今付き合っていかねばならないロシアの率直な評価
から始めなければならない。
 今のロシアは、自国は歴史的な不当行為の犠牲者だと考え、西側
の中核的な価値観を拒む。また、自分たちには行動するだけの強さ
があると感じている。
 今のロシアの指導者は、こうした強い感情を権力を確保する方法
と見なしている。そのような支配者は彼が初めてではない。プーチ
ン大統領のロシアは危険な隣国だ。西側はポスト冷戦の最後の幻想
を捨てなければならない。
By Martin Wolf
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ロシア、来年はマイナス成長=制裁で景気後退に−欧州開銀
 【ロンドン時事】欧州復興開発銀行(EBRD)は18日、東欧
や旧ソ連諸国などEBRDの融資対象地域の経済見通しを公表した。
ロシアについては、実質GDP(国内総生産)伸び率が米欧による
経済制裁の影響で2014年はゼロ(5月時点の予想もゼロ)、15
年にはマイナス0.2%となり、「緩やかな景気後退」に陥るとの
見通しを示した。
 EBRDは、制裁によってロシアにおける事業活動の先行き信頼
感が損なわれ、投資が鈍化しているほか、同国企業は資金調達難に
陥っていると分析。また、14年上半期のロシアからの民間資本流
出額が750億ドルに上ったと指摘した。(2014/09/18-08:07)
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東部2州に特別地位認める ウクライナ法案可決 分離派から戦闘
再開の声
2014.9.17 05:00   
 ウクライナ議会は16日、東部の2州に特別な地位を認める法案
を可決した。一方、分離主義者の一派は戦闘再開を呼び掛け、11
日目となった停戦が脅かされている。
 議会はまた、停戦合意に盛り込まれていた恩赦に関する法も承認
した。可決された法に基づき一部地域で選挙が12月7日に行われ
るほか、2州は経済と投資面で特別な扱いを受けロシア語を第2公
用語とする権利を得る。
 親ロシア派武装勢力はルガンスクとドネツクの戦力を統合し「攻
撃」に転じることで危機を終わらせることを提案したと、ドネツク
の分離主義者のウェブサイトに16日掲載された指導者への発言が
示した。
 ドネツクでは15日に民間人3人が死亡、5人が負傷し緊張が続
いていると市当局がウェブサイトで公表した。停戦は「非常に脆弱
(ぜいじゃく)」だと、ロシアのプーチン大統領のペスコフ報道官
が述べた。
 北大西洋条約機構(NATO)は15日にウクライナでの演習を
開始した。ペスコフ報道官は演習が状況を不安定化するリスクを指
摘した。
 「ロシアは引き続きウクライナ国内の危機の解決促進にできる限
りの支援を続けている」と付け加えた。(ブルームバーグ)
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「ロシア軍部隊、すぐ戻れる」=NATO司令官、警戒維持呼び掛け
 【ワシントン時事】北大西洋条約機構(NATO)欧州連合軍の
ブリードラブ最高司令官は16日、米国防総省で記者会見し、ウク
ライナに侵入したロシア軍部隊の多くが撤退したとされることにつ
いて「間違えてはならない。部隊はすぐに(ウクライナに)戻れる
近さにとどまっている」と述べ、警戒を解くべきではないと強調し
た。(2014/09/17-06:17)
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ウクライナ大統領、EUとの連合協定に関する批准に署名
 ウクライナのポロシェンコ大統領は16日、EU=ヨーロッパ連
合との「連合協定」に関する批准に署名しました。
 ウクライナのEU加盟の第一歩となる連合協定は、双方の政治的
、経済的連携を強めるもので、ポロシェンコ大統領は、ウクライナ
下院と欧州議会が協定を批准したことを受け、16日に署名を行い
ました。
 しかしその一方で、当初11月1日に予定されていた協定の仮発
効については、12日にブリュッセルで行われたロシア・EU・ウ
クライナの3者協議の結果、2015年末まで延期されることにな
りました。これは、自由貿易協定の発効をめぐってロシア側が経済
的なリスクをもたらすとして懸念を表明したためです。
 ロシアは、協定が発効された場合、ヨーロッパからウクライナへ
免税品が無制限に入り、一部がロシアに流れ込む恐れもあるため、
市場を守らねばならなくなると警告していました。これに対し、ウ
クライナ政府内ではヤツェニュク首相らが延期に強い反対を表明し
ており、ポロシェンコ政権の内部で意見の違いが生じる事態となっ
ています。
(17日03:31)TBS
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NATOの武器供給でウクライナ和平、瓦解の可能性
15 9月 2014, 19:04VOR
ウクライナの停戦合意から2週間。専門家たちは極めて慎重に様子を
見守っている。両陣営とも定期的に、相手方の銃撃、砲撃、死亡や
負傷を報告している。
停戦はまだ完全なものではない。不安を一段と深めたのが、キエフ
政権がこのほど、NATO諸国のウクライナへの武器供給が始まってい
る、と発表したことだ。キエフの立場は矛盾している。一方ではウ
クライナ南部・東部や第三国の代表者らとひとつ交渉のテーブルを
囲み、紛争の平和解決への道を話し合っている。しかし他方では、
軍事プランを策定している。
先週末、ウクライナのワレリイ・ゲレテイ国防相は、地元テレビに
出演したなかで、ウクライナには既にNATO諸国の武器が入ってきて
いる、と述べた。
「私はウクライナ大統領とともにNATOサミットに主席した。そこで
私は出来る限りのことをした。私は密室会談で、我々を助けること
の出来る主要諸国の国防担当大臣と話し合った。彼らは私たちの言
うことを聞いてくれた。私は「助けてください!」と言った。そし
て、武器供給のプロセスが始まった。私は、これこそ、物事が進む
べき方向だ、と確信している」
ウクライナ政府高官がNATOとの武器供給合意を結んだむねの発言を
することはこれが初めてではない。NATO諸国はこの発言を否定し、
また合意の存在を否定した。ただし、ウェールズ(英国)サミット
でこの問題が議論されたことは事実として認めた。このNATO諸国の
立場に反して、ウクライナ政権は相変わらず、合意の存在を主張し
、その合意がすでに実現しはじめていることを主張している。今の
状況では、キエフの発言には疑いの余地がない、とCIS諸国研究所イ
ーゴリ・シシュキン氏は語る。
「ウクライナ軍はウクライナ南部・東部で大敗を喫し、追加動員だ
けで戦況を改善することは不可能になっている。新たな装備が必要
なのだ。ウクライナの工場は緊急的に武器の供給を行うことが出来
ない。こういうわけで、旧ワルシャワ条約機構諸国からウクライナ
に古いソビエトの武器が供給されている、との報告が上がっている
わけである。米国はクロアチアに対し、米国の支援と引き換えに、
ウクライナにMi-8ヘリを供給するよう提案した。これもその一例で
ある。同じような仕組みで他の国々も行動している可能性がある。
兵器といっても西側の最先端兵器ではないわけである。そんなもの
を与えられてもウクライナ軍側に経験がなく、満足に扱えない。む
しろソビエトの武器である。それならウクライナ軍人にも馴染みだ
からだ」
もしウクライナが再武装したなら、停戦状態の持続は望み薄である。
キエフが停戦に応じたとき、ウクライナ軍は前線で敗北を喫し始め
ていた。ウクライナ軍が強化されたとき、キエフの立場がどのよう
に変わるか、予断をゆるさない。モスクワは「慎重なオプティミズ
ム」をもってウクライナ政権と西側のスポンサーたちの健全な理性
と誠実さに期待しているところだ。
しかし、ウクライナが今年、西側諸国の立会いのもと自分自身で結
んだ約束を破ってみせたことは、まだ誰の記憶にも新しい。同じ運
命がこの停戦合意をも待っているかもしれない。NATO諸国はクチで
は平和を叫びながら、その武器供給によって、再びウクライナ内戦
を準備している。
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ウクライナ西部で合同軍事演習=危機後初、NATO参加−ロシア
は反発
 【モスクワ時事】ウクライナ東部情勢が緊迫する中、西部リビウ
州で15日、米国を含む北大西洋条約機構(NATO)加盟国など
がウクライナと合同軍事演習「ラピッド・トライデント」を開始し
た。演習は26日まで。
 親ロシア派のヤヌコビッチ前政権時代から実施してきた年次演習
だが、ロシアによる南部クリミア半島編入などウクライナ危機後で
は初めて。親欧州連合(EU)派のポロシェンコ政権は、NATO
との協力路線を鮮明にしている。
 演習には、米英独やカナダなど計15カ国の約1200人が参加。
うち米国は欧州軍の約200人を派遣し、ヘリコプターも投入する。
NATO非加盟の旧ソ連構成国ではウクライナのほか、グルジアと
モルドバが加わった。
 8〜10日に黒海で実施されたウクライナと米国などの海上合同
軍事演習「シー・ブリーズ」に続くもので、NATOの東方拡大を
嫌うロシアの反発は必至だ。この時の演習ではカナダ軍艦の上空を
ロシア軍機が旋回し、緊張が走った。
 ロシアは4、5両日のNATO首脳会議にウクライナが参加し、
武器供給問題などが話し合われたことを警戒。プーチン大統領は
10日、軍事ドクトリンの改定を命令し、NATOの動きを強くけ
ん制している。(2014/09/15-22:15)
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ドネツク空港で砲撃激化=ウクライナ兵、住民に死者も
 【モスクワ時事】ウクライナ政府軍が支配する東部ドネツクの空
港で、包囲する親ロシア派による砲撃が14日から激化し、地元メ
ディアによるとウクライナ兵3人が死亡した。ドネツク中心部でも
砲撃があり、市街地を支配する親ロ派は住民に死傷者が出たと主張
した。
 ウクライナ、ロシア、親ロ派などが5日、ベラルーシの首都ミン
スクで停戦で合意し、即日発効して15日で丸10日が経過。しか
し、合意に盛り込まれた「違法な武装部隊の撤退」の項目は守られ
ず、政府軍と親ロ派が対峙(たいじ)し衝突する状況が続いている。
(2014/09/15-14:28)
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ウクライナ東部で激しい戦闘、揺らぐ停戦
2014年09月15日 08:37 発信地:ドネツク/ウクライナ
【9月15日 AFP】ウクライナ東部の親ロシア派武装勢力の拠点ドネツ
ク(Donetsk)周辺で14日、激しい戦闘が勃発した。9日目を迎えた
政府軍と親露派との停戦崩壊の懸念が高まっている。
?AFP記者らによると、ドネツクの上空には大きな濃い黒煙の雲が立
ちのぼり、砲撃音と自動銃の発射音が終日響き渡った。ドネツク市
当局は、民間人の死傷者が出ていると語り、市内は「危機的」状況
にあると述べたが、それ以上の情報は伝えていない。
?ウクライナ政府は、親露派がウクライナ東部の政府軍拠点に対する
攻勢を強め、停戦を脅かしていると非難している。14日の戦闘はド
ネツク空港付近に集中しているもよう。ウクライナ軍は、同空港で
12日に親露派による攻撃があったものの、撃退したと述べている。
?親露派武装勢力と政府軍は停戦協定に従い14日にも最新の捕虜数十
人の交換を行ったが、親露派はウクライナ政府の部隊が自分たちに
対し発砲を続け協定に違反していると主張している。
?一方のロシアは13日、水と電気の供給が数週間にわたり滞っている
親露派掌握下のルガンスク(Lugansk)に援助物資を運ぶためとして
、220台のトラックをウクライナに送り込んだ。ウクライナ政府はト
ラックの越境許可を出しておらず、これら車両が親露派勢力への支
援物資を運んでいる可能性に対する懸念を表明している。(c)AFP
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「ロシア兵300人死亡」=東部激戦地で−ウクライナ国防相
 【モスクワ時事】ウクライナのヘレテイ国防相は、8月下旬のロ
シア軍侵攻で激戦地となった東部ドネツク州イロワイスクで、ウク
ライナ兵107人が死亡する一方、ロシア兵も推定300人以上が
死亡したとの見方を示した。13日放送の地元テレビに語った。
 ロシアでは8月下旬以降、ウクライナ東部で死傷したとみられる
兵士が秘密裏に本国に送還される事例が数多く報じられており、試
算はこうした事実を一部裏付けるものだ。国防相は「ロシアは沈黙
している」と語るにとどまり、数字の根拠は示さなかった。
(2014/09/14-16:36)
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「国内団結」維持に狙い 露、米欧制裁に報復の構え
2014.9.13 21:14 
 【モスクワ=遠藤良介】米国と欧州連合(EU)がウクライナ情
勢をめぐってロシアへの追加制裁を発動したのに対し、プーチン露
政権が報復措置の構えを見せている。ロシアに対ウクライナ政策の
変更を迫る上で米欧の制裁が持つ効果は限定的とみられ、プーチン
政権は逆に態度を硬化させている。ただ、度重なる米欧の制裁がロ
シア経済に打撃を与えていくのは確実で、プーチン政権が国内の「
団結」機運をどこまで維持できるかが注視される。
 米欧が12日に発動した制裁では、石油企業「ロスネフチ」や天
然ガス企業「ガスプロム」、最大手銀行「ズベルバンク」など、ロ
シア経済の屋台骨といえる国営企業が欧米市場での資金調達などを
制限された。北極海の油田探査やシェールオイル採掘に関し、ロシ
ア側に提供してはならない物資や技術も拡大された。
 露外務省は「制裁によって根本的立場を変えることはない」とし
、報復措置を警告する声明を発表。欧米産の自動車や軽工業製品の
輸入制限、欧米旅客機によるシベリア上空の飛行禁止といった措置
が検討されているとみられる。
 13日には、人道支援物資を載せたとされるロシアのトラック約
100台がウクライナ政府の合意を得ずに越境し、親露派武装勢力
の支配下にある東部ルガンスクに入った。8月に続く「人道車列」
の越境で、国際社会の批判は必至だ。
 12日の制裁発動に先立ち、専門家らは今年のロシア国内総生産
(GDP)が事実上の前年比ゼロ成長に落ち込むとみてきた。ロシ
アが、欧米産の農産物などを禁輸にする報復措置をとったため、イ
ンフレ率も年8%に達する可能性がある。
 政権は、今回の制裁対象となった企業や銀行を国家資金で支える
としているものの、金利上昇を通じた経済への打撃は避けられない。
ロシアでは西シベリアの主力油田が減退期に入っており、制裁で新
規開発が遅れれば中長期的な石油生産にも影響が出る。
 プーチン氏の支持率は8割超と高止まりし、国民多数派は米欧と
の対決姿勢を歓迎している。主要テレビ局のプロパガンダ(政治宣
伝)に、「敵」の存在で団結するロシア人の伝統的な国民心理が重
なっているためだ。
 ただ、「愛国ムード」がどこまで持続するかについては意見が分
かれる。最近の頻繁な軍事演習や米欧への報復措置には「国内向け
」の要素も多い、との見方が出ている。



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