5135.中東大混乱の予兆



「イスラム国」の有志連合の構築がうまくいっていない。もちろん
、NATO諸国は、米国の提案に賛成して、その有志連合に参加す
ることが決まり、英国、オーストラリアやフランスは空爆に参加し
ている。

しかし、トルコは外交官を40名以上捕虜になっているので、有志
連合にも参加せずに、かつ米国にトルコの基地を使用することも拒
否した。トルコは安全策のために、同国軍がシリア、イラクに隣接
する南部の国境沿いに、両国とトルコ側を隔てるための緩衝地帯の
設置を検討している。トルコは軍事的な衝突も回避するようである。

サウジと湾岸諸国は、おそらく、自国にある米軍基地の利用を認め
たようである。この米空軍基地から爆撃に飛び立っているようであ
る。特に、ドローンはサウジの基地からのようである。空爆の頻度
が高く、全てが空母からではない。しかし、それ以上の軍事関与を
サウジはしない。

韓国、日本は、軍事参加はせず、難民援助などになるようだ。中国
も軍事参加はしないようである。

ロシア、イラン、シリアなどは、シリア空爆を反対しているので、
有志連合に入ることはない。シリア空爆が国連安全保障会議で協議
されても、反対し、ロシアは拒否権を行使するようである。

その他、新興国も参加しない。30ケ国を集めたが、軍事に関与す
るのは欧米しかない。あとは様子見である。

地上軍は、イラク軍、クルド自治政府の軍、シリア反政府軍であり
、その中でもトルコにいるクルド労働党軍がシリアに入り、シリア
のクルド人を擁護している。このクルド労働党軍を支援する可能性
がある。トルコはこのことで、米国に不信感を持っている。

クルド人はシリア、イラク、トルコ、イランに居て、このクルド人
部隊を強化する方向でクルド自治政府の首都アズビルで欧米顧問団
が計画している。

しかし、それ自体が中東地域全体に次の混乱を巻き起こす原因にな
る可能性が高い。それをアメリカン・コンサバティブ誌「The Case 
Against a Unified Kurdistan」では心配している。ステファン・ウ
ォルト氏も中東での米国の攻撃は、予測できない混乱を引き起こす
ので、一貫して反対している。

元々の原因は、欧米が安定的な中東の独裁政権を倒して、民主的な
政権を作ろうとしたことで、混乱を作ったのである。その混乱を利
用して、「イスラム国」ができた。その前に民族や宗教分布を無視
した国境線を引いたことで、イラクだけを見るとシーア派が多数で
あり、スンニ派が少数になる。シリアはアウディ派が少数で独裁政
権を作り、スンニ派が多数で被支配されている。

このため、イランとシリアにまたがる国を作ると、スンニ派が多数
になり、国を作ることで、スンニ派が主体の国ができると考えるこ
とになる。これを実践したのが、「イスラム国」である。イスラム
教の原理主義者には、ごく当然な感情になる。

このため、周りのスンニ派諸国から多数の若者が集まってくる。

このため、そう簡単に「イスラム国」を崩壊させることは難しい。

また、クルド人は近接して居住しながら、4つの国に分割させられ
た。このクルド人が統一の国を作ることになると、ここでも混乱が
起きることになる。

欧米は、支援してクルド人の統一国家を作ることになると、周辺国
全体が欧米に反対する可能性が高い。何をしても、中東では欧米の
目論見は、混乱を拡大するように感じるがどうであろうか?

さあ、どうなりますか?

==============================
対イスラム国での結束を要請 米国がイランとの協調を模索
 【ニューヨーク共同】国連安全保障理事会は19日、イラク、シ
リアで勢力を拡大する過激派「イスラム国」への対応を話し合う閣
僚級討論会合を開いた。会合を主宰したケリー米国務長官はイスラ
ム国打倒とイラク支援に向けて「イランを含めて、どの国にも果た
せる役割がある」と述べ、国際社会の結束を訴えた。
 米国の参加打診に応じたイランは、出席予定とされていたザリフ
外相の代理としてアラグチ外務次官が演説した。
 軍事的に敵対関係にあり、シリア内戦でも鋭く対立する米国はイ
ランと、対イスラム国では協調を模索する姿勢を示した。
2014/09/20 07:24   【共同通信】
==============================
ケリー長官 シリアへの地上部隊「他国にも求めない」
2014.9.18 16:31 [政変・反政府デモ]
 ケリー米国務長官は17日、上院外交委員会の公聴会で証言し、
イスラム教スンニ派の過激派「イスラム国」に対するシリア領内で
の攻撃をめぐり、米国だけでなく、サウジアラビアなど周辺のスン
ニ派諸国による地上部隊投入も想定していないと明言した。
 ケリー氏は「現時点でどの国にも地上部隊派遣は求めていない。
賢明な考えとは思わない」と語り、シリア領内でのイスラム国との
地上戦はシリアの穏健な反体制派武装勢力が担うと強調した。
 シーア派の大国イランと盟友関係にあるシリアに、スンニ派の大
国サウジが派兵すれば情勢をさらに不安定なものにする恐れがある
と指摘した。
 また、国連総会を通じてより広範な有志国連合形成を目指すとし
、既に50カ国以上が貢献を表明していると語った。(共同)
==============================
米統合参謀議長「IS撃退に地上軍投入も」…韓国も参戦の可能性
2014年09月18日09時29分 [? 中央日報/中央日報日本語版] 
  米軍トップが米地上軍のイラク投入の可能性を初めて公に言及し
、ホワイトハウスと異なる見解を表わした。 
  マーティン・デンプシー統合参謀本部議長は16日(現地時間)
、上院軍事委員会公聴会(聴聞会)で「イラクで活動中の米軍諮問
団が極端主義のイスラム反乱軍(IS)を攻撃するイラク軍に参加
する必要があると判断される時がくれば大統領にこれを建議する」
と明らかにした。デンプシー議長はまた「軍事的連合による対応が
失敗し米国に対する脅威が顕在化すれば、当然大統領の元に行き米
地上軍の投入を含む案を建議する」と話した。 
  これは米軍の空襲とイラク軍などの地上戦によるIS撃退戦略が
効果的でない場合、イラクに駐屯している米軍1600人余りを地
上戦に投じるか、あるいは追加で米地上軍を派兵する案を示唆した
ものだ。 
  デンプシー議長は共和党のジェームズ・インホフ上院議員が「撃
墜された米軍操縦士を救うために地上軍を投じる準備はできている
のか」と尋ねると「できている」と断言した。これまで“場合の数
”に含まれていなかった米軍の地上戦参戦が現実化すればIS撃退
連帯に参加した韓国などの国家も軍事的支援やその拡大を要請が入
りうる。 
  これに関連して金寛鎮(キム・グァンジン)青瓦台(チョンワデ
、大統領府)国家安保室長は「人道的支援の範囲内で検討する予定
」としながら「軍事的レベルに対しては正確な輪郭が出てこなかっ
た」と明らかにした。 
  同日、デンプシー議長の返事はこれまで軍統帥権者として地上軍
投入に反対していたバラク・オバマ大統領の方針と相反する。オバ
マ大統領は今月10日にシリア空襲を宣言し、「米軍にイラクで地
上戦はさせない」と再確認していた。 
  オバマ大統領は「イラク人が自らすべきことを我々が行うことは
できない」として地上戦はイラク軍、クルド族民兵隊、シリア反乱
軍に任せる役割分担戦略を明確にした。それでもデンプシー議長が
2度も地上軍投入建議に言及し、ホワイトハウスと軍首脳部が敏感
な懸案をめぐって異なる見解を出すことになった。 
  ホワイトハウスは直ちに事態沈静化に出た。ジョシュ・アーネス
ト報道官は「デンプシー議長は仮想のシナリオを話したもの」と意
味を縮小した。しかし政界では「“軍靴”論争」が広がった。イン
ホフ上院議員は「オバマ大統領はイラク地上に米軍の“軍靴”はな
いだろうと言ったが、アルビールやバグダッドに(米軍が駐留中な
ので)すでに“軍靴”が入っている」と批判した。地上軍をめぐっ
て見解が交錯するなか、同日フロリダ・タンパを訪れたオバマ大統
領は17日、ここの中部軍司令部報告を通じてホワイトハウスと軍
の異見解消に乗り出した。
==============================
南部国境に「緩衝地帯」検討=イスラム国の混乱波及防止−トルコ
 【カイロ時事】トルコのエルドアン大統領は、同国軍がシリア、
イラクに隣接する南部の国境沿いに、両国とトルコ側を隔てるため
の緩衝地帯の設置を検討していることを明らかにした。トルコ・メ
ディアが16日報じた。
 エルドアン大統領は「軍が検討を進めて案を提示し、必要ならわ
れわれが決断を下す」と述べた。米軍がシリアやイラクで過激組織
「イスラム国」への空爆強化の方針を示す中、難民の新たな大量流
入などによる混乱の波及を防ぐ措置とみられる。
(2014/09/16-22:27)
==============================
イラン:イスラム国掃討、協力拒否 米不信強く
毎日新聞2014-09-17 03:39:15
 【テヘラン田中龍士】イランの最高指導者ハメネイ師は15日、
イスラム過激派組織「イスラム国」掃討に向けた協力要請が米国か
らあり、これを自らの判断で拒否したと明らかにした。また、対イ
スラム国で米国が主導する有志国連合を「中身がない」と批判し、
米国への不信感を改めて強調した。
 今月8日に前立腺の手術で入院したハメネイ師は退院の際、国営
放送のインタビューで「イラク... 
==============================
反体制派支援停止を要求=イラク首相特使と会談−シリア大統領
 【カイロ時事】シリアのアサド大統領は16日、首都ダマスカス
でアバディ・イラク首相が派遣した特使と会談し、国際社会に政権
打倒を目指すシリア反体制派などへの支援を停止するよう改めて要
求した。国営シリア・アラブ通信が伝えた。
 大統領は「テロとの戦いは、シリアやイラクのテロ集団を支援す
る国に圧力をかけることから始まる」と述べた。特使のファヤド氏
は、イラク政府のテロ対策などについて説明した。
(2014/09/17-06:53)
==============================
対イスラム国、イラク軍事支援で一致 欧米・中東30カ国・機関
外相ら、シリアへの具体策なく
2014.9.16 09:06 sankei[欧州]
 【ベルリン=宮下日出男】欧米や中東など約30カ国・機関の外
相らは15日、イラク情勢に関する国際会議をパリで開き、台頭す
るイスラム教スンニ派過激派組織「イスラム国」に対抗するため、
「軍事支援を含め、あらゆる必要な手段」を講じてイラク政府を支
えることで一致した。
 共同声明では、イラクのアバディ政権発足を歓迎した上で、イス
ラム国は「イラクのみならず、国際社会全体への脅威だ」と指摘し
、イラク国内に確保された勢力地域からイスラム国を取り除く必要
があると強調。イスラム国に対する国際包囲網の構築に弾みが付い
た形だ。
 だが、同様にイスラム国が勢力を広げ、米国が空爆準備を進める
隣国シリアへの対応については、声明での言及はなかった。フラン
スのオランド大統領が「持続的解決が必要だ」と述べたが、空爆で
は一致が得られなかったとみられる。
 また、会議にはイラクやシリアに影響力を持つイランが不参加と
なった。米国やサウジアラビアなどが難色を示したためとされる。
 出席したロシアのラブロフ外相は、イスラム国への対策でイラン
とシリアは「当然の協力者だ」と強調した。ロシアは、シリア空爆
には国連安保理決議が必要との見解も示している。
 会議はオランド氏とイラクのマアスーム大統領が共催し、米国か
らはケリー国務長官が出席。国連安全保障理事会5常任理事国もそ
ろい、日本からは梨田和也駐イラク大使が参加した。
==============================
なぜアラブ諸国では「国家分裂」が続くのか
100年前に英仏が引いた国境線が限界に
シェロモ・アヴィネリ :ヘブライ大学政治学教授 2014年09月20日
TK
イラク北部から恐ろしい話が伝わってくる。そして、シリアの内戦
では虐殺が続いている。これらの事態は、中東で構造的な転換が進
行している証しだ。第1次世界大戦からほぼ100年経った現在、敗戦
国オスマン帝国の崩壊を受けて形成されたこの地域の国家体制が、
揺らいでいるのだ。
現在の中東の地図は、第1次世界大戦に勝利した英国とフランスが線
引きした。戦争終結前に両国が協定を結び、中東での勢力範囲を確
保した。しかしこの協定は、この地域の歴史、民族的・宗教的伝統
や帰属関係、それに現地の人々の意思をまったく無視したものだっ
た。
人工的に引かれた国境線
イラク、シリア、レバノンの国境線は恣意的・人工的に引かれた。
この体制が揺らぎ始めている。米国主導のイラク侵攻は、フセイン
を権力の座から追い払っただけではない。スンニ派による少数支配
にも終止符を打った。イラクで多数を占めるシーア派は、抑圧から
解放されると、米国が後押しする民主的選挙は国全体にシーア派の
覇権的支配を行き渡らせる手段だと考えるようになった。
今日のイラクは、かつてのような一体的なアラブ人の国民国家では
ない。北部の「クルド地域政府(KRG)」は、事実上の国家だ。独自
の軍隊や国境警備当局を持ち、領域内にある天然資源を(ある程度
)管理している。外国政府がKRGの首都エルビルに置いている領事館
は、事実上、大使館として機能している。
シリアでは、民主化要求デモがすぐに武力抗争へと堕落した。多数
を占めるスンニ派が、アサド一族が率いるアラウィー派の支配に異
議を唱えだしたのだ。どうすれば一体的なアラブ人の国民国家とし
て再建できるのか、見えてこない。
イラクとシリアで中央政府が事実上崩壊し、まったく新しい組織「
イスラム国」が台頭した。その残虐な行為とイスラム教イデオロギ
ーは、従来の国境線が退場の時期を迎えたことを、はっきりと示し
ている。「イスラム国」の最近のレバノン侵攻により、レバノン国
内の勢力均衡が不安定さを増しているようだ。
スーダンは、英国が1890年代に作り上げ、広大な国土と多民族・多
宗教を抱えるが、紛争が続いている。凄惨な内戦が長年続いた揚げ
句、2011年に南スーダンが独立し、キリスト教徒とアニミズムを信
仰する人々がアラブ・イスラム教のくびきから解放された。しかし
、スーダン西部のダルフールは流血が絶えず、南スーダンは安定し
た国家には程遠い。
リビアも分裂の道をたどっている。第1次世界大戦直前に、イタリア
がオスマン帝国からトリポリタニアとキレナイカの2地域を奪い取り
、両地域には歴史的にも文化的にも根深い違いがあるのに、無理や
り統一体「リビア」を作り上げた。2011年にカダフィ大佐が死去し
て以降、一貫した国家体制を確立できず、6人の首相が交代した。西
洋諸国は、民主的選挙によって選ばれた統一政府を確立する必要が
あると訴えるが、まったく見当違いに響く。
多数決政治=イスラム教による支配
例外が1つある。エジプトだ。国内にさまざまな問題を抱えているに
もかかわらず、歴史と国民の意識に深く根差した、一貫性ある統一
体だ。
にもかかわらず、中東地域特有の構図はエジプトにも当てはまる。
世俗主義は、西洋諸国では、啓蒙運動に裏打ちされたリベラルで民
主的な勢力の台頭を受けて起こったのに対し、イスラム教の盛んな
中東では、世俗主義を押し付けたのは独裁的支配者だった。この構
図がわかると、なぜシリアではキリスト教徒やイスラム教少数派の
ドルーズ派がアサド政権を支持し、なぜエジプトではコプト派キリ
スト教徒が軍事政権を支持するのか、理解できる。彼ら少数派にと
って、民主的な多数決主義による支配は、イスラム教徒による支配
とイコールなのだ。
もし西洋が、中東に今後誕生するのは必然的に欧州型の国民国家で
あるはずだ、と考えているとすれば、それはうぬぼれにすぎない。
(週刊東洋経済2014年9月13日号)
==============================
第三次世界大戦勃発の可能性はゼロではない、中国官制メディア記
事が注目集める―独メディア
Record China 9月19日(金)6時50分配信
2014年9月16日、独ラジオ局ドイチェ・ヴェレ中国語版サイトは記事
「“第三次世界大戦”を利用?注意力をそらす」を掲載した。
中国紙・環球時報は12日、中国国防大学の韓旭東(ハン・シュード
ン)教授の寄稿記事「第三次世界大戦勃発の可能性は存在している
」を掲載した。ウクライナ問題が米露の戦争に発展するのではとの
懸念が広がっていると指摘。世界規模の戦争に発展する可能性はゼ
ロではないと主張している。
韓教授によると、世界規模の戦争は(1)遊牧民族と農耕民族の戦争
、(2)植民地獲得競争という形で進化してきたという。そして現在
では宇宙、サイバー空間、海洋などが主戦場になる第三の段階に達
した。この段階では技術力の競争こそが最前線だと分析し、中国も
海空軍を中心とした技術力の向上が不可欠だと訴えた。
この記事は人民日報英語版に掲載され、海外メディアの注目も集め
ている。独紙ターゲスシュピーゲルは「日中の対立から注意をそら
すための記事」と指摘した。(翻訳・編集/KT)



The Case Against a Unified Kurdistan

コラム目次に戻る
トップページに戻る