5133.農業改革ができるどうか?



農業改革ができるかどうか、養父市の国家戦略特区の成否がガキを
握りそうである。日本の常識は、製造業を復活すれば、日本は復活
するというものであるが、それを中国の製造業発展が阻止している
ように感じる。ソニーのスマホは、中国の低価格スマホの台頭で、
失速している。AV系最後の砦は、あっけなく敗退したのである。

このため、日本が復活するためには、別の道を探す必要に迫られて
いる。1000万人の観光客を日本を訪問すると、産業規模は、1
人が5万円を使ったとして、5000億円である。家電業界の昔の
産業規模は、60兆円であり、その半分がAV系とすると、約30兆
円であったはず。観光産業だけでは、AV系の穴が埋められない。

日本の農業生産規模は、5兆円弱である。世界に売れる高価な園芸
果実を持っているが、輸出は世界的に行っていない。日本自体の土
地面積を持っていないので、生産額が少ない。その上に、競争力が
無いコメを補助金を出して作らせて、競争をさせないようにしてき
た。

農家では、生活できないと、若者は農業から離れていった。しかし
、農業技術的な面では、世界最高なのに、その強みを活かせていな
いのが日本の農業の問題点である。千疋屋の果物は、美味しいし、
それは日本で作っているものばかりである。この果実を世界に売れ
ば、生産量を増やせるはずである。

どうしたら、農家が生活できるかという視点がないことで、日本の
農業は、一部の人たちしか儲からないビジネスになってしまったの
である。

農業というか養殖というか、沖縄県石垣島を見ると良い。ミドリム
シの栽培が盛んになり、その従業員は増加している。というように
新しい産業も、この農業から生まれることになる。それも辺鄙なと
ころに新しい産業が起きることになる。それはその成長に適したと
ころが、一番、生産性が高いからである。

この分野は、まだまだ開発の余地が有る分野なのだ。新規ビジネス
のチャンスが多い分野でもある。

養父市の国家戦略特区に期待をしたい。資本や技術を持つ企業の参
入ができるようにしてほしいものである。

さあ、どうなりますか?


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コラム:地方版アベノミクス、養父市が握る成否のカギ=丸山俊氏
2014年 09月 17日 21:16 JST
丸山俊 BNPパリバ証券 日本株チーフストラテジスト
[東京 17日] - 安倍政権の第三の矢である「成長戦略」が市場
の話題に上らなくなって久しい。政策メニューがひとまず出そろっ
たこともあるが、消費増税後の景気落ち込みが予想以上に大きいと
分かると、市場は再び一の矢(金融政策)と二の矢(財政政策)を
おねだりする始末である。

しかし、「岩盤規制」と言われる農業・雇用・医療制度に風穴を開
ける取り組みは国家戦略特区で始まったばかりだ。政府はこれらの
規制改革と9月に発足させた「まち・ひと・しごと創生本部」で省
庁横断的に人口減少対策や地域活性化策に取り組むことになるが、
地方から日本経済の底上げを図るという青写真は果たして描かれて
いる通りに現実のものになるのだろうか。本コラムでは、その成否
のカギを探ってみたい。

<今なぜ養父市なのか>
まず安倍政権は今年4月、1)東京都9区・神奈川県・千葉県成田
市、2)大阪府・兵庫県・京都府、3)新潟県新潟市、4)兵庫県
養父(やぶ)市、5)福岡県福岡市、6)沖縄県の6区域を国家戦
略特区(区域)に選定した。このうち一般的な馴染みの薄さや区域
の経済規模から言って兵庫県養父市が指定されたことは意外であり
、大きな話題となったことは記憶に新しい。
養父市が国家戦略特区に指定された理由は、同市が過疎に悩む典型
的な中山間地域であること、特区に相応しい先進的な事業提案、そ
して広瀬栄市長をはじめとする行政の強い意欲が決め手になったも
のと思われる。実際、菅義偉官房長官、新藤義孝総務相(当時)、
林芳正農林水産相(当時)らが養父市をそれぞれ訪問するなど、同
市に対する政府の思い入れはひときわ強いようである。
反対に経済規模から言って東京圏や大阪圏が指定されたことに驚き
はないものの、自治体間の調整難航が必至であることに加えて、そ
もそも首長をはじめとする行政に(養父市ほどの)意欲がないと思
われることなどから、政策課題の実現に向けたハードルはかなり高
い。
そのため、養父市に加えて、福岡市、新潟市の3区域こそが岩盤規
制を打ち破るドリルであり、実際、国家戦略特区諮問会議は「(養
父市、福岡市、新潟市の)3地域については、今後、農業・雇用改
革の横展開(バーチャル展開)が期待される改革事業拠点として指
定すべきである」としている。
つまり、養父市の事業提案が成功するか否かは、同市のみならず、
全国市町村の約45%を占める過疎地域、全国耕地面積の約40%
を占める中山間地域、ひいては日本(経済)全体にとって大きな意
味を持つのであって、多くの閣僚が養父市を訪問した理由はここに
あると言えるのではないか。

<実現されなかった地方再生>
こうした中、筆者は8月、養父市を訪問し、市長・副市長、市関係
者と面談する機会を得た。人口減少・高齢化という日本経済の縮図
とも言える状況に直面している養父市の現状を見ると、率直に言っ
て、本来ならここまで悪くなる前に国がもっと早く手を打つべきで
あったと感じた。
田中角栄内閣の日本列島改造論、大平正芳内閣の田園都市構想、竹
下登内閣のふるさと創生事業など、これまでの延長線上でハコモノ
や補助金だけに頼るだけでは地域が再生しないことは、今日の惨状
が物語っている。そうした反省の上に福田康夫内閣は縦割りを排す
るために省庁横断的な地域活性化統合本部を設置し、構造改革を柱
とする地方再生戦略を打ち出しはしたものの、短命政権だったこと
や政権交代もあって政策の実行実現に至らなかった。
報道によれば、安倍政権の地方創生では、まず秋の臨時国会で国と
自治体の役割を明確にした上で政府と都道府県にそれぞれ2020
年までの5年間に実施する総合戦略づくりを義務付けることを明記
した基本法案を提出する。そして、総合戦略では「50年後の人口
1億人維持」を目標として設定し、東京一極集中に歯止めをかける
ために地方への企業移転、地方居住の推進、子育てしながら働ける
環境づくりなどを促すための税制優遇や自治体向けの新たな交付金
創設などを検討するという。

<養父市が直面する3つの「ない」>
では、養父市の取り組みとはどのようなものなのだろうか。大ざっ
ぱにまとめれば、その取り組みは以下の3つの「ない」に答えを見
出すことである。
(1)ヒトがいない
先ごろ正式に承認された養父市の農業特区事業計画は、耕作放棄地
を解消して農業生産を増やし、農産物の高付加価値化を進めること
で雇用・所得の増加を目指している。しかし、ヒトはそうやすやす
とは集まらない。若者が養父市に転入してくるわけでもない。
そこで養父市は過疎地域でも高齢者の労働力を活用できるよう、シ
ルバー人材センター会員の労働時間の拡大・柔軟化を求めている。
労働時間に制約があると、十分な所得が見込めないため、かえって
会員が集まらない現象が生じているからだ。

(2)モノがない
いくら魅力的な農産物があって、都市部への販路が確保できても、
これに対応する十分な(農産物の)生産量がなければ農業振興はお
ぼつかない。そのためには耕作放棄地の再生が必要となるが、法人
が農地を売買するには農地のある市町村農業委員会において農地法
に基づく許可を受けなければいけない。
許可を受けるためには農地法第2条第3項に規定されている4つの
農業生産法人の要件(組織要件、事業要件、構成員要件、業務執行
役員要件)を満たす必要がある。そこで養父市は農地の賃貸や売買
に関連する権限を農業委員会から市に移すことを政府に要望、規制
の特例措置として認定された。
また、報道によれば、政府は農地を貸した農家の固定資産税をゼロ
に引き下げる一方、耕作放棄地は増税する税制改正を検討するなど
、農地集約を加速化する方針を示している。

(3)カネがない
カネだって、そうやすやすとは集まらない。地域金融機関も過去の
成功事例に乏しい農業再生案件の融資には及び腰だ。そこで養父市
は民間主導で6次産業化(1次産業が2次産業の加工や3次産業の
流通などに多角化すること)を推進できるようにするため、農業生
産法人の要件緩和を政府に要望している。
具体的には、農業の常時従事者が過半を占めることとしている役員
要件、農業関係者による4分の3以上の議決権保有などを義務付け
る構成員要件、農業の売上高が全体の過半を占めることとしている
事業要件の緩和を求めているほか、農業生産法人にかかる法人税の
減免も要望していきたいとしている。
地域がヒト・モノ・カネを集めて雇用・所得を生み出す取り組みを
、政府・地方自治体は補助金だけでなく許認可権などの規制改革に
よって後押ししていくことが必要である。安倍政権も養父市の取り
組みを岩盤と言われる農業分野の規制緩和、特に農協改革の突破口
になるものと期待しており、そのことが同市に対する強い思い入れ
につながっているのではないか。

<第三の矢は地方から放たれる>
最後に補足すれば、養父市は長崎県佐世保市にある大型リゾート施
設「ハウステンボス」の再生に腕を振るい、ホテル・旅館の再生に
も携わってきた三野昌二氏を副市長として招いた。同氏は地域公共
会社「やぶパートナーズ株式会社」の代表取締役として自ら空き農
地の賃借や所有(売買)、そしてそれを活用した6次産業化による
付加価値の高い農産物・食品の開発に取り組む予定である。
具体的には、フランス料理にも用いられて人気を博すなど海外でも
注目を浴び始めている山椒や寿司に適したコメ「寿司米」をブラン
ド化して海外向けに販売できないかといった「アイデア」が浮かん
でいるという。その他にも養父市は、耕作放棄地を農地に再生した
り、農産物を加工して弁当を売ったり、こだわり農水産物の予約生
産販売などに取り組む愛知県の農業生産法人「有限会社新鮮組」と
も連携するなど、民間の人材やアイデアを積極的に取り入れようと
している点が印象的だった。
この点について、市関係者は行政には企画力がないか、あったとし
ても行政が民間ビジネスに関わると住民や民間事業者と利害相反が
避けられないこと、農家は農家で生産に精一杯で生産物の製造・加
工・販売などにまで気が回らないこと、そのために6次産業化など
と言ってもこれまでは物事がなかなか前に進まなかったとこぼして
いた。

しかし、1)自らも農業従事者である首長(市長)の危機感とリー
ダーシップ、2)積極的な民間人登用や民間企業との連携、3)そ
してもっとも大事なことは行政・地域住民の意識改革、以上の3つ
が地方創生には必要不可欠であることを養父市は実践を通して我々
に教えてくれる。
ちなみに、安倍政権はすでに指定された養父市など6区域に加えて
、新たな国家戦略特区の選定にも着手している。金融相場とは少し
かけ離れたテーマのように感じられるかもしれないが、第三の矢は
地方から放たれることを考えると、市場はもっと地方創生の進ちょ
くに注意を払うべきだ。
*丸山俊氏は、BNPパリバ証券の日本株チーフストラテジスト。
早稲田大学政治経済学部卒業後、三和総合研究所に入社し、クレデ
ィ・スイス証券を経て2011年より現職。




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