5101.生ごみを宝物へ



生ごみを宝物へ
                  平成26年(2014)8月11日(月)
                「地球に謙虚に運動」 仲津 英治

先日、関西テレビ放送の森田誠二専任部長のご厚意で、「ヴィック・ムニーズ
ごみアートの奇跡」という映画を鑑賞させて頂きました。
この映画から、ブラジルの大都市であるリオ・デジャネイロ郊外に世界最大の
ごみ処理場があることを知りました。ゴミ処理場はジャウジン・グラマーショ
と呼ばれ、何とそこには3,000人の人達が資源となるゴミを求めて、働いていた
というのです。

「ヴィック・ムニーズ ごみアートの奇跡」 http://gomiart.net/ 

2012年サッカーワールドカップに併せ「ジャウジン・グラマーショ」は閉鎖さ
れたとの事ですが、そう簡単にあの膨大なゴミが処理されたとは思えません。
異常な世界をそこに感じました。私には、多くのゴミがリサイクル、リユース
可能であるのも関わらず、ゴミとして捨てられることがブラジルでは許されて
いたと思えたからです。

そして去る8月5日(火)、滋賀県大津市の伊香立コンポストセンターをEM(有
用微生物群=Effective Micro-Organisms)の友人と共に見学させてもらいまし
た。同センターにあった標語は「生ゴミを分別すれば宝物」です。
 http://www.nichieishiga.co.jp/company/

普通の家庭ゴミとして出されるゴミは、ゴミ焼却場で焼却処分されています。
埋立地の少ない日本は、カサの高い通常ゴミ(燃やせるゴミ、生ゴミを含む)
を焼却して灰にして埋め立てており、その数は1,700箇所、世界の3分の2を占め
ると言うのです。生ごみを自宅のコンポストでEMを使って堆肥化している私と
しては、これはもったいないので、改善するよう働き掛けたいと思っています。

「生ごみを堆肥化すれば宝物になる」、良い言葉ですね。かつて農業国であっ
た日本は、生ゴミは貴重な資源でした。その時代、田圃の畦道に生えている野
草を、「おらが物だ」とお百姓さんが争ったと言います。

大津市は南北に長い街です。北部の堅田より近江舞子までの住民の参加を得て、
(株)日映志賀が「伊香立コンポストポストセンター」を設置・運営しています。
その運営費の一部は大津市の補助事業とし支援されています。旧志賀町の後藤 
又久元町長がその設置に尽力された同コンポストセンターは、生ゴミコンポスト
を回収し、60日掛けて堆肥化し、各家庭に無料で配布しています。市民は、
生ゴミ(調理屑、残飯など)を専用コンポストに入れるだけで、(株)日映志賀
の回収車が持って行ってくれ、家庭菜園に使える堆肥となって還って来るのです。 
  
(株)日映志賀の森本 宏記 社長室長に拠りますと、2010年から開始されたこの
取り組みには、現在3,600世帯の住民の方々が参加し、人数としては1万人を超え
るとのことです。伊香立コンポストセンターには日量約5トンの生ゴミを4人の
社員が専用トラック2台で回収し、コンポストセンターの堆肥化ラインに搬入して
いるとの事でした。

35メートルの長さの一次発酵棟では、生ゴミは撹拌されながら元々自然に含れる
微生物で発酵し、20日間で、第2次発酵棟に移されます。発酵棟の内部ではほとん
ど臭いはしませんでした。また庭木からでる剪定枝も粉砕・細分化され、生ゴミ
に混入されています。そして第2次棟で40日後には熟成した堆肥になり、袋詰め
されて各家庭にコンポスト横に生ゴミ堆肥として戻されます。堆肥の品質も大事
です。プラステイック、針金、金具などをコンポストに捨てるマナーの悪い人も
いるようで、袋詰め機の前の分別機で取り除かれますが、手作業が伴なうことも
あるとの事でした。
回収されたコンポストは、水洗洗浄されており、その水は浄化・循環使用され、
外に排出されることはありません。

前述の森本氏によれば、1か所のコンポストセンターで、施設の規模や処理の
方法によってコストも大きく異なるが、公共の施設で「焼却」ということを
ベースにした場合との比較においては、かなりの経費の節約になっていると
思われる、との事でした。
処理場費には、人件費、施設維持費(水光熱も)、収集運搬費(車両維持費、
ガソリン)、ごみ処理代金(処分場の代金)、マニュフェスト費用(伝票類)、
保険、衛生費、検査費等々が含まれます、とのことです。事業としては、一応
採算は取れているとのことでした。

ゴミ焼却場に関して私が問題にしたいのは、生ゴミは湿っているので、必ず
灯油を加えて燃焼させる必要性があるという点です。石油は熱源に使うのは、
一番もったいない使い方で、薬品、衣料品、プラステイックなど貴重な素材、
物資に転換され得る大切な地球資源なのです。今後、コンポストセンターが
もっと拡充整備されて、全生ゴミを堆肥化できれば、現在計上されている生
ゴミ処理経費の全面節減が可能で、かなりプラスになるはずだと思われます。

焼却すれば、温暖化ガスである炭酸ガスを必ず排出します。もちろん発熱を
ボイラーに活用して熱源、給湯源等にも使えますが、元々生き物であった生
ゴミを生き物として活用せず、熱に変えてしまうのは、もったいない使い方
でしょう。
大津市による、生ゴミ堆肥化事業の拡充を期待し、大津市民の更なる参画を
熱望するものです。

ご参考 家庭用生ごみ処理機等の補助金制度について


森本氏は、最後に次の2点を強調されました。
食品群を扱う事業所(外食産業、物販関連)もこのような取り組みに積極的に
参加し、事業所が共同運営する施設を誕生させる必要性があります。結果的に
は、事業所も「ごみ処理代金」を大きくカットできますし、循環の意識を持て
ば、これを活用したビジネスプランも見えてくるものがあるはずです。
本補助事業は大津市のご担当の方によれば、「下水道の整備等に伴う一般廃棄
物処理業等の合理化に関する特別措置法」という法律に基づいて平成20年
(2008)から平成29年(2017)までの10年間実施されているとの事です。

暫定処置ではなく、滋賀県全県さらには日本全国に生ゴミ堆肥化事業が広がる
ことを祈念してペンを置きます。                 
                                 以上

「地球に謙虚に運動」代表
仲津 英治

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