5074.米国経済は完全復活で、日本はどうする



米国経済は完全復活したとFRBのイーレン議長が議会で宣言して、10
月にも量的緩和策を終了するという。経済が好調の理由は、シェー
ル・オイルの生産が好調で、2020年にも米国はサウジを石油生産で
抜くと言われているためである。

このため、米国は復活したのである。ピケティ『21世紀の資本論』
には、先進国は貧富の差が拡大するというが、イノベーションによ
り、資源を新しく作れば、この資源により経済が復活することを、
米国は示したのである。

日本は投資がなくて、貧富の格差拡大にならなかったが、量的緩和
で、投資が起こり、今後米国のような差の拡大が起こることになる。

この拡大を抑えるためには、資源・食糧などの常時人間に必要なも
のを生産拡大・雇用拡大できるかどうかである。サービス産業の拡
大は、賃金が安く、格差拡大になるだけである。

そうではなく、食糧や資源の生産拡大ができるかどうかである。こ
のために規制緩和や農業の改革が必要なのである。

製造業は、企業に製造技術があれば、なるべく労働賃金が安い地域
か、消費地に近い所で作ることが優位である。このため、日本のよ
うに人口が減る地域には、新しい工業は立てない。技術を得るため
の母工場や研究的な工場が残るだけである。

新しい技術で作る日本だけで生産できる資源や食料が必要である。
地下資源の掘り出しは、その地域を逃げられない。また、天候や水
の関係があり、農産物、林産物もその土地を離れられないことが多
い。

そちらに、日本の産業を持っていくことである。そうしないと、日
本の復活はできない。もちろん、人口を維持するなども必要である。

さあ、どうなりますか?

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FRBがとうとう量的緩和を終了。米国経済は完全復活し、今後の焦点
は金利へ
ニュースの教科書編集部2014年07月15日 10:28BLOGOS
 FRB(連邦準備制度理事会)は2014年7月9日、6月のFOMC(連邦公
開市場委員会)の議事録を公開した。国債などを買って市場に資金
を供給する量的緩和策を10月で終了することで一致していたことが
明らかになった。リーマンショックに伴う非常措置として2008年に
始まった量的緩和策がとうとう終了する。米国経済はこれで名実と
もに完全に復活したことになる。
 FRBは今年1月から量的緩和策の縮小を開始している。当初、FRBは
月あたり850億ドルの資産を購入していたが、これを100億ドルずつ
段階的に縮小してきた。10月には150億ドルになる計算だが、この段
階で150億ドルの減額を行って量的緩和を終了させる。
 背景にあるのは米国経済の順調な回復。米国は冬の大寒波や、春
以降続く洪水などの影響で景気の失速が懸念されていた。しかし、
米労働省が発表した6月の雇用統計は、非農業部門の就業者数が前月
比28万8000人増と大幅な増加となった。失業率も一気に0.2ポイント
低下し、5%台が目前となっている。
 これまでは、職探しを諦めた人が労働市場に出てこないことが失
業率を下げているだけという見方もあったが、就業者数の大幅な伸
びがこの懸念を打ち消した。
 こうした状況を受けて、ダウ平均株価は2014年7月3日、とうとう
1万7000ドルの大台を突破した。目先達成感が出やすいことから、相
場の行方には慎重な見方が多いが、少なくとも、米国経済が完全に
復活したことは、多くの市場参加者の共通認識となった。
 量的緩和策が終了することで、市場の注目はいよいよ金利と出口
戦略に向かうことになる。米国は景気が拡大しているにもかかわら
ず、金利が思いのほか上昇していなかった。FRBの緩和的な姿勢によ
る影響が大きいが、長期的な米国の潜在成長率の低下を指摘する声
もある。
 順当に進めば、今後金利は上昇を開始し、どこかのタイミングで
FRBは利上げに踏み切ることになる。だが、金利の低下が長期的な成
長率の伸び悩みを示唆しているのだとすると、FRBの利上げが、逆に
株式市場に対して下落の引き金となってしまう可能性がある。
 リーマンショックという非常事態への対策が終了した今、持続的
・長期的な成長に向けてのあらたな舵取りが始まることになる。
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21世紀に資本家と労働者の格差は拡大するのか
ピケティ『21世紀の資本論』の衝撃
2014.07.15(火)  池田 信夫 JBPRESS
今、アメリカで『21世紀の資本論』と題する本が話題を呼んでいる
。700ページ近くある専門書がアマゾン・ドットコムのベストセラー
第1位になり、「ブルームバーグ・ビジネスウィーク」はこんなカバ
ーストーリー(Piketty's Capital: An Economist's Inequality 
Ideas Are All the Rage)を組んだ。
 多くのデータや数式の並ぶトマ・ピケティ(パリ経済学院教授)
の本がアイドル並みの人気を集める背景には、アメリカで深刻化す
る所得格差の拡大がある。上位1%の高額所得者がGDP(国内総生産
)の20%以上を取る格差社会に対して怒る人々が、ピケティを「21
世紀のマルクス」として崇拝しているのだ。
マルクスの「窮乏化の予言」は甦るか
 マルクスは『資本論』で、資本主義の未来について矛盾する予言
をした。第1巻では、資本が少数の資本家に集中して労働者が窮乏化
して蜂起し、「収奪者を収奪する」未来を予言したが、未完の第3巻
では「一般的利潤率の傾向的低下」を予想した。しかし利潤率が下
がるなら賃金は相対的に上がるので、労働者が窮乏化することはあ
り得ない。
 20世紀には、利潤率が上がるとともに労働者も豊かになり、マル
クスの予想はどっちも外れた。しかし今、マルクスが第1巻で予言し
たように労働者は窮乏化している、というのがピケティの主張だ。
図のように欧米の所得格差は1970年代から拡大し始め、今では上位
10%の所得がアメリカでは50%近くを占める。
 ピケティの本が大きな反響を呼んだのは、「資本主義で格差は縮
小する」という定説をくつがえしたからだ。これまでは成長に伴っ
て資本家も労働者も豊かになると考えられ、戦後の各国のマクロ経
済データもそうなっていた。
 しかしピケティは、1930年から70年ごろまでの平等化の傾向は、
大恐慌や戦争で資本が破壊されたために起こった例外であり、19世
紀から資本家と労働者の格差は拡大してきたと主張しているのだ。
格差を拡大させる「資本主義の根本的矛盾」
 これは経済学者の論争を呼んだ。標準的な限界生産性理論によれ
ば、資本収益率が高ければ資本蓄積が高まり、その収益が低下する
収穫逓減が起こって「資本/労働」比率が一定の率に収斂する。し
たがって不平等が拡大し続けることはあり得ない。
 しかしピケティは「資本の限界生産性なんてあり得ない」と言う
。資本と労働を「生産要素」として同列に扱う新古典派経済学は寓
話であり、実際に生産を行うのは労働者だ。資本家はリスクを取っ
て投資し、そのリターンを取るので、資本に限界生産性はない。
 彼はここ200年の資本収益率(資本収益/資本ストック)rと成長
率gの間には、おおむね次のような関係があるという。
 r>g
 つまり資本収益率が成長率を常に上回るので、資本収益の増える
スピードが(資本家以外の)所得が増えるスピードを上回り、格差
が拡大する。これを彼は資本主義の根本的矛盾と呼ぶ。
 しかしこの式がどうやって導かれるのか、はっきりしない。rは資
本というストックに対する比率で、gはGDP(国内総生産)というフ
ローに対する比率なので、このまま比較することはできない。資本
ストックとGDPの比率がないと、両者の関係は分からない。
 その「資本/所得」比率βも、ピケティによれば拡大していると
いう。つまりGDPに対して資本ストックが増え続け、それに対する資
本収益率が上がり続けているため、これからも格差は拡大するとい
うのだ。
 それは本当だろうか。標準的な新古典派成長理論によれば、「資
本/労働」比率は長期的には一定の定常状態に収斂するはずで、資
本蓄積だけがどんどん増え続けることは考えにくい――というのが
正統派の経済学者の反論だ。
日本では格差は拡大しないが経済は停滞する
 ところが驚いたことに、新古典派成長理論の元祖であるロバート
・ソロー(ノーベル経済学賞受賞者)が、長文の書評で「ピケティ
は正しい」と評した。
 その要点は、簡単に言うと次のような話だ: 経済が定常状態に到
達すると、「資本/労働」比率は一定になるが、成長はそこで止ま
るわけではない。技術進歩や知識の蓄積などの外部性によって成長
は続く。
 この生産性の増加のうち、労働者個人に帰着するものは賃金とし
て還元されるが、それ以外の労働人口の増加や地価上昇の利益など
はほとんど資本家のものになるので、生産性が上がると格差は拡大
する。他方で資本の収穫逓減の傾向もあるので、長期的には両者は
相殺されて所得分配は安定するだろう、とソローは予想している。
 日本についてはどうだろうか。ピケティの本には各国ごとのデー
タもあるが、日本の所得格差はフランスとほぼ同じで、ヨーロッパ
と似たような動きを見せている。これは意外に思う人がいるかもし
れない。日本は格差が欧米ほど大きくないと思われているからだ。
 これはピケティの「資本」の定義が広く、労働以外の設備や土地
などを含んでいるからだ。こう定義すると「資本収益」には賃金以
外の所得のほとんどが含まれるので、日本でも賃金は低下して格差
は拡大している。
 しかし日本で特異なのは、資本収益が株主に還元されないで、企
業貯蓄(内部留保)になっていることだ。この結果、株主資本利益
率はアメリカの3分の1になる一方、企業が貯蓄超過になる異例の状
態が続いている。
 資本収益があまり投資されないので、格差はアメリカほど拡大し
ないが、成長もしない。潜在成長率は、ゼロに近づいている。この
最大の原因は生産年齢人口が減っていることだが、資本蓄積率も生
産性上昇率も下がっている。
 資本主義には格差を拡大させる傾向があるが、それは投資によっ
て成長するエンジンでもある。資本収益を投資しないで「会社」に
貯め込む日本経済では、株主も労働者も豊かになれないのだ。
 ピケティが言うようにアメリカでは「過剰な資本主義」が不平等
をもたらしているが、日本では「過小な資本主義」が停滞をもたら
している。これを是正して資本市場を活性化することは容易ではな
いが、今後の日本経済の最大の課題の1つだろう。


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