5068.将来日本の経済はどうなるか?



日銀の金融緩和で、日本景気は回復してきた。この持続がだいたい
確実になってきた。円安と株高が続く見通しが立ったことによる。

米FRBが量的緩和を10月終了するとしたので、投資家は量的緩
和を継続する日本の株に投資することになる。その上にアベノミッ
クス第2弾が、規制緩和に踏み込んだことも大きい。

しかし、日本の経済は、このままにすると長期に見ると徐々に下落
することが確実である。人口が減り、国内経済の規模は小さくなる。

米国の経済が徐々に正常な姿になってきたというが、上昇率は2%
であり、パート・タイムの仕事が増えて、正規の仕事が減っている
ようである。このため、大学を出たが、奨学金を返せない大学卒業
生が多数いるようである。

この現状を分析しているのが、ローレンス・サマーズであり、中間
層の仕事は、コンピュータで置き換わり、職が少なくなる。今でも
英語圏のインドやフィリピンに専門職の仕事が逃げているが、それ
がもう少し、なくなるというのである。

将棋の世界でも名人級の人間が将棋のソフトに負けているので、そ
れは十分可能性がある。

そして、米国のシリコンバレーでの起業がなかなかうまくいってい
ないようである。シリコンバレーから起業した企業が、ほとんど大
きくなっていないという。

電気自動車のテスラ社も、つい最近、衝突事故で火災を起こし、リ
チウム電池の安全性が問題になっている。特に鉄系リチウム電池も
衝撃に弱いことが分かり、今までの安全という宣伝が間違えである
ことになり、衝撃が大きく、挽回策として、特許の公開に踏み切っ
た。

電子系の新しい製品が出ていない。このため、AV系製品は値段競争
になり、小型化する余地のある部品メーカーしか利益が出ない。ま
た、付加価値としては、インターネットでの新商売であるが、徐々
に小粒になってきている。

次のイノベーションが必要であるが、日本は違う可能性がある。
円安であり、農や水産産物の値段が、日本がより有利になり、世界
に輸出できるようである。銀鮭は今までチリ産に価格的に負けて、
9割がチリ産であったが、チリでの労働賃金上昇と円安で、日本産
とチリ産の価格が同じになるか安くなるという。これはチャンスで
ある。

しかし、日本も労働不足になることが確実であり、移民政策と女性
の労働を真剣に考えることが必要になっている。

そして、女性の家庭での仕事を代替するビジネスを高齢者が行うこ
とである。年金だけでは不足や小遣い稼ぎを希望している高齢者は
多い。

日本の将来の姿を、景気が回復した現在、真剣に考えることである
と思う。そして、アベノミックス第3弾は将来に備える方向に行っ
て欲しいものである。

さあ、どうなりますか?

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量的緩和10月終了=経済改善なら利上げ策議論−米FOMC要旨
 【ワシントン時事】米連邦準備制度理事会(FRB)は9日、6
月17〜18日に開催した連邦公開市場委員会(FOMC)の議事
要旨を公開した。参加者は米国債などを購入して市場に資金を供給
する量的緩和策について、経済が予想通りに改善すれば10月に終
了を決めるのが妥当との見解でおおむね一致した。
 また、事実上のゼロ金利政策を量的緩和策終了後も「相当の間」
維持するなどとしている指針(フォワードガイダンス)を支持。来
年と想定される利上げの手法について議論した。(2014/07/10-07:04)
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焦点:中銀政策は再び「アート」の時代へ、透明性が信認に傷
2014年 07月 8日 14:40 JST
[ニューヨーク/東京 7日 ロイター] - 世界の主要中央銀行の
政策決定方法が、よりあいまいで「アート」の色合いが濃い以前の
形に回帰しようとしている。金融危機時の明確な約束を掲げるやり
方は、中銀の信認を損なう恐れがあり、実際の行動の代用にもなら
なかったことが判明し、終わりを迎えたのだ。
先進7カ国(G7)の中銀高官筋は「中銀の政策運営はかつてアー
トであった。いったんは世界的にその傾向が弱まったが、米連邦準
備理事会(FRB)やイングランド銀行(英中央銀行、BOE)で
起こった出来事を踏まえると、またアートに戻るだろう」と述べた。
FRBとBOEはいずれも、失業率が一定の水準に下がるまで事実
上のゼロ金利を維持すると約束していた。しかし失業率が米英両国
でエコノミストの予想よりもずっと急速に低下してしまったため、
双方の中銀ともに突如として賞味期限切れとなった「フォワードガ
イダンス」の修正を迫られた。
この中銀高官筋は「あまりに透明性を高めてしまうと場合によって
は逆効果になるかもしれない。つり合いを保つのはいつでも難しい
」と話す。
2007─09年の金融危機とその後の深刻な景気後退への対応で
政策金利を過去最低圏に下げた欧米の中銀は、フォワードガイダン
スを新たな景気支援策として打ち出し、将来の政策運営方針を示し
て長期金利の低下を促そうとしてきた。
ナティクシスのグローバル・チーフエコノミスト、パトリック・ア
ルテュス氏は「フォワードガイダンスの考え方は、透明性を確保す
ることで長期金利により大きな影響を及ぼそうというものだった。
だが中銀は信頼性を傷つけるリスクを冒している。もし何か予想外
の事態が起きれば、それまで明らかにしていた道筋から外れざるを
得ない」と指摘した。
FRBの評判は昨年春に打撃を受けた。当時のバーナンキ議長が債
券買い入れ(量的緩和)規模縮小を「今後数回の会合のうちに」開
始すると示唆すると米金利が急騰し、新興国資産も売りを浴びせら
れたのだ。複数のFRB当局者はガイダンスを再検討せざるを得な
くなったと感じ、FRBの対話の拙劣さに批判が集まった。
一方、BOEも今年2月にガイダンス修正に追い込まれた。それま
で失業率が7%を下回るまで利上げを検討しないと表明し、失業率
の7%割れには3年かかると見込んでいたのに、実際は半年でそこ
まで低下してしまった。そしてBOEに続きFRBも今年3月、同
じような約束を撤回した。
世界の中銀の政策をめぐる議論に詳しい複数の当局筋は、こうした
動きによって政策のコミットメントを提供することの危険性が次第
に認識されるようになったと述べた。
アラン・グリーンスパン元FRB議長は今年4月のニューヨークに
おける講演で「われわれは注意深く行動し、実際に生み出せるかど
うか確信できないことにはコミットしないという姿勢を堅持しなけ
ればならない」と語った。
<有用なガイダンス>
FRBとBOEの最新のガイダンスは具体性がずっと低下している。
イエレン議長が初めて出席した3月の連邦公開市場委員会(FOM
C)で示されたのは、量的緩和を終えた後も「かなりの期間」は事
実上のゼロ金利を続けるという方針と、景気が全面的に回復した後
も政策金利は過去の平均水準を下回ったままだろうとの見通しだっ
た。
それでもイエレン議長が、FOMC後の会見で量的緩和終了後「半
年程度」で利上げが始まる可能性があると発言すると、株価や債券
相場の大幅な下落を招いた。
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未来の経済問題、雇用の創出に=ローレンス・サマーズ
By LAWRENCE H. SUMMERS
2014 年 7 月 8 日 13:04 JST WSJ
 過去数千年における経済的大問題は、希少性だった。人々は生産
可能な数量以上のものを求めるものだ。そこでの課題は、可能な限
り生産水準を高めることと誰もが公平な分け前を確実に得られるよ
うにすることだった。
 ただ、この問題には、重要な観点で変化が生じている。例えば、
栄養不良の米国人より肥満に悩む米国人の方が多い。だが、これは
これから起きることの前触れにすぎない。未来の経済問題は、十分
な生産を確保することではなくなる。十分ないい仕事を供給するこ
とになるだろう。
 過去1世紀の間に農業部門で起きた変化は驚異的だった。米国の農
業従事者数は100年前に全体の約3分の1だったが、現在では1?2%に
すぎない。その理由は、農業の生産性が飛躍的に上昇したことだ。
食糧供給がかつてないほど潤沢なものとなったにもかかわらず、機
械化によって農業労働者の需要は減少した。
 こうしたことはいずれも極めて大きな示唆に富んでいる。数千万
もの人々が製造業やサービス業への就業を目的に農村から都市へ移
住してきた。農村に残された人々への支援策として、連邦政府は過
去10年間に1000億ドルを超える支出を行っている。確かに国際的な
問題はまだあるものの、現在の米国の農業部門における問題はすで
に食糧の確保ではなく、農業従事者の生活を保障することになって
いる。
 農業ですでに起きていることは、農業以外の経済分野の多くでも
起きようとしている。(ネットスケープを開発した)マーク・アン
ドリーセン氏はかつて、「ソフトウエアが世界を飲み込んでいる」
と言った。すでに米国の製造業従事者数は、障害年金受給者数と同
水準だ。製造業の復活を期待している向きもあり、また、実際に製
造業の雇用が今後数年間に拡大すると予想するだけの十分な理由も
ある。だが、長期的傾向は止めることも反転させることもほとんど
かなわない。農業がそうだったように、技術革新によってより少な
い労働力でより大量の生産が可能となっている。中国で製造業部門
の就業者数が過去20年間に減少したとはいえ、別の国が競争力で中
国にかなうわけがない。そして、その次に控えているのはロボット
や3Dプリンターの技術革新だ。
 では、サービス部門はどうなるのだろう。これからは、タクシー
にドライバーが不要となり、どのような小売り店舗でも自動支払い
が可能になるほか、現在のコールセンター業務は全て音声識別装置
によって自動化されるだろう。また、定番のニュース記事はロボッ
トが書き、カウンセリングも優れたプログラムが組み込まれた専門
システムによって行われる。金融市場の分析はソフトウエア・シス
テムがやってしまい、たった一人の教師が数十万人の生徒を相手に
授業を行う。そして、生徒一人一人の長所や弱点に応じた個別の宿
題をソフトウエアが出してくれるのだ。
 農業と同様、こうした生産性の向上によって失われた雇用は他部
門での活用に回されることになるだろう。だが、多くの理由から、
ソフトウエア革命が示唆するものは農業改革の場合以上に深いもの
になると考えられる。そこでは一層速い変化が生じ、より広い経済
部門への影響が生まれるだろう。農業を離れた労働者は製造業やサ
ービス業でさまざまな仕事に就くことができた。だが、現代では雇
用を創出する部門より喪失する部門の方が多くなる。そして、ソフ
トウエア技術の汎用性が高まっているため、それを生み出したソフ
トウエア業界自体もいつまでも安穏とはしていられないのだ。ビデ
オの普及は映画産業にとって悪いことではなく、むしろ(ビデオレ
ンタルチェーンの)ブロックバスターが大量の雇用を創出する、と
説明されていたのはそれほど昔の話ではない。
 就業問題はすでに米国で慢性化している。25〜54歳の男性につい
て考えてみよう。この年齢層について考察することは、普遍的な仕
事の特に一般的な見通しを探るうえで有益だからだ。約50年前、こ
の層の失業者は20人に一人の割合だった。その後、労働者の健康状
態は大幅に向上し、教育も充実した。事実、その教育の充実ぶりは
、今後2世代の間に期待できる規模をはるかに上回るものだった。だ
が、経済循環が通常の水準に戻った場合でも、この層のうち6人に一
人が失業しているというのが合理的推定なのだ。
 現在の傾向が続くとすれば、一世代後には中年男性の4分の1が失
業している可能性が十分ある。そのような世界では、働き盛りの男
性の半数以上が、いずれは1年以上続く失業に陥る危険にさらされて
いることだろう。そのような経験を経て、どのような能力があれば
再就職が可能になるのかまだわからないが、グレート・リセッショ
ン(大不況)のため長期間失業していた男性がこうした経験を経る
となれば、確かに厄介な話だ。
 そこで、経済政策にとってはこれまで以上に、所得を得るためや
購買力を獲得するため、そして尊厳を得るために雇用を求めている
全ての人々に十分な雇用を供給することが大きな課題になると思わ
れる。そのためには何が必要なのだろうか。(19世紀に英首相だっ
たウィリアム・)グラッドストンや(やはり19世紀プロイセンとド
イツの首相だったオットー・フォン)ビスマルク、そして(フラン
クリンとセオドア)の2人のルーズベルト大統領に象徴される産業化
時代に政府が求められる役割は大きく変わった。これからの情報時
代に対応するには、これと同じくらい大きな変革が必要となるだろう。
(ローレンス・サマーズ氏は現ハーバード大学教授で元米財務長官)






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