5054.アベノミックス2.0の評価は



政府当局者は、24日に発表する新成長戦略では好反応を期待してい
る。しかし、多くの提案は、最終発表を前に骨抜きにされた。安倍
氏の側近は、それにより実際に実行に移される可能性が高まったと
主張する。

日本はなぜ成長戦略を必要としているのか。簡単に言えば、日本は
成長力を失っているからだ。1980年代に資産バブルが破裂して以降
、国内総生産(GDP)は年率で平均1%弱のわずかな増加にとどまり
、80年代の4%超から大幅鈍化した。労働人口は減少し、高齢化は進
んでいる。

日本は経済の地盤沈下を思い知らされる出来事が2010年に起きた。
中国が日本を抜いて、米国に次ぐ世界第2位の経済大国に躍り出たの
である。中国のGDPは今では日本の2倍近くに達している。

「これが最後のチャンス、ここで切り込まないと日本経済は沈没す
る」──。今回の新成長戦略には、政府・日銀からの危機感と期待
感の両方がにじんでいる。潜在成長率が0.5%前後まで低下する
中で、高齢化社会を迎え、このまま低成長が継続する構造の下で財
政支出の増大に歯止めがかからないなら、物価や金利の上昇が起こ
りかねず、財政再建はおぼつかなくなる。とロイターはいう。

今回の成長戦略は前回のモノより数段良い。それは、農業改革、医
療改革、労働改革という岩盤規制に不十分ながら、切り込もうとし
ていることである。

この岩盤規制には既得権益を持つ人がいて、それが抵抗勢力として
邪魔をしていた。この抵抗勢力がとうとう、このままでは日本が沈
没するという問題を国民の多くが直視し始めたことで、崩せたので
ある。

しかし、不十分になったのは、規制緩和に対して抵抗勢力の動きが
あり、それで徹底できなかったようであるが、それでも今までより
良い。

来年も成長戦略を拡充する過程で、不十分な面をより徹底した形に
していくことである。

また、日本の目標を示していないことが、もう1つの問題点であり
、環境立国の礎を築くという日本の役割を明確化することも、併せ
て、述べて欲しいものである。

さあ、どうなりますか?

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アベノミクス2.0:目標大胆だが提案は控えめ
By JACOB M. SCHLESINGER
2014 年 6 月 24 日 13:58 JST
 【東京】安倍晋三首相が1年前に成長戦略を発表したときには、株
式市場は失望売りで急落を演じた。政府当局者は、24日に発表する
新成長戦略では好反応を期待している。
 前回との相違は、投資家がより現実的になっていることもあり、
安倍氏が控えめになり、鳴り物入りで宣伝しなくなったせいでもあ
る。成長戦略はすぐに成果が出るようなものではなく、長期的な見
通しを高めるためのものである。改定版はそういうものになるだろ
うか。多くの提案は、最終発表を前に骨抜きにされた。安倍氏の側
近は、それにより実際に実行に移される可能性が高まったと主張す
る。
 世耕弘成官房副長官は23日、ウォール・ストリート・ジャーナル
とのインタビューで、たとえ100点ではなく80点の出来でも、実行に
重点を置いている、と指摘した。
 安倍氏の成長戦略は、経済改革のための野心的かつ広範な青写真
である。16日に公表された92ページ近くに及ぶ改定成長戦略素案は
、「外国人が効率的に働ける社会をつくる」ことから、「想定可能
な紛争処理システムを構築する」ことまで、さまざまな点に言及し
ている。
 日本はなぜ成長戦略を必要としているのか。簡単に言えば、日本
は成長力を失っているからだ。1980年代に資産バブルが破裂して以
降、国内総生産(GDP)は年率で平均1%弱のわずかな増加にとどま
り、80年代の4%超から大幅鈍化した。労働人口は減少し、高齢化は
進んでいる。
 企業は長期不況に萎縮して設備投資を削減し、代わりに海外で工
場を設置し始めた。外国からの直接投資は、公式、非公式の高い障
壁のためにほとんどみられない。リスクを犯し収益を拡大するより
も安定を望む企業文化が、成長のための新たなエンジンをつくり出
す起業家的な行動を抑えてきた。
 日本は経済の地盤沈下を思い知らされる出来事が2010年に起きた
。中国が日本を抜いて、米国に次ぐ世界第2位の経済大国に躍り出た
のである。中国のGDPは今では日本の2倍近くに達している。
 こうした問題は、どれも目新しいものではない。安倍首相はこれ
らの問題に取り組もうとする日本で初めての指導者ではない。なら
ば、なぜ今回はうまくいくと思われるのか。それはおそらく、安倍
氏の支持率が高く、政治的資産が(彼がそれを利用するならばだが
)歴代の弱体で短命の首相よりも多いからだろう。
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政府、農林漁業の強化策を改定=安倍首相、農協改革に意欲
2014 年 6 月 24 日 13:02 JST 更新
 政府は24日、首相官邸で「農林水産業・地域の活力創造本部」
を開き、農林漁業の強化策を改定した。農協、農業委員会、農業生
産法人の改革を新たに盛り込み、第1次産業の活性化を目指す。安
倍晋三首相は「農協法に基づく現行の中央会制度は存続しないこと
になる」と述べ、全国農業協同組合中央会(JA全中)が農協グル
ープを指導する制度の抜本見直しに改めて意欲を示した。 
[時事通信社]
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焦点:成長戦略は「漢方薬」、短期は為替安定で潜在成長率正常化
2014年 06月 24日 13:00 JST
[東京 24日 ロイター] - 政府が24日に決める「新成長戦略
」は、将来への布石として効果発現までに時間がかかる「漢方薬」
だが、短期的には「為替安定効果」が経済を下支えするとの見方が
政府・日銀内から出ている。ドル/円JPY=EBSが100円台で安定し
ていれば、企業の設備投資や採用意欲、新規事業進出などが刺激さ
れ、成長率の底上げに寄与するとみているためだ。
<10年後の潜在成長率、1─1.5%の声>
「これが最後のチャンス、ここで切り込まないと日本経済は沈没す
る」──。今回の新成長戦略には、政府・日銀からの危機感と期待
感の両方がにじんでいる。潜在成長率が0.5%前後まで低下する
中で、高齢化社会を迎え、このまま低成長が継続する構造の下で財
政支出の増大に歯止めがかからないなら、物価や金利の上昇が起こ
りかねず、財政再建はおぼつかなくなる。
その事態を回避するための「切り札」として作成された新成長戦略
は、従来に比べて市場の評価は悪くない。一部のエコノミストは、
成長戦略に盛り込まれた改革案が実現できれば、設備投資増加や労
働参加率の上昇により、10年後の潜在成長率が1─1.5%に高
まっていくとみている。
とはいえ、成長戦略は来年、再来年の成長率を直ちに押し上げる「
効果」があるわけでなく、中長期な成長底上げを図る政策対応とい
える。
例えば、女性の活用、少子化対策を実行していくとしても、子供が
増えて実際の労働力人口が増えるまでには20年以上かかる。
最も即効性があるとされるのが法人税減税に伴う設備投資の増加だ
が、税率改正が法案化され設備投資が動きだし、それが競争力改善
につながるのは数年先だ。
<円相場安定なら、潜在成長率0.5%から1%台へ上昇可能>
だが、短期的に潜在成長率に効果を発揮すると政府・日銀内で密か
に分析が進んでいる政策がある。それは「為替レートの安定」だ。
ドル/円が100円を割り込むような円高下で、デフレが脱却しな
い状況では、企業が委縮して身動きが取れず、政府が音頭をとって
も設備投資は出てこなかった。
今なら、安定して100円台の為替水準が維持されているため、企
業活動も活発化し、潜在成長率0.5%という「委縮」した状態か
ら、1%台の「正常」な潜在成長率へと移行することは可能という
のが、政策当局の見立てのようだ。
ある政策当局幹部は、日本経済再生の最大のカギは、為替相場の適
正水準での安定にあると言い切る。
潜在成長率が0.5%程度まで低下したのは、ドル/円が80円と
いう行き過ぎた円高となり、企業活動が凍てついてしまったことが
原因だ、とその政策当局幹部は指摘する。
そのうえで為替が適当な水準で安定してくれば、企業が本業に専念
できるだけでなく、政府も成長戦略に尽力できるというシナリオを
明らかにした。
日銀にとっても、2%というグローバルスタンダードの物価目標に
近づくために潜在成長率の上昇が必要となるが、為替の安定による
貢献は大きかったはずだ。
物価が1%台に上昇してきたのも、きっかけは日銀の異次元緩和に
反応した円安進行だったことは否定しえない。円安が株高を誘発し
、企業の低価格戦略の転換を引き起こし、人々のデフレマインドの
払しょくにもつながっていった。
<1%台の成長率、財政再建に力不足>
為替安定で時間を稼ぎ、成長戦略の実行で中長期的に潜在成長率を
引き上げるという今回の政府の戦略には、1つの弱点がある。それ
は積み上がった債務残高の圧力が、日本の財政の背骨を折りかねな
いという構造を抱えていることだ。
政府による財政健全化の中長期試算では、今後10年間の実質平均
成長率が2%程度、つまり潜在成長率が2%だとしても、プライマ
リーバランスの黒字化は達成できそうにない。
潜在成長率が低迷したままでは、早期に需給ギャップゼロという状
態に達してしまい、「そこが成長の天井となる恐れがある。日銀が
物価目標2%を目指そうとすると、低成長下でのインフレとなりか
ねない」(バークレイズ証券)という状況を招きかねない。
黒田東彦・日銀総裁が供給問題に何度も言及し「今こそが、課題克
服に向けた取り組みを進めるチャンス」とし、「政府による成長戦
略の着実な実行」を繰り返し求めているのも、そうした状況を回避
したいと考えているからとみられる。
安倍政権の目指す中長期的な持続的経済成長の達成には、潜在成長
率を今後1.5─2%まで引き上げる必要がある。「そのためには
、今回の成長戦略は方向としては正しいが十分ではない」(シティ
グループ・グローバル・マーケッツ エコノミスト 飯塚尚己氏)
との声が少なくない。
「何もしないよりはまし」(国内エコノミストの1人)という程度
の「岩盤破砕力」しかない新成長戦略なら、いずれ低成長を予見し
た市場による「日本株売り」に遭遇しかねない。  
(中川泉 編集:田巻一彦)




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