5051.イラクを介してイランと米国が味方に



イラクでの過激派の攻撃を防ぐために、米国はイランと共同で作戦
を行う方向である。米国は宗教対決という問題を無視して、第1次
大戦後に引いた欧米の秩序を守る方向である。この方向は大きな問
題を抱えている。それを検討する。  津田より

0.経緯
イスラム教スンニ派の過激派「イラク・シリアのイスラム国ISIS」
はイラク第2の都市モスルを10日に制圧し、11日にはティクリ
ートを制圧、サマラを迂回し12日、新たに首都北方90キロの町
ドゥルイアを制圧した。13日にはバグダッドの約60キロ北方バ
クバ郊外でシーア派民兵組織と衝突した。

15日、イラク軍との激しい戦闘の末、北部タルアファルを制圧し
た。ISISは、マリキ政権下で冷遇されてきたスンニ派住民の感情に
つけ込む形で北部で支配を拡大してきたが、ここからはシーア派民
兵がいるので、そう簡単には制圧できなくなっている。

このため、ISISはシリア国境の地域に展開した。21日、イラク西
部のシリア国境にあるカイム検問所を攻撃し、検問所を制圧した。
検問所は現在、自由に往来できる状態になっていて、ISISは、シリ
ア側の支配地域から物資や戦闘員を調達するのが容易になった。

イラン外務省報道官は15日、イラクの情勢について「外国による
いかなる軍事介入」も状況を複雑化させるだけだと米国の介入に対
して警告した。シーア派民兵の多くは、イラン革命防衛隊のことで
あり、米国の介入は迷惑なのである。

このため、緊迫するイラク情勢をめぐり、米国とイランの外交団が
16日、直接協議した。米国務省によると、ISISの脅威に対抗する
ための協力について話し合った。イランはシーア派の立場で主張し
たはずであるし、米国はイラクにある米国権益を守るためであり、
特にバクダッドにある米大使館を守ることが重要である。しかし、
バグダッドの米大使館は保安要員をのぞいて南部バスラへとすでに
撤退した。

米国防総省は16日、ヘーゲル国防長官の命令を受け、輸送揚陸艦
「メサベルデ」がペルシャ湾に展開したと発表した。ペルシャ湾で
は既に、空母「ジョージ・H・W・ブッシュ」と僚艦2隻が即応態
勢に入っている。オバマ大統領が声明を発表できるように戦争準備
が整ったことになる。

イラク国営テレビは16日、ISISの戦闘員を乗せた15台の車
列をイラク空軍が空爆したと伝えた。また、空軍は中部ファルージ
ャ北西でISISを空爆し、武装集団の200人あまりを殺害した
と伝えた。イラク軍のヘリコプターが空爆できるということは、携
帯SAMがまだ、ISISにはないのであろう。空爆をイラク空軍で出来る
ことになる。戦闘爆撃機で空爆するより正確度は、スピードが遅い
分、ヘリの方が正確である。

17日、首都北方約60キロのバクバ中心部でイラク軍と衝突した。
ISISはバクバの一部を一時制圧したが、イラク軍部隊が撃退した。
マリキ政権は過激派の首都接近を食い止めるのに必死だ。

また、17日にイラクのバイジにあるイラク最大の製油施設が操業
を停止し、外国人スタッフも退避した。
そして、18日ISISの攻撃を受けた。石油製品の貯蔵タンクの一部
が炎上。19日、ISISはバイジの製油施設を完全制圧したという。

このため、石油価格が上昇して、1バレル107ドルになっている。

1.オバマの演説で
18日イラクのゼバリ外相は訪問先のサウジアラビアで、米国に対
して過激派組織を空爆するよう正式に要請したと述べ、各地で一進
一退の攻防が続くなか、米国オバマ大統領の対応に注目が高まった。

しかし、サウジなどがイラクのマリキ政権に対し、「(イスラム教
シーア派中心の)排他的な宗派主義」と反発を強めていることもあ
り、空爆には慎重だ。アラブ首長国連邦(UAE)は駐イラク大使
を本国に召還した。サウジも同調する動きで、マリキ政権は外交で
も厳しい局面に立たされいる。

このため、米軍制服組トップのデンプシー統合参謀本部議長は18
日、ISISの進撃阻止に向け、空爆を直ちに行うことは容易でないと
した。

このような経緯の後、オバマ米大統領は19日、ISISに対抗するた
めに最大300人の軍事顧問を派遣すると。

米軍がイラクに関する情報収集を強化したことも明らかにし、必要
な状況になれば「的を絞った、的確な軍事行動」を取ると述べた。
このため、100人規模の特殊部隊をイラクに派遣する方針を表明
する見通しだと伝えた。しかし、「米軍がイラクで再び戦うことは
ない」と強調した。

ペルシャ湾にいる空母と揚陸艦は、情報収集のための飛行をおこな
うためにいることになる。

また米国の軍事行動を認めるには、イラクのマリキ政権がまず、国
内で対立するイスラム教スンニ派とシーア派、クルド人の和解へ措
置を講じる必要があるとした。

しかし、イラク・シーア派の最高権威、シスターニ師は、イスラム
教の金曜礼拝に合わせて声明を発表し、「いま過激派組織と戦い、
駆逐しなければ手遅れになる」と述べ、武器を取って戦闘に参加し
、徹底抗戦するよう改めて呼びかたように、宗派対立を背景に戦闘
がさらに激化することが懸念される。

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が20日に発表した年次
報告書によると、イラクで今年、紛争により家を追われた避難民の
数は100万人を突破した。同国ではイスラム武装勢力と治安部隊
の戦闘が続いており、避難民の数はさらに増加する見込みだ。

ここにロシアが出てきた。プーチン大統領は21日、イラクのマリ
キ首相と電話会談し、ISISの攻勢にさらされている同国政権をあら
ゆる形で支援すると述べた。ロシアは友好関係にあるイランに同調
して中東地域での影響力拡大を図りたい考えだ。

1.チェイニー元副大統領の怒り
チェイニー元副大統領がオバマ大統領の中東政策に怒りの反論をし
ている。オバマ大統領は、イラクとアフガニスタンの戦争を「終わ
らせつつある」と言ったが、この大統領の言葉は今や現実の壁にぶ
つかり、粉々に砕け散っている。

大統領はイラクの平和実現を手助けするために、現地治安部隊の訓
練や情報収集を行う残存部隊を残す合意について交渉するだけでよ
かった。だが大統領はイラクを見捨て、米国は勝利目前で逆転負け
を喫したとチェイニーはいう。。

これは、2011年12月、米軍はイラクから撤退した。このとき
、ペンタゴンは少なくとも23000名の米兵をイラクに残留させ
るべきだとオバマ大統領に建言していた。
一時はアルカィーダを壊滅近くに追いやった駐イラク米軍司令官ジ
ョン・ケアネ退役大将は、「せっかく訓練したイラク兵も、まだ対
抗戦力として不十分であり、23000名の兵力を残存されるべき
」と大統領に進言したが「無視された」と発言している。のことで
ある。

前国防長官だったゲイツも回想録で「軍事にまったく理解のないオ
バマの決断は指導者レベルではない(無能に近い)」と酷評したこ
とも、この撤退のことである。

ISISの攻勢は、オバマ政権の「弱腰」に起因するものとして議論さ
れ、オバマ政権はこれに実効性ある対処策を講じられなければ決定
的に威信と影響力が低下してしまう可能性が高い。

このため、イラクと協力するという手を取ることにしてしまった。
これは、サウジに対する敵対行為になることである。オバマ政権の
外交が宗派間の戦いというセンスがなく、ハチャメチャになってい
くことが懸念される。どちらからも敵という状態になってしまう。

2.イラク紛争の解決には
クリストファ・ヒル氏は、プロジェクト・シンジケート誌「Iraq’s 
Sectarian Nightmare」で、米国のイラク占領政策でバース党のパー
ジを行ったことで、スンニ派が排除され、その人たちが分離派にな
ってしまったという。その対応策を考える必要が有るという。RTで
話した民族宗教毎に自治地域を作るというコソボ方式に比べて、大
人しくなったよう印象を受ける。

ソラナ欧州外相は、プロジェクト・シンジケート誌「The Middle East
 Balancing Act」で、イランとサウジが仲良くしないと、この地域
の問題は解決しないという。

それをしないと、池内さんが言うように、内戦はイラクにとどまら
ず、周辺の地域大国を巻き込んで複雑化しかねない。イランはシー
ア派の聖地や住民を守るためと称して公然と軍事介入・攪乱工作を
強めていくだろう。

宗教の教義を巡る争いというよりは、ペルシア湾岸を挟んでイラン
とサウジアラビアの地政学的な闘争がイラクを舞台に繰り広げられ
ている可能性もある。

ISISの活動や一定の領域実効支配が長期化・定着すれば、イラクと
シリアの国境・領土の一体性は致命的に損なわれ、中東の国境再編
という「パンドラの箱」が開きかねない。

そして、イランはそこに乗じて介入し、イランからイラク、シリア
、レバノンへと至る「シーア派の弧」に支配を広げるという帝国的
野心を高めるかもしれない。米国の覇権が衰退局面にあるという印
象がある中東において、そのような野心をイランが抱いたとしても
だれも驚かない。

米国の外交は、ライス補佐官になって、中国に優しくアジアで中国
の挑発が増えてしまい、中東ではスンニ派、シーア派の宗派間対立
を無視してしまうという大きな失敗をしている。

もう1つ、ロシアが乗り出してきた。聖書(予言)にゴクが出てく
る文言があり、ゴクとはロシアことであり、中東大戦争、最終戦争
の匂いも感じる。

さあ、どうなりますか?


参考資料:
Iraq’s Sectarian Nightmare
http://www.project-syndicate.org/commentary/christopher-r--hill-argues-that-sunni-arab-states-need-to-accept-the-reality-of-shia-majority-rule-in-iraq

The Middle East Balancing Act
http://www.project-syndicate.org/commentary/javier-solana-outlines-a-new-framework-for-resolving-the-region-s-many-conflicts

5043.イラク、国家分裂の危機
http://www.asahi-net.or.jp/~vb7y-td/260614.htm

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ロシアがマリキ政権支持 イランに同調、中東での影響力拡大狙う
2014.6.21 21:15sankei
 【モスクワ=遠藤良介】ロシアのプーチン大統領は21日までに
イラクのマリキ首相と電話会談し、イスラム教スンニ派の過激派組
織「イラク・レバントのイスラム国(ISIL)」の攻勢にさらさ
れている同国政権をあらゆる形で支援すると述べた。米国が、イラ
ク問題でマリキ政権の支援姿勢を強めるシーア派大国イランの協力
を仰ぐ可能性も視野に入れ、ロシアは友好関係にあるイランに同調
して中東地域での影響力拡大を図りたい考えだ。
 プーチン政権は、イランやシリアのアサド政権との関係堅持を中
東政策の基軸とし、米国に対抗してきた。イラクでシーア派主導の
政権が存続することは域内でのイランの「勢力圏」保持に不可欠で
あり、ISILはシリア内戦で反体制側に加わってもいる。
 露大統領府によると、プーチン氏は電話会談で「テロリストから
の国土解放に関し、イラク政府の努力を全面的に支持する」とマリ
キ氏に伝えた。
 米国主体の有志国は2003年、ロシアなどの反対を押し切って
対イラク開戦に踏みきり、プーチン政権に強い屈辱感を与えた。ラ
ブロフ露外相はISILの攻勢について、「米英による投機的行動
の完全な破綻を示している」と述べ、イラクの現状が軍事介入の帰
結であると批判した。
 ロシアはウクライナ情勢をめぐって米欧から追加制裁を科される
可能性に直面しており、イラク問題をさまざまな形で対米けん制の
材料とする公算が大きい。
 核開発問題で米欧との協議を続けるイランと、イラク情勢正常化
を目指す米国が接近するとの観測もロシアでは強い。米国がイラン
の協力を本格的に仰ぐ展開となれば、ロシアの対米発言力も強まる
ことが期待されている。プーチン政権はその半面、米欧が対イラン
制裁を緩和し、石油・天然ガスの調達先をロシアからイランに切り
替える事態を警戒してもいる。イランをめぐる米欧とロシアの駆け
引きは強まりそうだ。
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ISIL、シリアとの国境検問所制圧
2014.6.21 19:24sankei
 【カイロ=大内清】AP通信は21日、イスラム教スンニ派の過
激派組織「イラク・レバントのイスラム国(ISIL)」側に属す
るとみられる武装集団がイラク西部のシリア国境にあるカイム検問
所を攻撃し、検問所を制圧したと伝えた。この際の戦闘で、政府軍
兵士約30人が死亡した。
 検問所は現在、自由に往来できる状態になっているといい、IS
ILは、シリア側の支配地域から物資や戦闘員を調達するのがさら
に容易になった形だ。
 首都バグダッド北東のムクダディヤでも20日、治安部隊とIS
IL側の戦闘があり、治安部隊に加勢していたシーア派民兵30人
が死亡した。
 一方、シーア派最高権威のシスターニ師は20日、イラクの安定
に向け、シーア派とスンニ派双方が手を取り合うよう呼びかけたほ
か、スンニ派を含む挙国一致政府の樹立を求めた。
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イラク難民、100万人突破
2014.06.21 Sat posted at 10:22 JST
バグダッド(CNN) 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が
20日に発表した年次報告書によると、イラクで今年、紛争により
家を追われた避難民の数は100万人を突破した。同国ではイスラ
ム武装勢力と治安部隊の戦闘が続いており、避難民の数はさらに増
加する見込みだ。
報告書によると、世界の避難民、亡命希望者、国内避難民の数は、
第2次世界大戦以降初めて5000万人を突破した。この報告書は
2013年末時点のデータを基に作成された。
イラクではシリア内戦により家を追われたシリアからの難民の流入
が続いていたが、現在はイラク国内でも、イスラム武装勢力と治安
部隊の戦闘により、難民が増え続けている。
イスラム武装集団「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」に
掌握されたイラク第2の都市モスルでは先週、推定50万人が避難
した。イラクの赤十字国際委員会(ICRC)も20日、モスルで
は人口160万人のうち、これまでに約80万人が避難したと発表
した。また、今年初めからスンニ派武装勢力が占拠しているイラク
西部アンバル州からも、すでに50万人が避難している。
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イラク 宗派対立背景に戦闘激化の懸念
6月21日 4時42分NHK
イラクでは、政府軍とイスラム教スンニ派の過激派組織の攻防が各
地で続くなか、スンニ派と対立するシーア派の宗教指導者が武器を
取って徹底抗戦するよう改めて呼びかけ、宗派対立を背景に戦闘が
さらに激化することが懸念されます。
イラクでは、イスラム教スンニ派の過激派組織が北部にある第2の
都市モスルを占拠し、ほかの都市でも政府軍と散発的に衝突を続け
ています。
このうち、首都バグダッドから北に120キロのサマラ近郊では
20日、過激派組織が制圧した村に政府軍が攻撃を仕掛け、激しい
戦闘の末、この村を奪還したということです。
また、過激派組織が占拠している隣国シリアとの国境の町カイムで
も、激しい戦闘が続いていて、これまでに政府軍の兵士34人が死
亡したということです。
各地で政府軍と過激派組織の一進一退の攻防が続くなか、スンニ派
と対立するシーア派の最高権威、シスターニ師は、イスラム教の金
曜礼拝に合わせて声明を発表し、「いま過激派組織と戦い、駆逐し
なければ手遅れになる」と述べ、武器を取って戦闘に参加し、徹底
抗戦するよう改めて呼びかけました。
イラクでは人口で多数を占めるシーア派を中心に、政府軍に義勇兵
として参加する市民が続々と集まっていて、宗派対立を背景に戦闘
がさらに激化することが懸念されます。
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オバマ大統領、特殊部隊100人派遣を表明へ 「空爆は困難」の
見通し受け ISIL、「北部の製油施設制圧」と主張  
2014.6.20 01:12sankei
 【ワシントン=加納宏幸、エルサレム=大内清】AP通信は、オ
バマ大統領が19日に声明を発表し、イスラム教スンニ派の過激派
組織「イラク・レバントのイスラム国(ISIL)」に対抗するた
め、100人規模の特殊部隊をイラクに派遣する方針を表明する見
通しだと伝えた。
 特殊部隊はISILの進撃阻止に向け、イラク軍への助言、指導
や現地の情報収集を行うとみられる。
 これに先立ち、デンプシー米統合参謀本部議長は18日、上院の
公聴会で証言し、イラク政府から空爆要請があったことを確認した
上で、情報不足などを理由に、現時点での空爆は困難との認識を示
した。
 また、米メディアによると、オバマ氏は同日、ホワイトハウスで
の与野党議会指導者との会談の席上、無人機攻撃の可能性は排除し
なかったものの、有人機による空爆に踏み切る考えはないと明言し
たとされ、イラクへの軍事支援は当面、特殊部隊の投入が主体にな
るとみられている。
 イラク国営テレビによると、ISILの野戦司令官は19日、北
部バイジにある同国最大の製油施設を完全制圧したと語った。ただ
、イラク軍は「施設は掌握下にある」と主張している。一方、イラ
ク政府報道官は、イラク軍がISILに制圧された北部の要衝タル
アファルを近く奪還できるとの見通しを示した。
 国営テレビによると、イラクのマリキ首相は激戦地で戦うことを
志願した国民に月額75万デイナール(約6万4千円)を支払うと
表明した。
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米大統領がイラクへ軍事顧問最大300人派遣、的絞った軍事行動も
2014年 06月 20日 04:46 JST
[ワシントン 19日 ロイター] - オバマ米大統領は19日、イ
スラム教スンニ派の過激派組織が勢力を拡大しているイラクに対し
最大300人の軍事顧問を派遣するとともに、必要なら的を絞った
軍事行動を取る考えを示した。
大統領は国家安全保障チームとの協議後、ホワイトハウスで会見を
開き、「米軍がイラクで再び戦うことはない」と強調した。
米軍を大量投入しても問題は解決されないとし、「最終的にはイラ
ク国民が解決する必要がある」と指摘した。
軍事顧問はイラク治安部隊を支援するとともに、バグダッド、イラ
ク北部に共同作戦拠点を設置し、武装組織への攻撃で協力する。
米軍がイラクに関する情報収集を強化したことも明らかにし、必要
な状況になれば「的を絞った、的確な軍事行動」を取ると述べた。
また米国の軍事行動を認めるには、イラクのマリキ政権がまず、国
内で対立するイスラム教スンニ派とシーア派、クルド人の和解へ措
置を講じる必要があるとした。
ケリー国務長官は週末に中東、欧州を訪問し、地域の安定促進へ外
交努力を続けるとしている。
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寄稿】崩壊するオバマ大統領の外交政策=チェイニー元副大統領
By DICK CHENEY AND LIZ CHENEY
2014 年 6 月 18 日 19:40 JST WSJ
 イスラム教スンニ派の武装組織「イラク・シリアのイスラム国
(ISIS)」が多数のイラク人を虐殺しながら首都バグダッドに迫って
いる。ここでISISと国際テロ組織アルカイダに関するオバマ米大統
領の過去の発言を思い出してみるといい。「2軍の選手がレイカーズ
のユニホームを着たからといってコービー・ブライアントにはなれ
ない(2014年1月)」「アルカイダをひざまずかせ全滅した(13年8
月)」「ここではっきりさせておこう。戦争の潮は引きつつある(
11年9月)」
 米国の大統領がこれほど多大な犠牲を払い、これほど多くのこと
について誤った認識を抱いているのは珍しい。オバマ大統領があた
かも祈るかのように、イラクとアフガニスタンの戦争を「終わらせ
つつある」と何度言ったか数え切れない。大統領の言葉は今や現実
の壁にぶつかり、粉々に砕け散っている。かつて米国人の血によっ
て守られていた地域を黒装束のISIS兵士らが奪取していることが、
米国の敵が「全滅」していないことを示す決定的な証拠になる。テ
ロリストたちは勢いづき、攻撃を続けている。
 イラクのファルージャ、ティクリート、モスル、タルアファルが
攻略され、広範なアラブ世界にテロリストの安全な隠れ場所ができ
ることは、米国の安全保障にとって戦略上の脅威となる。ISISがイ
ラクで攻撃を開始する前後のオバマ大統領の行動がその脅威を増大
させている。
 今春中東を訪れた際、ペルシャ湾岸諸国やイスラエルの首都で「
貴国の大統領が何をしているのか説明してほしい」「なぜ大統領は
逃げ出そうとしているのか」「なぜ大統領はイラクで激戦の末に勝
ち取ったものを平気で放棄するのか」「なぜ大統領は敵と取引する
のか」と繰り返し聞かれた。
 あるアラブ諸国の首都では高官がシリアとイラクの地図を広げた。
高官はシリア北部のラッカ州からイラク西部のアンバル州まで弧を
描くように指を動かし、「彼らはこの地域を支配下に収めるだろう。
アルカイダはここで安全な隠れ場所と訓練所をつくっている。それ
で米国人は構わないのか」と語った。  
 オバマ大統領が気にしている様子はない。イラクがイスラム過激
派組織の手に落ちる恐れがある中で、気候変動問題について話して
いる。テロリストたちが史上最大規模の領土と資源を掌握している
中で、ゴルフに行っている。アルカイダの復活が米国にとって、は
っきりと目前にある危機だということに大統領は全く気付いていな
い、もしくは無関心なように見える。
 オバマ大統領が09年に就任した時、イラクのアルカイダはほぼ壊
滅状態だった。活動を活発化させるアルカイダに米軍が勇敢に立ち
向かったのが大きかった。大統領はイラクの平和実現を手助けする
ために、現地治安部隊の訓練や情報収集を行う残存部隊を残す合意
について交渉するだけでよかった。だが大統領はイラクを見捨て、
米国は勝利目前で逆転負けを喫した。
 現在、イラクで繰り広げられている悲劇はストーリーの一部にす
ぎない。アルカイダとその系列組織は世界中で勢いを盛り返してい
る。ランドが先に行った調査によると、世界のイスラム原理主義テ
ロ組織の数は10年から13年の間に58%増え、テロリストの数は倍増
した。
 こうした脅威を前にして、オバマ大統領は中東で米国の敵に力を
与えるのに忙しい。最初はシリア国内のロシア人。そして今はとて
も信じがたいことに、イランをイラクに招き入れようと考えている。
米国がイラク政策をめぐり、世界最大のテロ支援国であるイランに
譲歩すべきと考えるのは愚か者しかいない。
 オバマ大統領は、自身の政策がもたらす影響に意図的に目をつぶ
っている。大統領のイラク放棄を追い風に、中東各地で米国に対す
る脅威が広がっているにもかかわらず、アフガニスタンでも同じ政
策をとる意向を明らかにしている。
 米国の同盟国が絶望に陥り、敵国がほくそ笑む中、世界中で米国
のリーダーシップが強く求められているのは明白だ。にもかかわら
ず、オバマ大統領は米国の高慢の鼻をへし折ってから退任しようと
決めているように見える。実際に、テロリストがイラクの領土を奪
取するスピードは、米軍のイラク撤退のスピードと一致している。
 大統領は09年9月23日、国連総会での演説で自身の見解を説明し、
「いかなる世界秩序も、他国の上に一国が立つものでは長続きしな
い」と述べた。不幸にも、危険な政策を次々と打ち出し、米国が優
位に立たなければ世界秩序は保たれないことを早くも証明している。
 オバマ大統領とその支持者はいくつかの厳しい現実に直面する時
が来た。それは、米国はいまだに戦争中であり、敵が戦っている時
に戦場から軍隊を撤退させても戦争が「終わった」ことにはならな
いこと。米国の力の低下が暴力行為を誘発していること。世界から
の米国の離脱が災いを引き起こし、われわれの安全を危険にさらし
ていることだ。
 アルカイダとその系列組織は息を吹き返し、冷戦以来となる安全
保障上の脅威をもたらしている。こうした勢力に勝つために必要な
のは戦略であって幻想ではない。軍事、諜報活動、外交における困
難な努力の継続であって誤解を与える無意味な美辞麗句ではない。
米軍を弱体化させ、世界情勢に対する米国の影響力を低下させてい
るオバマ政策を転換し、米国の軍事力を立て直す必要がある。
 空虚な脅し、無意味なレッドライン(平和的解決から軍事的解決
へと移る一線)、後方からの指導、敵への歩み寄り、同盟国の放棄
、大国への謝罪はいずれもオバマ政策の特徴を示すものだが、これ
らによって米国の自由が守られることはない。米国と、世界の米国
の友人の安全は過去6年間の外交政策の抜本的な転換によってしか保
証されない。
 1983年に当時のレーガン大統領は「歴史から何か学べるとするな
らば、それは無邪気な妥協や敵に希望的観測を抱くのは愚行という
ことだ。すなわち過去に背き、自由を浪費することになる」と述べ
た。オバマ大統領は過去に背き、自由を浪費した男として名前を残
そうとしている。
(ディック・チェイニー氏は2001〜09年まで米副大統領を務めた。
長女のエリザベス・チェイニー氏は02〜04年と05〜06年に近東問題
担当の国務副次官補を務めた)
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イラク過激派の即時空爆は困難 米統合参謀本部議長
 【ワシントン共同】米軍制服組トップのデンプシー統合参謀本部
議長は18日、イラクのイスラム教スンニ派の過激派「イラク・シ
リアのイスラム国」の進撃阻止に向け、空爆を直ちに行うことは容
易でないとの考えを示した。上院の公聴会で証言し「過激派は(住
民らの間に)かなり入り込んでいる」として識別は難しいと述べた。
 米メディアは17日以降、標的を絞り込む十分な情報がないこと
などを理由にオバマ大統領は当面の空爆を見送る方針だと報道。デ
ンプシー氏の議会証言は、空爆に対するオバマ政権の消極姿勢を裏
付ける発言といえそうだ。
2014/06/19 10:43   【共同通信】
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米国に空爆を正式要請=実現は困難か−イラク
 【ドーハ時事】イラクのゼバリ外相は18日、イスラム教スンニ
派の過激派に対する空爆を米国に正式に要請したことを明らかにし
た。訪問先のサウジアラビアで記者団に語った。ただ、米国は空爆
に慎重な姿勢を崩していない。要請が受け入れられるかは不透明だ。
 ゼバリ外相は「(米イラク間の)安保協定に基づき、米政府にテ
ロ集団への空爆を実施するよう要請した」と述べた。米側も要請が
あったことを認めた。
 ただ、米国は標的となる過激派「イラク・シリアのイスラム国」
の情報を十分につかめていない。さらに、サウジなどがイラクのマ
リキ政権に対し、「(イスラム教シーア派中心の)排他的な宗派主
義」と反発を強めていることもあり、空爆には慎重だ。
 こうした中、アラブ首長国連邦(UAE)は駐イラク大使を本国
に召還した。サウジに同調する動きで、マリキ政権は外交でも厳し
い局面に立たされつつある。(2014/06/19-05:09)
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過激派が石油施設攻撃=イラク北部、タンク炎上
 【ドーハ時事】イラク北部バイジにある国内最大級の石油施設が
18日、イスラム教スンニ派の過激派「イラク・シリアのイスラム
国」とみられる武装集団による攻撃を受けた。石油製品の貯蔵タン
クの一部が炎上。施設内にいる関係者はロイター通信に対し、武装
集団が「製油所の75%」を管理下に置き、戦闘が続いていると述
べた。
 製油所を含む複合施設を襲撃した武装勢力は、生産関連施設や管
理棟のほか、監視塔4カ所を制圧。中央制御室近くで、治安要員と
の戦闘が続いている。施設からは巨大な黒煙が舞い上がり、施設の
従業員はAFP通信に、治安要員に犠牲者が出ていると語った。
(2014/06/18-20:55)
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「イラクとシャームのイスラーム国家(ISIS)」はイラク国家
を崩壊させるか - 池内恵
フォーサイト2014年06月16日 14:46
 6月10日にイラク北部モースルを、イスラーム主義過激派集団の「
イラクとシャームのイスラーム国家(ISIS)」が掌握した。I
SISの勢いは収まらず、南下して、バイジーやティクリートとい
ったイラク中部の主要都市を制圧し、首都バグダードに迫ろうとい
う勢いである。
 2003年のイラク戦争以後、テロが止まず不安定と混乱でぐずつく
イラク情勢だが、ISISの伸長が、全体構図に玉突き状に変更を
迫り、周辺諸国や地域大国を巻き込んだ内戦に発展する危険性があ
る。
「国際テロ組織」の範囲を超えた武装民兵組織
 ISISは「アル・カーイダ系の国際テロ組織」と通常形容され
るが、現在の活動はそのような形容の範囲を超えている。昨年3月に
はシリア北部の主要都市ラッカを制圧し、今年1月にはイラク西部ア
ンバール県のファッルージャを掌握、県都ラマーディーの多くも支
配下に置いていた。
 確かに組織の発端はイラク戦争でフセイン政権が倒れたのちの米
駐留軍に対抗する武装勢力の一つとして現れた「イラクのアル・カ
ーイダ」だった。しかしシリア内戦への介入をめぐって、ビン・ラ
ーディンやその後継者をもって任ずるアイマン・ザワーヒリーの「
アル・カーイダ中枢」とは対立し、袂を分かっている。
 自爆テロを多用する手法には共通している面があるが、それは手
段の一部であり、領域支配といったより大きな政治的野心を持つに
至っているようである。イラク北部・西部や、シリア東部での活動
ではテロを実行するだけでなく、内戦・紛争の混乱状況の中とはい
え、局地的に実効支配を試みている。所在を隠したテロ集団ではな
く、政治勢力の一角に場所を確保する存在となりつつある。
 ISISは組織としてのアル・カーイダの中枢とは、継続性や協
力関係を薄れさせているが、思想としてのアル・カーイダという意
味では、「正統」な発展形態といえる。
 アル・カーイダの理論家アブー・ムスアブ・アッ=スーリーは、
単発のテロで国際社会を恐怖に陥れる広報・宣伝戦を行うだけでな
く、アラブ諸国やイスラーム諸国の混乱が生じればより大規模に組
織化・武装化して領域支配を行う聖域(これをスーリーは「開放さ
れた戦線」と呼んだ【関連記事】)を作ることを提唱していた。長
引くイラクの混乱と、2011年以降の「アラブの春」は、潜在的な聖
域を各地に誕生させた。ISISがイラク西部と北部の機会をつか
み、一定期間でも聖域を確立して見せれば、世界のイスラーム主義
過激派の中で一気に威信を高めるだろう。
 また、今回のモースル占拠や各地の掌握は、ISISそのものが
強大化したというよりは、イラク中央政府とマーリキー首相に対す
る不満・不信・敵意を募らせた各地の勢力が、ISISと呼応して
膨れ上がった可能性がある。ISISがいかに戦闘能力が高いとは
言っても、このような短期間でここまで組織を拡大し、版図を広げ
ることは考えにくい。イラク中央政府への反発からISISの支配
に期待する民意が急激な伸長の背後にあるのではないか。モースル
をはじめ各地のイラク政府軍部隊が、司令官をはじめ平服に着替え
て逃走しているところから、中央政府の求心力が軍の中でも効いて
いない可能性がある。
イラク内戦の多層的なシナリオ
 イスラーム主義過激派による領域支配の出現という点だけでなく
、より多方面への影響が危惧される。ISISの伸長は、イラクの
諸勢力と周辺地域を巻き込んだ、幾層にも対立構図が交錯した本格
的な内戦に結びつき、それをきっかけとして地域秩序の再編につな
がるかもしれない。
 第1の要素が宗派紛争である。ISISは激しい反シーア派のイデ
オロギーを掲げており、シーア派が優位のイラク中央政府と激しく
対立するだけでなく、シーア派住民への攻撃を行いかねない。シー
ア派諸勢力がそれを座視しているとは考えられず、南部のシーア派
地域に侵攻、支配すれば激しい宗派対立をもたらすだろう。すでに
シーア派諸勢力の武装化・民兵化が呼びかけられている。イラク戦
争後に、「イラクのアル・カーイダ」を率いたアブー・ムスアブ・
ザルカーウィーが反シーア派のイデオロギーを宣揚し、2006年から
2008年にかけての激しい宗派紛争をもたらしたが、ISISはこれ
を再燃させかねない。
 また、マーリキー政権はISISを「テロリスト」として過剰な
攻撃を行いかねず、スンナ派地域への爆撃など、スンナ派住民全体
への報復と取られる手段がとられた場合、各地で武装蜂起が呼応す
るかもしれない。
 また、バグダードのような宗派混住地域では武装集団同士の衝突
やテロの応酬が生じかねない。
 第2の要素がクルド問題である。ISISの伸長はすでに、くすぶ
っていたクルド問題を劇的に動かしている。イラク北部のクルド人
地域では、1991年の湾岸戦争の際に反フセイン政権で蜂起が起こっ
たが鎮圧され、米国・英国による飛行禁止空域の設定でかろうじて
庇護されて、事実上の自治を行ってきた。2003年のフセイン政権崩
壊後は、イラク中央政府で大統領や外相など主要ポストを与えられ
つつ、北部3県(ドホーク、エルビール、スレイマーニーヤ)にクル
ディスターン地域政府を設立し、連邦的な枠組みの中での高度な自
治を法的にも確保した。しかしクルディスターン地域政府の管轄外
にもクルド人が多数を占め、歴史的にクルディスターンに帰属して
いると見なされている土地がある。代表的なのは大規模な油田を抱
えるキルクークである。
 モースルを含むニネヴェ県もクルド人とアラブ人が混住する。ク
ルディスターン地域で産出する原油の輸出収入の配分と共に、クル
ド人から見ればクルディスターンに属すると主張するこれらの地域
の帰属に関して、武力で決着をつける動きが進みかねない。
 現に、ISISのモースル掌握、イラク政府軍の北部からの撤退
を受けて、クルド人の武装組織ペシュメルガがキルクークを掌握し
たとされる。ISISに刺激され、政府軍の撤退の好機を受けて、
クルド勢力が軍事的に版図拡大に乗り出したことで、今後のイラク
中央政府との衝突が危惧される。
 構図はシリア北部・北東部と似ている。シリアではアサド政権に
対する武装蜂起が各地で行われ、政府軍がクルド人地域から撤退す
ると、反政府派とは一線を画したクルド勢力が各地を掌握し、自治
を行っている。政府側と反政府側のどちらからも距離を置いて「漁
夫の利」を狙うクルド勢力は、紛争の次の段階においては逆に諸勢
力から追及されかねない。
イスラーム主義の聖域か、シーア派の弧か
 第3の要素が内戦の国際化と地域秩序の再編である。内戦はイラク
にとどまらず、周辺の地域大国を巻き込んで複雑化しかねない。イ
ランはシーア派の聖地や住民を守るためと称して公然と軍事介入・
攪乱工作を強めていくだろう。宗教の教義を巡る争いというよりは
、ペルシア湾岸を挟んでイランとサウジアラビアの地政学的な闘争
がイラクを舞台に繰り広げられているという構図だ。イラク内外の
諸勢力が、イランとサウジアラビアの代理戦争に動員されることで
、状況は一層複雑化し、収拾がつかなくなる可能性がある。
 ISISはイラクとシリアの双方に拠点を持ち、往復しながら勢
力を拡大させた。ISISの活動や一定の領域実効支配が長期化・
定着すれば、イラクとシリアの国境・領土の一体性は致命的に損な
われる。中東の国境再編という「パンドラの箱」が開きかねない。
そして、イランはそこに乗じて介入し、イランからイラク、シリア
、レバノンへと至る「シーア派の弧」に支配を広げるという帝国的
野心を高めるかもしれない。米国の覇権が衰退局面にあるという印
象が広まっている中東においては、そのような野心をイランが抱い
たとしてもだれも驚かないだろう。
 ISISはイラクとシリアにイスラーム主義過激派の聖域を成立
させるのか。あるいはそれに乗じてイランはシーア派の弧を拡張し
て飲み込むのか。その間隙を縫ってクルド勢力が悲願の支配地域拡
大を果たすのか。
 影響は地域内にとどまらない。モースルやファッルージャといっ
たイラクの北部や中部の治安の流動化は、米国にとっても意味は大
きい。ブッシュ政権時代の後半に、ペトレイアス将軍による「サー
ジ(増派攻勢)」でテロリストを掃討して「平定」したことで、イ
ラク戦争を「成功」とみなして撤退する根拠となったが、米国がか
ろうじて確保したイラクでの成果を、ISISの攻勢は一掃してし
まった。米国の世論に与える衝撃は大きい。短期的にはそれはオバ
マ政権の「弱腰」に起因するものとして米国の内政上は議論される
だろうし、オバマ政権にとってはこれに実効性ある対処策を講じら
れなければ決定的に威信と影響力が低下してしまう。地上軍の派遣
はあり得ないが、ドローン(無人飛行機)による攻撃などで参戦し
、一層複雑化する可能性もある。
 ISISそのものは、その過酷な統治のスタイルや計画性のない
行動などから、領域支配を長期的に持続し拡大することはできない
かもしれない。しかしISISの伸長が、危ういバランスによって
かろうじて保たれていたイラクの領域主権国家というフィクション
を突き崩し、解体・雲散霧消させるきっかけとなるかもしれない。
(池内恵)
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イラク最大の製油施設が操業停止、外国人スタッフも退避
2014年 06月 17日 19:44 JST
[ティクリート(イラク) 17日 ロイター] - イラクのバイジ
にある同国最大の製油施設が操業を停止し、外国人スタッフも退避
したと、同施設関係者が17日に明らかにした。地元スタッフは現
場にとどまっているほか、軍が施設を依然掌握しているという。
イラク第2の都市モスルを先週制圧したアルカイダ系の武装勢力が
製油拠点バイジに進撃し、製油施設を包囲している。
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イラク、首都北方で攻防=クルド首相「スンニ派に自治権を」
 【エルサレム時事】イラクの首都バグダッドに向けて南下を続け
るイスラム教スンニ派の過激派「イラク・シリアのイスラム国」は
17日、首都北方約60キロのバクバ中心部でイラク軍と衝突した。
AFP通信によると、過激派はバクバの一部を一時制圧したが、軍
部隊が撃退したという。
 今回の戦闘は、「イスラム国」がイラクで攻勢を強め始めた9日
以降で最も首都に近く、マリキ政権は過激派の首都接近を食い止め
るのに必死だ。
 過激派は、マリキ政権下で冷遇されてきたスンニ派住民の感情に
つけ込む形で北部で支配を拡大。米国などは事態打開に向け、スン
ニ派や、同様に政府と緊張関係にあるクルド人と和解するようマリ
キ首相に迫っているが、首相は過激派掃討作戦を優先させている。
 北部3県を統治しているクルド自治政府のバルザニ首相は17日
、英BBC放送のインタビューで、イラクが以前の状態に戻ること
は「ほぼ不可能だ」と語った。スンニ派にクルド人と同様の自治権
を付与するなど政治的解決が必要だと強調。また、マリキ氏が首相
の座にとどまったままでは現状打開は難しいと主張した。
(2014/06/17-23:49)
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イラク空軍、武装集団を空爆 200人以上死亡か
2014.06.17 Tue posted at 11:31 JST
(CNN) イラク国営テレビは16日、武装集団「イラク・シリア
・イスラム国(ISIS)」の戦闘員を乗せた15台の車列をイラ
ク空軍が空爆したと伝えた。車列は北部のモスルからバイジに向け
て南下していたという。
これとは別に、空軍は中部ファルージャ北西でISISを空爆し、
武装集団の200人あまりを殺害したと伝えている。
一方、16日には武装集団が5人の人質を尋問し、殺害を予告する
場面の画像や、イラク軍の制服を着た男性の射殺された遺体を映し
たと思われる映像が新たに公開された。
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イラク情勢、米国とイランが直接協議 対ISISで協力
ワシントン=奥寺淳2014年6月17日13時45分asahi
 緊迫するイラク情勢をめぐり、米国とイランの外交団が16日、
直接協議した。米国務省によると、アルカイダ系武装組織「イラク
・シリア・イスラム国(ISIS)」の脅威に対抗するための協力
について話し合った。協力の詳細は明らかになっていないが、「軍
事協力やイラクの将来にかかわる戦略的な問題は含まない」(国務
省当局者)という。
 米・イランの直接協議は、イランの核問題をめぐる米欧などとの
協議が始まったウィーンで実現した。国務省当局者によると、核協
議とは別に短時間話し合いがもたれた。イスラム教シーア派が国教
のイランは、同じくシーア派のイラク・マリキ政権と近い。シーア
派を敵対視するISISはイランにとっても脅威であり、この点で
米・イランの利害は一致している。
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輸送揚陸艦、ペルシャ湾に=イラク情勢に対応−米軍
 【ワシントン時事】米国防総省は16日、ヘーゲル国防長官の命
令を受け、輸送揚陸艦「メサベルデ」がペルシャ湾に展開したと発
表した。ペルシャ湾では既に、空母「ジョージ・H・W・ブッシュ
」と僚艦2隻が即応態勢に入っている。
 メサベルデには、海兵隊員約550人が乗艦。垂直離着陸輸送機
オスプレイも搭載しており、大使館など米施設の防護や、米国民の
救出・退避作戦の拠点として利用できる。(2014/06/16-22:14)
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イラク軍事介入に警告=イラン
 【テヘランAFP=時事】イラン外務省報道官は15日、隣国イ
ラクの情勢について「外国によるいかなる軍事介入」も状況を複雑
化させるだけだと警告した。イラン学生通信(ISNA)が伝えた。
 報道官は「イラクはテロや過激派と戦う能力も必要な準備も兼ね
備えている」と指摘。「状況を複雑にする行動は、イラクや中東の
ためにならない」とペルシャ湾に空母を派遣した米国をけん制した。
(2014/06/16-12:10)
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イラク、過激派が北部都市制圧 軍と一進一退の攻防
 【カイロ、テヘラン共同】イラクからの報道によると、同国北部
から首都バグダッドに向けて進撃するイスラム教スンニ派の過激派
「イラク・シリアのイスラム国」は15日、イラク軍との激しい戦
闘の末、北部タルアファルを制圧した。同市は第2の都市モスル西
方にあり、双方に多数の死傷者が出たもようだ。
 イラクでは、反転攻勢を狙う軍が北部の主要都市ティクリートな
どで空爆を実施、過激派との一進一退の攻防が激しさを増している。
「イスラム国」は10日にモスルを制圧、シーア派とスンニ派が混
在するタルアファルに15日未明に侵攻し、戦闘が始まった。
2014/06/16 09:59   【共同通信】
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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
平成26(2014)年6月17日(火曜日)弐
     通巻第4269号 
「いまさら何の批判か」だが、米国議会、ペンタゴンが一斉にオバ
マ非難大合唱
  イラクにテロリストを蔓延させ、次の911を準備させるのか
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 ISIL(新聞によってはISIS)がイラク北西部を軍事制圧
し、クルド族は油田地域を事実上の自治区へ編入して治めはじめ、
モスルを抑えた武装勢力は南下を続けて、ついにはバグダッド侵攻
を窺う。
あたかもベトナム戦争以後、米軍が引き上げてベトコンの大攻勢が
あり、サイゴンは陥落した。
あの悪夢が再びバグダッドに蘇るのか?
 バグダッドの米大使館は保安要員をのぞいて南部バスラへとすで
に撤退した。
 これは何を意味するか? 武装勢力がマリキ政権を脅かし、バグ
ダッド陥落もありうると考えているからではないのか。
 げんに米国ではオバマ政権の無能を批判する勢力が日増しに勢い
を増し、共和党のリンゼイ・グラハム上院議員などは「このままテ
ロリストの跳梁跋扈を許せば、次の911を彼らに準備させること
になる」とオバマ大統領を批判した。
 ペンタゴン(国防総省)は表だった批判をひかえるものの、前国
防長官だったゲイツは回想録で「軍事にまったく理解のないオバマ
の決断は指導者レベルではない(無能に近い)」と酷評したことは
記憶に新しい。
 2011年12月、米軍はイラクから撤退した。
このとき、ペンタゴンは少なくとも23000名の米兵をイラクに
残留させるべきだとオバマ大統領に建言していた。
 2007年のピンポイント作戦を指導し、一時はアルカィーダを
壊滅近くに追いやった時の駐イラク米軍司令官ジョン・ケアネ退役
大将は、「せっかく訓練したイラク兵も、まだ対抗戦力として不十
分であり、23000名の兵力を残存されるべき」と大統領に進言
したが「無視された」と発言している(ワシントンタイムズ、6月16日)。
 2011年撤退時の駐イラク司令官はロイド・オースチン三世。
現在、彼は中央軍司令官として、空母のイラク沖展開に関わってい
るが、同様の姿勢と言われる。



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