5044.ソロスのファンドが年金積立金を食い尽くす



ソロスのファンドが年金積立金を食い尽くす  
  ―7〜9月に活動開始―  
                   2014年5月8日 
DOMOTO 
http://blogs.yahoo.co.jp/bluesea735 
                    
【目次】 
【1】 年金積立金とジョージ・ソロス 
【2】 ソロスのアジア・ヘッジファンド 
【3】 プレイアドの投資戦略 
【結】「日本売り」とヘッジファンド 

◆【この投稿記事は5月に作成したものに、【結】(結語)を加筆
したものです】 

    【1】 年金積立金とジョージ・ソロス 
英エコノミスト誌によれば、ジョージ・ソロスは2014年1月22日、
ダボス会議で安倍首相と短時間の会談をし、「日本の巨大なGPIF
(年金積立金管理運用独立行政法人)はもっと大きいリスクを取る
必要があった」とおどしつけた(“hectored”)そうだ。GPIF
は世界最大の年金基金である。 

Risk on ― Japan’s pension giant ? (2014/03/15 Economist) 
http://www.economist.com/news/finance-and-economics/21599056-worlds-largest-pension-fund-changing-way-it-invests-big 

日本の年金基金:リスクを取り始めた巨大基金 (2014/03/20 邦訳版:JPpress) 
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/40220 

これはソロスが、2013年から安倍政権が変更の見直しを進めている
GPIFの資産運用について、国債売却と株式購入の速度をもっと
速め、もっと大きいリスクをとるように安倍首相に迫っていたこと
を伝えたものだ。「GPIFは、ポートフォリオの中で日本国債のウエ
ートを2013年3月の62%から2013年末に55%まで減らし、減らした分
のほとんど―約8兆円―を代わりに日本株と外国株に投資している。
」(JPpress) 

4月22日、田村厚生労働相はGPIF 運用委員会の委員7人を任命
した。「うち3人は国内債中心の運用見直しなどを提言した有識者
会議のメンバーで、安倍晋三内閣が求めるGPIFの資産配分と組
織の改革が加速する可能性がある」(4月22日ブルームバーグ)。 

この人事でGPIFの運用委員を退任した慶應大学大学院の小幡績
准教授は、ほぼ全員を入れ替えたこの人選の基準は、「改革に積極
的な人、株式投資に積極的な人を入れた」と「BLOGOS」のブログで
述べている。 

この人選発表の前日、ジョージ・ソロスが香港を拠点とした、日本
と中国をフォーカスするヘッジファンドを立ち上げたことを、ロイ
ターとブルームバーグが伝えていた。人選の情報を、いち早くソロ
スが入手していたことは想像に難くない。それは麻生太郎財務相の
発言から推測できる。 

Former Soros team to start $150 mln Hong Kong-based hedge fund 4月21日 ロイター 
http://uk.reuters.com/article/2014/04/21/hedgefunds-asia-pleiad-idUKL3N0NC0MP20140421 

HS Group Backs Ex-Soros Specialists for New Asia Hedge Fund 4月21日 ブルームバーグ 
http://www.bloomberg.com/news/2014-04-21/hs-group-backs-former-soros-specialists-for-new-asia-hedge-fund.html 

麻生太郎財務・金融相は4月16日の衆院財務金融委員会で、6月の
成長戦略改定で、GPIFの運用の在り方が議論されることになっ
ていることを踏まえ、「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF
)の動きが6月にも出てくると、外国人投資家が動く可能性が高く
なる」と述べている(4月18日ロイター)。 

GPIFは今年6月までに公表される年金の財政検証の結果を受け
て、資産構成の修正・見直しを始める(4月16日日経)。 

財務相、GPIF「動き6月に出てくると海外投資家が動く」 (4月16日 日経) 
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFL160II_W4A410C1000000/ 

ソロスが新しくヘッジファンドを立ち上げるのは、今年の「第三四
半期」である7〜9月(ロイター英語版)。投機筋の本当の恐ろし
さを知らない麻生財務相や安倍首相が期待する6月以降の株式相場
に、ソロスのヘッジファンド立ち上げは時間的にピッタリと間に合
う。 

今年1月のダボス会議で安倍首相に、「GPIFはもっと大きいリ
スクを取る必要がある」と強く求めたソロスの計画は順調に見える。 

    【2】 ソロスのアジア・ヘッジファンド 
前出のロイターとブルームバーグの記事をもとに、主に日本と中国
を標的とした、ソロスが新しく立ち上げるヘッジファンドの概要を
まとめてみた。 

ジョージ・ソロスの「ソロス・ファンド・マネージメント」のアジ
ア・チームの元(もと)投資策定幹部(investment executives)で
あるケネス・リーとマイケル・ヨシノが、今年の第三四半期(7〜
9月)に、香港を拠点とするヘッジファンドを立ち上げる。ファン
ドの名称は「プレイアド・インベストメント・アドバイザーズ」
(“Pleiad Investment Advisors”)。 

4月21日のブルームバーグでは、「ソロス・ファンド」の中国と日
本のスペシャリスト達によって設立された「プレイアド」が、アジ
ア全域を対象としていると伝えているが、ロイターでは4月21日・
24日の両記事で、「プレイアド」は中国と日本に(当然)焦点を合
わせるだろうとしている(“is expected to”)。 

「プレイアド」は「ソロス・ファンド・マネージメント」からスピ
ンアウトしたヘッジファンド。つまり「ソロス・ファンド」の一部
門であるアジア・チームを、外部からの資本導入により独立させて
別会社にした(主にHSグループからの資本導入;後述)。 

この「プレイアド」はジョージ・ソロスのヘッジファンドである。 
ヘッジファンド業界で10万人以上のプロフェッショナルのネットワー
クを持つ「ヘッジファンド・グループ」(米国)のウェブサイトで
は、「プレイアド」を「ソロスのアジア・ヘッジファンド」である
とし、「ソロス・ファンド・マネージメントは、香港を拠点にした
ヘッジファンドを立ち上げている」と見出しで扱っている。 

Pleiad Investment Advisors | Hedge Fund Group Association 
http://hedgefundgroup.org/tag/pleiad-investment-advisors 

初期資本金は1億5000万ドル(約154億円)を下らないとされ、
今年のアジア地域でのヘッジファンドの立ち上げとしては最大規模
の一つ。 
潜在的な資産運用能力は15億?20億ドル。この潜在運用能力は、
あくまでも「プレイアド」に大半の資金供給をしたHSグループの
最高投資責任者(CIO)であるギャロウ氏が、ブルームバーグの
電話インタビューで答えた数字だ。 

HSグループは2013年にブラックストーン・グループ出身のマイケ
ル・ギャロウ氏とゴールドマン・サックス・グループ出身のヨハネ
ス・カプス氏が、アジアでの新興ヘッジファンドの立ち上げに長期
資金を提供する目的で、2013年に設立した企業。 

そしてロイターの4月24日の続報では、「プレイアド」は7月〜9
月の立ち上げ準備のために、ゴールドマン・サックスのプライム・
ブローカレッジ業務の重役ビエンチウを最高財務責任者(CFO)
として雇ったと報じている(ビエンチウは4月にゴールドマンを退
職している)。 

Pleiad Investment Advisors, a hedge fund spin-out from Soros
 Fund Management, has hired former Goldman Sachs prime brokerage 
executive Vien Chiu as its chief financial officer, 
as it prepares to launch in the third quarter of 2014. 

Soros Asia hedge fund spin-out hires ex-Goldman exec as CFO 4月24日 ロイター 
http://www.reuters.com/article/2014/04/25/pleiad-goldman-idUSL3N0NH0VG20140425 

    【3】 プレイアドの投資戦略 
4月24日の方のロイター記事では、「プレイアド」はロング・アンド
・ショートの株式ヘッジファンドであろうと書かれている(※ ロン
グは買い、ショートは売り)。 

Pleiad, …, is expected to launch a long/short equities hedge 
fund with a focus on China and Japan … 

このことを更に説明した箇所が4月21日のブルームバーグの記事の方
にあり、「プレイアド」は<空売り>を含めた「全天候型戦略」をと
ると、元ブラックストーンのギャロウ氏は説明している。 

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Pleiad will maintain a “moderate” net exposure, the difference 
between long and short investments, said Garrow, setting it 
apart from the typical long-biased Asian equities fund 
that makes most of its money in a rising market. Shorting involves 
selling borrowed stocks, betting on their prices to decline. 
“We think it’s an all-weather strategy,” Garrow said. 

「プレイアドは「中程度」のネット・エクスポージャーを維持する
だろう。ネット・エクスポージャーとはロングポジションとショー
トポジションの差額。プレイアドは、上昇相場でその大部分を儲け
る標準的な買いに偏ったアジアの株式ファンドとは異なる。」とギ
ャロウ氏は言った。ショーティング(売り)は、値下がりする株価
に賭けるために借りた株式を売ることが含まれる(◆訳注-これは
「空売り」のことを指している)。 
「私たちは、(プレイアドは)全天候型戦略をとると考えている。
」とギャロウ氏は言った。 

HS Group Backs Ex-Soros Specialists for New Asia Hedge Fund(4月21日 ブルームバーグ) 
http://www.bloomberg.com/news/2014-04-21/hs-group-backs-former-soros-specialists-for-new-asia-hedge-fund.html 
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今年に入り日経や一部週刊誌で、ソロスが日本株を売り仕掛けてい
るといううわさ記事が掲載されたが、実際にその売却の一部が確認
されている。 

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「今年1月の日本株の急落場面では、『ソロス氏が売りに回った』
といううわさが世界の金融市場を駆け巡ったが、米証券取引委員会
に提出した2013年10?12月期の報告書から、この期にソロス氏が日本
株の売りに転じた事実が浮かぶ。」(下記記事の一部を要約) 

「日本株を売ったソロス・ファンド、世界景気減速を先読み」(2014/02/20 日経) 
http://www.asyura2.com/14/hasan85/msg/750.html 
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ソロスは、2013年4月の、日銀の黒田総裁による「異次元緩和」発
表の直後、「円は雪崩のように下落するかもしれない」と米国メデ
ィアのインタビューで答えていた。あるブログで、「ソロスの予測
は外れたじゃないか」という記事を読んだが、ソロスの予測が外れ
たのは、翌月5月22日のバーナンキ元FRB議長のQE縮小示唆の発
言、それに続く秋の米国のデフォルト騒動、新興国の経済不安、ウ
クライナ情勢などの海外要因が大きく影響している。 

    【結】 「日本売り」とヘッジファンド  
ギャロウ氏が短く答えた「全天候型戦略」ですが、この言葉は意味
深長であり、ただ単に株式市場の下げ相場のなかで最大限の利益を
獲得するという意味だけではないと考えます。 

「国債先物売り+株先物買い」とその反対売買の「国債先物買い+
株先物売り」は海外投機筋がよく使う方法で、彼らはそれらを交互
に仕掛け、そしてそれに「円」の売り買いを組み合わせて攻めてく
ると予想します。 

以下の2つの記事は4月24日の私の記事「円の動きは国債暴落の最初
の兆候になる」を、後からブログで2回分にして掲載しています。 

円の動きは国債暴落の最初の兆候になるーカイル・バスのインタビ
ューから(米CNBC)ー 
http://blogs.yahoo.co.jp/bluesea735/38696706.html 

『国債市場は先物から崩れる』ーヘッジファンドの「日本売り」は
いつ来るかー 
http://blogs.yahoo.co.jp/bluesea735/38741141.html 

この2つの記事は、ジョージ・ソロスやカイル・バス、レイ・ダリオ
などの「日本売り」ヘッジファンドが、どのように「池の中のクジ
ラ」と呼ばれる黒田日銀に戦いを仕掛けてくるのかを、<円相場と
国債>の角度から考えています。 

いわゆる「日本売り」をソロスがどのように仕掛けてくるのかを考
えるのに、ご参考になると思います。 
      (了) 


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