5043.イラク、国家分裂の危機



イラクにシリアのスンニ過激派武装集団が攻めて来た。シーア派政
府であるマリキ政権は、この攻撃に脆弱であり首都の近郊まで侵略
されている。この検討をする。  津田より

0.経緯
米CNN-TVを見ていると、多くの時間をイラクでのISISの攻勢に
割いている。それだけ、米国にとっては、イラク戦争での後処理が
大変であることを実感しているのであろう。

イスラム教スンニ派の過激派「イラク・レバントのイスラム国(I
SIS)」は、イラク第2の都市モスルを10日に制圧し、この時
イラク政府の警官や治安部隊が持ち場を捨てて逃げたと伝えられる。
イラク治安部隊の士気が低いことを示している。

石油生産の中心地であるキルクークからもイラク治安部隊が撤退し
たので、クルド族自治政府の部隊が把握した。クルド族自治政府は
クルド人が多く暮らす北部3州を統治する。治安部隊も独自に持っ
ている。

そして、モスルでISISによる支配を恐れ、人口の4分の1に相
当する50万人規模の主にクルド人住民が40キロ東にあるクルド
族自治政府の首都であるアルビールへ脱出。モスルにあるトルコ領
事館では、外交官ら48人がISISに身柄を拘束された。

ISISは、首都バクダッドに向けて進軍し11日にはティクリー
トを制圧、サマラを迂回し12日、新たに首都北方90キロの町ド
ゥルイアを制圧した。13日にはバグダッドの約60キロ北方バク
バ郊外でシーア派民兵組織と衝突した。

ISISは、モスルを含む北部ニナワ州全体に加え、北部サラハデ
ィン、キルクーク両州、西部アンバル州の多くの地域を制圧。バク
バを支配下に置けば、一気にバグダッドの安定が脅かされることに
なる。

そして、13日、首都バグダッドの北約110キロにあるサマラに
も侵攻し、政府軍との間で激戦になっている。サマラは、シーア派
の聖廟せいびょうがある人口約30万人の拠点都市であり、シーア
派民兵とイラク治安部隊がISISの攻撃を防いでいる。

1.マリキ政権の防衛は
このような状況で、イラクのシーア派最高権威シスタニ師は、金曜
礼拝で「神聖な目的達成のため、志願して治安部隊に参加せよ」と
訴え、シーア派信徒に決起を呼び掛けた。同時にイランにも支援を
要請し、イラン革命防衛隊もシーア派イラクを救うために出てくる
ことになる。というより、既にイランの革命防衛隊がイラクの各地
の民兵組織に入り込んでいる。

例えば、既にイラク南部の港湾都市バスラは、革命防衛隊の手中に
収まり、革命防衛隊が治安を取り仕切っていると言われている。

そして、イラクの中南部のサマラも、イランの革命防衛隊が抑えて
いるということに加え、実は首都バグダッド市も、そうだというの
だ。

事実、イランのロウハニ大統領は12日、イラク情勢について「過
激派が残虐な動きを見せている。容認できない」と表明し、支援す
る考えを表明している。

また、マリキ首相は、米国に無人機による空爆の支援を要請してい
る。これに対して、オバマ米大統領は13日、イスラム過激派が攻
勢を強めるイラク情勢は「米国の国益も脅かし得る」と述べ、数日
内に対応策を決めると明言した。一方、米軍部隊の派遣は選択肢に
ないと改めて表明した。

支援条件はシーアとスンニの宗派間の融和を図ることというのであ
るが、イラン革命防衛隊を呼ぶなということであろうが、既に秘密
裏にイラクのマリキ政権は行なっている。

米国の支援を受けて、イラクのマリキ首相は13日、サマラを訪れ
、首都攻防戦に備えて防御態勢を強化したことを明らかにし、かつ
「(治安部隊が)全ての都市からテロリストを排除する作戦に着手
した」と述べ、都市奪還を宣言した。

CNNを見ていると、バクダッドには巨大な街のような3000名以上
の要員を抱える米国大使館があり、その内部を見せている。電気か
ら水までをこの街に供給する設備を備えている。このため、大使館
街内にはオリンピック仕様のプールまである。オバマ大統領が言う
「米国の国益も脅かし得る」とは、この米国大使館のことであろう。

2.イラクの現状
イラクは7割のアラブ人と2割のクルド人であり、アラブ人ではシ
ーア派が60%、30%がスンニ派である。クルド人はスンニ派で
ある。

スンニ過激派の攻勢の背景には宗派対立がある。イスラム教シーア
派中心のマリキ政権に対し、少数派のスンニ派は冷遇されていると
の不満が強い。急増するテロが両派の対立をあおり、過激派の暗躍
を許している。

もう1つが、マリキ政権とクルド自治政府との緊張もある。マリキ
政権は原油輸出を巡り、クルド人による北部の自治政府とぎくしゃ
くしている。このため、クルド部隊は油田都市キルクークを掌握し
た。

そして、クルド議会のユセフ・ムハンマド議長は、12日の記者会
見で「キルクークはクルド地区の一部だ。妥協はしない」と述べ、
キルクークを中央政府に返す意思がないことを示唆した。

スンニ過激派の勢力拡大は、シリア内戦の結果だ。シリアでアサド
政権と戦う反体制派に、サウジアラビアなどの湾岸諸国が資金を送
り、トルコはシリアとの国境で戦闘員の行き来を黙認した。野放し
の援助の一部は、イラクで戦う過激派に流れている。

このことから、イランのシーア派とサウジや湾岸諸国のスンニ派の
代理戦争がシリアからイラクまでに拡大したとも言えることになる。

3.米国の評論家の意見
ナショナル・インタレスト誌に「Can Iraq Survive?」が載っている
が、イラクは、米国の希望である民主化も欧米的な国家にもできな
いということに明らかになったという。オバマのやる気なしの外交
で、イラク戦争に戦死者も多く、戦費80兆円も使ったが、無駄に
なったとマケインやネオコンは怒っている。

この原因は、イラクが統一国家としてのまとまりがないことで、こ
れはイラクだけではなく、バーレーンやシリア、その他多くの中東
諸国でも同じで、スンニ派とシーア派が混在していることによる。

このイラクが問題なのは、米国が確立したシーア派政権に対して、
今までエリートであったスンニ派の人たちが冷遇されていることに
対する不満があることで、クルド自治政府と同じようなスンニ派地
域を国と同じレベルの組織にするしか解決方法がないという。

今までの概念を変えるしかないという。過激派に軍隊を使うことで
はなく、マキリ首相も含めて概念を変えることであると主張する。

フォーリン・ポリシー誌に「The Battle for Iraq Is a Saudi War 
on Iran」が載っている。サウジの影響力が大きく、ISISの動き
は、サウジ情報部との連携があるという。シリアでもイラクでもイ
ラン革命防衛隊がその中心で活躍しているので、これはイランとサ
ウジの代理戦争化しているようである。

同じくフォーリン・ポリシー誌に「Iraq War III Has Now Begun」
によると、ISIS自体が、イラク人が主導する軍であり、2014年
パキスタンのリーダになったアルカイダから独立した組織だ。IS
ISのリーダは、西モスルを支配していたアブ・バクール・アルバ
グダジの配下にいた。モスルは、イラクのスンニ派の経済・政治の
中心であり、そこには大きな利点がある。

このシリアとイラクはもともとは同じ地域であり、サイクス・ピコ
協定により、イラクはオスマン帝国から分割され、フランスとイギ
リスの勢力下に治められた。この時、英国とフランスの都合でイラ
クとシリアを分けたのであるが、それが無効になるようである。

4.今後の動き
米国は、シーア派マキリ首相を助けて、無人機の空爆を行うことに
なるようだ。実を言うと、首都防衛にもイラン革命防衛隊が主要な
役割をになってイラク治安部隊は役に立たない。このため、米国人
が、2万人もいるバクダッド防衛が米国にとっても重要なのである。

しかし、それだけでは、イラクの不安定な状態は解決しないので、
イラクをスンニ派自治政府とクルド自治政府、シーア自治政府の連
邦化するしかないと思うが、これをするとキルクークの石油がシー
ア自治政府ではなくなり、マリキ政権の支配が効かなくなる。

このため、マリキ首相は反対すると思う。しかし、それがうまくい
かないと、当分、この地域は戦争状態になる。そして、シーア派イ
ランとスンニ派サウジの代理戦争が続くことになる。

さあ、どうなりますか?

参考資料:
Can Iraq Survive?
http://nationalinterest.org/commentary/can-iraq-survive-9703

The Battle for Iraq Is a Saudi War on Iran
http://www.foreignpolicy.com/articles/2014/06/12/iraq_mosul_isis_sunni_shiite_divide_iran_saudi_arabia_syria

Iraq War III Has Now Begun
http://www.foreignpolicy.com/articles/2014/06/11/iraq_war_iii_has_now_begun_mosul_isis_takeover

5041.イラク・シリアのアルカイダ武装勢力が攻勢
http://www.asahi-net.or.jp/~vb7y-td/260612.htm

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「過激派排除」へ都市奪還宣言=首相が治安部隊鼓舞−イラク
 【カイロ時事】イスラム過激派が攻勢を強めるイラクのマリキ首
相は13日、首都バグダッドの北方120キロに位置するサマラを
訪れ、「(治安部隊が)全ての都市からテロリストを排除する作戦
に着手した」と述べ、都市奪還を宣言した。AFP通信などが伝え
た。
 サマラ周辺では、イスラム教スンニ派の過激派「イラク・シリア
のイスラム国」が治安部隊やシーア派民兵などと戦闘を繰り広げて
いる。こうした中での首相訪問には、劣勢が続く治安部隊を鼓舞す
る狙いがあったとみられる。(2014/06/14-07:44)
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イラク 宗教指導者呼びかけで戦闘激化も
6月14日 5時32分NHK
イラクでは、国際テロ組織アルカイダ系のイスラム教スンニ派の過
激派組織が首都バグダッドに向けて南下しているのに対し、スンニ
派と対立するシーア派の最高権威が武器を取って戦闘に参加するよ
う支持者に呼びかけ、戦闘がさらに激しくなることが懸念されてい
ます。
イラクでは、国際テロ組織アルカイダの流れをくむイスラム教スン
ニ派の過激派組織が10日までに第2の都市モスルを制圧したのに
続いて、その南のティクリットなどでも攻撃を仕掛けるなど、スン
ニ派が多く暮らす地域で勢力を拡大し、首都バグダッドに向けて南
下を続けています。
これに対し、スンニ派と対立するシーア派の最高権威のシスターニ
師は、イスラム教の金曜礼拝が行われた13日、側近を通じて声明
を出し、「イラクは今、危機にある。国を守るためテロリストと戦
わなければならない」として、武器を取って戦闘に参加するよう呼
びかけました。
シーア派が中心のマリキ政権は、13日までにモスルやティクリッ
トで軍のヘリコプターを使って過激派組織の拠点を攻撃するなど、
軍事作戦を本格化する構えを示しています。
シーア派住民に絶大な影響力を持つシスターニ師の呼びかけにより
、義勇兵として軍に加わるシーア派住民が相次ぐものとみられ、宗
派対立を背景に戦闘がさらに激しくなることが懸念されます。
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イラク対応「数日内に決断」=国益脅かすと米大統領
 【ワシントン時事】オバマ米大統領は13日、ホワイトハウスで
記者会見し、イスラム過激派が攻勢を強めるイラク情勢は「米国の
国益も脅かし得る」と述べ、数日内に対応策を決めると明言した。
一方、米軍部隊の派遣は選択肢にないと改めて表明した。
 大統領は「イラクは今、追加的な支援を必要としている」と強調
。イラク治安部隊を支援するため、国家安全保障会議(NSC)に
対し、米部隊派遣を除いた他の選択肢を用意するよう指示したと説
明した。(2014/06/14-01:38)
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イラク、国家分裂の危機 クルド地域政府が油田掌握
ドバイ=渡辺淳基2014年6月14日01時37分asahi
 アルカイダ系武装組織「イラク・シリア・イスラム国(ISIS
)」が勢力を広げるイラク北部で、クルド地域政府の治安部隊が12
日、油田地帯にある都市キルクークを掌握した。少数民族クルド人
の独立機運が高まる可能性があり、イラクは国家分裂の危機が深ま
っている。
 「キルクークはクルド地区の一部だ。妥協はしない」。地元紙に
よると12日に記者会見したクルド議会のユセフ・ムハンマド議長
はこう述べ、キルクークを中央政府に返す意思がないことを示唆し
た。
 クルド政府はクルド人が多く暮らす北部3州を統治する。イラク
戦争後に連邦制に移行した後の2006年に発足。大幅な自治が認
められている。
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イスラム過激派、首都防衛「最後の砦」に侵攻
2014年06月14日 00時48分Yomiuri Shimbun
 【カイロ=溝田拓士】AFP通信などによると、イラク北部、中
部から南部へと進撃を続けているイスラム過激派「イラク・シリア
のイスラム国(ISIS)」は13日、首都バグダッドの北約110
キロにあるサマッラに侵攻し、政府軍との間で戦闘になっている。
 マリキ首相は13日、国営テレビで演説し、首都攻防戦に備えて
防御態勢を強化したことを明らかにした。
 サマッラは、シーア派の聖廟せいびょうがある人口約30万人の
拠点都市。スンニ派のISISの首都侵攻を防衛する政府軍にとっ
て最後の砦とりでともいえる。軍は、街の中心部へと続く幹線道路
を封鎖し、ISISと激しい攻防戦が続いている模様だ。
 首都近郊ではほかにも、首相を支持するシーア派の民兵と、
ISISの間でも戦闘が散発しているとの情報がある。
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過激派、シーア派民兵と衝突=本格内戦突入も−イラク
 【カイロ時事】イラク北部モスルなどを陥落させ、首都バグダッ
ド入りを目指すイスラム教スンニ派の過激派「イラク・シリアのイ
スラム国」の武装集団は13日、南進を続け、首都北方約60キロ
のバクバ郊外でシーア派民兵組織と衝突した。ロイター通信などが
伝えた。
 宗派間抗争の構図が鮮明となれば、混乱収拾は一層困難となる。
イラク情勢は隣国シリアのような本格的な内戦に突入するシナリオ
が現実味を帯びてきた。
 イラクのシーア派最高権威シスタニ師はこの日、金曜礼拝で代理
人を通じて「神聖な目的達成のため、志願して治安部隊に参加せよ
」と訴え、シーア派信徒に決起を呼び掛けた。
 イラク治安部隊は士気低下が深刻で、兵士らが「イスラム国」の
脅威を前に相次いで持ち場から逃げ出している。このため、マリキ
政権は支持基盤であるシーア派の民兵や、クルド人自治区の民兵組
織「ペシュメルガ」の協力を仰がざるを得ない状況に陥った。
(2014/06/13-22:06)
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首都北方で治安部隊と交戦=過激派の南進続く−イラク
 【カイロ時事】イラク北部モスルなどを陥落させ、首都バグダッ
ド入りを目指すイスラム教スンニ派の過激派「イラク・シリアのイ
スラム国」の武装集団は13日、南進を続け、首都北方のバクバ郊
外で治安部隊と交戦した。AFP通信などが伝えた。
 バクバはディヤラ州の州都で、バグダッドの約60キロ北方に位
置する。「イスラム国」はこれまでにモスルを含む北部ニナワ州全
体に加え、北部サラハディン、キルクーク両州、西部アンバル州の
多くの地域を制圧。バクバを支配下に置けば、一気にバグダッドの
安定が脅かされることになりそうだ。(2014/06/13-18:37)
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対イラク過激派 米、軍事行動を警告
2014年6月13日 tokyo夕刊
 【ワシントン=竹内洋一】オバマ米大統領は十二日、イスラム教
スンニ派過激派「イラク・レバントのイスラム国」が攻勢を強める
イラク情勢をめぐり「いかなる選択肢も排除しない」と述べ、軍事
行動を警告した。オーストラリアのアボット首相とホワイトハウス
で会談後、記者団に語った。米メディアによると、米政府はイラク
のマリキ政権が要請している無人機による空爆を含めて対応策の検
討に着手した。一方、カーニー大統領報道官は記者会見で「地上軍
の派遣は検討していない」と明言した。
 オバマ氏はイラク情勢を「緊急事態だ」と指摘。「イラクは米国
や国際社会から一層の手助けを必要としている」と述べた。マリキ
政権と対応策を協議していることを明らかにした上で「軍事的に行
う必要がある短期的な対応策もあるだろう。すべての選択肢を精査
している」と説明した。
 さらに、米国の安全を守るために「イスラム聖戦主義者がイラク
やシリアに恒久的な足場を築くのを阻止する必要がある」と強調。
イラクでイスラム教の宗派や民族間の対立が続いていることに触れ
「国家の弱さの一因であり、軍事にも持ち込まれている」とマリキ
政権に苦言を呈した。
 これに先立ち、バイデン米副大統領はイラクのマリキ首相と電話
で会談し、米国が防衛支援を強化していく考えを伝えた。
 また、米国務省はイラク国内の数十万人の避難民を支援するため
、国際機関に千二百八十万ドル(約十三億円)を追加拠出すると発
表した。
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Masa Okumura11:47 - 2014年6月13日
イラク反乱軍の台頭でイラク政情不安が石油価格を押し上げて、今
日は$106を越した。イラクは日産300万バレルを輸出で、反
乱軍は原油生産基地のモスールに接近で、混乱が予想される。暫く
は政情不安は悪化で、原油価格は$110−112まで上昇予想。
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武装組織、首都進撃を宣言 イラク情勢緊迫 
2014/6/13 1:34nikkei
 【ドバイ=久門武史】イラク北部で支配地域を広げるイスラム教
スンニ派の過激派武装組織「イラク・シリアのイスラム国」は12日
、首都バグダッドへの進撃を宣言し、首都北方で戦闘を重ねた。
マリキ政権は統治力のもろさを突かれ、2011年の米軍撤退後、最悪
の窮地に陥った。宗派対立と政治の機能不全につけ込む武装組織の
戦力の供給源は、内戦が泥沼化する隣国シリアだ。
 「逃亡者は処罰する」。11日、反転攻勢を訴えたイラクのマリキ
首相の発言は、治安部隊の士気の低さを浮き彫りにした。10日に陥
落した同国第2の都市モスルでは、警官が持ち場を捨てて逃げたと
伝えられた。
 03年からのイラク戦争でフセイン政権と軍は崩壊。イスラム過激
派や各宗派の武装集団が、米軍に対抗する名目で各地に流れ込んだ。
オバマ政権が11年末に戦争終結を宣言し、米軍が撤退した後、力の
空白をイラクが自ら埋められるかには当時から懸念があった。
 治安部隊は米軍の訓練や支援を受けていたが、今回の失態で劣化
は明らかだ。上層部の腐敗が指摘され、政治の機能不全も響く。
首相が要請した非常事態宣言を巡り、連邦議会は12日に開くはずだ
った緊急集会を延期した。反首相派の議員らがボイコットしたから
だ。
 過激派の攻勢の背景には宗派対立がある。イスラム教シーア派中
心のマリキ政権に対し、少数派のスンニ派は冷遇されているとの不
満が強い。急増するテロが両派の対立をあおり、過激派の暗躍を許
している。
 中央政府と自治政府との緊張もある。マリキ政権は原油輸出を巡
り、クルド人による北部の自治政府とぎくしゃくしている。クルド
部隊は12日、混乱に乗じて油田都市キルクークを掌握した。
 過激派の勢力拡大は、シリア内戦の結果だ。シリアでアサド政権
と戦う反体制派に、サウジアラビアなどは資金を送り、トルコはシ
リアとの国境で戦闘員の行き来を黙認した。野放しの援助の一部は
、イラクで戦う過激派に流れている。
 「イスラム国」の活動はイラクとシリアの国境にまたがる。シリ
アと同様、イラクが泥沼の混乱に陥る懸念が強まる。
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NATOのイラク介入否定=トルコ外交官解放要求−事務総長
 【ブリュッセル時事】北大西洋条約機構(NATO)のラスムセ
ン事務総長は12日、訪問先のスペインの首都マドリードで記者会
見し、緊迫するイラク情勢について「NATOがイラクで果たす役
割はない」と述べ、NATO介入の可能性を否定した。ロイター通
信が報じた。
 事務総長は、NATO加盟国トルコの外交官らを人質に取ったイ
スラム過激派「イラク・レバントのイスラム国(ISIL)」に対
し「即時解放を要求する。犯罪行為は正当化できない」と非難した。
ただ「状況をしっかり確認しているところで、全関係者に暴力の停
止を求める」と語るのみで、NATOが取り得る措置には言葉を濁
した。(2014/06/13-00:04)
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過激派首都北方に迫る=政権無力、国際社会に危機感−イラク
 【カイロ時事】イラク北部のモスルやティクリートなど主要都市
を陥落させ、首都バグダッドに向かって南進するイスラム教スンニ
派の過激派「イラク・レバントのイスラム国(ISIL)」は12
日、新たに首都北方90キロの町ドゥルイアを制圧した。AFP通
信が伝えた。
 現地からの報道によれば、劣勢だったイラク政府の治安部隊はモ
スルのISIL拠点に空爆を加えるなど立て直しを図った。しかし
、ISILの動きを封じることはできず、国際社会で情勢悪化への
危機感が広がった。
 隣国イランのロウハニ大統領はこの日、国営テレビを通じ、イラ
ク情勢について「過激派が残虐な動きを見せている。容認できない
」と表明。イラン政府として対応を検討する考えを示した。
 マリキ政権内では、米軍によるISILを標的とした限定的な空
爆を求める声が高まっているとされる。(2014/06/12-23:43)
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トルコ総領事ら48人を拉致、イラク・モスルで武装勢力=関係筋
2014年 06月 12日 04:05 JST
[アンカラ 11日 ロイター] - イラク第2の都市モスルで11
日、武装勢力がトルコ総領事館を占拠し、総領事のほか子供3人、
同国特殊部隊の数人らトルコ人計48人を拉致した。トルコ首相府
筋が明らかにした。
48人は武装勢力の拠点に連れ去られたという。同筋によると、ト
ルコ当局は全員の無事を確認した。
イラク北部に位置するモスルは前日10日、アルカイダ系のイスラ
ム教スンニ派過激派組織「イラクとレバントのイスラム国(ISI
L)」に掌握された。
前日にはまた、モスルの発電所に燃料を輸送していたトルコ人のト
ラック運転手28人がISILによって連れ去られており、これま
でにモスルで少なくとも76人のトルコ人が拉致されたことになる。
政府高官らによると、トルコのエルドガン首相はアタライ副首相や
トルコ国家情報機関の次官らと緊急会合を開いた。
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過激派、首都方面へ進撃=モスル脱出50万人−イラク
 【カイロ時事】イラク第2の都市モスルなど北部各地を制圧した
イスラム教スンニ派の過激派「イラク・レバントのイスラム国(I
SIL)」は11日、武装集団を南下させ、首都バグダッド方面に
進撃した。ISILはツイッター上に声明を出し、モスルを含むニ
ナワ州全ての境界を「完全に管理下に置いた」と宣言、今後も攻撃
を続けると表明した。AFP通信などが伝えた。
 モスルではISILによる支配を恐れ、人口の4分の1に相当す
る50万人規模の住民が市外へ脱出。モスルにあるトルコ領事館で
は、外交官ら20人以上がISILに身柄を拘束された。
 武装集団はこの日、モスルから首都北方のティクリートに向かっ
た。ティクリートに近いバイジで治安部隊と衝突した末、一部がテ
ィクリートに到達したという。
 ティクリートは、2003年のイラク戦争で米軍に打倒されたフ
セイン元大統領(スンニ派)の故郷で、米国の支援を受けてきたマ
リキ政権に批判的な住民が多い。ISILには、この地を拠点にバ
グダッド進攻の機会をうかがう狙いがあるとみられる。
(2014/06/11-22:45)
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過激派の制圧地域拡大=産油都市に接近−イラク
 【カイロ時事】イラク第2の都市モスルを含む北部ニナワ州を支
配下に置いたとされるイスラム過激派「イラク・レバントのイスラ
ム国(ISIL)」は10日、制圧地域をさらに拡大し、同州の南
東側に隣接するサラハディン、キルクーク両州の一部を掌握した。
AFP通信が伝えた。
 ISILの武装集団は、キルクーク州の産油都市キルクークにも
迫る勢い。イラク経済への深刻な打撃が懸念される一方、油田が過
激派の手に渡れば大きな資金源を獲得することになりかねず、事態
は緊迫の度合いを強めている。
 現地からの報道によると、制圧された地域では、配置に就いてい
たはずの治安部隊の抵抗がほとんどなく、私服に着替えて逃げ出す
警官の姿も見られるという。
 マリキ首相は10日、地元市民に武器を与えると表明し、その武
器を手に取って戦うよう呼び掛けた。しかし、イラクではイスラム
教シーア派とスンニ派の宗派対立が深刻化。制圧された地域はスン
ニ派住民が多く、シーア派を支持基盤とする首相の呼び掛けへの反
応は鈍い。(2014/06/11-06:46)


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