5036.世界秩序は法から力の論理へ



欧米での平和維持の基礎であるウエストファリア体制では、数度の
戦争を経て、国際法を尊重した戦争をしない仕組みを作ってきた。
この仕組みを維持するために米国は第2次大戦後、大きな力で支え
てきたが、それがとうとう崩れ始めている。法の支配から力の時代
に逆戻りしているようである。その検討。津田より

0.ロシアのクリミア併合が力の論理を開く
日本の鎌倉・室町時代、武士の政権と天皇を中心とした貴族が共存
した時代には貴族社会の律令制度という法が崩れて、力の支配が徐
々に力を持ち、そして戦国時代になり、天皇と貴族社会の法がなく
なる。この時代と同じような現象が世界に今、起きてきたように感
じる。

国際法を無視して、力でクリミア併合したロシアに有効的な国際法
の適応ができない国際社会は、ある意味、力に負けたと捉えること
ができる。ロシア側にも言い分がある。ロシア人が90%も居て、
その人たちはロシア帰属を望んでいるという言い分である。

過去に平和的に住民投票して独立を宣言したが、ウクライナ政権に
潰されたためだ。

しかし、ウクライナ東部に特殊部隊を送り、独立させようとしたが
ロシア人が20%程度しかいないために、大きな反発がありウクラ
イナ人から見放されて、ここでは失敗した。しかし、この武将集団
を使って、国際法を乗り越えることができるという冷戦後の平和シ
ステムを逸脱した手段ができることを確認された。

ナシュナル・インタレスト誌「Russia Opens a Eurasian Pandora's 
Box」はこのことを言っている。ロシアの力の論理が欧米の法の論理
に勝ったことで今後、その混乱がユーラシアで続く事になるという
のである。

欧米流ウエストファリア体制を崩すことになったようである。力の
論理で考えることは、リアリストからすると当然の論理であるが、
ナショナル・レビュー誌「Russian Foreign Minister: Cold War 
‘Geopolitics Never Disappeared’」で露ラズロフ外相が地政学は
無くならないと言っている。ロシアはソ連と同じような思考で考え
ることを表明したことになる。

このため、多くの論者が、危機を感じている。ブルガリアの政治学
者アイバン・クラステフ氏は「クリミアは手始めにすぎない」と述
べる。「これはロシアが欧米に突きつけた政治的、文化的、軍事的
な果たし状だ」。ロシアの行動は、「この半世紀にヨーロッパ秩序
が直面した最大の脅威」であり、「ヨーロッパ大陸でもはや戦争は
おこり得ない」とみなす近年の欧州人の信条を覆したという。

しかし、このような事態になっても、米オバマ大統領のウエスト・
ポイントでの演説では、米国の直接的な脅威にならない紛争には米
国は関わらないと明確に述べたのである。米国の脅威はテロである
ので、その対応だけする。後は同盟国の努力に任せるという。

国際政治学の中山俊宏氏と岩間陽子氏の対談「見くびられたアメリ
カ、後手を踏んだEU」(『中央公論』)で中山氏は、米国の国際
社会での消極的な対応の「集積」から今回の危機が起きているよう
に見えるとし、「そもそもオバマ大統領は恐れられていない」と指
摘したが、それを裏付ける演説をしている。

また岩間氏は欧州連合(EU)の対応について、ロシアとの経済の
相互依存関係から、現時点で「実体経済に影響を及ぼさない範囲で
の制裁しかしていない」と述べ、「西側は『かわいそうなウクライ
ナの兄弟を救え』といった盛り上がり方はしていません」と冷めた
実情を伝える。安全保障と経済の関係の優先順位を間違えているこ
とで、欧州は、大きな法的な仕組みを破壊したことに気がついてい
ない。

1.米国の考え方
このため、EUと米国の対応を見て、ロシアと中国は、喜んでいる
ことになる。力の論理が法の論理を乗り越えたということである。

米国の孤立主義は、大きな戦争を招き入れているように感じるが、
同じ趣旨のことをナショナル・インタレスト誌「Barack Obama Is 
Still Not a Realist」では、米国は世界の平和仕組みの調整をする
べきであり、米国だけを考えると、大きな失敗に直面すると警告し
ている。これに私も賛成である。今の米国の外交は、木を見て森を
見ていない。

リアリストというのは、力の使い方を調節して、力の均衡を世界的
に調整することであると見ているからである。中露は米国に敵対す
る勢力であり気をつけるべきである。

しかし、主要7カ国(G7)首脳会議(サミット)がブリュッセル
で2日間の討議を終えて閉幕した。緊張が続くウクライナ情勢、き
な臭い空気が漂うアジアの海――。これらの課題で結束を演出した
が、自己主張を強めるロシアや中国を前に影響力の低下は隠せない。

法の支配力が弱まり、力の対応を決断できないので、欧米諸国は行
き道を無くしている。それなら、経済的な制裁を武器をしないとい
けないが、これにも欧州が反対している。

このような欧米の行動を見て、中国は自己の権利を力を使って主張
し始めたのである。それが南シナ海でのリグ設置であり、その根拠
である九段線の主張である。

2.中国の主張
人民日報によると、南シナ海に公海は存在するのか?非沿岸国であ
る米国に航行と上空の飛行の自由は成立するのか?答えは否だ!南
シナ海に公海は存在しない!米国など非沿岸国は一定の条件下で航
行と上空の飛行の自由を享有することはできるが、わがもの顔に振
る舞うことは断じて許されない。「九段線」内は歴史的水域であり
、公海の存在する余地はない。南シナ海は古来中国の領土だ。そし
て、ベトナムやフィリピンの200海里のEEZも「九段線」にあり、そ
れも認めない。としている。

この「九段線」の中国の主張に対して、フィリピンは3月30日、国連
の常設仲裁裁判所に提出した4000ページの意見陳述書の中で、九段
線が無効だと主張した。

中国政府は、今まで「九段線」の意味を適切に説明したことはない。
この線の内部に点在する領域の要所に対する「疑う余地のない主権
」という中国の主張は、この線自体から発生しているのだろうか。
あるいは、その逆で、この線は領域の要所と周辺の海域から発生し
ているのだろうか?疑問が大きい。

このため、国際法に従えば、九段線の正当性が認められる可能性は
ほとんどないだろうというのが、欧米の法学者たちの一般的な見解
だ。

そして、フィリピンからの仲裁要請により、仲裁裁判所は、オラン
ダのハーグで先月、2回目の会合を開き、中国に自国の主張を裏付
ける陳述書をことし12月までに提出するよう求めることを決め、
中国側に通知したことを3日、明らかにした。

これに対して中国側は、「フィリピンの申し立てによる裁判は受け
入れられない」として、陳述書の提出など、裁判の手続きを拒否す
る姿勢を示した。

中国の専門家は、国際法より前に「九段線」は出来ているので、欧
米の国際法による裁判はなじまないということのようである。

武力で、この「九段線」を確立することを中国は決断したようであ
る。武力で米国を仰臥して、自己の都合の良い権利を主張すること
ができることを、ロシアの行動で確信したようである。

そして、それを裏付けるオバマ大統領のウエスト・ポイントでの演
説であり、中国はロシアと共に、ユーラシア周辺、中東での勢力拡
大に乗り出し始めている。

そのために、中国はインド洋と太平洋の2つの大海に自由に行動で
きる海洋帝国を目指しているとカプラン氏は、ナショナル・インタ
レスト誌「China's Budding Ocean Empire」で述べている。

また、今まで他国の内政に関与しないという方針も投げ捨てている。

中国は南スーダンの石油産業への最大の出資国だが、その投資を脅
かす政府軍と反政府勢力との5カ月以上にわたる戦闘を収束させる
ため、これまでにない外交努力をして、内政に関与している。

投資拡大とともに利害関係も増える中で、中国が政策を徐々に変更
しつつあることを示している。

3.日本への見方が変化
このように中国が攻撃的な外交に対して、アジアの米国同盟国であ
る日本・安倍首相に対する米国の見方が変化している。

マイケル・グリーン氏によると、中国が広範で計画的な安全保障戦
略を推進していることが誰の目にも明らかになった結果、日本の立
場に対する強固な支援が米国で生まれている。

そして、中国近傍地域の国々が共有する中国に対する懸念が明らか
になった。

日本は、米国のミサイル防衛力や米軍への後方支援を補完する能力
を持っている。日本が集団的自衛権を持てば、米軍の作戦立案は容
易になり、作戦立案者は日本が役割を担っていると確信を持てるよ
うになるので重要であり、その日本が集団的自衛権を持つことを米
国は、望んでいる。

とうことで、集団自衛権は公明党の反対を押し切っても、今日本は
踏み出すべきである。

しかし、公明党は中国からの影響で、この集団自衛権を反対すると
いうのである。中国との関係を重要視して、公明党は日本の行く道
を間違える可能性が高いようだ。

自民党も公明党と別れることも考えて、集団自衛権を確立する必要
があると思う。そうしないと、国際法での平和が本当にできずに、
力の論理での世界ができてしまうことになる。

さあ、どうなりますか?

参考資料:
Russian Foreign Minister: Cold War ‘Geopolitics Never Disappeared’
http://www.nationalreview.com/corner/379656/russian-foreign-minister-cold-war-geopolitics-never-disappeared-joel-gehrke

Japan Steps Up as Regional Counterweight
http://online.wsj.com/articles/auslin-japan-steps-up-as-regional-counterweight-1401986495

Tensions Are High in Asia: Why No Pivot Mention at West Point?
http://nationalinterest.org/blog/the-buzz/tensions-are-high-asia-why-no-pivot-mention-west-point-10605

Russia Opens a Eurasian Pandora's Box
http://nationalinterest.org/feature/russias-opens-eurasian-pandoras-box-10602

The East China Sea Boils: China and Japan's Dangerous Dance
http://nationalinterest.org/feature/the-east-china-sea-boils-china-japans-dangerous-dance-10599

China's Budding Ocean Empire
http://nationalinterest.org/feature/chinas-budding-ocean-empire-10603

Barack Obama Is Still Not a Realist
http://nationalinterest.org/feature/barack-obama-still-not-realist-10582

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【論壇誌】露が揺るがす世界秩序
2014年05月06日 08時00分Yomiuri Shimbun
 ロシアが3月、クリミア半島を併合した。事態はウクライナ東部
での暫定政府と親ロシア派勢力との抗争・衝突に発展。今後どのよ
うな方向へ進むのか、予断を許さない。各誌はこのウクライナ危機
を冷戦後の世界秩序に対する重大な挑戦と捉え、一斉に論じている。
ウクライナ危機 米欧の「弱さ」
 軍事力を背景に国境線を変更するという今回の事態を、多くの論
者は深刻に受け止めている。ブルガリアの政治学者アイバン・クラ
ステフ氏は「クリミアは手始めにすぎない」(『フォーリン・アフ
ェアーズ・リポート』)で述べる。「これはロシアが欧米に突きつ
けた政治的、文化的、軍事的な果たし状だ」。ロシアの行動は、「
この半世紀にヨーロッパ秩序が直面した最大の脅威」であり、「ヨ
ーロッパ大陸でもはや戦争はおこり得ない」とみなす近年の欧州人
の信条を覆したという。
 さらに氏は、プーチン大統領がロシアを欧州と異なる「独自の文
明」にし続けることを望み、政治的孤立も恐れず、「欧米の近代的
価値を拒絶し、ロシアとヨーロッパ世界との間に明確な境界線を引
こうとしている」と指摘する。
 ジャーナリストの船橋洋一氏は「新世界地政学」(『文芸春秋』
)で、プーチン大統領の根にある「屈辱感」に目を向ける。ロシア
にとってウクライナは外国ではなく、ソ連崩壊による1991年の
ウクライナ独立は「生木を裂かれたような喪失感」を感じさせる屈
辱だった。今回、ウクライナがさらに西欧化すれば、プーチン大統
領は「ウクライナを失ったツァー」として歴史に記されることにな
るため、大統領はウクライナが破綻国家となるよう仕向け、欧米に
ウクライナを見捨てさせようとする、と氏は見通す。
 一方、ロシアを非難する米欧の「弱さ」への言及も目立つ。国際
政治学の中山俊宏氏と岩間陽子氏の対談「見くびられたアメリカ、
後手を踏んだEU」(『中央公論』)で中山氏は、米国の国際社会
での消極的な対応の「集積」から今回の危機が起きているように見
えるとし、「そもそもオバマ大統領は恐れられていない」と指摘。
岩間氏は欧州連合(EU)の対応について、ロシアとの経済の相互
依存関係から、現時点で「実体経済に影響を及ぼさない範囲での制
裁しかしていない」と述べ、「西側は『かわいそうなウクライナの
兄弟を救え』といった盛り上がり方はしていません」と冷めた実情
を伝える。
 だが、それで世界秩序は安定化するのか。作家の佐藤優氏は「『
プーチン外し』が行き過ぎれば『中露の提携』という悪夢を呼ぶ」
(『SAPIO』)でこう懸念する。「ウクライナ危機の処理に失
敗すると、国際社会のゲームのルールが抜本的に変化する可能性が
ある。戦争のハードルが著しく低くなり、戦争という手段を含む恫
喝どうかつ外交が常態化する危険がある」
 氏はまた、ロシアが中国に接近する可能性を指摘。「中露の本格
的な戦略的提携が実現すると、中国が尖閣諸島を力によって奪取す
るシナリオが高まる。ロシアを中国に接近させないことが日本外交
の戦略的課題だ」と強調する。
 では、ロシアを抑える有効な措置はあるのか。元外交官の河東哲
夫氏は「ウクライナ問題を活用した積極外交を」(ウェブ誌
『nippon.com』)で述べる。「結局、一番抵抗が少なく
、かつロシアに対しても有効な制裁措置は、世界の石油・天然ガス
価格の暴落を演出することであろう」。現在1バレル110ドル程
度の原油価格が80ドル程度に下がっただけで、ロシア財政は逼迫
ひっぱくし、ルーブルは下落し、社会は不安定化するという。
 いずれにしても、国際社会の世界秩序安定化のための「真剣度」
が問われている。(文化部 植田滋)
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中国・ロシア抜きでは世界の問題は解決できない、力を失ったG7―
中国紙
Record China 6月7日(土)18時49分配信
2014年6月8日、環球時報は記事「中国とロシアが参加しないG7では
世界の問題を解決することはできない」を掲載した。
ベルギー・ブリュッセルで開催された主要7カ国首脳会議(G7サミッ
ト)が5日(現地時間)、閉幕した。ウクライナ問題を受け、ロシア
を外した7カ国での会議となったが、ロシアにとっては大きな問題で
はない。ある専門家はロシアにとっては20カ国・地域(G20)首脳会
議こそが重要だと指摘。中国とロシア抜きでは世界の政治、経済問
題には対応できないと主張している。
第一ドイツテレビも同様の観点を披露した。シリア内戦やイランの
核問題を解決できずにいることからもわかるとおり、G7の影響力は
大きく低下し象徴的な意味合いしかなくなったと指摘している。カ
ナダ紙グローバルポストは米国の影響力低下は明らかで、中国とロ
シアがその穴を埋めようとしていると分析した。(翻訳・編集/KT)
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中国が他国の政治に介入 「内政不干渉」の原則を転換 アフリカ
権益保護強化で
Reuters  |  執筆者: Drazen Jorgic記者
2014年06月07日 19時16分 JST
中国は南スーダンの石油産業への最大の出資国だが、その投資を脅
かす政府軍と反政府勢力との5カ月以上にわたる戦闘を収束させる
ため、これまでにない外交アプローチに出ている。
その微妙な変化は、エチオピアの首都アディスアベバで数カ月間行
われた和平交渉で顕著に表れている。複数の外交官は、中国が常に
交渉に関与し、南スーダンの支援国である米国、英国、ノルウェー
と協議している様子などに、中国のより積極的な姿勢が見て取れる
と話す。
戦闘開始から1カ月がたった今年1月23日に最初の停戦合意が成
立した時、中国の解暁岩・駐エチオピア大使は各国代表団とともに
署名の場でスピーチし、中国の関与を印象付けた。
こうした新しい方針は、中国がアフリカの内政に立ち入らないとい
う従来の政策を放棄したというわけではなく、投資拡大とともに利
害関係も増える中で、中国が政策を徐々に変更しつつあることを示
している。
アフリカ最大の貿易相手国となった今、中国は経済的利益が増大す
る他のアフリカ地域にも、その新たなアプローチを広げる圧力に直
面する可能性もある。
国際政治リスク分析を専門とするコンサルティング会社「ユーラシ
ア・グループ」のアナリスト、クレア・アレンソン氏は、中国が「
こうした国々にかなり重要な資産を有し、それらを守る必要が出て
きた」と指摘。「内政不干渉のスタンスは維持したいのはやまやま
だろうが、思い通りにはいっていない」と分析する。
今のところ、南スーダンには中国が積極的外交を展開する例外的な
状況がある。南スーダンの原油生産がフル稼働した場合、同国から
の原油購入は中国の総輸入量の5%に上っていた。また、中国石油
天然ガス集団(CNPC)は、ジョイントベンチャーで開発する南
スーダンの油田に40%の権益を有している。
原油収入が南スーダンの歳入に占める割合は約98%。米英、ノル
ウェーは同国の最大の支援国でありながら、原油生産の権益は持っ
ていない。
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中国軍、世界的規模で米国に対峙へ―国防総省報告書が警告
By DION NISSENBAUM
2014 年 6 月 6 日 11:25 JST  WSJ
 【ワシントン】米国防総省は5日、中国の軍事動向に関する年次報
告書を発表し、中国が軍事費を急速に拡大させており、同国の影響
力は高まり、世界規模で米国に対峙する方向に向かっているとの見
方を示した。
 報告書によると、米国の軍事費は減少している一方、中国はステ
ルス機やサイバー兵器、武装無人機の開発のほか、海軍の増強に巨
額の支出を行っている。先にシンガポールで開かれたアジア安全保
障会議では、中国軍の高官が米国のアジアでの行動によって中国は
敵対的にならざるを得なくなる恐れがあると警告したのに対し、ヘ
ーゲル米国防長官は中国が「周辺国をかく乱する一方的行動」をと
っていると非難した。
 国防総省によれば、中国の2013年の軍事費は1450億ドル(約14兆
7900億円)超と推定されている。中国の公式の軍事予算は2004年以
降年平均9.4%の伸びを示してきた。一方米国は13年間に及んだイラ
クとアフガニスタン戦争が終結に向かっているため、軍事費は今後
抑制される見込み。報告書は「中国は軍備への投資により、戦力を
遠方まで展開する能力をますます向上させている」と述べている。
米国の13年の軍事費は約5800億ドルだった。
 世銀によれば、米国の軍事費の対国内総生産(GDP)比は約4.2%
で、中国の2%を上回っている。米国の軍事費は縮小傾向にあるが、
それでも中国を含むその他の国をはるかに上回っている。
 国防総省は、中国空軍について「前例のない規模で積極的に近代
化を進めており、西側との能力の格差を急速に埋めている」と分析
した。ただ、中国はステルス戦闘機を開発しようとしているものの
、数多くの課題に直面していると指摘、少なくとも5年間は克服でき
ないだろうと予想している。
 報告書はまた、中国は引き続き米国を標的にサイバー戦争を仕掛
けていると警告した。米司法省は5月に、米企業のネットワークに侵
入し企業機密を窃取したとして、中国軍当局者5人を起訴した。
 報告書はまた、中国が軍事費を拡大させている主因は依然として
台湾問題で、同国は台湾に対し高度な軍事行動を起こす能力を一段
と高めたと分析している。
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「G8後」描けぬ国際秩序 G7サミット閉幕 
2014/6/5 22:16nikkei
 【ブリュッセル=中山真】主要7カ国(G7)首脳会議(サミッ
ト)が5日、ブリュッセルで2日間の討議を終えて閉幕した。緊張
が続くウクライナ情勢、きな臭い空気が漂うアジアの海――。これ
らの課題で結束を演出したが、自己主張を強めるロシアや中国を前
に影響力の低下は隠せない。対立するロシア抜きで開かれた主要国
首脳会議(サミット)が映したのは、そんな世界の現実である。
 外交問題がテーマになった4日夜の夕食会。首脳らは欧州連合(
EU)本部内の丸テーブルで向き合った。多くの時間を割いたのが
、ロシアによるクリミア編入を受けたウクライナ情勢だ。
■米と日欧にずれ
 「一丸となってメッセージを出すことが大切だ」。議長役のメル
ケル・ドイツ首相が発言を求め、各国からウクライナ支援での結束
を強調する声が相次いだ。
 ところがロシアにどこまで厳しく対応するかになると、思惑のず
れが表面化した。最も強硬なのがオバマ米大統領。G7でもロシア
への追加制裁の可能性に含みを持たせた。
 これに対し、ロシアと経済の結びつきが深い欧州は、深刻な対立
は避けたいのが本音だ。
 「ロシアに対話を促していく必要がある」。フランスのオランド
大統領はオバマ氏の強硬論をけん制。他の首脳も「ロシア抜きの国
際秩序の安定はあり得ない」と発言した。対ロ外交に意欲をみせる
安倍晋三首相も欧州側と足並みをそろえた。
 米国と日欧のずれは、首脳宣言をめぐる調整に影響した。原案で
は追加制裁の条件について「ロシアがこの問題の平和的解決に取り
組まなければ」と明記していた。ロシアがウクライナ安定に協力し
なければ、制裁を強める。こんなオバマ氏の決意を反映したものだ
った。
 これが最終的には「状況が必要となれば」と、あいまいな表現に
後退した。「ロシアを追い込むのを欧州が嫌がったからだ」(交渉
担当者)
 オバマ氏はサミット終了後の記者会見でも「プーチン・ロシア大
統領は国際法の道に戻ってくるチャンスだ」と強調。さらに「(制
裁で)停滞していたロシアはより弱体化した」とけん制した。
 一方、プーチン氏は自分抜きで開かれたサミットについて記者団
に感想を聞かれると「『どうぞ、よい食事を』と言いたい」と強が
った。
 シリア紛争などへの対応のまずさから、オバマ政権の外交力は米
国内外で批判されている。これがG7の求心力の弱さの一因だ。よ
り深刻なのは、G7自体の影響力が落ちていることだ。
 世界の国内総生産(GDP)に占めるG7の割合は、2000年の66
%から13年には47%に落ちた。逆に中ロ、インド、ブラジルの4カ
国の比率は、8%から21%に達した。自信を強める中ロは、G7の
切り崩しに拍車をかける。
 国際力学の変化はアジアにもおよぶ。中国は自信を深め、強気な
行動を加速している。
■アジアにも影
 「ウクライナ情勢はアジア情勢に連動する」。安倍氏はG7でこ
う訴えた。中国の強気な行動で波立つ東シナ海や南シナ海にも注意
を払うよう、促すためだ。首脳宣言にも、中国の挑発行為をけん制
する文言が入った。
 しかし中国が耳を傾ける様子はない。中国外務省の副報道局長は
5日の記者会見で「域外の関係ない国が争いに干渉し、介入するこ
とは、問題解決をより難しくするだけだ」と反発した。
 米ソ冷戦の終結を経て、1991年に旧ソ連のゴルバチョフ大統領が
ロンドン・サミットに初めてゲストとして参加した。エリツィン・
ロシア大統領が出席した94年のサミットから政治討議に加わり、98
年以降は「G8」の呼び名が定着した。
 今回、そこから外されたロシアは中国と組み、G7に対抗する姿
勢をみせる。世界は新たな秩序を描けず、揺れている。
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安倍外交に対する米国の見方の変遷=グリーンCSIS副理事長
By Yuka Hayashi
2014/06/04 4:05 pm ET  WSJ
安倍晋三氏が1年半前に首相に就任して以降、日米関係は熱したり冷
めたりと揺れ動いている。安倍氏は、不安定さを増す東アジアにお
ける安全保障のダイナミクスの中で日本外交のかじ取りに挑んでい
る。
米政府当局者は、安倍氏がアジアの安全保障で日本の役割の強化を
図っていることを評価する一方、国家主義的にみえる政策アプロー
チが中韓との摩擦を引き起こしていることに、時に懸念を示してき
た。
日米関係は今どうなっているのか。米国有数の日本問題専門家であ
るマイケル・グリーン氏はジャパン・リアル・タイムとのインタビ
ューに応じ、シンガポールで開催されたアジア安全保障会議から、
拉致被害者の再調査に関する日朝合意に至るまで、最近の日本の外
交について見解を語った。グリーン氏はブッシュ前政権時代に国家
安全保障会議(NSC)上級アジア部長を務め、現在は戦略国際問題研究
所(CSIS)のアジア担当上級副理事長。
Q: 米国では現在、アジアの安全保障に対する安倍氏の姿勢はどの
ようにみているか。
A: アジアの安全保障に対する日本の役割をめぐる米国の考え方は
今年変わったと思う。オバマ政権の安全保障当局者は当初、中国が
日本を挑発しているのか、それともその逆なのかについて確信を持
てていなかったようだ。しかしここ数カ月間に、中国が広範で計画
的な安全保障戦略を推進していることが誰の目にも明らかになった。
その結果、日本の立場に対する強固な支援が生まれている。
Q: シンガポールでのアジア安保会議についてはどう評価するか。
A: 安倍氏の基調演説は非常に好評だったと、多くの人から聞いた。
同会議は、日米にとっても、その他の国々にとっても有用だった。
地域の国々が共有する中国に対する懸念が明らかになったからだ。
だが、このダイナミクス(中国と周辺諸国との激しい対立)が続け
ば、日米にとってかなりのリスクになる。次回のシャングリラ会合
で、会議をもっと建設的な雰囲気にするためにはどうすべきか、日
米が中国と話し合うのも悪くないだろう。
Q: 日本が北朝鮮との間で、拉致被害者の再調査の見返りに日本が
対北朝鮮制裁の一部解除に応じる合意が成立したことについては、
米国ではどう受け止めるか。
A: 日本では常に、首相がある程度独自の外交姿勢を示すことを求
めたがる気持ちがあるようで、日朝合意がそのケースに当たるのか
もしれない。拉致問題の解決は正当な人道的な目標である。ただ、
米韓は多少神経質になっているように思う。米韓にとっての不安は
、北朝鮮がこの問題をどう利用しようとするかという点だと思う。
日本は、北朝鮮が日本と米韓を分断しようとしているとみられない
ように、米韓との協調に細心の注意を払う必要がある。議論されて
いる制裁解除は限定的なものであり、また日本は拉致問題で満足の
いく成果がなければ撤回するだろう。
Q: 安倍氏が主張している集団的自衛権はどうして米国にとって
重要か。
A: 日米の軍事力の技術的レベルは極めて高い。日本は、米国のミ
サイル防衛力や米軍への後方支援を補完する能力を持っている。日
本が集団的自衛権を持てば、米軍の作戦立案は容易になり、作戦立
案者は日本が役割を担っていると確信を持てるようになる。集団的
自衛権が認められなければ、中国は安倍氏を孤立させようとし、公
明党を安倍氏と対立させようするだろう。
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南シナ海巡る裁判 中国が陳述書の提出拒否
6月5日 1時21分NHK
南シナ海のほぼ全域は中国の管轄下にあるとする主張が国際法上認
められるかどうかが争われている裁判で、国際的な仲裁裁判所は中
国に主張の裏付けとなる陳述書の提出を求めましたが、中国側は拒
否する姿勢を示し、裁判の行方が注目されます。
この裁判では、中国が南シナ海のほぼ全域の管轄権を主張している
のは、国際法上根拠がなく認められないとして、この問題で対立す
るフィリピンが国際的な仲裁裁判所に司法判断を示すよう求めてい
ます。
仲裁裁判所は、オランダのハーグで先月、2回目の会合を開き、中
国に自国の主張を裏付ける陳述書をことし12月までに提出するよ
う求めることを決め、中国側に通知したことを3日、明らかにしま
した。
これに対して中国側は、「フィリピンの申し立てによる裁判は受け
入れられない」として、陳述書の提出など、裁判の手続きを拒否す
る姿勢を示したということです。フィリピン側はことし3月、すで
に南シナ海の領有権問題について、自国の主張をまとめた陳述書を
提出しており、裁判所側は引き続き手続きを進めるものとみられま
す。この裁判を巡って、中国側は当初から激しく反発し、申し立て
を取り下げさせようとフィリピンへの圧力を強めていますが、日本
やアメリカなどは裁判への支持を表明しており、裁判の行方が注目
されます。
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NATO:露へ配慮、東欧に常設部隊展開せず
毎日新聞 2014年06月04日 10時48分
 【ブリュッセル斎藤義彦】北大西洋条約機構(NATO)は3日
の国防相会議で、オバマ米大統領が同日提唱した東欧などの防衛強
化策「欧州再保証イニシアチブ」を大筋で支持した。強化策は米軍
がローテーション方式で駐留する案。この方針は、NATOがロシ
アを「敵でない」と定義し、東欧に常設部隊を展開しないと約束し
た1997年のロシアとの合意を守る措置で、ロシアに配慮し、関
係正常化へのメッセージを送るものだ。
 国防相会議では、米軍だけでなく複数の加盟国の軍が3カ月を超
えない期間で数千人規模で展開するとした強化策を、大部分の国が
支持した。ただポーランドなどは万単位の常設部隊の駐留を求めて
おり9月の首脳会議に向け協議を継続する。
 冷戦終結後、NATOはロシアとの関係正常化を模索。97年に
「基本文書」を締結し、「互いに敵とはみなさない」と宣言。互い
が「主権」、「領土的一体性」を守ることを前提に、対話の枠組み
「NATOロシア理事会」の設立で合意した。同時に、NATOは
東欧への拡大を視野に、ロシアに対する融和策として新規加盟国に
核兵器や、実質的な戦闘部隊を駐留させないことを約束した。
 NATOは、今回の強化策はロシアとの97年の「基本文書」に
違反しないとの立場だ。オバマ政権は、東欧・バルト3国の防衛力
強化要請に応えると同時に、ロシアとの約束を順守する妥協案を提
示した。
 NATOのラスムセン事務総長は、ロシアがウクライナ・クリミ
ア半島編入で、合意を「破った」と明確に非難したうえで、「NA
TOは国際法を守る組織で、すべての対策はロシアとの合意の枠内
で可能だ」と述べた。NATOは国際合意を守る姿勢を強調、ロシ
アにも他国の主権の尊重など国際法を守るよう促した形だ。
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防衛を巡り同盟国が米国を非難するリスク
2014.06.02(月)  Financial Times
(2014年5月30日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
バラク・オバマ米大統領が5月28日に行った外交政策に関する演説に
ついて奇妙なことは、大統領が言ったことではなく、言わなかった
ことにある。
 オバマ氏は、同氏のことを無気力で無力だと見なす批判の高まり
に反論した。オバマ氏は同氏の特徴的なテーマになりつつある外交
姿勢の中で、新たな危機が生じるたびに駆けつけるよりも「高い代
償を伴う過ち」を避ける方がいいと述べた。
 だが、非軍事的な形の影響力に力点を置いた演説の中で、オバマ
氏は自身が欧州とアジアで交渉している2つの大きな貿易協定には触
れなった。一度に小さくかじりついて新たな領土を素早く手に入れ
ている中国やロシアといった大国にどのように対処するかについて
もほとんど言及しなかった。
 大統領は米国の影響力の先行きに関するもう1つの厄介な問題も回
避した。米国の同盟国は手助けする意欲を持っているのか、という
問題だ。
 オバマ氏に対する主な批判は、同氏の本能的な用心深さが抑止力
を弱めており、同盟国を無防備な状態に置いているというものだ。
英エコノミスト誌の最近の表紙に書かれたように、「米国は何のた
めに戦うのか?」ということだ。
 だが、オバマ氏は同盟国に妥当な問いを投げかけられるかもしれ
ない。それほど心配なら、そのことについてなぜもっと手を打たな
いのか、と。
米国の助けに依存し、国防費を削る同盟国
 オバマ氏のリーダーシップを密かに中傷してきた政府の多くは、
自分たちがトラブルに巻き込まれた時は米国が救援に駆け付けてく
れるという想定の下で、自国の防衛にごくわずかしか支出してこな
かった。
 これは言うまでもなく、米国と北大西洋条約機構(NATO)の関係
における長年続く恨みの種だ。冷戦時代でさえ、米国政府は欧州諸
国のタダ乗りについてよく不満をこぼしていた。ロバート・ゲーツ
氏は2011年に国防長官を退任する直前、欧州に厳しい警告を発した。
欧州の防衛費が回復しなければ、将来の米国の指導者は「NATOに対
する米国の投資のリターンが費用に見合わないと考えるかもしれな
い」と述べたのだ。
 ゲーツ氏の言葉はほとんど影響を及ぼさなかった。米国を除けば
、NATO加盟国にとって最低限であるはずの国内総生産(GDP)比2%
の防衛費を支出しているのは、英国、エストニア、ギリシャだけだ。
 ユーロ危機で、多くの政府が軍事予算の大幅削減に追い込まれた
(スペインとハンガリーは昨年11.9%削減した)。現在ロシアの侵
略を心配しているバルト諸国の1つ、ラトビアはGDPのわずか0.9%し
か防衛費に充てていない。リトアニアは0.8%だ。
 いささか驚いたことに、アジアにも同じことが当てはまり、中国
の侵略行為について定期的に不満を表す国でさえ防衛費にお金をか
けていない。
 フィリピンのベニグノ・アキノ大統領は今年、中国をヒトラーに
なぞらえ、つい先日本紙(英フィナンシャル・タイムズ)に対して
、中国政府は「瀬戸際政策という危険なゲーム」を展開していると
語った。だが、フィリピン政府はGDPのわずか1.2%しか防衛費に支
出してていない。
 これは、防衛費にGDPの1%しか支出していない日本より多い。た
だし日本政府は、自衛隊が西太平洋で米国と一緒に作戦行動を取る
のを容易にする困難な政治改革をやり遂げようとしている。
「カモにされる米国」
 ハーバード大学のスティーブン・ウォルト教授の言葉を借りれば
、米国は「アンクル・サッカー*1」になる恐れがある。「本当の問
題は、米国がまだアジアにコミットしているかどうかではなく、ア
ジアにおける米国の同盟国がどれくらい手助けする意欲を持ってい
るかだ」と教授は語っている。
 よくあることだが、中東は例外だ。サウジアラビアは防衛費にGDP
の10%近くを費やしており、経済規模に対する比率では、世界の他
のどの国より多く防衛費を支出している。だが、中東地域でリーダ
ーシップを発揮する米国の能力は、ペルシャ湾岸の一部同盟国がほ
とんど互いに口を聞こうとしないという事実によって制約されてい
る。
 無力であるというオバマ氏に対する見方は、純粋な国内政争の結
果ではない。それは、より不安定な世界において、そして連鎖的に
起きる危機の中で同盟国の側に見られる大きな不安も反映している。
 しかし、オバマ批判をせっせと煽り立てることで、一部の同盟国
は危険なゲームを繰り広げている。米国は、左派、右派双方の重要
な部分が、世界における米国の役割に関する核心的な前提に疑問を
投げかける可能性が高い新たな政治サイクルに入りつつある。今は
、米国政府が欺かれているという印象を助長すべき時ではない。
*1=Uncle Sucker、米国政府を指すUncle Samとカモを指すsuckerを
かけた言葉
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南シナ海「法の支配」支持相次ぐ…中国は猛反発
2014年06月01日 14時15分 Yomiuri Shimbun
 【シンガポール=池田慶太】シンガポールで開かれているアジア
安全保障会議(英国際戦略研究所主催)は2日目の5月31日、中
国と周辺国が激しく対立する南シナ海の領有権問題について、「法
の支配」に基づき解決すべきだとの声が相次いだ。
 中国はこうした発言に強く反発した。
 ヘーゲル米国防長官は31日の演説で、南シナ海で石油掘削を始
めた中国を重ねて批判し、「米国は国際法に沿って平和的な紛争解
決の努力をする国を支持する」と述べた。
 マレーシアのヒシャムディン国防相は、中国と東南アジア諸国連
合(ASEAN)が、南シナ海での行動を法的に拘束する「行動規
範」を策定すべきだと強調し、「代替策はない。どうしてもやらな
くてはならない」と語り、中国に早期策定を促した。
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専門家:南中国海に公海は存在せず
米国は「通りすがりの者」に過ぎない
人民網日本:09:52 Nov 23 2011
 米国は長年にわたり、南中国海における航行と上空の飛行の自由
を堅持し、南中国海を公海と見なそうと企ててきた。英国、オース
トラリア、日本、インドなど非沿岸国も次々と南中国海における航
行と上空の飛行の自由を主張し、南中国海紛争に介入し、沿岸各国
の対立を激化させている。(文:潘国平・西南政法大学教授。「環
球時報」掲載)
 南中国海に公海は存在するのか?非沿岸国である米国に航行と上
空の飛行の自由は成立するのか?答えは否だ!南中国海に公海は存
在しない!米国など非沿岸国は一定の条件下で航行と上空の飛行の
自由を享有することはできるが、わがもの顔に振る舞うことは断じ
て許されない。
 「9点破線」(中国語「九段線」。南中国海で中国の主張する境界
線で、「牛の舌」とも呼ばれる)内は歴史的水域であり、公海の存
在する余地はない。南中国海は古来中国の領土だ。鄭和は7回の大航
海によって南中国海を開発し、かつ行政管轄を確立した。抗日戦争
勝利後、中華民国政府海軍は南中国海海域・島嶼を使用し始め、水
文学調査を行った。1947年には「11点破線」を主権と権益の境界線
として確立し、世界に公布したが、国際社会は反対しなかった。
1949年に中華人民共和国が成立すると、ベトナムとの友好関係から
2点を譲り、「9点破線」を保持した。これは中国地図に明記し、か
つ世界中で発行したが、関係国は黙認した。1958年に発表した領海
声明で、中国は南中国海諸島を明確に自国領と宣言した。ベトナム
のファム・ヴァン・ドン首相(当時)はこれに賛同した。1996年7月
7日の「国連海洋法条約」国内発効まで、中国は終始一貫して「9点
破線」を南中国海における中国の主権および付属権利の境界線とし
て堅持してきた。つまり、南中国海における中国の歴史的権利はす
でに1947年に形成されていたのである。1947年というのは非常に鍵
となる時間点であり、これを明確にしなければならず、断じてぐら
つかせてはならない。南中国海における中国の歴史的権利は「9点破
線」にあり、「9点破線」内に公海の存在する余地はないのである。
 また、「9点破線」外の水域も周辺国の主張する200海里の排他的
経済水域(EEZ)にほぼ覆われている。現在周辺国は基線から12海里
内の領海、24海里内の接続水域、200海里内のEEZを主張しており、
残る水域を公海としないばかりか、すでに「9点破線」を越えて中国
の歴史的水域に侵入し、中国の主権と海洋権益を著しく侵害してい
る。ベトナムやフィリピンは200海里のEEZにも満足しておらず、一
部海域を公海として残すのは不可能だ。このため、「9点破線」外に
も公海はほとんど存在しないのである。
 したがって南中国海の「9点破線」内外に公海の余地はなく、中国
は慣習国際法に基づき他国に航行と上空の飛行の自由を与えている
。それがなんと米国に南中国海を指導する口実にされたことに、人
々は義憤をたぎらせている。たとえば米国は「インペッカブル」号
が「9点破線」に侵入して、中国の取締船に追い払われた際、国連海
洋法条約を引用して中国に反論した。だが実際は米国は同条約の締
約国ではなく、南中国海の沿岸国ですらないのに、この海域でわが
もの顔に振る舞っているのである。中国は「9点破線」内における他
国の航行と上空の飛行に便宜は提供できるが、非道な行いは断じて
許すことができない。
 南中国海において「通りすがりの者」に過ぎない米国が日増しに
野心を拡大し、その支持の下で周辺国が挑発行為に出ていることに
、われわれは危機の所在を知った。われわれは各国が資源を分割す
る時代に生きている。世界の人口は70億人を突破し、資源は日増し
に逼迫している。南中国海の豊富な資源と重要な地位が各国の奪い
合いの焦点となることは間違いない。周辺国は島嶼主権と豊富な資
源を高望みし、域外の大国は「公海の航行の自由と上空の飛行の自
由」を理由に南中国海問題にみだりに干渉し、さらには周辺国と連
合して中国を形成する構えすら見せている。中国の友好姿勢はその
都度弱さと解釈されており、もし「通りすがりの者」も指導に来る
のなら、南中国海における中国の主張は徐々に敗退していくのみだ。
したがって中国はより強硬な姿勢を示すべきだ。二国間関係によっ
て周辺国と一つ一つ協議し、域外の大国の干渉を断固退け、自らの
有す「9点破線」の歴史的権利を守るのだ。(編集NA)
 「人民網日本語版」2011年11月23日
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中国が主張する南シナ海の「九段線」、フィリピンが挑戦状
By ANDREW BROWNE
2014 年 4 月 2 日 19:32 JST  WSJ
【北京】満州人が中国を支配していたとき、そこは南海と命名され
た。漁師の避難場所となった小島や環礁、礁湖が点在する海域だ。
 今日の地図で南シナ海と呼ばれる海は、国際水路機関(IHO)が
1953年に刊行した「大洋と海の境界」で英語の名称が付けられ、位
置が定められた。それは世界経済にとって決定的に重要な意味を持
っている。
 世界の海上貿易の半分以上がこの海を通って行われる。急成長を
遂げているアジア太平洋諸国と欧州や中東、アフリカの市場を結び
つけるルートで、膨大な石油埋蔵量があるともみられている。
 しかし、中国を統治している満州帝国の継承者がそのほぼ全部を
自分たちが誇らしげに復活させている古代国家の一部だとますます
強引に主張していることは、中国の周辺国のみならず米国も驚かせ
ている。
 彼らの歴史的な主張に基づく境界は、9本の境界線「九段線」で記
されている。これは中国南部の海南島から遠くはインドネシア北岸
近くまで伸びる線で、だらりと垂れた大きな舌のように、輪を描く
ように下がっている。
 「九段線」はこれまで常に不可解なものだった。旧中国国民党政
権が台湾に逃れる前の内戦終戦前の混沌とした時期である1946年に
描かれたものだ。実際、当初は9本ではなく11本だった。勝利を収め
た共産党員がこの線を採用した後、1953年にそのうち2本が削除され
た。地図作成者は規模と正確さを尊重するが、九段線は正確な位置
を示していない。太くて黒いマジックペンで書き足されたように見
える。
 さらに、中国政府がこの九段線の意味を適切に説明したことはな
い。この線の内部に点在する領域の要所に対する「疑う余地のない
主権」という中国の主張は、この線自体から発生しているのだろう
か。あるいは、その逆で、この線は領域の要所と周辺の海域から発
生しているのだろうか?
 フィリピンやベトナム、ブルネイ、マレーシアといった領有権問
題で対立する中国の周辺諸国は、想像することしかできない。
 こうした理由のため、国際法に従えば、九段線の正当性が認めら
れる可能性はほとんどないだろうというのが、欧米の法学者たちの
一般的な見解だ。
 ほどなく、この問題がはっきりする可能性がある。フィリピンは
3月30日、国連の常設仲裁裁判所に提出した4000ページの意見陳述書
の中で、九段線が無効だと主張した。こうした主張はこれまでで初
めて。九段線に法的強制力がないと判断されれば、国連海洋法条約
に基づいて設定された排他的経済水域(EEZ)内の沖合いのエネルギ
ー資源や漁業資源の開発が可能となる。中国はこれまでのところ、
法的手続きを行っていない。
 フィリピンの今回の画期的な行動には中国の反発というリスクが
伴う。中国政府は既に、フィリピン政府との政治的関係をほぼ凍結
している。ここ数日間、南シナ海のアユンギン(中国名・仁愛)礁
への物資運搬をめぐり、中国船とフィピリン船舶がにらみ合うこと
になった。
 しかし、もっと重要かつ、戦略計画レベルに発展する可能性のあ
ることは、米国がそれまでの外交的慎重姿勢を止め、九段線を批判
する勢力に加わっていることだ。
 米国務省東アジア太平洋地域担当のダニエル・ラッセル次官補は
2月の議会証言で、米政府は主権問題ではっきりした見解を示してい
ないが、中国が九段線によって領有権を主張しているため、「不確
かさや不安感、不安定さ」が増していると指摘した。同次官補はそ
の上で、米国は「国連海洋法条約に従い、中国が九段線の主張を明
確にし、調整することを歓迎する」と述べた。
 中国外務省の報道官は、「南シナ海での中国の権利と国益は歴史
的に形成され、国際法で保護されている」と述べたが、それ以上の
詳細には触れなかった。
 米国家安全保障会議で以前に中国・台湾・モンゴル関係を担当し
たPaul Haenle氏は、米国の姿勢転換につながったのは、昨年11月に
中国が尖閣諸島などを含む東シナ海上空に広い範囲の防空識別圏
(ADIZ)を設定したことだとの見方を示した。
 米政府はそれ以降、中国政府に対し、南シナ海で同じことを行わ
ないよう明確に警告している。Haenle氏は米国は「ある朝目覚めて
、この地域全体が変わっていること」を恐れていると指摘した。
 しかし、米国が示唆するように、九段線を変更することは中国政
府にとっては政治的に不可能かもしれない。中国はフィリピンの行
動をあまりにも傲慢だとみなしている。習近平国家主席のいわゆる
「チャイナ・ドリーム」に対する侮辱だと受け止めているからだ。
 この件に関する国連仲裁裁判所の判断は明らかでないが、フィリ
ピン政府の主張が認められる場合には、中国はその判断を単に無視
し、以前と同じことを続けるだろう。最も簡単な解決策は、当事国
すべてが領有権問題を棚上げし、同地域の天然資源の共同開発に焦
点を絞ることだ。
 しかし、これは中国帝国が伝統的に物事に対処してきた方法では
ない。ここ数日間、フィリピンなどの小さな諸国は、中国を頂点と
する階層の底だという身の程を知ることになった。フィリピン政府
がその秩序を乱すのを中国が黙認するとは考えにくい。


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