5013.アジアと日米関係に対する米国の視点



昨日は、ヘリテージ財団所長ジム・デミント氏の講演会に行ってき
た。ヘリテージ財団は、1973年に設立されたアメリカ合衆国ワシン
トンD.C.に本部を置く保守系シンクタンク。企業の自由、小さな政
府、個人の自由、伝統的な米国の価値観、国防の強化などを掲げ、
米国共和党の政策決定に大きな影響力を持つ。

創業したのが、エドウィン・フルナー氏であり、この2代目がジム
・デミント氏である。会場に、そのフルナー氏も来ていた。

しかし、現在は民主党政権であり、ヘリテージ財団には光が当たっ
ていない。このため、報道機関も来ていないし、昨日のスタインバ
ーグ&オハンロン氏の講演会に比べて聴衆も多くない。しかし、共
和党の2016年の大統領選挙には、この組織は政策等で大きな力
を発揮するはずである。その動きを聞きに行った。

オバマ政権は、中国やロシアに対して弱い感じがする。日本に対す
るコミットメントについても疑いを持っている日本人が多い。今後
、保守勢力は安定して、次の政権を狙えるのか?と中山慶大教授の
言葉で始まった。

(ジム・デミント氏の講演)
初めての訪日です。

米国は自由な国民の権利を守るために国が出来た。もちろん、アジ
アの自由を堅持するのが、米国の役割である。米国は、理念ででき
た国であり、独立宣言に全人類の自由のために作られたと述べてい
る。

全人類の自由を保証するためには、グローバル・リーダーである必
要があり、その観点から政治をするのが米国である。

一番、自由が現れるのが経済の自由であり、宗教の自由や政治の自
由などの全ての要素を含んでいる。そして、ヘリテージ財団は、全
ての国の経済自由度の順位を毎年発表している。

経済的な自由度では、1位が香港、2位シンガポールであり、オー
ストラリアはリセッションを経験したことがないというように、ア
ジア・オセアニアは経済自由度が高い。そして、日本は25位、中
国は130位である。

そして、米国に経済的移民が来て、成功しているのが中国系、韓国
系であり、日系も成功している。

米国は国内政治で見本を示す必要がある。米国政府が国内経済に関
与すると自由を制限することになる。そして、国民を分断すること
になる。

現在の中国は、マルクス主義ではないというが、自由を制限した独
裁政治であり、共産主義と変わらない。しかし、現時点、経済が発
展しているというが、一般の民衆は繁栄していない。

中国は、日米を見て分断させようとしている。そして、米国の決意
を確かめている。そして、日韓関係は、歴史問題が有り、懸念をし
ている。和解がないと敵が大喜びするだけである。ここでは分断が
成功している。

政治の自由の価値観を米国は他国に押し付けてはいけない。米国の
国内統治で模範を作ることであると思っている。

現在の米国の国家債務のレベルは持続しない。このため、政治的な
混乱になる警告している。再分配を偏って行うのはよくない。

経済の自由の1つとして、国際貿易の自由化があり、NAFTAの自由貿
易協定にヘリテージ財団は賛成した。保護主義を米国は取るべきで
はないと思う。TPPは賛成であるが、どれだけ自由になるのかを見て
判断をしたい。

中国の攻勢に、日本と米国は一緒に対抗する必要がある。台湾法を
米国は持っている。しかし、現在、台湾は経済的な発展のために、
中国に寄っている。台湾をTPPに参加させることや米国とFTAを結ぶ
などを支援するべきである。

米国が強くないと、同盟国は付いて来ない。米国の軍事費縮小の方
向は良くないと見ている。そして、同盟国とのコミットメントを尊
重するべきである。

このため、オバマ大統領の政策に反対している。リベラル的な考え
で米国が変わってきてしまった。米国の国家原則を尊重する事が重
要と思う。

(Q&A)
Q1:中山先生から、米国には世界の方向を作るという理念があった
が、オバマ大統領は自覚的にそうしていないように見える。そのた
め、多くの国が米国に不安を感じている。
米国の意思の部分で、リベラルは海外に軍が出ていくことは悪いと
言い、保守は自由を守るために世界に出ていくべきとしていた。
しかし、最近、保守層でも違う意見が出てきた。それを説明して欲
しい。
A1:人間は平等という理念があるが、それを押し付けることはしな
い。そして、保守層には、リバタリアンと孤立主義がある。
世界の指導者からは、米国が強くなって欲しいと聞く。主導して欲
しいと聞く。自由を守るためには強い力が必要である。力を持つこ
とで平和を保証できる。軍事費は債務ではあるが、防衛力を保持す
ることは、必要である。

Q2:保守主義運動の展望、ビジョンはどうなるのか?
A2:原則が重要で、それには歴史的、政治的に分析することである。
そうすると、小さな政府が重要であることが分かる。長い間では保
守主義の政策の方が経済的に豊かになる。しかし、現在、国際的な
介入が拡大したので、多くの国が豊かではなくなっている。
このため、米国のエネルギーを開放することである。同盟国が敵に
依存する必要をなくすことである。
もう1つが規制をなくすことである。

Q3:台湾関係法を日本でも作ろうとしているが、アドバイスをして
欲しい。
A3:ヘリテージ財団のウォルター氏が回答:経済的な面で台湾を助
けることができる。台湾は防衛でも苦労しているので、潜水艦の技
術などで助けることも出来る。FTAでも良い。日本の高官が訪台する
だけでも良い。

Q4:NSAが世界で謗聴活動をしているが、どうでしょうか?
A4:これはオーバー・リーチであると思う。バランスが重要であり
、信頼関係の方が重要である。

Q5:共和党は右に引っ張られている。ジレンマがあるのではないか
A5:共和党は、今は少し前に比べて穏健化した。ティーパーティも
いろいろな人がいるが、大きな政府が問題であると言っている。今
、米国は中央集権に向かう悪い方向にある。
草の根運動が盛んで、強い保守派の政治家がいなくなった。しかし
、共和党は30州に知事がいる。米国は地方分権であり、伝統的に
連邦主義である。

Q6:保守主義を広く国民にアピールすることが必要ではないか?
A6:マーケットを理解する必要があると見ている。得票に来る人、
どちらの党に入れるか迷っている人などに有効な広報は重要であ
る。

Q7:共和党の支持率は下がっているが、それを上げる方法は?
A7:連邦制度として、中央政府から地方に権限を持っていくことで
ある。

Q9:格差が拡大しているが、どうか?
A9:政府が介入すると経済格差が広がる。中央政府は経済介入を抑
制するべきである。

Q10:社会福祉についてどう思いますか?
A10:フードスタンプはやり過ぎ。このため、福祉は拡大している。
労働に戻れるようにすることが重要である。

Q11:中山先生から最後に2016年の大統領に共和党からはどのような
人が出てくるのか?
A11:今の保守派では選挙に勝てない。今はアイデアを耕す時である
。環境を作ることである。ヘリテージ財団の役割は、このような環
境を作り、保守派を勝たせることである。


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