4986.アジアにおける日米関係の価値



昨日は、デニス・ブレア元米国家情報長官、元米太平洋軍司令官の
講演を聴きに、日本財団に行ってきた。岡崎久彦さんや笹川平和財
団の羽生次郎会長、防衛庁の関係者、新華社の記者、ロシア大使館
など、多くの報道機関の記者を多く、満席であった。それだけ、デ
ニス・ブレア氏が何を言うのか、注目されているのであろう。

ブレア氏は、1983年から1986年まで横須賀の「キティ・ホーク」攻
撃群の司令官であり、日米関係については知見が高いし、知日家で
ある。ブレア家は、6代に渡る海軍士官の家でもあるという。

(講演)
ワシントンの桜が今年も咲いている。1910年に桜の苗木が日本から
米国に送られたが、虫が付いていたのでダメであったが、1912年に
再度送られ、この苗が咲いた。1934年から桜祭りが始まった。この
時期、日米関係は難しかった。

そして現在、ワシントンでは桜祭りが今年も開催されている。
2014年、米国の世論は、世界のリーダになるのは、もう嫌だという
声が多い。イラクやアフガンの戦争で米国の利益になっていないの
で、世界の問題に関わるのは嫌というものである。

そして、金融取引がグローバルになり、もう戦争は必要がないとい
う。問題国は経済的に締め上げればよいという。

日本でも経済が悪くなり、内向きになって世界を見ないようである。
中国や北朝鮮を安全保障上の脅威とは思っていないようである。

日本の若者は、第2次大戦を知らなく、安全保障に関心がない。
ネガティブな面だけではなく、ポジティブな面もある。米国は、や
っと、東アジアを重要視してきた。米国は、今まで中東やロシアに
目が行っていた。それが変わってきた。

そして、アジア太平洋のTPPが重要になってきた。中国もTPPを重視
し始めてきた。日本もTPPに関心を寄せている。また、日本は安全保
障の予算を増加させた。3本の矢で経済成長にも取り組み始めた。
日米同盟が強くなることを確信する。

憲法の解釈も変えるという。世界の原則を考えると正常な状態にな
ってきた。

中国の台頭は、それまでの中国への欧米日本の侵略などに対する憤
りから経済や軍事力を強くして、今までの奪われた誇りや領土を取
り返そうとしている。

それに対して、日本や米国は、中国に敬意を払うが、民主化や自由
化が必要ではないかと問いかけている。ここが中国とは違う。

このままでは、日米と中国の戦争は間違えないと皆はいう。

経済を見ると、中国GDPは、日米の1/3、日欧米の1/5である。第2次
大戦前夜、日独伊3ケ国GDPは米英の1/3、米英露の1/5である。

中国の経済拡大で、貧乏を追放した。しかし今でも1日2ドル以下
の国民が5億人もいる。1914年のソ連と同じ状態であり、1人当り
1500ドルであり、帝政ドイツとは違う。中国の経済は相互依存が高
く、中国も平和が必要である。しかも、それを知っている。

このため、中国の名誉を認めることが必要である。中国との対話が
必要である。国際的なルールを維持するだけでは平和ができない。
新しいルールを提案するなり、合意することが必要である。相互理
解が必要なのである。相互依存関係があるので、広い範囲の人たち
が対話している。

しかし、現在、日本との関係が悪く、貿易ができないという声も聞
く。米国は、中米での共同研究や留学生交換など交流をしている。
米国人は、10万人を中国の大学に留学させる計画がある。

そうして、非公式な議論を重ねるしかない。議論するしかない。そ
して、攻撃的な中国を変えるしかない。長期の対話と関与で関係を
よくする。

中国にハードパワーからソフトパワーへと誘導していくことである。
しかし、軍事的には対等な状態にする必要があり、準備はする必要
がある。

中国の軍事費は毎年10%以上増加している。人民解放軍は強力に
なっている。これに対して、中国ほどには日米は努力をしていない。
しかし、日米の軍事費は、現時点中国の3倍もある。米国は減少に
、日本は増加になっている。

中国に、日米と戦うと大きなダメージを受けることを示すことであ
る。日米は中国を封じ込めるのではなく、中国の利益などを認めて
、平和的な解決に誘導することである。

そして、日米軍は、統合化することが必要である。日本は戦後、自
制的な姿勢であったが、変化することが必要になっている。

中国や北朝鮮の攻撃に対して、日本と米国は共同して守るしかない。
集団的な防衛で、軍事的な侵略になることはない。枠組みを作るこ
とである。中国と均衡な状態にしないと危ない。

ワシントンの桜を維持するにも、枯れた木は植え替えるなど手を加
えていくことである。これと同じで、近代化、国際化を日米はする
ことで、平和を維持できる。

(Q&A)
Q1:アジアへのピボットに米国は本気ですか?
A1:リバランスを米国も民主国であり、計画通りにはできない。予
算を中東からアジアに持ってくることではなく、意識を変えたこと
である。

Q2:日米間の理解不足があるが、何を日本は米国に発信するべきか?
A2:日米防衛体制は、99%支持されている。しかし、疑う意見もある。
国民が対話をして、支持を取り付けることである。30人の上下院議
員が笹川平和財団により日本に来ている。ここで学んで帰るはすで
あり、選挙民に良い影響を与えるはずである。

Q3:沖縄の5千人の海兵隊をグアムに移すのは、即応力を失くこと
になるのではないか?
A3:部隊の配置は、軍事的だけではなく、政治的に決められること
である。長期的な安定が必要であり、現状を考えると妥当である。
輸送の時間という問題があるが、政治的な問題とのバランスが必要
だ。日米両軍は、基地の共同化も行い、同盟深化を考えるべきであ
る。

Q4:中国に対して、オバマ大統領は弱く、反対に安倍首相は強いよ
うであるが、どう思うか?
A4:判断は難しい。技能や性格などを評価する必要がある。重要な
のは、能力と結果である。フォローアップが必要であり、両首脳は
路線を揃える必要があるだ。そして、中国に制限を付け、日米は新
しい方向を出すことである。

Q5:新華社の記者、つい最近、沖縄の米軍司令官が東シナ海の島は
防衛できるというコメントをしたが、どう思いますか?
A5:他人が他国を見ると、謀ごとのように見えるかもしれないが、
軍事行動的には、新しい要素が出ているわけではない。軍事的な行
動より、外交が必要なのである。

Q7:ロシア大使館、中国の台頭で、イージス艦を2隻、日本に送り
というが、緊張を高めないか?
これを同じことを中国がしたら、ワシントンはどう反応するのか?
A7:北朝鮮のミサイル防衛のために送るのであり、これは必要なこ
とである。
ソ連の潜水艦が大西洋の米国の港の近くを彷徨いていたときも、国
際的なルールで認めていた。ということで、反応しないですよ。

Q8:ブレアさんは退役軍人で政府の要職もしたが、何かできないこ
とはあるのですか?
中国軍の体制については、どう思いますか?
A8:退役軍人ができないのは、国防長官だけです。これは禁止法が
ある。
中国の軍人が共産党に属している。国民の軍ではない。これが大き
な問題。

Q9:リアリストのミアシャイマなどは、中国が台頭して、最後には
戦争なるというが、これに対しては、どう思いますか?
A9:ミアシャイマには、NOですね。準備的な体制を作るが、戦争を
しないことである。





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