4938.デジタル言語学の結論



デジタル言語学の結論
From: KUMON KIMIAKI TOKUMARU

「概念の分子構造」「文法の量子生力学」(+脳と心のメカニズム「知能の論理分
解」)

デジタル言語学は、デジタルという言葉の定義を模索しつつ、5年間にわたっ
て、現生人類と言語の起源およびメカニズムについて、検討 をつづけてきました。

最終的にたどりついた地平、おぼろげながらわかったことは、以下のとお りです。

(1)ヒトの言語は、ヒト以外の動物の脊髄記号反射が、「音素」と「アクセン
ト」という音節の論理性のおかげで、デジタル進 化したものである。

(2)音素は、重複順列によって、無限の造語力を与えた。ブッシュマンだけがも
つクリック(舌打ち音)が最初 の音素である。

(3)続いて、アクセントが出せるようになる。アクセントとは、喉頭が下がっ
て、肺の空気を口から出せる、ヒトに固有の発声 器官の獲得によって出せるよ
うになった。喉頭から舌の根(垂直部分)、舌の根から口先まで(水辺部分)が同
じ長さで直角だから、母音のフォルマント周波数が出るのだ。

(4)アクセントの拍(モーラ)性によって、ひとつひとつの音節が相手にちゃんと
届くようになり、文法 が生まれた。文法とは、「主として単音節の論理スイッ
チの付加あるいは変化によって、記号の意味のつながり(接続)や修飾を行うも
の」と定義できる。(シンタクスは文法ではない?)

(5)こうして、概念を文法でつないで複雑なメッセージを交換できるようになっ
た。これが人類の進化のエッセンスである。

言語の欠点・弱点: 上のことがわかると、言語の欠点や弱点がみえてく る。

(6)言語は、脊髄記号反射の運動ベクトル処理を、文法の論理ベクトル処理に転
用しているために、運動反射機能を犠牲にす る。文法を覚えたあたりから、人
間は危険が近づいても、逃げなくなる。交通事故で車が近づいてきても逃げない
から怪我をする人が多い。

(7)反射というのは、考えることなく即座に対応することである。そのため、嘘
に弱い。よく考えて行動することも得意でな い。

(8)脊髄記号反射は、あらかじめ言語の受容体が脳の脳幹網様体に形成されてい
なければ、刺激に対して対応できない。そのた め、新しい単語に対応できな
い。また、すでに知っている単語が、別の意味で使われていたとしても、知って
いる意味しか思い浮かばない。

(9)新しい単語を獲得するためには、脳幹網様体に単語の波形に対応した抗原提
示分子(受容体)ができ なくてはならない。また、脳脊髄液中に抗原に対応するB
リンパ球の抗体がつくられなければならない。そのためには、その単語を 学習
しなくてはならないという意識と一定の時間が必要である。

(10)五官の記憶にむすびつく新しい意味を獲得するために は、いったん単語の
記憶がつくられた後で、その単語の記憶に対応する五官の記憶がつくられる必要
がある。食べたことのない料理は、自分で それを食べてみるまで、意味は生ま
れない。同じ料理でも、おいしいものを食べるか、マズイものと食べるかで意味
は大きく違ってくる。

(11)五官の記憶にむすびつかない新しい意味を獲得するため には、脳内で、何
度も何度も概念の論理操作を行う必要がある。論理の記憶のネットワークとし
て、抽象概念の意味は成立する。非常にデリ ケートなものである。

(12)同じBリンパ球が、五官の記憶とも、論理の記憶ともむすびつくので、混乱
がおきやすい。種類の違う概念が、同じ細胞によって 記憶されている。概念の
多様性については、別途教え、論理的にきちんと区別しておく必要がある。

(13)文法を司る分子構造としては、免疫グロブリンの二元論 論理が使われる
が、同じ二元論論理が、論理的思考や感情に使われていると考えられる。そのた
め、運動反射・感情・論理的思考・文法は、ト レードオフ(二律背反)の関係に
ある。つまり感情的になると、論理的になれず、文法的に正しいからといって論
理的に正しいとはいえず、文法を 気にすると体が動かないといったことである。

(14)ヒトの意識は、脳室内の免疫ネットワークである。これ はいったん構築さ
れると、ひとつやふたつの例外があっても、無視するか、平然と飲み込んでしま
う。この意識の免疫ネットワークにもとづい て、人は正邪を判断するが、じつ
はその免疫ネットワークは、過去にえられた偶然の体験の蓄積でしかない。今の
問題には対応できない。たと えば、2011年3月以降の放射性物質による内部被曝
の脅威を耳にしても、経験がないために、それがそれほど危険だと思わない。


そして、デジタル言語学は、いよいよ生成文法のメカニズムを解明します。
その結論は、予想外にも、サルでも文法がわかるというものでした。
これは鈴木先生の研究会 タカの会に参加したおかげで、こういう
結論に導かれたのだと思います。

得丸公明 (思想道場 鷹揚の会)

結論

1. 生成文法が免疫細胞の論理なら

1.1. デジタル言語進化は喉頭降下だけでおきる

今 から7万7千年前に南アフリカで,ブッシュマンがクリック子音という音素を
獲得し,語 彙が爆発的に増加した.クリック子音を多用することで舌筋が継続
的に刺激され,今から6万6千年前に,現生人類に特有の下顎骨が発達し,喉頭降
下がおき,肺気流を口か ら吐き出すことによって母音の発声が可能となった.

南 アフリカ共和国のインド洋・大西洋沿岸では,7万7千年前にスティルベイ
(Stillbay)新石器文化が花開き,6万6千 年前にはより精密な石器や骨角器,ダ
チョウの卵の装飾を伴うホイスンズプールト(Howiesons Poort)の時代となっ
た.このとき,喉頭降下にともなう母音のアクセントによって,すべての音節が
相手の耳に 届くようになり,「主として単音節の付加または変化によって,意
味の連接や修飾を指示する論理的スイッチであり,習得するとそれを無意識 に
使いこなせる」文法が生まれた.

本 稿で検討したように文法処理に脳の支援は必要とされないので,現生人類
は,身体器官としては喉頭降下だけで誕生したと考えてよいだろう. 日本語の
表記どおり「母音」が人類を生んだのだ.

ヒ トに固有の生成文法は存在しない.多細胞生物に共通の免疫細胞がもつ二分
法と二元論が文法を処理する.またまだ誰も発見していない脳内の 言語獲得装
置は必要でなく,言語中枢は存在せずとも,免疫細胞の分散処理ネットワークで
言語は処理できる.

1.2. ヒト以外の動物も文法を理解できる

喉 頭降下の起きていないヒト以外の動物は,母音や音節を発声することができ
ない.しかし,彼らに長い時間をかけて話しかけ,概念や文法の教 え方を工夫
すれば,むずかしい概念や文法も聞いて理解できるようになると思われる.もし
手先の器用な動物に手話を教え,あるいはカタカナ やひらがななど音節文字
キーボードを与えれば,文法を交えた多彩な言語表現も可能となることが予想で
きる.手話を教わったティムは,時間 がかかったものの,「あなた」や「私」
の代名詞を使えたと記録されている(19).

1.3. 人間らしい言葉の使い方を求めるべきとき

シ カゴ大学の実験によれば,「チンパンジーに手話を教えると憎まれ口や嘘ま
でつく」,また「貨幣を教えると売春や強盗まで発生する」という(20).

こ の実験結果は,嘘や憎まれ口をついたり,犯罪や売春を行うヒトは,まだ人
間になりきれていない獣の状態にあることを示唆する.

日 本では古くから「サルとヒトは毛が三本」の違いに過ぎないと言われてき
た.中国の古典である「孟子」にも,「人と禽獣と異なっている処 は,ほんの
わずかな点である.一般庶民はその違いを失うが,君子はそれを保持する」(離
婁・下)という言葉がある.孔子は「名を正せ(物の名前を正確にしなさい)」と
教えた.

デ カルトは「方法序説」第5章で,文法を使えることは理 性の証明であると
語った.しかし,たまたま喉頭降下によって母音を発声できるから,ヒトは文法
を使えるだけであり,理性や判断力という点 でヒトとヒト以外の動物に差はな
いのではないか.

む しろ文法と理性は同じ免疫細胞の分子構造を使っているためにトレードオフ
の関係にある.そのため,ヒトは理性を欠いた言動に陥りがちであ ることに注
意すべきだ.そして,万物の霊長と自ら名乗るにふさわしい,人間らしい言語の
使い方を,求め,考え,実践するべきであろう.





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