4936.米国から見た「アベノミクス」



面白そうなので、昨日24日にホテル・オークラにアダム・ボーゼ
ン氏の講演会を聞きに行った。今日はニューヨーク・タイムズやロ
イター、ウォールストリートなどの東京特派員がいて、ロイターは
既に、記事になっている。

アダム・ポーゼン氏は、イングランド銀行(英中央銀行)の元委員
で、現在米ピーターソン国際経済研究所(PIIE)所長である。
(講演)
米国経済学者は、70年代、80年代の日本の経済政策について肯
定的ではなく、経済政策に不満であった。しかし、現在はそのよう
なことはないが、日米でハイレベルの対話をすることが必要である。

アベノミクスについては、米国人の多くはあまり知らないので、米
国の見方というと違う。ここで述べるのは、私の見方であり、しか
し公平に客観的に見ることを心がけている。

この観点から見ると、現在のアベノミクスは非常に良い方向である
と思う。今まで私たちが言っていたことを実行している。

優先順位を上げて構造改革をしてほしいが、3本の矢では、1の矢
、2の矢は上手く行っているので言うことがない。

欧米の状態もここ数年、厄介なことになっていると思っている。金
融緩和をしてもインフレも起こらないし、何も起こらない。しかし
、日本は物価が上がり賃金も上昇するというので、1年間で、ここ
まで来るのは非常に良い。

財政面でも、アベノミクスでやっていることは正しい。税金を上げ
一時的な公共事業を行うなど、長期と短期の2つをミックスしてい
るのはファンダメンタル的にも正しい。

日本政府は、円安にするために2004年までは為替介入をしてい
た。しかし、2011年の東日本大震災時以外では、為替介入をし
ていないのは良い。この代わりに金融緩和をして円安にしても輸出
額が増えないが、輸出企業は大儲けしたように、これは国内対策で
しかない。

3つ目の矢の成長戦略に移ると、構造改革が必要である。ロンドリ
ー・リストで30項目も作り、環境、貿易などを要求しても全ては
できない。これはワシントンでも同じである。このため、絞ること
が必要である。

絞った4つのことを行うことである。
1.女性の社会進出、2.農業改革、3.労働市場が2つに割れて
いることの改革、4.規制緩和である。

1女性の社会参加で、日本の減少する労働力を維持できる。財政問
題も解決できる。この女性参加には保育所の拡大や女性管理職の増
大が必要になる。

2農業改革はどの国でも改革が必要であり、米国も日本には開放を
言うが、自国の砂糖などは守っている。しかし、改革を推進するた
めにTPPを使うことは有効である。5年程度経てば、農民が高齢化し
て、黙っててもできるという人もいる。

3労働市場は規制緩和の問題ではない。日本、米国、英国とも規制
が少ない分野である。失業後の次の職を得るための訓練などが必要
である。日本も正規社員と契約社員の2つに割れている。この分野
では、欧州の労働政策が参考になる。

4規制緩和であり、自由競争にすることである。医療関係などが改
革が必要である。

アベノミクスとは何かというと、安倍首相の動機は日本を強力にし
て、中国に支配されないことであり、アジア諸国と一緒に中国の支
配を拒否することであると見る。

バイタルな同盟国になるために、リベラルで豊かな経済が必要であ
る。これは安全保障のために必要なのである。

しかし、日本にはその状態するための時間がない。このため、野心
的な正しい優先順位を持った経済政策が必要なのである。もっと野
心的であるべきであり、5年以内に結果を出すことが必要なのであ
る。

(Q&A)
Q:野心が大きくないというが、野心を大きくする方法は?
A:どこも組織は問題を持っている。やれることから行うことである。

Q:都市と田舎の関係でできることがあるのではないか?
A:自由経済では自由を制限できないので、難しい。

Q:自由市場をどう作るのか?
A:自由市場が良い場合と良くない場合がある。労働市場、金融市場
などは規制も必要である。

Q:デジタル産業が日本では崩壊したために、苦しいのではないか?
米国のようにシェール・ガス産業などの新産業が必要ではないか?
A:ソニー、パナソニックが苦しい。米国シェール・ガスの雇用力は
大きくない。エタノールは逆効果になった。日本もイノベーション
を起こす必要があるが、出てくると思う。政府が起こすことではな
い。

Q:経常収支が赤字になり、どうすればよいか?
A:原発再稼働が出てくる。一般論としては、増税することである。
今のレベルの赤字を25年間続けても、日本はギリシャにはならな
い。

Q:TPPの成功の可能性についてどう思うか?
A:TPPについては予測を変える必要がある。リード上院議員が選挙が
終わるまで議決しないという。このため、慎重な見方にする必要を
感じている。

Q:賃金UPを安倍首相は企業に要請しているがどうか?
A:民間部門が賃金をUPさせたら、それは良いことである。一時金で
も、ないより良い。

Q:政治面ではどうですか?
A:政治面はコメントしない。しかし、周辺国をイラただせることは
必要がないと思う。不用意な発言はしないことに越したことはない。

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アベノミクスの動機は安全保障=元英中銀委員ポーゼン氏
2014年 02月 24日 19:16 JST
[東京 24日 ロイター] - イングランド銀行(英中央銀行)の
元委員で、現在米ピーターソン国際経済研究所(PIIE)所長を
務めるアダム・ポーゼン氏は24日都内で講演し、「アベノミクス
の動機は日本を豊かにするためではなく安全保障」と指摘。「日本
が中国に支配されずアジアの新しい秩序構築でより強力な役割を担
うことだ」との見解を示した。

<靖国、参拝してよい訳でない>
ポーゼン氏は、日本がアジアで重要な役割を担うためにも、「日本
は1.75%程度の持続的な経済成長と、消費税率の20%までの
引き上げが必要」との見解を示した。

もっともポーゼン氏は「(安倍晋三首相らが)靖国神社に参拝して
いいと言っているわけでない」とも述べ、「中国や韓国が苛立つよ
うな象徴的な発言は控えるべき」と釘を刺した。沖縄県尖閣諸島な
どの領土問題や改憲問題に対してはコメントを控えた。

<経常収支の赤字傾向「危機でない」>
日本が渡辺博史元財務官の時代以降、震災直後を除き為替介入を止
めたことを評価。「米国がハッピーなだけでなく、アジア各国にも
重要なメッセージ」と述べ、中国など為替介入を続けるアジア各国
をけん制する姿勢を示した。

経常収支の赤字傾向について、「要因はアベノミクス(による円安
傾向)でなく原子力の問題だろう」とし原発稼働停止による化石燃
料輸入増加が主因との見方を示した。「日本は貯蓄や外貨準備が多
く25年ぐらいは余裕があり、危機ではない」と述べた。

<特区利用の労働市場改革、まだ不十分>
金融政策や物価については、「ここ数年の米国や欧州の経験で明確
になったのは、インフレ期待は賃金や物価に対してなかなか働かな
い」との見解を示した。

安倍政権の成長戦略では、女性の登用拡大や保育所の拡充を高く評
価。民主主義国で女性に選挙権があり、女性の教育水準が高いにも
拘わらず、女性の管理職など増やす余地があるとした。

また特区を利用した労働市場の改革を評価しつつ「まだ十分でない
」と指摘した。
(竹本 能文)




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