4935.持続可能なのは植生文明?



中国などの新興国が経済成長して需要が増えたことで、石油やその
他鉱物資源の値段が上昇して、徐々に1970年代に予測されたローマ
クラブの報告書が、現実的な姿で目の前に現れたようである。
                  津田より
0.2つの論争
プロジェクト・シンジケート誌で、「Post-Growth Growth Models」
と「The Davos Apocalypse」という正反対な意見が掲載されている。

私も、どちらの意見も正しいと思うので、最後にリンクがあります
から読んでください。概要は、1つ目は、これからの成長には持続
可能な方法で経済発展させないといけないと。資源が枯渇したり、
CO2で温暖化問題が深刻化して人類を脅かすと。それは頷ける。

しかし、もう1つは、ダボスで世界的なトップ層が、このまま、CO2
を排出すると地球が大変なことになると今にも人類滅亡のようなこ
とを言うが、それは大きな間違いであるという。CO2が増えると植物
が繁茂するので、人類にとって良い面もあるというのだ。

今の温暖化問題で、太陽光、風力や藻からの石油など持続可能なエ
ネルギーが高いので、それを使うと経済成長を阻害していることに
なるという趣旨である。これも正しい。

そして、1972年に出されたローマクラブの報告書「成長の限界」は
、2030年前後に世界人口減少が始まり、世界は急速に崩壊に向かう
という衝撃的な予測を行ったものであるが、つい最近、この報告書
を検証したら、その軌道にかなり一致して世界は動いているという
結果が出ているという。

私も大学時代に、このローマクラブの「成長の限界」を読んで宇井
純さんの公害原論を読み、かつ大学の目標コースを大幅に変更した
思い出がある。

しかし、大学後会社に入り、実務をこなす間に忘れてしまっていた
が、40歳になり今後の社会はどうあるべきなのかを考え始めた。

そうすると、江戸時代の仕組みが持続可能な社会であることを知り
、その研究成果をこのコラムでも述べている。そして、その持続可
能な日本ができる背景は何かということを調べたくて、古代史や大
和朝廷ができた当たりのことを調査しに、奈良に何遍か通い、構想
をまとめたが、これもコラムにある。

というように、日本の成り立ちを追うと、その先に未来の社会の形
が薄らと見える気分がしている。

1.持続可能な社会とは何か?
そして、現在、古代から続く自然信仰を調べようとしている。自然
神道とは何かというテーマが、ある人からの要請で調査開始した所
である。

この詳細は、現時点では依頼者から口外を止められているので詳し
くは、お話ができないが、しかし、有料版読者には少しお話したい。
日本の基底には、照葉樹林文化(ナラ・ブナ林文化)+稲作・神道
文化+仏教思想+儒教思想であり、それぞれの文化を日本に持ち込
んだ民族が違うようだ。そして、このミックスが日本人を作ってい
る。この詳細は、依頼者の許可が出たら、詳しく述べるつもりであ
る。

この絶妙なバランスが日本人の思想の根底にあり、他民族に比べて
も秩序正しい、食文化が豊富で保守的な人たちを作ったが、戦後、
今までの伝統文化はいけないと教育したことで、少し崩れている。

しかし、もう1度、その伝統文化を取り戻して、今後の社会を考え
る必要にあると思っている。これは自然神道を取り戻すとも言える。

その基盤は植生文明である。植生文明は他国と争うことを必要とし
ない。鉱物や石油資源をあまり必要としないので、海外植民地を持
つと、戦前の日本のように貧乏になる。敵を作り、植民地の開発を
行うために、国内資源を持ち出してしまうためである。

なぜなら、植生文明国はすべての基本を植物や魚などに求め、それ
を発酵や加工などして、旨みや多様なタンパク質を含む美味しい食
事や植生からの日常品ができるからである。また、生産方法を植物
の個性に最適化すればするほど収穫率を大きく上げることができる
からである。不断の努力が大きな違いを生む。

そして、石油からつくる物も、漆や膠など植物で代替可能である。
量が問題なだけである。

または、昔、それまで日本になかったクスノキを樟脳などの薬用に
持ってきたことが知られているし、このクスノキは神社の敷地内に
しかない。一般地にはほとんどない。そのように世界から有効な植
物を探して持ってくることで、持続的な薬草の生産ができるのであ
る。

また、接木などという方法で、上の木と下の木を繋げて、自然界に
対して強く、人間に対しては有効な木ができることや、有機栽培の
ように、多様な植物のホルモンの相互作用で害虫、病気を抑えるな
ど、多くの手法、文化が、その裏に確立している。

これを高精度に高度化したのが日本の江戸時代である。このため、
江戸時代が終わり門戸を解放すると、中国や朝鮮の米の生産性が2
倍以上も違うことになっていた。

これが、リサイクルしなければ一度きりの鉱物資源とは違う。そし
て、藻から石油ができることも分かり、植生でできることの範囲が
広がっているのである。その上に、微生物の利用でいろいろな植物
ではできない物も、生み出されている。

その基盤である植生文明をどうしたら、復活できるのであろうか?
藻谷さんが里山資本主義が大きな提案となっている。(最後にリン
クあり)

里山だけではなく里地、里海など、人間が手を入れることで自然の
多様性を増すことができるが、このような植生の多様性を増して、
それを商品や食糧にして行くことで、日本は持続可能な社会を形成
できると見ている。

藻谷さんは、里山では木質パレットのエネルギーと木材生産を2重
に生み出せるというが、里地では畑作生産と耕地の上に太陽光を付
けた2重での生産で生活ができるし、里海では風力発電、波動発電
と養殖魚、養殖昆布などで生活していける。それも生産から販売ま
で行う6次産業化で中間マージンを極力なくすことで、手取りを増
やすことである。

現在、最新技術の活用で、エネルギーが自然界の現象で生み出し可
能になり、小電力なら実現可能になっている。少なくとも、エネル
ギーについては地産地消ができて、その部分でのコストがかからな
いことになる。

このように田舎を豊かにすると、その生産現場の道具や機械や通信
などサービス、物流の裏付けを作るのが、都市の役割になる。

2.里地環境を作るためには
人が住み、そこに手を入れることで、里山、里地、里海ができるの
で、それをどのように形成するかが、大きな課題になる。

農業の自由化が大きいが、その他に流通改革や都市市民の意識改革
も必要になる。それと発電設備構築の資本力も必要になる。その地
で、一番効率が良い作物は何かという診断も必要になる。

このように個人より組織的な仕組みが必要になり、会社組織で運営
できることが必要になってくる。その資本を貸し付ける機関なども
必要になるし、希少な木を見つけて来る人も必要になり、それを植
える人たちも必要になるなど、分業化が起こる。

特に漢方の薬草や西洋の薬の材料になる木などを見つけてきて、こ
の多様な温帯気候を持つ日本のどこに植えれば育つかなどの情報を
整備することも必要になるし、サントリーが生み出した紫のバラの
ように自然界にない品種を作ることも大きな商売になるはずである。
または、植物工場で、熱帯地方の木を育てることもできる。

このような意識の社会を、日本は80年前まで現実にあり、かつ、
その意識を持っていたのである。

このため、各地で植物の収穫期に祭りを行われて、自然のめぐみに
感謝していたのだ。

この話をすると、人工光合成など人工的に植物の光合成を行なう研
究のことが出てくるが、まだ、当分先にしか、その社会はできない
ので、今は多様な植物に蛋白質の加工をしてもらい、その営みを助
ける立場で人間がいることである。

さあ、どうなりますか?



参考資料
Post-Growth Growth Models
http://www.project-syndicate.org/commentary/simon-zadek-highlights-economists--recent-advocacy-of-policies-that-account-for-environmental-and-social-outcomes

The Davos Apocalypse
http://www.project-syndicate.org/commentary/bj-rn-lomborg-criticizes-global-leaders-for-creating-an-atmosphere-of-panic-about-climate-change

里山のチカラ:藻谷さんとNHKが共同で作成したサイト
http://www.nhk.or.jp/eco-channel/jp/satoyama/interview/motani01.html



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