4934.オバマ外交が変化したのか?



このコラムでも何遍も述べているが、オバマ外交は、日本と中国の
主張のバランサーでしかなく、外交の方針がないように見えると、
述べた。この見解と同じような評論が、アメリカン・コンサーバテ
ィーブ誌の「Obama, Paul, and Jeffersonian Foreign Policy」や
ナショナル・インタレスト誌「Obama's Foreign Policy to Nowhere」
で述べられている。

オバマ大統領より共和党ランド・ポールの方が外交的にはリアリス
トであり、オバマを海外展開に積極的であったジェファーソンと比
較する意味がないと、アメリカン・コンサーバティブ誌は言うし、
ナショナル・インタレスト誌は、オバマ外交はシリア問題を見ても
何を目的にしているのか分からないという。オバマは、漂流してい
ると述べている。

人権外交を進めたクリントン前国務長官時代のオバマ外交とは明ら
かに違うし、その方向に米国民もあることは明らかになっている。

このため、リアリストのステファン・ウォルト氏がオバマ外交の舵
取りをしているというが、米国リアリストの多くが、オフシェア・
バランシング戦略を推奨している。

オフシェア・バランシング戦略なので、米国は世界から引くので、
各地域で、それぞれの強国が責任を果たして欲しいと言うが、東ア
ジアでの強国は日本と中国であり、そのどちらもナショナリズムを
政府が率先して行い、戦争になる危険性がある。

欧州のNATOは、アフリカ問題や中東問題を積極的に介入して、
米国の代わりを果たせるが、米国は日本にその役割を期待したが果
たせないと悩んでいるようである。

米国が、日本に代わって、中国に向き合うしかない状態であると認
識し始めた可能性がある。バランサー外交から東アジアでの紛争に
ある程度、積極的に介入する可能性があるとうことである。

米国の選択肢は、日本の自主性を高めて米国から独立させて、中国
と対抗してもらうか、日本を従属的な立場において、米国が主導的
な立場で動くか、の2つの選択肢があったが、日本のナショナリズ
ムの状況を見て、従属的な立場に置くことを決定したような気がす
る。

このため、中国には厳しい、ダライラマとの会談を行い、一部、人
権外交を復活させることになったようである。直接、米国が中国に
対応する方向である。

このように米国の方針が変化したので、日本の立場が難しくなるよ
うな気がする。

国粋主義者の放置は、日本の国益を大きく棄損していることに気が
つき、日本が普通の国になれるよう努力をしないと、大きな制約を
米国からかけられることになるぞ。

それだけ米国オバマ政権、米リアリストたちは、日本も問題視して
いるようだ。

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チベットの人権擁護支持=ダライ・ラマと会談−米大統領
 【ワシントン時事】オバマ米大統領は21日午前、ホワイトハウ
スでチベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世と会談し、チベッ
ト固有の宗教、文化、言語の保護と中国国内のチベット人の人権擁
護を強く支持する考えを伝えた。中国に対し、チベット自治区など
で住民への激しい人権侵害が続いていることに警告を発した形だ。
 両者の会談は、2012年11月の中国の習近平体制発足後初め
て。過去2回と同じく私的な面会用のマップルーム(地図の間)で
約1時間15分間行われ、報道陣に公開されなかった。
 ホワイトハウスによると、大統領は会談で、チベットの独立では
なく高度の自治を中国に要求するダライ・ラマの「中道路線」を称
賛。その上で、10年1月に中断したままの中国とチベット亡命政
府の対話について、無条件再開を呼び掛けた。
 大統領はまた、チベットを中国の一部とし、チベットの独立を支
持しないという米国の立場を確認。ダライ・ラマもチベット独立を
模索せず、対話再開を希望すると応じた。両者は「前向きで建設的
な米中関係の重要性」で一致したという。
 中国側は「中米関係を著しく損なう」として会談の取りやめを要
求していた。米中は現在、オランダ・ハーグで3月下旬に開かれる
核安全保障サミットを利用したオバマ大統領と習近平国家主席の会
談を調整しているとされるが、中国側が会談に応じない可能性もあ
る。(2014/02/22-07:04)
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中国は「内政干渉」と反発 米大統領、ダライ・ラマと会談へ 
2014/2/21 13:38nikkei
 【北京=島田学】中国外務省は21日、オバマ米大統領とチベット
仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世との会談について、中国への内
政干渉だとして「厳重な懸念を表明する」との談話を発表した。ダ
ライ・ラマ14世との会談は「米中関係に著しい損害をもたらす」と
強調し、即時取りやめるよう要求した。すでに外交ルートを通じ、
米国側に抗議したことも明らかにした。
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安倍首相を望んだことを悔やむ米国政府
2014.02.21(金)  Financial Times
(2014年2月20日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
安倍晋三首相が率いる日本と習近平国家主席が率いる中国との関係
を評価するのは極めて簡単だ。どちらも相手をあまり好きではない。
日中双方が、政策目標を推し進める道具としてナショナリズムを利
用している。どちらも恐らく、相手側に押しがいのある「タフな男
」がいることは都合がいいと考えている。
 評価するのがそれほど簡単でないのが、日米関係の状態だ。本来
であれば、日米関係は日中関係よりもはるかに容易に読み解けるは
ずだ。結局、日本は米国にとってアジアで最も重要な同盟国であり
、第2次世界大戦の終結後、米軍の戦闘機と部隊を受け入れる「不沈
空母」だったのだから。
緊張する日米関係
 そして今、数十年間にわたり米国から促された末に、ようやく強
固な防衛態勢を築き、平和主義の日本が長年大事にしてきた「ただ
乗り」の国防政策を見直す意思を持った安倍氏という指導者がいる。
 だが、長年求めてきたものを手に入れた今、米国政府はおじけづ
いている様子を見せている。
 その兆しの1つは、安倍氏が昨年12月に靖国神社を参拝した後に米
国政府が「失望」を表明したことだ。靖国神社は中国と韓国から、
自責の念がない日本の軍国主義の象徴と見なされている。
 以前は、米国政府は内々に靖国参拝への不満を述べたが、公然と
日本を非難することはなかった。日本政府は今回、米国が日本語で
きつい響きのある失望と訳された「disappointed」という言葉を使
ったことに驚かされた。
 ほかにも緊張の兆候が見られた。米国の政治家は、安倍氏の歴史
観に対する懸念を表明している。バージニア州の議会は、学校教科
書に日本海を表記する際には韓国名の「東海」を併記するよう求め
る法案を可決した。米国政府は、安倍氏の指揮下で、やはり米国の
重要な同盟国である韓国と日本の関係も悪化したことを懸念してい
る。
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身内の勇み足に安倍首相も困惑? 日本のナショナリズムを米国紙
が懸念
更新日:2014年2月21日NewSphere
 日本国内で、アメリカを批判する発言が相次いでいることに、米
国各紙が懸念を表している。
 衛藤晟一首相補佐官(参議院議員)は、安倍首相の靖国参拝に失
望を表明したアメリカに対し、逆に「失望」だと語った動画を投稿
した。
 また、内閣官房参与の本田悦朗氏は、ウォール・ストリート・ジ
ャーナル紙のインタビューで「アメリカのパトロン状態から脱出し
、中国に対抗し得る自立した軍事力を作るべきと」という趣旨の発
言をしたと伝えられている。
 衛藤氏は発言を撤回し、動画は削除された。本田氏は「発言の意
図がねじ曲げられた記事」と反論している。それでもなお米各紙は
、このような事態が相次ぐ状況を「日米関係の危機」と見ているよ
うだ。
【日本の米国に対する不満がたまっている?】
 原因は、日本がアメリカに「軽視されている」と感じているから
。ニューヨーク・タイムズ紙は、この一連の動きをこう分析する。
 “尖閣や防空識別圏などをめぐり日中関係は緊張状態にあるのに
、なぜもっと明確に味方をしてくれないのか? 普天間だって移設に
向けてこんなに努力しているのに、なんだかあまり評価してもらえ
ない”同紙は、このような日本のアメリカに対する不満が、批判風
潮につながった、と見る専門家の見解を伝えている。
 こうした不満は、今に始まったことではない。さかのぼること1年
以上前から兆候はあった。安倍首相は2012年12月の就任後、すぐに
オバマ大統領へ訪問を申し入れた。しかし、結局1ヶ月待たされてし
まったのだ。
 最近では、4月にアジア各国を訪問するオバマ大統領の、日本への
滞在予定がたった1日であるらしいことに傷ついているもよう、と同
紙は伝える。
「日本は孤立を感じている。もうアメリカを離れて自立するべきと
いう意見もある」同紙はこう語る川上高司教授(拓殖大学)の言葉を
載せ、日本の現状をこのように伝えた。
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中国昨年の演習、尖閣制圧想定か 米太平洋軍高官が分析
 米太平洋艦隊幹部は20日までに、中国人民解放軍が昨年行った
大規模軍事演習について、沖縄県・尖閣諸島などを強襲、制圧する
作戦を想定していたとの見解を示した。米海軍系のシンクタンク、
米海軍協会が、13日に西部カリフォルニア州で開かれた会合での
、幹部の講演内容を公表した。
 同艦隊情報幹部のファネル大佐は演習について、大規模な上陸部
隊などの連携を確認したと指摘し、「人民解放軍は短期の集中的猛
攻で日本の自衛隊を壊滅させ、尖閣諸島や南西諸島南部までも制圧
する任務を与えられたと考えられる」と述べた。
2014年02月20日木曜日KAHOKU SHIMPO
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中国の強硬姿勢と米国の弱体化
2014年02月20日(Thu)  岡崎研究所
米AEIのゲイリー・シュミットが、中国が防空識別圏の設定という強
硬姿勢をとったのは、米国が弱まっていると判断したのに加え、地
域で支配的地位を得たいという野心のためである、と1月10日付ロサ
ンゼルス・タイムズ紙掲載の論説で述べています。
 すなわち、中国は国内の諸問題に対処するためにも、経済成長を
持続させるためにも、国際秩序の安定を必要としているはずなのに
、なぜ周辺国や米国が否定的反応を示すのを知りつつ、防空識別圏
を設定したのだろうか。
 ケ小平は「韜光養晦」と言ったが、中国はなぜ今強硬姿勢をとる
のだろうか。中国専門家は、軍が要因であるという。中国の文民指
導者は軍の支持を得るため、軍により自由裁量の余地を与えるとい
うのである。
 しかしこの議論を支持する確固たる証拠はない。軍を共産党の指
導下に置くというのが中国共産党の鉄則であり、習近平も軍と治安
問題をしっかり掌握している。
 中国の最近の強硬姿勢を米国の弱さと結び付ける議論もある。不
況のさなかの2009年にオバマ政権が中国に戦略的な手を差し伸べた
ことを、中国は米国の後退のしるしと見た。米国の政府高官がG2の
可能性に言及し、オバマが「米中関係が21世紀を形作る」と述べた
ことなどから、中国が、米国の衰退が早く、中国のトップへの台頭
が予想より早いと考えた可能性がある。米国の「アジアへの軸足移
動」が国防費の削減で弱められ、TPPの早期発足が危ぶまれるに至っ
て、このような見方はさらに強まった。
 しかし米国の弱さが重要な理由であるとはいえ、それがすべてで
はない。そのほかに中国の野心がある。中国の指導者は、中国が大
国となり、かつての帝国の時代のように、地域で支配的な影響力を
持ちたいと考えている。習近平は「中国の夢」を語った。中国から
見れば米国は地域の侵入者であり、地域で支配的地位を得るための
主要な障害である。経済や貿易の結びつきがたとえ大きくても、国
家も個人同様、邪魔するものに憤りを感じるものである。
 ケ小平が「韜光養晦」と言ったのは、中国が安心して力を大っぴ
らに使えるようになるまでのことであった。中国がすでにその時点
に達したかどうかは議論の余地のあるところだが、「偉大な野心」
には問題がある。「偉大な野心」は抑えることもそこからひきかえ
すことも難しい。今後中国を扱うのは今より容易になりそうもなく
、むしろもっと難しくなるのではないか、と論じています。

Obama, Paul, and Jeffersonian Foreign Policy
Obama's Foreign Policy to Nowhere

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