4912.ダボス会議で中国軍事評論家の発言



ビジネス・インサイダー誌の共同代表であるヘンリー・ブロジェット
氏(HENRY BLODGET)がダボス会議での様子を書いた記事「Someone 
Just Said Something About The Japan-China Conflict That Scared
 The Crap Out Of Everyone」がすごい。最後にリンクがあるので、
原文を読みたい人はどうぞ。

しかし、この記事は、奥山さんが訳しているので、「中国政府高官
がダボス会議で問題発言」を読んでくだされば、概要はわかるよう
です。英文記事の中では影響力のある軍事専門家とあり、奥山さん
は、中国軍高官と解釈したし、私は軍事大学の教授と思った。

会場の参加者から日中間の尖閣諸島の問題について聞かれ、その答
えは、軍事衝突はもう避けられないという態度であり、「多くの中
国人は、中国が尖閣に侵攻することによって地域で軍事的な優位を
見せつけ、このシンボル的な島を確保することができると信じてい
る」と発言したのだ。この発言で、会場内は凍りついたというから
大変である。

しかし、さすが、中国政府もまずいと思い、ダボス会議で発言した
と思われる当人の釈明記事を出し、「新華経済」で日本語で読める
。それによると、ダボス会議で発言した人は、軍事評論家、軍細柳
氏であることが分かる。

この軍細柳氏は人民日報にも多くの記事を書いているので、それな
りに影響力があるように見える。しかし、人民網の人物紹介からは
削除されている。

なぜ、海外の新聞は安倍首相の1914年発言を問題視して、この
ダボスでの軍事専門家が中国軍の本音を言ったのに、ビジネス・イ
ンサイダー誌以外の新聞や雑誌が、それを記事にしないのか不思議
である。それもダボス会議に出席できるということは、中国を代表
していることになる。

これが中国の本音と見たほうが良い。安倍首相のように尖閣列島は
日本領土であり、領土問題はないとし、棚上げもしないという意見
であると、それは日本も相当な覚悟が必要である。

しかし、安倍首相に、覚悟が見えない。原発の使用済燃料をそのま
まにするということが、ミサイル攻撃によりいかに危険化がわかっ
ているのに、放置である。国家の安全保障上で大きな問題であるこ
とを知らないのであろうか?

このように中国は戦争も辞さない状態であるのに、その見識を疑う
が、どうであろうか?

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軍事専門家、「日本を叩きのめせ!という考えだったが、今はそう
思わない」―中国メディア
2013年11月07日xinhua.jp
中国・海外網は7日、同国の軍事評論家、軍細柳氏が中国と日本の
関係について分析した記事を掲載した。主な内容は以下のようなも
のだ。
中国と日本との釣魚島(日本語名称:尖閣諸島)をめぐる問題は行
き詰った状況だ。両国民の大多数は、戦争は望まないだろう。私は
もともと「日本を叩きのめせ」という考えだったが、情勢が複雑化
した今、そうは思わなくなった。
日本のある有名サイトがこのほど、米国が経済問題で苦しいため、
中国と日本が戦争をしても、米国は介入できないだろうと指摘した。
米国の軍関係者がよく討論するのは、米国が介入しない状況では、
自衛隊と人民解放軍のどちらが優勢かということだ。中国は軍事費
を拡大しているが、日本の最新鋭の設備には及ばず、中国が日本に
戦争をしかけることはないだろうとの指摘もある。
全般に、米国の軍事専門家は、中国と日本の間に大規模な戦争は起
きないとの見方で一致している。中国の指導者が「軍事攻撃によっ
て日本に中国の要求に応えさせる」との決断を下しても、中国はた
だ攻撃することはせず、日本政府と国民に警告することで、要求を
のませるだろう。
解放軍は日本が相手でも、その同盟国が相手でも、圧勝する力を持
っている。中国軍は無駄な動きをせず、一撃で相手を倒すことがで
きるのだ。
(編集翻訳 恩田有紀)
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中国政府高官がダボス会議で問題発言
                     奥山
今日の肥前は午前中晴れたのですが、昼すぎから小雨が降りました
。気温はけっこう暖かかったような。

講演で九州まで来ているのですが、運良く名護屋城址を見学するこ
とができました。秀吉が朝鮮出兵した時の城跡なんですが、ここに
陣取っていた武将たちがオールスターキャストでした。

さて、ダボス会議での安倍首相の「1914年前発言」が物議を醸
しだしてから数日たったわけですが、色々とこの会議で面白い発言
をしている中国政府の高官らしき人の内容が出てきましたので、そ
の紹介を。

この記事の中でダボス会議に参加したブロジット記者は、あるクロ
ーズドのディナーの席で興味深い光景を目にしたと言っております。

もちろん会議は「チャタムハウス・ルール」が適用されております
ので、その発言者は誰なのかは書けないということですが、その発
言内容は書けるということなのでそれを書く、とのことです。

そのディナーの席にゲストとして呼ばれているのは「ある中国政府
高官」とのこと。

そして会場全員を凍りつかせるある事件が起こったわけですが、そ
れは会場の参加者にマイクを回し、自分の聞きたい質問を、そのゲ
ストにたいして端的に質問することができるコーナーの最中のこと。

そのゲストは会場の参加者から日中間の尖閣諸島の問題について聞
かれたそうですが、それに答えているときには、軍事衝突はもう避
けられないという態度であり、むしろそれを心配している様子はな
かったとのこと。

つまり超タカ派的な態度をみせていたらしいのです。

彼によれば、その衝突が起きる理由は、尖閣に価値があるというよ
りは、むしろ中国と日本が互いへの憎しみが高まっているからだと
か。

この高官は、尖閣問題を靖国参拝に結びつけており、靖国はそれを
嫌う国々からは「戦犯の栄誉をたたえている」と見られるからだと
言明。彼自身は「安倍首相は犯罪者をたたえている」と言い、この
安部首相の参拝の決定を「狂ってる」と言ったそうで。

次に中国側の事情を話しており、彼によれば、日本はアメリカとは
講和したが、中国とは実質的に第二次大戦の本格的な講和をやって
いないと説明。

しかし彼自身は、もし中国が尖閣の領有権を取り返すために日本に
軍事的な攻撃をしかけたら、アメリカが日本を支援することになる
ことを知っているし、そもそも中国はアメリカを挑発したくない、
と認めております。

ただしここで驚きなのは、彼が「多くの中国人は、中国が尖閣に侵
攻することによって地域で軍事的な優位を見せつけ、このシンボル
的な島を確保することができると信じている」と発言したこと。

つまり彼は実質的に「国境紛争を勃発させずに限定的な作戦で島を
取り返すことができる」と言ったわけですが、この攻撃そのものが
シンボル的に大きな意味を持つということであり、日本と中国、そ
れに世界にたいして、誰が強いのか見せつけることになる、と言っ
たそうなのです。

しかも彼は「日米に軍事的な対処をさせて、これが大戦争につなが
るというのも、実はそれほど悪いものではない」と断言しており、
これによって会場の空気は凍りついたとか。

その凍りついた空気の中で、あるビジネスマンがこの高官に質問。

「これって完全に狂ってると思いませんか?これって戦争を始める
ってことですよ、尖閣なんてほとんど価値もないのに、そのために
世界戦争を起こすってことですか?」
と聞くと、その高官は、

「もちろんわかってます。でも尖閣の価値というのはシンボル的な
ものであり、そのシンボルそのものが極めて重要なのです」
と答えたそうな。

それに関して会場からまた質問が出ると、彼は今度は先ほどの発言
からは少し立場を変えて、
「私はわざとセンセーショナルな言い方をしましたが、個人的には
日本と戦争をしたいとは考えていません」と発言。

それでもまた彼の態度からは、日本との戦争は望ましいという姿勢
が見られたとか。

このやりとりを見ていた記者の結論としては、頭の良さそうな中国
の政府高官が、大規模戦争につなげずに尖閣に侵攻して紛争を終わ
らせるということを正当化した、ということであり、これが会場を
凍りつかせた、ということ。

安部首相の「1914年発言」も大事ですが、むしろこの高官の過
激な発言は、日本でももっと紹介されてもいいのでは。


Someone Just Said Something About The Japan-China Conflict That Scared The Crap Out Of Everyone

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