4908.米国に頼れなくなりつつある



ナショナル・インタレスト誌に載った「The American People Aren't
 Ready for China」と同じく「Obama's Foreign Policy to Nowhere」
の2つの記事とフィナンシャル、タイムズの「内向きになる米国、
「必要不可欠な国」の撤退に備えよ」は、同じことを言っている。

オバマの外交政策は、シリアを見ても分かる通り、リスクの低いも
のを選択し、行き当たりばったりの外交をしている。これは外交に
心あらずで、内政問題に力をかけているからである。

中国は力を持ち、徐々に米国に迫り、覇権が中国に移る可能性もあ
り、オバマの外交が低調もあり、益々、中国が勢いをつけている。

このような米国の状況に、フランスのローラン・ファビウス外相は
、「米国からは、もう危機には巻き込まれたくないと思っているよ
うな印象を受ける」と語り、その結果、米国の同盟国は「危機が生
じても自力で対処するしかなくなる可能性を・・・次第に計算に織
り込むようになってきている」という。

 これにはイスラエルでさえ対応しつつある。同国のアヴィグドー
ル・リーベルマン外相は先日、「イスラエルと米国の結束は弱まり
つつある・・・今日の米国が抱える課題はあまりにも多い」と述べ
ていた。中東におけるもう1つの主要同盟国のサウジアラビアも同様
な分析をしており、米国が撤退しようとしていると見なして腹を立
てている。

というように、各国が米国後の安全保障体制を考え始めている。

日本は、その準備が出来ているように見えない。まだ、日米同盟あ
りきの対応になっているが、それでは中国と対応することが難しく
なってきた。米国を頼れないと見た対応を考えることが必要になっ
たと日本国民も覚悟する必要がある。

さあ、どうなりますか?


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内向きになる米国、「必要不可欠な国」の撤退に備えよ
2014.01.22(水)  Financial Times
2014年1月21日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
今年の世界経済フォーラム年次総会「ダボス会議」の公式テーマは
「世界の再形成」という、予想されたように穏やかなものとなった。
 しかし、その非公式スローガンは「米国が戻ってきた」になるだ
ろう。今年の経済成長率が3%に達する見通しであることに加え、新
興国市場にまつわる懸念もあることから、ダボス会議は米国に対し
て数年ぶりに強気な見方を示すことになりそうだ。
 しかし、米国経済の再生と、「唯一の超大国」としての米国の役
割の復活とを混同してはならない。米国はむしろ、世界の警官役か
らゆっくりと手を引きつつある。これこそが、今日の国際政治の世
界で浮上している最も重要なテーマだ。
親密な同盟国からも上がる非難の声
 現在、米国と最も親密な国々の中にも、国際社会で米国の存在感
が低下していると率直に語るところがある。
 フランスのローラン・ファビウス外相は先日行われたある講演で
、「米国からは、もう危機には巻き込まれたくないと思っているよ
うな印象を受ける」と語っていた。その結果、米国の同盟国は「危
機が生じても自力で対処するしかなくなる可能性を・・・次第に計
算に織り込むようになってきている」という。
 これにはイスラエルでさえ対応しつつある。同国のアヴィグドー
ル・リーベルマン外相は先日、「イスラエルと米国の結束は弱まり
つつある・・・今日の米国が抱える課題はあまりにも多い」と述べ
ていた。中東におけるもう1つの主要同盟国のサウジアラビアも同様
な分析をしており、米国が撤退しようとしていると見なして腹を立
てている。
 バラク・オバマ大統領率いる米政権がシリア紛争への軍事介入を
かなり渋ったことから、米国は中東から手を引きつつあるという非
難の声が強まっている。しかし、欧州の政策立案者たちも同様な不
安を抱いている。アジアへの「ピボット(旋回)」という米国が打
ち出した有名な方針は、北大西洋条約機構(NATO)や欧州の同盟国
に対する関心の低下を意味するのではないかと懸念しているのだ。
 一方、アジアの同盟国も満足しているようには見えない。例えば
日本は、中国が東シナ海上空に「防空識別圏(ADIZ)」の設定を宣
言した時に米国が断固たる態度を取らなかったと考えている。また
フィリピンは、係争中のスカボロー礁を中国が実効支配した時に自
分たちは見捨てられたのだと感じている。
 オバマ政権の高官たちは、米国が手を引きつつあるというこれら
の話は大げさだと反発している。彼らに言わせれば、米国はシリア
の和平交渉を主導しており、イランの核開発問題やイスラエル・パ
レスチナ問題を巡る協議にも同様に関わっている。また欧州、アジ
ア太平洋、中東の安全保障体制の主たる担い手であることにも変わ
りがないという。
 それでも、オバマ政権下の米国が、軍事力を実際に行使すること
を以前よりも渋っていることは明らかだ。米連邦議会がシリアへの
ミサイル攻撃の是非を議論した時、国内の反対論が強いことを米国
政府はすぐに察知した。
米国内に広がる孤立主義的なムード
 半ば孤立主義的なムードが新たに広がっていることは先週、調査
機関ピュー・リサーチ・センターの世論調査によっても裏付けられ
た。これによると、米国人の52%は「米国は、国際的には自国の問
題に専念すべきであり、ほかの国々には、自力で進める最良の道を
それぞれに進んでもらえばいい」との見解に同意しており、同意し
ないという回答はわずか38%にとどまった。
 ピュー・リサーチのブルース・ストーク氏が指摘するように、世
論調査ではこの質問が50年近く前からなされているが、今回の結果
は「米国は自国の問題に専念すべきだという方向に史上最も大きく
傾いたもの」になっている。
 ストーク氏はこれを、「米国が世界のほかの国々に関与すること
への支持が、過去に例がないほど落ち込んだ状態」と表現している
。おまけに、外国への関与に対するこの懐疑心は、米国の政策決定
を担うエリート層にまで広がっている。エリートのシンクタンクで
ある外交問題評議会(CFR)の会員を対象にピュー・リサーチが調査
を行ったところ、エリートたちの見方が一般国民と概ね同じである
ことが示された。
 米国が内向きになる理由を特定するのは難しくない。経済危機は
オバマ大統領に「国内での国造り」に専念するよう仕向けた。一方
、イラクおよびアフガニスタンでの戦争のトラウマは、米国が中東
の混沌に手を出すことに対する無理もない意欲喪失をもたらした。

The American People Aren't Ready for China
Obama's Foreign Policy to Nowhere

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