4899.里山資本主義について



里山資本主義について
   ――地産地消が原点――
                          平成26年(2014)1月9日(木)
                     「地球に謙虚に運動」代表  仲津 英治

1.	「里山資本主義」と題する本
昨年夏、大学時代からの親友に勧められて、「里山資本主義」と題する本を読みました。
著者は、日本総合研究所調査部主席研究員藻谷浩介氏とNHK広島取材班の連名となって
います。

今、日本経済は、アベノミクスという標語の下、停滞経済から成長経済へと転換できつ
つあると、マスコミなどで報じられています。しかし、私は、経済成長は永遠に続けら
れるか?という疑問を予てから持ち、今もその疑問は解消していません。その原点には
有限の地球が享受し、供給できるエネルギーと食糧には限界があるとの認識があります。
生活、経済社会の成立つ原点は、エネルギーと食糧にあります。これらは無限大に供給
され、また生産できるものではありません。

まず、エネルギーから見て参りましょう。

2.	エネルギー
エネルギー資源の源泉は、太陽と太陽光の注ぐ下で成長する植物でありましょう。太陽
光と森林資源こそが、人類の生活、経済社会を支える源泉です。それは古代も今もあまり
変わりません。

18世紀&19世紀の産業革命までエネルギー資源は、太陽光と森林でした。四大文明と言わ
れる古代文明は、地球の蓄積である森林を開発し、エネルギーに変え、食糧を創り、そして
つまりは森林の消滅に至り、滅亡しました。いずれも遺跡と砂漠を残しています。

豊かな森林で人口が急増し、そしてそれらを伐採し過ぎ、人口が急減した小さな実例とし
て、太平洋に浮かぶイースター島の悲劇があります。4〜7世紀頃、50人のポリネシア人が
絶海の孤島、イースター島に漂着して、豊な森林資源と漁労資源を活かして、1,000年後
には人口は6,000人から7万人に急増したと推定されています。しかし、乱開発した結果、
全島が禿山となり、人口は1872年に110人に激減しています。

世界的に見ると、18世紀から19世紀までは、蓄積されたエネルギー資源は森林のみ
でした。しかし、その頃人類は、イギリスを嚆矢として、森林植物が堆積保存された石炭
をエネルギー源と活用することに成功しました。古代樹木の化石である石炭の燃焼エネル
ギーを使う蒸気機関を発明、第1次産業革命を興したのです。

そして19世紀から20世紀に入ると、第2次産業革命が興ります。生物の死骸が堆積し、化
学変化したという説が有力な石油の開発・活用が原点です。最近は石油と同じく化石燃料
とされる天然ガスが拡大使用され、またシェールガスなどが注目されています。 

石油・天然ガスで内燃機関を動かし、水力、火力、原子力で電気を起こし、生活、産業に
活用されて来ました。そしてこれらエネルギーにより、日本人の殆どがかつての王侯貴族
並みの生活レベルを享受出来ていると言われています。しかし、上記エネルギー資源の中
でエネルギーの供給が永久に続くのは太陽がポンプ役を果たしてくれる水力発電のみです。
太陽の寿命にも限りがありましょうが、人類が存在できる期間より遥かに長いでしょう。
数億年かけて森林・生物が変化保存された化石燃料は言わば、地球の貯金であり、その生
成される速度は、到底人類の消費速度に追いつきません。

なかでも石油は、常温で液体ですので、その採掘、輸送、精製、貯蔵の便利さにおいてエ
ネルギー資源の王様です。しかし有限です。そしていずれ枯渇するでしょう。石油生産の
ピークは2006年頃であったと、推定されています(国際エネルギー機関IEA)。
石油価格も上昇してきました。我が家での記録を見みますと、ガソリン単価の場合、平成
17 年(2005 ) 120.0 円/Lであったものが、平成25年(2013)には、152.4円/Lと1.27倍に、
灯油単価は平成17年(2005) 84.6円/L であったものが、平成25年(2013)には103.0円/Lと
21%上昇しています。いずれも購入金額を購入量で割った年平均価格です。

 改めて注目すべき森林エネルギー資源
 私は大阪の都会育ちですが、小中学生時代までお風呂は薪で沸かしており、ガス風呂化した
後も薪を併用できるガス風呂を使っていました。今は滋賀県で太陽光温水器と併用した灯油
焚風呂を使っています。

 しかし、住宅の周りには里山があります。滋賀県全体が、里山の森林エネルギー資源で満
みちています。岡山県真庭市のようにバイオ産業を興し、ペレット燃料により熱エネルギー
が供給され、地域の資金をエネルギー資源のために外部に流出させない仕組みに変えたいと
念じています。太陽の下で成長する範囲内で樹木を活用するのです。真庭市では森林も維持
発展しています。
バイオマスタウン真庭;http://www.city.maniwa.lg.jp/html/biomass/

3.食糧
食糧の原点は植物です。植物は生産者であり、動物は消費者です。肉食動物であってもそ
の肉食対象は草食動物であり、彼らは草木を食して生命を維持し、子孫を残しています。
従って食糧の原点は太陽光の下で成長する植物なのです。

ところで日本で、現在、食糧が供給されている中で、自給できているのはお米のみです。
96%自給されています。4%は政策的輸入です。
日本の食糧自給率は、エネルギー消費と言う視点で見ますとカロリーベースで40%、原材
料ベースで28%の自給率です。カロリーベースと言うのは、食糧とする動植物から得られ
るエネルギー(カロリー)から算出する数値を指します。肉食の対象である家畜の餌は殆
ど輸入であるため、原材料ベースで算出しますと28%にしかならないのです。恐るべき数
字です。しかも年々下がって来ています。

石油の供給が止まると、日本人は餓死状態に至るでしょう。というのは、農作に使う農業
機械も石油無しでは無用の長物と化しますし、日本人が好む魚介類を捕獲し、運んで来る
のは船舶であり、大半の船舶は石油で動いているからです。油断(石油の高騰、枯渇)は、
食糧供給に根本的障害をもたらします。日本のエネルギー自給率は4%にしか過ぎません。

ここで地産地消により、産業、生活の在り方を根本的に変えて見る試みをスタートさせま
せんか。

4.仲津の実践
4-1 創エネ
ささやかながら、我が家で実践していることを披露させて下さい。
まず、エネルギーで絶対に欠かせない電気です。太陽光発電装置付きの建売り住宅を1998
年頃購入しました。年間発電量は、3,500kwh位です。関西電力への売電量は2,200kwhで
使用量とほぼ同じです。ここで注目すべきは電気消費量より発電量の方が多いということ
です。今や家族は夫婦二人となり、使用量も少なくなりました。
 この数字は仮に電気を貯めることができれば(電池あるいは自動車のバッテリー)、電気
の自活は可能ということを示しています。いずれ長生きする前提で、家庭用電池あるいは、
充電式自動車の購入を考えています。

 次いで熱源として、給湯には太陽熱温水器を設置しています。自宅を購入した翌年に設置
しました。定量的データが無いのですが、大阪での経験からしますと、給湯の対象はほとんど
がお風呂であり、年間6〜7万円の節約になっていると推計されます。調理には都市ガスを使
っています。

4-2 近くの農産物を購入
食事で毎日頂くものとして、お米は、東近江市の専業農家である農事組合法人ネイチャー
ジャパン(代表:仲岸希久男氏)から無農薬米を購入しています。仲岸さんとはEM
(有用微生物群)の御縁から知り合いました。
農事組合法人ネイチャージャパンHP http://www.naturejapan.or.jp/02jiman/juku.html

野菜類は、住いの近くのお爺さんが育てている野菜を、週に1回くらい巡回販売してくれる
おばさんから購入しており、また趣味の延長線ですが、自宅プランターで栽培しています。
生ごみはEMを使って全量有機肥料化し、プランターで活用しています。
 
私も満69歳、この年から自ら農業を行なうのは無理で、近くで作ってくれる人から購入する
スタンスに立っています。僭越ながら顔の見える農業を支援していることにもなりましょう。
 
 以上、我が家での実践例を紹介させて頂きました。冒頭の本から里山資本主義の原点は、
地産地消により、地元の資金は地元の中で回すことにあるという認識を持ちました。マネー
資本主義は大量輸入、大量輸出を伴い、豊かさをもたらしてくれているように感じますが、
地元の資金を外へ流出させている要素が大きく、現在は特に石油輸入に充てられています。
産油国に資金が流れて行く結果になっているのです。
                     長文にお付き合い、有難うございました。

 最後に、私に「自然に学ぶ」こと、環境問題に目覚めさせてくれた500系新幹線の番組の
案内をさせて下さい。

フジテレビ『鉄道伝説』
毎週日曜日 23:00〜23:30

<第3シーズン放送予定作品>
1月12日23:00〜「500系新幹線〜営業運転・時速300kmへの挑戦<前編>〜」
1月19日23:00〜「500系新幹線〜営業運転・時速300kmへの挑戦<後編>〜」

 第3シリーズ一作目は「500系新幹線」の伝説を紹介。平成9年11月29日、
初めて東京駅に乗り入れた500系新幹線。白い車体にブルーラインが定番だった
それまでの東海道新幹線と比較し、突如、未来から現れたような車輌は、
鉄道ファン以外の多くの人々も魅了した。
 その美しすぎるスタイルは新幹線の高速化をとことん追求した努力の賜物。
「500系新幹線」開発の裏に隠された知られざる伝説を紹介する

番組案内URL
http://www.bsfuji.tv/top/pub/tetsudo_densetsu.html


「地球に謙虚に運動」代表
仲津 英治
「地球に謙虚に運動」HP URL  
http://www5f.biglobe.ne.jp/~kenkyoni/

コラム目次に戻る
トップページに戻る