4893.長期的停滞への処方箋



今まで、現状の問題点と原因をサマーズは述べてきたが、それへの
解決手段を述べていなかった。今回、その解決手法を提出してきた
ようである。

過去のコラムとしては、4856.サマーズについて修正、
4850.サマーズ理論が世界に波及、4849.サマーズの「3
本の矢」政策がある。このリンクを最後にいれた。

どうも、3つの解決方法を示したが、公共事業を中心とした財政政
策で社会資本の更新をいうことのようである。

エネルギー政策では石炭火力発電所を規制して、民間の金でLNGガス
火力発電所に更新するなどの提案をしている。エネルギー産業の転
換が大きな需要を生み出すと見ている。

また、第2の手法である金融量的緩和は、ある程度行うことは必要
であるが、バブルを生み出すのであまりよくないという。

第1の手法は、労働者の教育や労働賃金の上昇を行うことであるが
これには需要が必要であるので、これだけでは景気回復にならない。

ということである。量的緩和に対してハト派でもないようである。
また、財政政策を提言しているが、その財源については何も述べて
いないが、量的緩和を縮小させる方向であると読めるので、どうす
るかが問題である。

私は、日本と同じようにリベラルな民主党オバマ大統領から支持さ
れているので富裕層への増税であるように思うが?

さあ、日本はどうしますか?

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コラム:長期的停滞への処方箋=ローレンス・サマーズ氏
2014年 01月 6日 14:13 JST
ローレンス・サマーズ
[5日 ロイター] -先月のこの欄で私は、米国が長期的停滞期に
入った可能性について論じた。潜在力を大幅に下回る水準の低成長
、生産、雇用と、問題含みの低い実質金利が今後しばらく併存する
可能性だ。

今世紀に入ってから、米国の国内総生産(GDP)成長率は年平均
1.8%を下回っている。目下の米経済は、ほんの数年前の2007
年に潜在的な成長軌道とされた水準を約10%、額にして1兆6000
億ドル以上も下回る水準で稼働している。しかもこれは、5年以上
もマイナスの実質金利が続き、極端な金融緩和政策が行われる中で
の出来事だ。

過去数年間、悲観的な成長見通しを維持するだけの知恵を備えてい
た何人かの専門家でさえ、少なくとも米国における2014年の成
長率について楽観論に傾きつつあるのは事実だ。これは確かに心強
いことだが、楽観的な見通しでさえ、生産と雇用が以前のトレンド
を何年間も下回り続けるとの予想に立っていることを念頭に置いて
、物事を考える必要がある。

より厄介なのは、経済に大幅な余剰供給力(スラック)が存在し、
賃金と物価のインフレ率が鈍化している現在においてさえ、与信基
準が緩み、資産価値がインフレを起こす兆しが強まっていることだ。
われわれが現在のような金融環境と健全な成長率を数年間享受する
とすれば、成長と雇用がトレンド並みに戻りインフレが加速するよ
りずっと前に、2005─07年に経験したような問題の二の舞が
起こることは十分予想できる。

つまり長期的停滞という課題は、単に適度な成長率を達成するので
はなく、金融面で持続可能な方法で、それを達成しなければ解決で
きない。それでは何をなすべきなのか。政策当局者は基本的に3つ
のアプローチの中から道を選ぶことになる。

第一のアプローチは、経済が抱える根深い供給面のファンダメンタ
ルズとされるものに重きを置く。すなわち労働者の職能、企業のイ
ノベーション能力、構造的な税制改革、社会保障プログラムの長期
的持続性の確保といった問題だ。いずれも政治的には難しいとして
も、一見して魅力的だし、実際長い目で見て経済の健全性確保に大
いに寄与するだろう。

しかし向こう5年から10年という期間では、大きな成果が期待で
きそうもない。教育における成果と似た類のタイムラグはさておく
としても、現実に米国経済は供給ではなく需要の不足によって制約
を受けている。生産能力の拡大は、財やサービスへの需要が増えな
い限り生産の拡大には直結しないだろう。職業訓練や社会保険改革
をとってみた場合、職にありつけた労働者には影響を与えるとして
も、就職できる人数には影響しないだろう。実際のところ、供給力
を増やす方策はデフレ圧力を増幅させるという逆効果を招きかねな
い。

近年の米国の政策を支配してきた第二の戦略は、金利と資本コスト
を可能な限り引き下げながら、金融安定化は規制政策に頼るという
ものだ。こうした方策を講じなかった場合に比べ、経済が現在ずっ
と力強さを増し、健康を取り戻したのは疑いようがない。しかし成
長率を大幅に下回る金利に長期間にわたって大きく依存する成長戦
略は、大規模な金融バブルの出現とレバレッジの危険な蓄積を約束
しているも同然だ。規制さえあれば、コストを伴わずに緩い金融環
境による成長の恩恵を享受できるという期待は幻想にすぎない。資
産価値の上昇と借り入れ能力の拡大は経済を刺激しており、正にプ
ルーデンス規制(金融リスクを抑制する規制)における懸念の種と
なっている。

第三のアプローチ──これが最も有望だ──は、妥当な成長率と妥
当な金利が併存できる状態を回復させる政策を通じ、所与の金利水
準における需要水準を引き上げる方針を確約し続けることだ。まず
は政府支出と雇用が毎年減少し続けるという悲惨な流れに終止符を
打ち、経済の供給力が余っているこの時期をとらえてインフラの更
新と補強を行うことだ。供給力の余剰がいかに経済の長期的潜在成
長力を損なったかを踏まえるなら、政府が過去5年間にもっと投資
していれば収入に対する米国の債務負担は今ごろもっと低くなり、
将来の納税者に負担を課すこともなかった可能性は非常に高い。
需要の引き上げは、民間支出の促進を図ることも意味する。エネル
ギー部門では、化石燃料と再生可能エネルギーの両面で、民間投資
を後押しするためにできることが数多くある。石炭火力発電所の交
換加速を義務付ける規制を導入すれば、投資拡大と成長押し上げに
寄与するばかりか、環境にも良い影響をもたらすだろう。世界経済
が問題を抱える中にあっては、貿易赤字の拡大によって米経済から
過度に需要が奪われることのないよう、保険を掛けておくという意
味でも不可欠だ。

長期的停滞は不可避ではない。正しい政策を選べば、妥当な成長率
と金融安定を両立させることが可能だ。しかし米国の抱える問題を
きちんと診断せず、構造的な需要拡大を確約しないままでは、不十
分な成長と持続不可能な金融環境の間を揺れ動く定めになろう。わ
れわれは、もっとうまくやれる。
(本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
*ローレンス・H・サマーズ氏はハーバード大学教授。元米財務長官。
4856.サマーズについて修正
4850.サマーズ理論が世界に波及
4849.サマーズの「3本の矢」政策

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