4861.戦争を契機に最新技術ができる



QEの金融政策だけでは経済が行き詰まると話題になっている。シュ
ンペーターではないが、イノベーションがなくなり、世界経済は日
本と同じような長期停滞するのではないかと欧米でも言われ始めた。
この停滞を救うのは最新技術がモノになるときであると経済学者が
言う。古今から、このイノベーションを推し進めるのは戦争である。
                    津田より

0.戦争を意識した技術開発へ
コンドラチェフの波は、長期波動とも呼ばれ、この名前を付けたの
はシュンペーターで、その要因として技術革新を挙げた。
第1波の1780〜1840年代は、紡績機、蒸気機関などの発明による産業
革命、第2波の1840〜1890年代は鉄道建設、1890〜1950年代の第3波
は電気、化学、自動車の発達、1950〜2010年代の第4波は原子力や電
子機器の発展によると考えられる。この第4波が、リーマンショクで
突然終焉したことが分かる。

この次の5波が2015年から始まると見られている。そして、そ
の波を起こす技術革新が始まっている。今度の波を作るのは、エネ
ルギー分野と医療分野であることもほぼ決まってきた。

医療分野は、ガン治療などの一番難しい病気が簡単に治せる医療技
術がでてきている。そして、それに使われる器具、薬品、機械の発
展が著しい。IPS細胞、遺伝子技術、エイズ、認知症、ガンのメカニ
ズムが分かり、対処方法が確立してきた。この分野は多くの国で研
究がされている。そして、かつて“不治の病”とされたエイズは、
現在は慢性疾病になって死ぬ病気ではなくなった。

もう1つの分野がエネルギー分野である。再生可能エネルギーと燃
料電池、藻の油性分から石油などの化石燃料を代替する可能性が高
い。2015年から始まると予想していたが、その年に燃料電池車をト
ヨタが売り出すというので、これが始まりになる可能性が高いこと
になった。

ここで考えるべきことは、中国の防空識別圏設定など、対日強硬策
がどんどんエスカレートしている現状と、中国国内紙で日本との戦
争を嗾けることを見るといつかは戦争になる可能性を見ておくこと
が必要である。

また、習近平国家主席はこの中国の防空識別圏設定に関連して、東
シナ海をめぐる日中関係は「資源の争いから戦略的争いに変化した
」との見解を示したという。早く国民の意識を平和の時代から戦争
危機の時代に変える必要がある。

勿論、戦争になれば日中ともに大きな破壊になるので、戦争回避の
交渉はするべきである。しかし、戦争になっても日本人が生きてい
けることを考えるのが国家の役割である。

安全保障政策とは、日本人が継続的に生きる仕組みを整えることだ
。NSCや秘密保持などの政治的な仕組みも重要であるが、一番重要
なのは技術的な問題を洗い、研究開発することである。

そうすると、原子力発電所稼動は中国の対日戦争機運が高く、中距
離ミサイルの標的になる危険性が出てきたことで、一刻も早く止め
て、かつ使用済燃料を一箇所に集める必要が出てくる。

もし、全国に散らばった状態で、そこにミサイルが落ちたら、その
周辺100Kmの範囲は人が住めなくなる。ということは、日本全国
、どこにも人が住めないことになる。日中戦争を意識する必要が有
り、原発廃止と使用済燃料をなるべく早く1箇所に集めることが必
要である。

しかし、反対に戦争は技術革新を加速する。戦争はしたくないが、
中国が戦争を仕掛けるなら、日本はその戦争に負けないために、最
善の努力をする必要がある。今から戦争に負けない兵器や燃料など
の必需品を研究開発する必要がある。国家がそれを支援するしかな
い。

1.開発項目
兵器としては、中国の中距離ミサイルが一番恐ろしいことであり、
このミサイルを同時多発に発射されたら、防御できない。そのミサ
イルの防御ができる兵器の開発が急がれる。

その兵器は衛星や大型航空機に積む高出力の原子核レーザである。
この時、原子炉が必要である。原発は廃止であるが、レーザー用の
原子炉は必要になる。小型の原子炉というとトリウム溶融塩炉など
が候補になる。

もう1つが、中国の海軍力が強大であり、中東の石油を運ぶシーレ
ーンを守れるかどうか、非常に危ういことである。石油が入ってこ
なくても、近代兵器が運用できるようにするためには、石油の代替
燃料が必要になる。

このため、藻からの石油代替品、雑草からのエタノールを大量に作
れるように研究することだ。その大量生産方法を確立すると、コス
トは急激に下がることになる。または、燃料電池と水素の組み合わ
せで自動車などの内燃機関の代わるにすることも必要である。

エネルギー分野は、日本がまず先に開発するべきことで、発展させ
る必要がある。このように、石油が入ってこないことを想定すると
、再生可能エネルギー開発が戦争に備えるために必要なのである。

勿論、米豪加への太平洋航路やロシア航路は、安全性が高いので、
天然ガス、シェールガスの輸入を増やすことも必要である。

ここではエネルギー系の技術革新を見ていこう。

2.燃料電池の動向
2015年にトヨタが燃料電池の実用車を販売することは宣言して
いる。500万円以下で出す方向であるという。燃料電池は水素を
科学反応させて、水にすると同時に電気を生み出す装置である。こ
の電気でモーターを駆動して自動車を動かす。このトヨタに続いて
ホンダも実用化寸前である。この2社が最先端にいる。

この燃料電池車を韓国の現代自動車も2014年に販売するという
が、1000万円程度であり、燃料電池は米国UTC(ユナイテッド・テク
ノロジー)から補給される方向である。

その米国は、燃料電池で最先端で日本と争っているが、フォークク
リフトとゴルフカートから燃料電池を導入している。この2つに導
入させるために、水素の安全に関する規制をフリーにした。このた
め、水素スタンドの設備は3000万円程度でできる。

ドイツは燃料電池を潜水艦に積んでいる。メーカはジーメンスであ
る。メルセデスベンツなども燃料電池車を実用化する方向である。
このため、水素規制はあるが、水素向きな規制にして、スタンド建
設費は3億円程度である。

日本は安全神話があり、水素スタンドの建設費は6億円になる。こ
のため、水素スタンドができないことが心配である。規制緩和して
水素を普及することは、戦争を心配する時代に絶対に必要なことで
ある。この感覚が政治家にないようだ。

この燃料電池の水素を大量に製造する方法も確立することが必要で
あり、また水素を運搬したり、貯蔵する方法も必要である。

水素は水の電気分解より効率が高い熱分解や人工光合成の研究で、
太陽光を使った水から直接水素を作る装置が研究されている。

太陽光で水素を大量に作ることができれば、安全性が高い太平洋の
離島や洋上など大量に太陽光水素発生装置を設置して、タンカーで
水素を持ってくれば良いことになる。

水素運搬方法は、千代田化工の気体のままでは扱いにくい水素を液
化し、輸送する技術が注目を浴びている。水素を圧縮する必要がな
いために運搬貯蔵のコストが安くなる。

というように、水素を巡る開発競争を国も応援して、実用化・普及
を加速させるべきである。

2.藻からの石油代替燃料
筑波大の渡辺信教授らは4月、仙台市の下水処理施設に実験拠点を
開設し、生活排水に含まれる栄養分で藻を育て油を抽出・精製する
研究を始めた。

研究には光合成を行う緑藻のボトリオコッカスと、渡辺教授らが沖
縄県で発見したコンブの仲間のオーランチオキトリウムという2種
類の藻を使う。藻から作る燃料の生産コストは現在、1リットル当
たり500〜1500円程度とガソリンよりもはるかに高いが、渡
辺教授は「まず1リットル当たり200〜400円程度まで下げた
い」という。

これに対して、IHIなどは、大量に含む藻の屋外での安定培養に
成功し、生産コストは1リットル当たり約500円で、従来の半分
程度まで改善した。2020年までにコストを1リットル100円
以下に抑えたい考えだ。IHIの藻は「榎本藻」。光合成のエネル
ギーのみで増殖する。油の含有量が多く、増殖スピードも速いなど
の特徴がある。

IHI以外でも、自動車部品大手のデンソーなどが藻を使ったバイ
オ燃料の開発を進めており、いかにコストを抑えて生産できるが競
争になっている。

ここでも米国が進んでいて、米国と開発競争になっている。

3.原子炉とレーザー、宇宙
戦争に勝つことを意識した兵器開発が必要になる。エネルギーは必
需品であるが、それだけでは戦争に勝てない。勝つためには相手の
ミサイルや艦船を破壊して、攻撃できないようにする必要がある。

そのためには、レーザー兵器が重要なのである。事実、米国で研究
しているが、陽子線レーザーであり、破壊するのに数秒か数十秒も
かかり威力が足りない。これではミサイルを同時多発されると、破
壊が間に合わないことになる。

この陽子線レーザーより強力なレーザーは原子核レーザーしかない。
しかし、このレーザーには原子炉と高電圧の電気エネルギーが必要
で加速器も大きいので、普通の飛行機には積めない。このため、宇
宙に上げるしかない。

このレーザーを宇宙に上げて、上から狙えば、効果は大きくなる。
しかし、宇宙空間での相手衛星破壊と防御が必要になる。

宇宙戦争が現実的な課題になる。もう1つ、宇宙に上げる能力は4
トンであり、その範囲に収めるためには、原子炉の小型化が必要に
なる。これらから、トリウム溶融塩炉が有望である。この原子炉の
問題点は放射線が強いことであるが、無人宇宙衛星であれば、人間
の防護を考える必要がない。

というように、戦争という危機の時代を見据えた技術開発とエネル
ギーなどの政策が今、必要とされているのである。

さあ、どうなりますか?


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バイオ燃料用「藻」安定培養に成功 IHI、量産化へ試験プラント
2013.11.19 06:02 sankeiBIZ
 IHIなどが油分を大量に含む藻の屋外での安定培養に成功した
。生産コストは1リットル当たり約500円で、従来の半分程度ま
で改善した。油は航空機用バイオ燃料としての利用を想定しており
、実用化に向け、2020年までにコストを1リットル100円以
下に抑えたい考えだ。
 IHIは11年に、神戸大学発のベンチャー企業などと新会社「
IHIネオGアルジ」を設立し、研究開発を進めている。
 利用するのは、同ベンチャーが発見した「榎本藻」。光合成のエ
ネルギーのみで増殖する。油の含有量が多く、増殖スピードも速い
などの特徴がある。
 生産する油は、藻と油にちなみ「MOBURA(モブラ)」と名
付けた。
 今回、横浜市磯子区のIHI横浜事業所に屋外試験プラントを設
置。雨や空気中の雑菌などに影響されず、安定的に培養する方法を
開発し、量産化に一歩近付いた。
 今後は、15年にも数千平方メートル規模の試験プラントを建設
し、火力発電所から出る二酸化炭素(CO2)を用いて藻を増殖さ
せる仕組みや、工程の機械化などを研究。20年以降は、海外に数
百ヘクタール規模の実機プラントを建設する。
 航空機は環境負荷の低減や燃料の安定供給などの観点から、バイ
オ燃料を導入する動きが広がっている。
 IHI以外でも、自動車部品大手のデンソーなどが藻を使ったバ
イオ燃料の開発を進めており、いかにコストを抑えて生産できるか
が課題になっている。
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中国主席が4カ月前決断=防空圏「戦略的争い」−香港誌
 【香港時事】香港誌・亜洲週刊の最新号は中国中央軍事委員会に
近い消息筋の話として、東シナ海の防空識別圏設定は4カ月前に習
近平国家主席(中央軍事委主席)が決断したと伝えた。
 同誌によると、東シナ海の防空識別圏設定はかなり前から人民解
放軍が提案していたが、共産党指導部は取り上げていなかった。習
主席はこの決断に関連して、東シナ海をめぐる日中関係は「資源の
争いから戦略的争いに変化した」との見解を示したという。
 また、この消息筋は東シナ海の防空圏に関して、中国艦艇が外洋
に出る際に通過する宮古海峡をにらんだものだと指摘した。 
 消息筋は「中国防空圏の範囲は宮古海峡の近くにまで及んでおり
、これは中日対抗の核心が東シナ海の中間線から宮古島海域に移っ
たことを示す」と解説。「中国にとっては、釣魚島(尖閣諸島の中
国名)や中間線だけではなく、第1列島線(沖縄から台湾、フィリ
ピンなどに至る防衛ライン)を越える外洋への出口も関心の的にな
っている」と語った。
 一方、中国国防省当局者は、中国が東シナ海に続き、黄海や南シ
ナ海にも防空識別圏を設けると述べた。防空圏が拡大すれば、韓国
や東南アジア諸国などが強く反発するのは必至だ。
(2013/11/30-17:01)
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エイズによる死亡者数が減少=医師は「慢性疾病ととらえるべき」
―韓国メディア
Record China 11月30日(土)16時20分配信
2013年11月29日、人民網によると、韓国・中央日報は、かつて“不
治の病”とされたエイズが、現在は慢性疾病になっていると報じた。
世界エイズデー(12月1日)に先立ち、疾病管理本部が28日に発表し
た2012年の韓国国内のエイズ患者に関する調査で、死に至っていな
い7788人のエイズ患者のうち、60歳以上が全体の11%を占めた。ま
た、感染してから28年間生きている患者もいるという。
ソウルのある大学病院の内科の教授は「薬が開発されたことで、治
療がしやすくなっている。エイズは糖尿病や高血圧症などと同様、
慢性疾病ととらえるべき」とし、「直接比較するのは難しいが、が
ん患者や糖尿病患者と比べても、より健康的に生活していける」と
している。
世界的に見ても、エイズによる死亡者数は減少傾向にある。国連合
同エイズ計画(UNAIDS)が9月に公表した報告書によると、2012年の
エイズによる死者数は160万人だった。近年は2005年の230万人から
2011年の170万人となるなど、年々死亡者数は減少している。
(翻訳・編集/北田)
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トヨタが燃料電池車で狙う「プリウスの再現」
2015年に市販を開始する究極のエコカー
山田 雄大 :東洋経済 記者 2013年11月22日
「究極のエコカー」と呼ばれる燃料電池車(FCV)。トヨタはその新
しい試作車「FCVコンセプト」を世界初公開した。FCVは、燃料の水
素と空気中の酸素を反応させて作り出した電気で車を走らせる。排
出されるのは水だけだ。
今回公開したのは、4人乗りのセダンタイプ。2011年の東京モーター
ショーでも同タイプのFCVを公開しているが、それを着実に進化させ
た。出力を向上させながら小型・軽量化を実現した燃料電池を搭載
し、一回の水素補充で500キロメートル以上走れる。外観は「空気か
ら水へ」をイメージしたものになっている。
市販に向けて準備着々
トヨタは、この試作車をベースにしたFCVを2015年に発売する予定。
価格は未定だが、すでに1000万円を切るメドは立っており、「さら
にコスト削減を進めていく」(トヨタ役員)。市販に向け、着々と
準備が進んでいることがうかがえる。
次世代のエコカーをめぐっては、FCVのほかにも電気自動車(EV)、
プラグインハイブリッド(PHV)など本命候補は複数ある。現在開催
中の東京モーターショーで、欧州メーカーが全面に打ち出したのは
EVやPHVだ。
トヨタが開発を進めるFCVは優位に立てるのか。FCVの最大の課題は
水素を供給するインフラの整備だ。
EVやPHVも充電インフラがネックの一つではあるが、電気の通ってい
るところであれば充電できる。これに対し、水素は供給施設を一か
ら作る必要がある。日本国内では2015年に東京など4大都市圏で100
カ所程度が整備される予定だが、その規模ではまったく足りない。
見据えるのは2030年
もちろん、トヨタもこうした問題はわかっている。「2015年時点で
、FCVはほとんど普及しませんよ」とトヨタ役員は言い切る。
「プリウスの時と同じだと思っている」(同)
初代プリウスの発売は1997年。HVの市場をゼロから立ち上げた。15
年後の現在、少なくとも日本市場でHVは完全に定着している。FCV元
年が市販を開始する2015年として、トヨタの目線は2030年にある。
もっとも、トヨタのエコカー開発はFCVだけではない。昨年すでに「
プリウスPHV」を発売しており、欧米勢に先行している。「HVにPHV
、さらにEVの技術もある。ただEVについては、航続距離の問題がま
だ解決できないので1台目として買ってもらうのは難しい」(前出の
トヨタ役員)。
全方位でエコカー開発を進めるトヨタ。技術力の高さもさることな
がら、どの技術が本命になっても十分に対応できる体制こそが、一
番の強みだろう。
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千代田化工建設、水素を常温・常圧で貯蔵できる技術「SPERA」を展示
加藤伸一=ライター
 千代田化工建設は、「Smart City Week 2013」(10月21日〜25日
開催)の展示会において、次世代の再生可能エネルギーの媒体とし
て関心が高まっている水素を、常温・常圧で貯蔵できる技術「SPERA
」を展示している。
 SPERAは、気体のままでは扱いにくい水素を液化し、輸送する技術
。水素エネルギーを実用化する上で鍵を握る技術として期待を集め
ている。出展ブースにおける技術の紹介では、人だかりが絶えなか
った。
 核となるのは、トルエンに水素を反応させて液化することで、体
積にして約1/500に縮小する技術である。水素を使う際には、逆の反
応によって水素を取り出す。これにより、水素をタンカーなどで大
量に輸送することが可能になる。
 同社では、既に神奈川県横浜市に実証プラントを建設し、水素の
大量輸送や長期貯蔵の実用化に向けて検証している。液化した水素
を供給する価格として、1m3当たり30円を目指しているという。
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人工光合成 無尽蔵なCO2と水から工業原料生産 高い変換効率
、世界をリード
2013.7.28 07:00 産経
 太陽光エネルギーは、地球に降り注ぐ1時間分だけで人類が必要
とするエネルギーの1年分に相当する。「水の惑星」とも呼ばれる
地球は表面積の約7割が水で覆われ、CO2は地球を温暖化させる
ほど増加が続いている。
 人工光合成は、これらの無尽蔵な資源から、燃料になるメタノー
ルや化学製品の基礎原料となるエチレンなどの多様な物質を、原材
料費ほぼゼロで生み出すことができる。
 研究は日本の独走状態だ。これまでは室内で疑似的な太陽光を使
った実験にとどまっていたが、パナソニックは昨年12月、屋外の
自然光での実験に成功し、単純な有機化合物のギ酸を作り出した。
 今年5月にはトヨタ自動車グループの豊田中央研究所(愛知県)
も、方法や条件が異なる屋外実験でギ酸を生成。いずれも世界初の
成功で、実用化への大きな一歩といえる。
 研究に火を付けたのは約2年前、大阪市立大の神谷信夫教授が発
表した論文だ。植物が光合成で水を分解する際に、触媒として働く
マンガンクラスターという物質の構造を初めて突き止めた。似た構
造の触媒を作れば人工光合成が実現に近づくため、世界中で競争が
始まった。
 実証実験に世界で初めて成功したのは豊田中央研だ。平成23年
9月、ギ酸を生成。太陽光エネルギーの変換効率は植物(0・2%
)の5分の1の0・04%だったが、現在は0・14%に向上して
おり、28年度末に1%を目指す。
 パナソニックは異なる条件で昨年7月、植物と同じ0・2%の変
換効率を初めて実現。生成物はギ酸だったが、現在は触媒の改善で
「効率は約2倍に向上し、メタノールやエタノール、エチレン、メ
タンも生成できた」(同社)という。
 目覚ましい進展の背景には、国を挙げての支援がある。その素地
を作ったのは22年のノーベル化学賞に輝いた根岸英一・米パデュ
ー大特別教授だった。受賞直後、根岸氏は「資源が乏しい日本は人
工光合成に注力すべきだ」と文部科学省幹部に直談判し、国家プロ
ジェクトを立ち上げた。
 経済産業省も昨年11月、文科省と連携して10年間で計約150
億円の予算投入を決定。28年度末に3%、33年度末に10%の
変換効率を達成目標に掲げた。
 低コスト化や大規模な装置開発など課題は多いが、神谷教授は「
新触媒を開発し、42年にメタノールの効率的生成を実用化したい
」と話す。欧米や中国、韓国の追い上げは激しいが、実用化でも日
本が優位性を確保し、エネルギー革命や経済成長につなげることが
期待される。
 植物の光合成のように、太陽光のエネルギーを使って水と二酸化
炭素(CO2)から有機物を作る「人工光合成」の研究が加速して
いる。地球のありふれた物質から、燃料や工業原料を生み出す夢の
技術だ。自然光を使った屋外実験や、植物並みの高い変換効率など
国内企業による世界初の成果が相次いでおり、日本の新たなお家芸
になりそうだ。(伊藤壽一郎)
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藻から燃料 高品質…目指せ「産油国」
2013.7.28 18:00 産経
原油価格の高騰や地球温暖化が進む中、石油に代わる再生可能エネ
ルギーとして小さな藻類が脚光を浴びている。藻が作る高品質の油
を航空機のジェット燃料などに活用しようと研究開発が進行中だ。
大量培養で安価に生産できれば、資源に乏しい日本が「産油国」に
なれるかもしれない。
 微小藻類には、石油とほぼ同じ成分の油を作り貯蔵するものがあ
る。バイオ燃料の原料となるトウモロコシなどと違い、藻類は食糧
需要と競合しない上、面積当たりの生産量が陸上植物に比べ桁違い
に多い。国土の狭い日本にとって利点が多く、実用化を視野に入れ
た動きが加速している。
 筑波大の渡辺信教授らは4月、仙台市の下水処理施設に実験拠点
を開設し、生活排水に含まれる栄養分で藻を育て油を抽出・精製す
る研究を始めた。施設は東日本大震災で被災しており、地域の復興
につなげる狙いもある。
 研究には光合成を行う緑藻のボトリオコッカスと、渡辺教授らが
沖縄県で発見したコンブの仲間のオーランチオキトリウムという2
種類の藻を使う。
 ボトリオコッカスは下水に含まれる窒素などの無機物を肥料にし
て育てる。細胞外に油を分泌する珍しいタイプの藻で、抽出が容易
なのが利点だ。一方、オーランチオキトリウムは油の生産効率が世
界トップクラス。光合成をせず、汚泥などに含まれる有機物を与え
て培養する。
 平成28年度まで実験し、大量生産や効率化の手法を探る。藻か
ら作る燃料の生産コストは現在、1リットル当たり500〜1500
円程度とガソリンよりもはるかに高いが、渡辺教授は「まず1リッ
トル当たり200〜400円程度まで下げたい」と話す。
 光合成を行うミドリムシから油を作る研究も進む。東大発ベンチ
ャーのユーグレナ(東京)は油の生産性が高いミドリムシを発見、
JX日鉱日石エネルギーなどと共同でジェット燃料の開発に取り組
んでいる。
 藻類から油を作る研究は米国が先行しているが、日本は培養や抽
出・精製で高い技術力を持つのが強みだ。経済産業省は42年まで
の実用化を目指して研究開発を後押しする。
 大量培養の技術革新や生産性の高い新種の発見などで、最大の課
題である生産コストを引き下げられれば、産油国への仲間入りも夢
ではない。(黒田悠希)



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