4851.低成長の中の短期景気回復



昨日は、宿輪先生の講演を聞いた。その講義録。

1.特徴
全体な傾向は、低成長の中の短期的な回復で、それもそろそろ下が
り始めたところか?

先進国は量的緩和でインフレターゲットとじゃぶじゃぶとお札を刷
り、8000億ドルから4兆ドルと5倍になっている。このドルが海外に
染み出している。

量的緩和により過剰流動性で消費が伸びた。しかし、量的緩和の縮
小ということで戻り始めている。

このため、新興国は利上げで通貨防衛して、物価上昇で社会不安を
起こすためにインフレ抑制をしている。

短期的な消費が伸びたが、投資は伸びていない。まだ経営者は将来
的に心配であり、設備投資に踏み出していない。このため、量的な
拡大で質的な拡大になっていない。

よって、会社の業績を見た業績相場ではなく、量的緩和で資産価値
が上がるということで金融相場になっている。

しかし、量的緩和について、疑問の声が出てきている。お札の量が
増えることはお札の価値が落ちることであり、それにより資産バブ
ルが起き、取らなくても良いリスクを取っていると。

本当は、構造改革してイノベーションを起こすことであるが、イノ
ベーションのジレンマが起きて、なかなかうまくいかない。
大企業は、今売れている商品をダメにするイノベーションを嫌う。

産業政策は、このため、難しい。特に先進国は成功していない。

2.商品別
為替は、ドル買い円売りのポジションのためにドル高円安でユーロ
も強い。量的緩和の縮小が見えるので、新興国通貨は不安定になて
いる。
株は、量的緩和で米国株は最高値になり、その影響もあり日本の株
も上昇している。堅調である。
金利は日銀が国債を買うので、長期金利は低位安定している。現在
日本の国債累積は1000兆円もあり、金利が1%上がると、10兆円
も払いが増えるために、国債金利を上げることができない。

3.先進国
米国は、体力がある。株価が最高、金融相場であり、連日上昇して
いる。しかし、量的緩和縮小がすべてのポイントになっている。

イエレン新FRB議長は、労働経済分野が専門であり、雇用状況が重要
であり、失業率6.5%まで量的緩和を続けるという。ハト派である。
FRB理事定員は7名であり、この得票で決めるために、議長も1票と
同じであり、このFRB理事の動向が重要であり、各連銀総裁の内、だ
れが得票権のある理事であるかを知ることが重要である。

現時点、タカ派は、ラッカー(リッチモンド)、プロッサー(フィ
アデルフィア)、フィッシャー(ダラス)、コチャラコタ(ミネア
ポリス)の4名で理事である。タカ派はインフレに対して厳しく、
ハト派はインフレに対して認める立場である。

この量的緩和により、雇用が伸びてきたことと、住宅、特に中古住
宅の販売が好調になっている。

財政の崖というように、財政赤字を止める方向で共和党を中心に動
き、特に茶会派が強硬に行動して政府閉鎖を起こして、共和党の支
持率が歴史的な低率になり、失敗した。このため、地方選で負けて
いる。

新大使にキャロライン・ケネディ55がなり、ボストンのレッドソ
ックス本拠地であるフェンウェインパーク球場の7回に掛かる曲「ス
ウィート・キャロライン」ニール・ダイアモンドの曲であるが、こ
れは、キャロライン・ケネディのことである。ケネディ暗殺は50
年前の1963年11月22日であり、その人が在日大使になったことは、
今までのルースさんより良いと思う。

ケネディ家は、産業財閥ではなく怪しい投資で儲けたために、一家
の多くが暗殺されている。

欧州は、一時より良くなり、ユーロ高になっている。欧州は昔から
インフレに対して厳しくて、直ぐに金利を上げてインフレを止める
志向をするが、驚いたことにドラギECB総裁は、金融緩和に振ってい
る。ユーロが低いことと産業政策がうまくいって、ドイツは1人勝
ちの状態である。南欧諸国の国債金利も下がっている。これは銀行
同盟ということで、銀行管理をEUで行うことにして、銀行の貸出を
ドイツが管理するようになったことも寄与している。

日本は、息切れ気味である。株価は戻り強含みである。しかし、日
本の製造業はどうなっているのか?去年まで赤字であったトヨタが
今年は最高益という。製造業が安定していない。業績の上下が激し
い。

アベノミックスの3つの矢は、量的緩和、財政出動、成長戦略の3
つであるが、量的緩和は円安にすることである。物価が上がる。こ
のため、庶民は損をするが、資産家と借金をしている人が得をする。

日本で一番借金をしているのは、政府であり1000兆円という。この
ため国債金利を低位にするし、物価が上がるので返す金は同じでも
価値が下がるので、返し安い。成長戦略での構造改革は弱い。

インフレ率より金利を下のすることになる。貿易赤字は日本製品の
競争力が落ち、もう1つが原発が止まり石油などの燃料を買ってい
ることと、アジア経済は低くなっているので、最高額になったが、
経常収支はトントンである。

財政赤字は一般会計93兆円に対して、税金など収入は47兆円であり
残りは国債で穴を埋めている。これは正常な姿ではない。年金や社
会保障などやさしさがあるが、赤字は無責任である。米国の方が正
常姿とも思うほどである。

消費税引上げは来年4月に決まり、欧米での見方は消費税25%か
ら見ると、低いので日本の国債は大丈夫だとみられているが、もし
3%の引き上げもできないと見ると、空売りを招くことになる。そ
うすると国債の金利が上がってしまう可能性があるので、するしか
ない。

賃金は、大企業は上がるが、中小企業、非正規雇用、能力制による
賃金がどうなるかを見ることが重要である。農業は減反保障で国民
1人2万円も払っていたが、これを7000円にして、5年後になくすと
いう。今は農業保険を作るというが、シカゴの先物を真似すれば、
いだけで、保護が強すぎる。

4.新興国
米国の量的緩和縮小で資金引き上げが起こり、自国通貨が下がり、
インフレが起き、生活が苦しくなり国民の不満が爆発するために、
金利を上げてインフレの抑制を目指している。

中国は現在の経済の半分は財政出動によるが、徐々に作る物がなく
なっている。輸出も新興国経済が低迷で伸びていない。格差拡大も
あり、不安定になっている。ここでもインフレ抑制で金利を上げて
いる。しかし、中国には共産党に代わる選択肢がなく、大変なこと
になっている。

BRICSはインフレ抑制で金利を上げ、このため国内経済にはマイナス
になっているが、不安定になるより良いと行なっている。

5.まとめ
先進国は、低成長率でこのままに進む。もう高度成長はないと諦め
ることが必要である。その前提で将来像を作り、それに向けて社会
を作るしかない。

人物を見るとき、1.知識があること、2.自己管理ができるか、
3.コミュニケーション能力があるか、4.生き方(哲学)で見る
し、企業経営としては、1ノウハウがあること。2.業績管理がで
きていること、3.営業ができること、4.ビジョンであり、同じ
である。

これを国家に当てはめると、1.競争優位な産業があるか、2.国
が持続可能がどうか、3.外交がうまいか、4.将来像がしっかり
しているかであるが、今の日本は、この基準を当てはめると、財政
赤字をそのままにして、外交は下手で、将来の国形もないというよ
うに、どうしようもないことがわかると。

普通の生活で良いこと1に対して、悪いことは3あるのが標準であ
り、あまり恵まれると努力しなくなるし、あまりにも悪いことだけ
でと、諦めてしまう。良いこと、悪いことの割合が1:3がちょう
ど良いようである。

6.映画評論:略

(Q&A)韓国の状況はどうですか?
韓国は苦しい。サムソンだけが良いが、それ以外は難しい。ウォン
高であり、庶民の生活が苦しい。韓国は移民政策を取っているので
、国内でも異民族との軋轢も出てくるはず。

日本は韓国を見ていることが必要かもしれない。

以上

まあ、宿輪先生は経済でもタカ派的であるが、それが世界の主流で
あり、サマーズ、ルービニ、ラジャンなど一流の経済学者が徐々に
タカ派的な意見を述べているので、それと同じであり、自分の確認
としても良いように思う。

また、韓国が移民政策を取っていることを知った。


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