4850.サマーズ理論が世界に波及



ラリー・サマーズの現時点の世界経済、特に先進国経済の見方につ
いて、説明できているようだ。英フィナンシャル・タイムズ紙もサ
マーズ理論を詳細に解説している。しかし、サマーズ氏の講演会後
半の解決案については、別の意見を書いて、サマーズさんの意見を
無視したようだ。

サマーズ氏は、高所得国の経済が世界金融危機以前の通常の状態に
戻ることは容易ではないかもしれないと述べたうえで、需要の慢性
的な低迷と遅い経済成長という、不安を抱かせる将来像を描いたが
、このため、金融量的緩和しても企業は投資をしなく借りない。

このため、金融機関は、キャリー・トレードして発展途上国に投資
機会を見つける努力をする。このため、世界的なバブルが形成され
て、金融緩和縮小で、巻き戻しが起こり、途上国でのバブル崩壊が
起きて、世界経済は混乱する。これをルービニ氏は心配する。

金融緩和の行き過ぎで、「世界的な貯蓄過剰」と「グローバルイン
バランス(世界的な経常収支不均衡)」に表れた。東アジアの新興
国(とりわけ中国)、石油輸出国およびいくつかの高所得国(とり
わけドイツ)による巨額の経常収支黒字(資本の純輸出)が起きて
いる。

世界経済の不均衡是正には、金融量的緩和の縮小が必要であり、そ
れと新規需要の創造が必要になる。イノベーションである。

このサマーズ理論により、金融量的緩和政策が見直し機運にある。
ECB理事会メンバーのバイトマン独連銀総裁は、紙幣の増刷はユ
ーロ圏危機への解決策にはならないと「われわれは金利を引き下げ
、銀行に無制限の流動性を供給している。ただ、この危機を脱却す
るのに手早く簡単な方法などない」と断じ、「紙幣の増刷は明らか
に解決策ではない。危機の原因が取り除かれるまでには依然何年も
要する」と強調した。

という意見が正当性を持って論じられるようになった。

FRBも、10月29、30両日開催のFOMCの議事要旨を公表
し、投票権のある委員10人中数人が「経済情勢によって正当化さ
れれば、今後数回内の会合で量的緩和縮小を決定できる」と述べて
、金融量的緩和の縮小策を支持していることが明らかになった。

投票権のない参加者も含めると、おおむね「数カ月以内の縮小が正
当化される」との見方が示された。

というように、米国内でもサマーズ理論が支持を得る方向である。
日本は、まだ資産価格がバブルの状態ではないかもしれないが、米
国の状況を見て、どうするかを考えておく必要がある。

構造変革、イノベーションをどう実現するか?日本の正念場を迎え
るはず。


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世界が日本流の長期停滞に入る恐れ
2013.11.21(木)  Financial Times
(2013年11月20日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
米国のローレンス・サマーズ元財務長官が、楽観論者の残党に大量
の冷や水を浴びせかけた。先日開催された国際通貨基金(IMF)の年
次調査会議にパネリストとして参加したサマーズ氏は、高所得国の
経済が世界金融危機以前の通常の状態に戻ることは容易ではないか
もしれないと述べたうえで、需要の慢性的な低迷と遅い経済成長と
いう、不安を抱かせる将来像を描いてみせたのだ。
 いわゆる「長期停滞」に陥る可能性を指摘したのはサマーズ氏が
初めてではない。思慮深いアナリストたちは金融危機以来ずっと、
日本の「失われた10年」の二の舞いになるのではという恐怖を感じ
てきた。しかし、サマーズ氏の説明は実に華麗で、見事だった。

長期停滞を恐れる理由:西方諸国に見られる3つの特徴
 同氏の説明を信じる理由は何か? これについては、西側諸国に
見られる3つの特徴を指摘することができる。
 第1に、2007〜08年の世界金融危機からの回復は明らかに弱々しい
。米国の第3四半期現在の経済規模は危機前のピーク(もう5年以上
前の話)を5.5%上回るにすぎない。また実質ベースで見た米国の国
内総生産(GDP)は危機前のトレンドに対して後れを取っており、両
者の差は拡大し続けている。
 しかも、超緩和的な金融政策が取られているにもかかわらず、こ
のGDPの伸び悩みは長期に及んでいる。
 第2に、金融危機で打撃を受けた国々は、危機の前には住宅価格の
急上昇とともにレバレッジの急拡大を(特に金融部門と家計部門で
)経験していた。いわゆる「バブル経済」である。また多くの国々
(とりわけ米国と英国)の政府は拡張的な財政政策も取っていた。
 それにもかかわらず、行き過ぎを示唆する明らかな兆候――特に
トレンドを上回る経済成長やインフレ率――は英国でも米国でも危
機がやって来る前には一切見られなかった。
 第3に、危機前の数年間には、世界経済が力強い成長を遂げていた
にもかかわらず、長期の実質金利が著しく低い水準で推移していた
。英国では長期の物価指数連動国債の利回りが、アジア金融危機の
後に4%近い水準から2%前後に低下していた。世界金融危機の後に
はマイナス圏に突入している。米国の物価連動国債(TIPS)の利回
りも、少し後れながら同様な動きを見せていた。
 従って、金融システムの健全性をある程度回復させたり、危機前
に積み上がった過大な債務負担を軽減したりするだけでは、完全な
景気回復は実現しそうにない。なぜか? 
 それは、世界金融危機の前に見られた金融の行き過ぎが以前から
の構造的な弱さを覆い隠していたから、あるいは筆者が論じてきた
ように、この行き過ぎ自体がそうした弱さに対応して生じたもので
あったからだ。

世界的な貯蓄過剰という問題
 そうした弱さの1つに「世界的な貯蓄過剰」がある。これは「投資
不足」と言い換えてもよい。低い実質金利がその何よりの証拠だ。
生産的な投資を探し求めている貯蓄の方が、その貯蓄を利用する生
産的な投資よりも多かったということだ。
 貯蓄過剰のしるしは「グローバルインバランス(世界的な経常収
支不均衡)」にも表れていた。東アジアの新興国(とりわけ中国)
、石油輸出国およびいくつかの高所得国(とりわけドイツ)による
巨額の経常収支黒字(資本の純輸出)のことだ。
 これらの国々は、世界のほかの国々に差し引きでプラスの貯蓄を
供給することになった。金融危機前はそうだったし、今日でもこの
構図は変わっていない。
 世界金融危機が起きる前は、世界の過剰な貯蓄の大部分を米国が
吸収していたが、生産的な投資に使われたわけではなかった。低利
の資金を容易に借りられたにもかかわらず、米国の設備投資のGDP比
は2000年以降低下した。この低下の理由の1つは、投資財の相対価格
が下落したことにあった。実質ベースで見た設備投資のGDP比は安定
していたが、名目ベースで見た比率は低下しているのだ。
 また、2000年直前の株式バブルの時を除けば、企業は設備投資の
資金を自らの貯蓄から捻出しており、外部から調達する必要がなか
った。
 そのため、米国に輸入される貯蓄は、家計部門と政府部門の借入
という形で使われた。ところが、所得格差が拡大したことにより、
家計部門の借入超過(つまり、貯蓄よりも借入の方が多い状態)に
頼ることはさらに難しくなった。
 ほかの条件が同じであれば、この状況では家計部門の貯蓄は増え
るはずだ。お金持ちは支出以上の所得を得ることが多く、さらにお
金持ちになるにつれてさらに貯蓄をすることが多いからだ。
 この問題に対する(一時的な)解決策は、お金持ちでない人をそ
そのかして返済能力を超えた借金をさせ、支出を続けられるように
することだった。しかし、2007〜08年の金融危機でこの手法は破綻
した。
 要するに、世界経済は、たとえ金利が極めて低くても企業が使い
たいと思う以上の貯蓄を生み出してきたわけだ。これは米国だけで
なく、大半の主要高所得国に当てはまる。
 こうして過剰貯蓄は足元の需要の制約になった。だが、これは投
資の鈍さと関係していることから、将来の供給の伸びが鈍いことも
意味している。この問題は危機以前から存在していたが、危機で一
段と悪化した。

長期停滞を回避するためになすべきこと
 では、何をすべきなのか? 投資に対する望ましい貯蓄の過多に
対する1つの対応は、実質金利のマイナス幅を大きくすることだ。一
部のエコノミストがインフレ率を引き上げるべきだと主張している
のは、このためだ。だが、それはたとえ政治的に容認できたとして
も、達成するのが難しい。
 アンドリュー・スミザーズ氏が著作『The Road to Recovery(回
復への道)』で強調したもう1つの可能性は、企業投資を妨げる障害
に真正面から取り組むことだ。同氏が挙げる一番の元凶は、経営陣
を生産的な投資を増やすよりも自社株買いを通じて株価を操作する
よう促す「ボーナス文化」だ。
 スミザーズ氏が考察し、多くのエコノミスト(筆者自身も含む)
が支持する、また別の可能性は、今日の過剰貯蓄を資金源として利
用して、公共投資を大幅に拡大させることだ。これは部分的に低炭
素成長へのシフトと結びつけられるかもしれない。
 もう1つの可能性は、絶好の投資機会が存在するに違いない新興国
・発展途上国への資本移動を促進することだ。これだけ膨大な世界
の貯蓄が、一見したところ投資機会が存在しない場所にチャンスを
求め、投資機会が存在すると期待される場所を避けることは意味を
なさない。
 高所得国にただの金融危機以上のことが起きたという根本的な主
張には説得力がある。また、こうした国での設備投資の急増がどう
にかして世界の過剰貯蓄を吸収するとは考えにくい。結局のところ
、人口が高齢化し、賃金が高く、経済が停滞している国々で、そん
なことが起きると考える理由などあるだろうか? 
 危機が高所得国にもたらしたダメージは大きいが、これらの国は
それよりずっと大きな問題に直面する。かなり長期にわたり弱い需
要と貧弱な供給が続く未来に向かうかもしれないのだ。
 つまり、最善の対応は、生産的な民間投資および公共投資を増や
すことを目指した策だということになる。そう、確かにミスは起き
るだろう。しかし、貧しい未来のコストを受け入れるよりは、ミス
を犯すリスクを取った方がいい。
By Martin Wolf
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紙幣の増刷、危機への解決策にはならず─独連銀総裁=新聞
2013年 11月 21日 01:56 JST
[フランクフルト 20日 ロイター] -欧州中央銀行(ECB)
理事会メンバーのバイトマン独連銀総裁は、紙幣の増刷はユーロ圏
危機への解決策にはならないとの見解を示した。
独週刊紙ツァイトとのインタビューで述べた。
総裁は、「われわれは金利を引き下げ、銀行に無制限の流動性を供
給している。ただ、この危機を脱却するのに手早く簡単な方法など
ない」と断じた。
「紙幣の増刷は明らかに解決策ではない。危機の原因が取り除かれ
るまでには依然何年も要する」と強調した。
ECBのプラート専務理事は前週、ユーロ圏のインフレ率を中銀の
目標水準に押し上げるため、ECBが資産買い入れに踏み切る可能
性に言及していた。
コンスタンシオECB副総裁は今週、量的緩和(QE)の可能性に
ついて検討したことはあるが、技術的な準備は行われていないと明
らかにしている。
ECBは今月7日の利下げ後に、一段の利下げが可能という見方を
示している。
バイトマン総裁はツァイトに対し、追加緩和を示唆するのは時期尚
早との見解を示した。
「理事会は金融政策を緩和したばかりだ。追加緩和について直ちに
示唆するのは賢明ではないと考える」と語った。
総裁は、「技術的にはわれわれの策は明らかに尽きていない」とし
たものの、「追加措置を協議することで、危機の真の原因から遠ざ
かることになる」と指摘した。
総裁はユーロ圏の長引く危機の要因として、一部加盟国の競争力の
欠如や高水準の公的債務、銀行システムの問題を挙げ、「政府の政
策のみがこういった問題を解決できる。中銀では不可能だ」と説明
した。
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「数回内会合で量的緩和縮小」=具体的シナリオ検討−米金融会合
要旨
 【ワシントン時事】米連邦準備制度理事会(FRB)は20日、
10月29、30両日開催の連邦公開市場委員会(FOMC)の議
事要旨を公表した。会合前に発表された9月の雇用の伸びは鈍化し
ていたが、経済や労働市場が改善を続けるとの見通しは変わらない
として、投票権のある委員10人中数人が「経済情勢によって正当
化されれば、今後数回内の会合で量的緩和縮小を決定できる」と述
べていたことが明らかになった。
 また、投票権のない参加者も含めると、おおむね「数カ月以内の
縮小が正当化される」との見方が示された。会合後に発表された10
月の雇用統計は、政府機関閉鎖などがあったにもかかわらず大幅に
改善しており、12月17、18両日の会合での判断が注目される。
 議事要旨によると、参加者は量的緩和縮小のシナリオも検討。明
確な改善を示す経済指標が得られなくても、量的緩和による金融市
場への悪影響が懸念される場合などに縮小を始めるケースや月850
億ドル(8兆5000億円)規模で購入している長期米国債と住宅
ローン証券(MBS)の減らし方などが議論された。
(2013/11/21-08:27)
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「ボルカールール」、年内導入見込む=ルー米財務長官
2013年 11月 20日 01:16 JST
[ワシントン 19日 ロイター] -ルー米財務長官は19日、金
融機関の自己勘定取引を制限する「ボルカールール」について、年
内に導入されるとの見通しを示した。
長官は会合で、今年中にボルカールールの策定を完了させると表明
、年内の導入を楽観視していると述べた。
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資産バブル、成長拡大への唯一の手段なのか
2013年 11月 19日 15:50 JST  WSJ
 中央銀行が需要拡大を促すには、資産バブルしか手段がないのだ
ろうか。
 主要エコノミストらはこれについて疑問を抱き始めている。また
、専門家と中銀関係者はいずれも、資産バブルを維持することが景
気回復を継続させる唯一の手段ならば、これを容認するという方向
に傾いているのは明らかだ。
 これが誤りだと判明するのは間違いないだろう。しかし、中銀が
政策運営面で抱えている制約を考慮すれば、これは、当事者が他に
選択肢が …
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米著名投資家、株高に警告=「大幅な下落」の可能性
 【ニューヨーク時事】「物言う株主」として知られる米著名投資
家のカール・アイカーン氏は18日、ダウ工業株30種平均が一時
1万6000ドルの大台に初めて乗せるなど好調な米株式市場につ
いて、「大幅な下落」が起きる可能性があるとして、先行きに警戒
感を示した。ロイター通信が、同社主催のイベントに参加した同氏
の発言として報じた。(2013/11/19-09:19)




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