4849.サマーズの「3本の矢」政策



米国の経済は、大変なことになっている。労働市場参加率60%ま
で落ちて、労働人口に占める労働就業人口が半分しかない。このま
ま、FRBが金融緩和政策をしていると、この状態が続き、日本の失わ
れた10年と同じになるという危機感が出ている。

このため、今のFRBの量的緩和政策は、バブルを作り次のバブル崩壊
を招くとルービニ教授が警告し、次のFRB議長候補であったラリー・
サマーズがIMFで今の米国経済政策では、日本になると危機感を表明
したようである。

この様子をAEI誌で「The Slump That Never Ends: Does the US face
 “secular stagnation”?」で述べている。

詳しくは、最後にあるリンク先でそれを読んでいただくとして、ここ
では概要を述べる。

サマーズは、このままの金融政策では、米国を含む先進国経済が日本
の失われた10年流の沈下に落ちるリスクがある。大きなスランプは
終わらない。

雇用と賃金の増加がない間、金利は普通に戻らないし、インフレも起
こらない。金利は今後10年間に2%、3%に落ちると推測している。

普通の金融政策では低い金利にできないので、非伝統的な量的緩和政
策にした。しかし、ゼロ金利では、本来持っている能力より生産活動
が停滞していることになる。これは2つの観察で明らかである。

1つがリーマンショク前、経済活動は、良くも悪くもなかった。今は
この時期より下になっている。

2つに、パニック後、GDPはパニック前より大きく落ち、米国労働人口
での就業率が大きく落ちた。公式的には恐慌は終わったが、サマーズ
は「終わったというほど終わっていない」と。

現在、見失っていることは、その状況の理由と次の手である。サマー
ズもこの疑問に答えを今は出せない。しかし、ハンセンが言ったケイ
ンズ的な政策の中に糸口があると。人口増の減少、技術的なイノベー
ションが無くなったこと。このため、これから脱出するためには、大
きな予算を組み、そのため財政赤字が必要であると。財政出動を続け
る必要があるとした。

現在の米国の状況では、借りに借りるしかない。そして、刺激策しか
ない。

まとめると、
1.FEDの非伝統的な金融政策QEが間違えで、金利を下げると社会活動
が落ちる。
2.イノベーションが起きるまで、財政出動で繋ぐしかない。
3.人口減少対策には移民が必要である。

ということで、日本と同じような3本の矢政策が必要で
1つはNGDP目標値、2つに労働者の移民政策、3つにイノベーション
政策であると。

そろそろ、日本も量的緩和政策だけでは無理で、新しいイノベーショ
ンをサポートするために、規制を大幅に撤廃することである。

新産業を作るために、構造改革が必要である。
だんだん、このコラムで議論した成長政策について、世界的な意見が
まとまり始めているようである。

さあ、どうなりますか?

明日、有名な経済学者と会うので質問してみる。

The Slump That Never Ends: Does the US face “secular stagnation”?
4835.ごった煮のバブル

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