4848.米国の対外姿勢の変化と日米関係への影響



共和党ネオコンのウイリアム・クリストル、AEIのガリー・シュミッ
ト、FPIのクリストファ・グリフェンの3人のパネル・ディスカッシ
ョンを聞きに行った。その議事録である。

3人共に、安倍首相など自民党要人と会談するようである。共和党
と自民党は近いように感じる。

クリストル氏からの講演:米国の政治状況は。歴史的に見ても新し
い時代に入った。今までとは違って、予測不能な状態である。1980
年代のレーガン大統領から2006年ブッシュ政権までの20年間は、民
主党政権であるクリントンを含めて、今から考えると安定した時代
であった。米国全体にコンセンサスがあった。

2006年オバマ大統領になって、政変があった。福祉政策、公共政策
など民主党が上下院でも多数になり、振り子が触れリベラルになっ
た。この時、共和党の保守はダメになったと言われた。

しかし、2012年に下院が共和党になり、再度振り子が戻り、不確実
の時代になった。オバマの予算も大きく違うことになっている。こ
の時、茶会派が共和党で多数になった。

しかし、今、茶会派は終わったと言われている。連邦政府の閉鎖や
債務上限引き上げ反対など政治が行き詰まった状態になっている。

共和党と民主党の間で、譲れない対立が起きて、行き詰まりになっ
ている。どちらかが突破口を開くまで、この混乱は続くことになる。
しかし、どちらが開くのかはわからない。

共和党内でも激しい対立があり、茶会派と穏健派が戦っている。と
いうようにひどい状態になっている。

しかし、2016年の中間選挙は、共和党が有利である。それは大統領
になって6年目の選挙は、大統領を擁する政党が今までは負けてい
た。しかし、現時点では両党ともに国民に受けいられていない。

その上、両党ともに妥協できない。これが内政の状況である。
この米国を外で見ると、なんとバカなことをしているのかと見える
かもしれない。

この状態であるので、外交政策も読めなくなっている。今に比べて
冷戦時代は安定していた。特に2001年9.11以降は、わからない。
イラクもアフガンもうまくいっていない。イランの核問題でも民主
党、共和党とも党内はバラバラである。

今に比べると、2006年のオバマ大統領はバラ色の外交政策を掲げて
いた。しかし、今は無理である。軍事費削減であり、戦争に米国は
疲れた状態である。共和党内にもマケインのように強い米国と作る
という人もいるが、孤立を言う人もいる。

オバマを大統領にするべきではないという思いがあり、そこからい
ろいろな意見が出てくる。米国は決断しない流動的な時代であり、
危険な時代でもある。私は小さな政府の保守が正しいと思うが。

国民保護する保守主義が正しいと思う。外交も保守の方が良い。強
い米国になるべきと思っている。

米国は正しい姿勢をつづけるべきであり、2・3年後に戻ると思う
が、わからないし、それまでダメージを受ける可能性はある。
そのため、日本に重荷を少し受けて欲しいと思っている。


シュミット氏の講演:外交政策として、東アジアでは米国は、中国
に焦点を当てた。対中国政策で、いろいろな政策とその改訂版があ
るが、うまくいくか疑念がある。

40年前、ニクソン、キッシンジャーにより扉を開いた。米中でソ連
に対抗するために手を差し伸べたのである。その時台湾を切った。
ソ連は、自己破綻して、中国の寄与は少なかった。

ソ連破綻後、中国関与政策にシフトした。中国はまともになると見
て、両党ともに賛成した。しかし、2009年に疑念が出てきた。関与
したので、中国は世界の責任を負うべきとボブ・ガーリックが論文
を出したが、正しい方向に向かわないことをほのめかした。

中国は合格ではない。軍の透明性は高くない。周辺国に強硬な対応
し、経済の解放もしない。

このため、2008年オバマ政権は見直しをする。関与を見直した。そ
の結果、関与を倍増し、G2米中大国という方向を出したが、中国を
驕らせて、うまくいかなかった。中国指導者は米国は弱いと見て、
強攻策を取り始める。

2つの問題が明らかになっている。1つが米中共有の利益があると
した。北朝鮮の核問題やテロは利益が同じであるが、優先順位は違
うので、不一致になる。

もう1つが、利害関係だけではなく、野心があることを考えないこ
とである。中国は利害で動くより、「中国の夢」と野心の方が大き
い。

米国が作った秩序は、中国にとっても得であろうという見方は間違
いである。

それは第1次大戦前、ドイツ帝国と英国の関係を見ると、オースト
リアの大使が自国への報告で、ドイツは英国の海洋秩序を守る方が
大きな利益を受けるが、野心がドイツにあるかどうかはわからない
としている。結果は明らかであり野心が勝ったのである。

オバマは、中国の野心を見ていない。

そして、オバマは3つの観点からゲームプランを作った。
1つに軍事的にリバランス、2つにTPPで地域経済圏、3つに外交の
活発化ということで、会議に出席するとした。

しかし、このプランが実行できていない。1つのリバランスは軍事
費削減でできず、大西洋から太平洋に比重を移し太平洋に60%とし
たが、艦艇数が減って数は増えない。

2つにTPPの努力をして戦略的に自由市場を促進するが、自由貿易は
米国民に受けていないので、大統領は立場が弱くなる。協定が国会
で承認されるかどうかわからない。3つの外交努力も国内混乱で、
出席できない。と実行ができていない。

現状を見ると、自由主義国がアジアで増えているし、人口も多い。
自由と民主保護を掲げれば、大きなことができる。支援するべきで
ある。


グリフィン氏の講演:2つのことを話す。1つが日米関係でもう1
つが軍事問題である。安倍首相は「Japan is Back」とワシントン
で話した。安倍首相の政策はワシントンから見ても非常に良い。NSC
を作る。強い政府を作るという。短期で弱い政権ではダメである。

日米軍事協定は重要であり、日本の自衛隊の役割を増やし、集団自
衛権も良い。しかし、リソースがあるのとの疑問がある。2013年に
4%予算を増やしたというが、10年間予算を減らしている。

米国は2011年から1兆ドルを削減している。10年続けるという。年間
400億ドル減らすという。このため、空洞化してきている。特に訓練
費用が減らさている。陸軍42旅団あるが、現時点で2旅団しか戦
場に出られない。湾岸地域に空母を2隻配置していたが、現在1隻
しか配置できない。確実に戦闘能力がなくなっている。


Q&A:
Q1:米国の保守主義は3つの柱(伝統、小さな政府、強い米国)で
あるが、バランスを取ることが重要であるが、バランスはどうなる
のか?
A1:クトストル:保守の3つの柱はそのままであるが、茶会派が新
しい時代を開き、比重で、保守内で議論もある。対立があるので改
革ができるのであり、喧嘩は活力の証である。

Q2:中国に対して、ゲームプランが心配でリバランスはヘッジでは
なく、文化であるという。TPPに対しては不信感が大きい、外交では
ケリー国務長官は中東にクギ付けである。本当にどうなるのか?
A2:シュミット:政府のリバランスは、軍事だけではなく経済や文
化も含めてのことである。今、予算の問題があるので、軍事ではな
く文化だと言い繕ったのだと思う。ヘイグもケリーもアジアを知ら
ないので、中東に行ってしまう。

しかし、2+2日米会議にはもともに時間を取り、アジェンダを作
っている。TPPはできないかもしれないが自由貿易は国民もOKなので
TPPを廃案にすることはしないと見る。

クリストル:アジアへのビボット自体が問題であり、米国が必要な
場所に行くしかない。中東から撤退はできない。

グリフィン:ビボットはおかしい。中東の米友好国にもアジアの米
友好国に間違えた印象を与えた。イランが核を持つと軍事能力を中
東に振り向けることになる。

Q3:NSCなど仕組みを変えようとしている。ワシントンはどう思って
るのか?歴史問題はどうか?
A3:グリフィン:悪く思っていない。間違った情報が日本にもたらさ
れているので、ワシントンでは広まっていない。日韓関係が悪いの
で、これが影響している。日本は軍国主義ではない。NSCの速度も早
いと思っていない。民主主義のステップを踏むしかない。

クリストル:日本が強いことを問題にしないが、弱い方が問題であ
る。戦後を見ると、日本が自己主張するとは思わない。日本の役割
を大きくして欲しい。

Q4:ネオコンの価値はどうか?
A4:クリストル:ネオコンは、新しい世界観であり、正しいとか間
違いとは違う。冷戦から離れて、新しい世界観を作り、紛争を未然
に阻止することを求める。このためには強い国になるしかない。

シュミット:ネオコンの台頭、衰退は大げさである。運動なのであ
る。米国の世界観のことである。

Q5:3中全会の見方はどうか?
A5:シュミット:中国の指導者が権力を確立したかどうかが問題で
ある。前の胡錦涛は数年かかったが、習近平は権力を確立したよう
である。

一党独裁と経済改革の2つを求めた。中国の知識人達も政治改革と
経済改革は同時に行う必要を認識しているが、これをしないで、本
当に経済改革だけができるのか疑問視している。

Q6:安倍首相の印象は?
A6:シュミット:国家主義と捉える人がいるが、国際派ではないか
見た。

クリストル:安倍首相は愛国主義者、ナショナリストであるが、フ
ランスのミッテラン、英国のサッチャーなどもナショナリストであ
り、それの方が活躍している。安倍さんも同じだ。

Q7:中国の新しい大国関係とは何が目的か?
A7:シュミット:中国は米国と新しい関係を作りたいのである。こ
のため、首脳会談を開き、正当性を国内にアピールしたかったので
ある。国内向けである。



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