4842.優柔不断な米国外交



米国の外交がどちらに向かうのか、分からない。この米国の外交に
米国同盟国が、米国離れをしている。

たとえば、国連安全保障理事会にそっぽを向くことにしたサウジア
ラビアの決断、国際社会というより米国に向けた対応は、こうした
風向きを示す材料だ。

米国はシーア派に友好的で、イラクのヌリ・アル・マリキ首相(シ
ーア派)はホワイトハウスに迎え入れられた。イランとも経済制裁
を緩める方向である。イスラエルとパレスチナの和平を追求するの
でイスラエルのネタニエフ首相も米国離れする方向である。

アジアでも同じで、アジアへのピボット(旋回)するとしたが、現
実は、オーストラリアのダーウィン基地への米海兵隊新配備だけだ
っただが、その第一陣200人も半年の臨時駐留を終えて引き揚げ、同
基地はいまはカラ。後続派遣の見通しは財政の理由で立っていない。

このように優柔不断な米国に対して、米誌フォーリン・ポリシーは
日本の安倍首相による中国に対する挑発行為が「米国の注意を引く
だけでなく、オバマ大統領に本当にアジアを重視させることとなっ
た」とした。

米国の孤立化、優柔不断化など外交方針があっても、国内紛争など
ではあるとは思うが、それを今の米国は、世界の米同盟国に伝達で
きないでいる。

このため、米同盟国がイライラしているようである。自国の外交方
針を決められないことで、米国を試すような挑発などを引き起こし
ている。

このような米国の外交は、戦争を呼び込まないか心配である。

==============================
米国は簡単には中東の炎から逃れられない
2013.11.11(月)  Financial Times
(2013年11月8日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
中東が燃えており、米国が出ていこうとしている――。この見解に
は誇張の要素があるが、1つの要素にすぎない。激しさを増す紛争と
米国の関与縮小の力学は、相互に補強し合うようになった。炎が高
く燃え上がるほど、米国政府は背を向けることに熱心になるようだ。
 アラブ世界と太いパイプを持つ欧州のある元首脳は、特に米国、
そして西側全般に対する地域の「反乱」について語る。
 国連安全保障理事会にそっぽを向くことにしたサウジアラビアの
決断――国際社会というより米国に向けた対応――は、こうした風
向きを示す材料だ。もう1つの材料は、米国がイスラエルとパレスチ
ナの和平協定の仲介を目指すなかで、アラブ諸国がパレスチナへの
資金援助を渋ったことだ。
 幻滅感はトルコにも広がった。トルコのアブドラ・ギュル大統領
は先日、米国の決意の欠如のせいで、シリアがジハード(聖戦)の
戦士の避難所、いわば地中海沿岸のアフガニスタンになってしまっ
たと述べた。
アラブで飛び交う陰謀論
 世界のこの地域は突飛な陰謀論の本場だ。ペルシャ湾岸のある英
字紙は最近、スンニ派とシーア派の宗派抗争の炎を煽ることでアラ
ブ諸国を弱体化させようとする、米国とイランの陰謀なるものにつ
いて報じた。これは空想の域を超えているのではないか? もちろ
ん、そうだ。
 だが、スンニ派のアラブ人の多くにとっては、疑いの余地がある
ということを筆者はバーレーンにいた数日間で学んだ。ある政府高
官から聞いたところでは、広く飛び交うもう1つの噂は、イスラエル
とイランの共謀を想定しているという。
 米国はイランの核開発計画について同国と新たに協議を始めた。
シリアの化学兵器廃棄に関する米国とロシアの取り決めは、シリア
のバシャル・アル・アサド大統領が多数派であるスンニ派の国民を
殺せるままにした。
 イラクのヌリ・アル・マリキ首相(シーア派)はホワイトハウス
に迎え入れられた。バラク・オバマ大統領の率いる米政権が今、宗
派間の溝のシーア派側に立っていることを示す証拠はこれ以上必要
か――。あやふやな態度を取る米国が残した空白を埋めているのは
、こうした話題だ。
 ここにある一縷の真実は、米国が実際に手を引くことを決めたこ
とだ。オバマ大統領は、自分は米国の戦争を終わらせるために選ば
れたのであって、新たな戦争を始めるために選ばれたわけではない
と言う。
 アジアへのピボット(旋回)は、たとえアラブの反乱によりぼや
けたとしても、方向転換を示す最初の合図だった。アフガニスタン
での敗北を認めたこともそうだ。
 ほかのところでは、関与の撤回が繰り返された。リビアのムアマ
ル・カダフィ大佐を倒すうえでは後方から先導し、シリアでは、さ
んざん躊躇した末に軍事的関与をやめた。
中東でのリーダーシップを放棄した米国
 こうした決断が1つの戦略にある程度発展したとすれば、それは国
連総会でのオバマ大統領の演説で示されていた。大統領の演説はシ
リアでの出来事とワシントンの政府機関閉鎖の大混乱のなかで見落
とされたが、歴史はこれを、米国が半世紀以上にわたる中東でのリ
ーダーシップを放棄した瞬間として記録するかもしれない。
 オバマ大統領はもちろん、そんな言い方をしたわけではない。大
統領は、米国は中東地域における自国の核心的利益を守るために、
軍事力を含む力の手段をすべて使うと述べた。こうした利益には、
同盟国を外部からの侵略から守ること、米国に対する攻撃を目論む
テロリストに立ち向かうこと、そしてエネルギーの自由な流れを保
つことが含まれる。
 米国の外交政策は今後も、イランが核兵器を確保するのを防ぐこ
とと、イスラエルとパレスチナの和平を追求することに焦点をはっ
きり合わせるという。
 だが、オバマ大統領は優先順位をつけるうえで、厳しい境界線を
引いた。民主主義を広めることは米国の利益にかなうが、民主主義
を押しつけることはできない。米国は各国の主権を尊重する。エジ
プトでは特定の立場を取らないし、シリアでの合意の条件を決めよ
うともしない。
 米国は、宗派間の紛争を部外者が解決することはできないことを
理解している。リベラルな干渉主義は、厳しい現実主義に取って代
わられた。米国は中東随一の大国の役割を、均衡を保つ外国勢力の
それと交換した。
 オバマ大統領がいかにしてここに至ったかはお分かりだろう。イ
ラク、エジプトでの独裁体制の崩壊とシリア情勢は、スンニ派とシ
ーア派の深い溝を露呈させた。米国によるイラク侵攻が成功だった
と主張する人はほとんどいないだろう。
 リビアへの「軽度の介入」は、ジハードの戦士のサヘル移住を煽
った。米国はエジプト情勢の展開を形作ることができず、ロシアは
シリア内戦を利用して、地域における力を再び行使している。
 西側諸国は中東に関して誇れる実績がなく、常にダブルスタンダ
ードの批判に弱かった。そして今、近年の戦争のために血と財産で
あがなわれた代償は、自国の市民を守るという差し迫った対応を超
えて行動する米国の意思を奪った。心では介入を支持する人たちで
さえ、ただ西側を炎に引きずり込む結果にならない戦略を見つける
のに苦労する。
米国の方針転換、実践は説明より難しい
 とはいえ、筆者は、オバマ大統領は新しい取り組みを明確に示す
方が実践するより簡単なことに気づくと見ている。イランのハサン
・ロウハニ大統領との核交渉の最初の動きは有望だったが、それ以
上ではない。もし米国政府とイラン政府が、イランに民生用原子力
の利用を許しながら核爆弾の製造能力を与えない合意をまとめるこ
とに失敗すれば、中東ではすべてが白紙に戻る。
 中東の分裂の中心にあるのは、サウジアラビアとイランの根深い
憎悪だ。米国の抑止力がなければ、事態が手に負えなくなる可能性
が十分にある。最初はイラク、次にリビアでの経験が様々なタイプ
の介入の危険を示しているのだとすれば、シリアは何もしないこと
に伴う大変な危険を明らかにした。
 先月、安全保障問題担当でオバマ大統領の補佐官を務めるスーザ
ン・ライス氏はニューヨーク・タイムズ紙に対し、米国の政策転換
をもたらしたのは、米国は「どれほど重要であろうとも、1つの地域
に常時かかりきりになるわけにはいかない」という確信だと述べた。
これは極めて妥当な意見に思える。また、筆者の見るところ、現実
的な政治以上に希望に負うところが大きい意見でもある。
By Philip Stephens
==============================
海兵隊派遣も頓挫
オバマの空しい「アジア旋回戦略」
2013.10.20 07:00週刊文春 WEB
オバマ大統領のアジア訪問キャンセルがアメリカの対アジア政策に
暗い影を落とした。
優柔不断と責められる同大統領らしく、歴訪を予定していた東南ア
ジア4カ国のうちまずフィリピンとマレーシアへの訪問の中止を10月
2日に発表した。次いで翌3日にブルネイとインドネシアへの訪問も
止めることを明らかにした。アジア太平洋経済協力会議(APEC)や
環太平洋経済連携協定(TPP)交渉への大統領の参加が急になくなっ
たわけだ。
原因は政府機関一部閉鎖だった。それなりに理解できる理由ではあ
る。だが訪問中止は結果としてオバマ大統領が熱心に唱えてきたア
ジア・太平洋最重視という「アジアへの旋回(ピボット)」戦略の
空疎をみせつけることとなった。
シンガポールのリー・シェンロン首相は「オバマ大統領の(アジア
の会議への)欠席は大きな失望だ。国内問題に埋没するよりも国際
的責務を果たす大統領のほうがずっと好ましい」と語った。「アジ
アではアメリカの代役を果たせる国はない」とも強調した。アジア
側の反応の集約だろう。
ワシントンでも「今回のキャンセルはアジアの同盟国や友好国にア
メリカが自国の政治麻痺のためにアジアへの高次元の関与持続の能
力がないことを印象づけた」(戦略国際問題研究所の報告)といっ
た見方が多い。
大統領自身も8日の記者会見で「行くべきだった」と認め、「自分が
主催したパーティに欠席したようなものだ」とも語った。欠席はTPP
の総括を遅らせるだけでなく、中国を利する、とも述べた。だがそ
れでもワシントンを離れられないほどの国内の政治危機だというの
である。
しかし今回の事態はそもそもオバマ政権の「アジア旋回」には実質
が伴わないことを証明したとみることもできる。
アジア・太平洋に新たな抑止力を増す実効措置はこれまでオースト
ラリアのダーウィン基地への米海兵隊新配備だけだった。だがその
第一陣200人も半年の臨時駐留を終えて引き揚げ、同基地はいまはカ
ラ。後続派遣の見通しは財政の理由で立っていない。
アジアへの旋回はできそうもないからこそのアジア訪問キャンセル
だったともいえそうなのである。
古森 義久 (在米ジャーナリスト)
==============================
安倍首相の中国挑発、根源は無能なオバマ外交に―米誌
Record China 11月12日(火)6時0分配信
2013年11月11日、中国新聞社は、「安倍晋三首相による中国に対す
る挑発の根源は、無能なオバマ外交にある」と題する記事を掲載し
た。
米誌フォーリン・ポリシーはこのほど、日本の安倍首相による中国
に対する挑発行為が「米国の注意を引くだけでなく、オバマ大統領
に本当にアジアを重視させることとなった」と伝えた。それによる
と、安倍首相は日本の侵略の歴史について十分認識しており、アジ
ア諸国のリーダーになれないことも分かっている。だから中国を挑
発することで米国の注意を引き、オバマ大統領を本当にアジア重視
に転換させようとしている。
また、米国の反体制派の目には、安倍首相による度重なる中国への
挑発的言動は、無力なオバマ外交に端を発すると映っている。オバ
マ大統領はアジア重視を打ち出してきたものの、実際的な行動には
移してこなかった。日本を含む同盟国には、中国と対立することに
より、米国を試す意図があるとみられる。(翻訳・編集/AA)





コラム目次に戻る
トップページに戻る