4817.保守主義とティーパーティの違い



米上院は16日、債務上限引き上げ、政府機関を再開するための暫
定予算を盛り込んだ法案を可決し、下院も速やかに招集され、同法
案を可決した。債務上限引き上げは2月7日までとなっているが、
財務省の措置により暫定的にこれ以降の借り入れも可能となる。
これで、債務上限引き上げで共和党と民主党の条件が合わず合意で
きなくても2月7日の期限が来ても起こらないようである。

しかし、それにしても共和党チャーパーティ派のゲリラ的な行動に
世界は震撼した1週間であった。そして、このティーパーティ派の
行動に一番批判的であったのが、共和党を代弁するべきアメリカン
・コンサバティブ誌である。

このアメリカン・コンサバティブ誌に「Persuasion Versus Conversion」
「信念対保守主義」という記事が出ている。保守主義を掲げるアメ
リカン・コンサバティブ誌は、途中からティーパーティーを批判し
始めた。それはティーパーティの行動が保守主義とは違うためであ
るという。

オバマケアが問題であることは、問題意識として共有しているが、
その進め方が問題である。ティーパーティの行動ために、大きく運
動を歪められた。ティーパーティの行動は信仰的な感情で政治をし
ていることで混乱させた。保守政治家は妥協とか用心深さなどが必
要である。そうしないと改革のチャンスを狙うことができない。

米国は2つの党派が国民の50%の得票を獲得する競争をしている
ので、過激で信仰的な行動は、多くの国民の支持を逃がすことにな
る。また国民は移り気であり、支持党派に問題があると見ると簡単
に乗り換える。しかし、国民の得票を集めて、改革ができるのであ
る。

このため、信念ではなく、国民の支持を集めて政治を行う必要があ
る。しかし、ティーパーティは保守主義政治ではなく、教会のよう
な少ない人数でも集めて行う信仰のようなものである。

と言いながら、現時点は共和党下院内には多数のティーパーティ派
が存在し、その支持がないと共和党下院幹部にもなれない状態であ
る。共和党は今、岐路に立たされているような気がする。

それに危機感を感じているのが、本来の共和党保守主義者かもしれ
ないようだ。

どちらにしても、米国内に政治ゲリラが出現して、米投資家は恐ろ
しくて、米国企業や米国債には投資できなくなる。この投資の向き
先がどこかを見る必要があるようだ。米国の衰退を米国政治が率先
して行うことになっているのが、今の米国の病気でしょうね。

さあ、どうなりますか?


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米上院が債務上限引き上げ可決、下院も承認へ
2013年 10月 17日 11:26 JST
[ワシントン 16日 ロイター] - 米上院は16日、債務上限引
き上げ、政府機関を再開するための暫定予算を盛り込んだ法案を可
決した。下院も速やかに招集され、同法案を可決する見通し。
ただ法案可決は暫定的な解決に過ぎず、根本的な問題解決ではない。
今回の可決により、政府資金は来年1月15日まで手当てされ、連
邦債務の上限は2月7日まで引き上げられるが、年明け早々に再び
政府機関閉鎖の危機に直面する可能性がある。
上院採決では賛成が81票、反対が18票だった。ベイナー下院議
長は、共和党が法案可決を阻止することはないとしており、下院で
も可決される見込み。オバマ大統領は「不確実性という雲を企業や
国民から取り除き始めることができる。われわれは、危機対応に長
時間を費やす習慣から脱却しなければならない」と述べ、法案が手
元に届き次第直ちに署名する意向を示した。
暫定予算の不成立により米政府機関は10月1日から一部閉鎖され
、多くの職員が自宅待機を余儀なくされた。政府機関の完全再開に
は数日を要する見込み。
債務上限引き上げは2月7日までとなっているが、財務省の措置に
より暫定的にこれ以降の借り入れも可能となる。
法案の議会通過は、歳出と社会保障をめぐる共和党とホワイトハウ
スの対立の、一時的休戦と位置付けられる。対立により米国の意思
決定や政府の基本機能は度々機能不全に陥り、同盟国や最大債権国
である中国をはじめ各国に懸念が広がった。財務省は、こうした状
況は安全な投資先かつ安定した金融センターとしての米国の評価を
損なうリスクがあると警告していた。
上院での民主・共和両党による合意は、オバマ大統領の勝利であり
共和党の敗北を意味する。大統領は、医療保険制度改革法(オバマ
ケア)修正に向けた交渉を断固として受け付けず、共和党は国民か
らの強い批判に直面する結果となった。
今のところ、求心力低下が指摘されているベイナー議長のリーダー
シップが脅かされる兆候はみられない。議長は午後の共和党の会合
で拍手喝采を受けており、一般議員の間で存在感を強めたとの見方
もある。
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米ポピュリズムの歴史と今日的意味合い 
―― ティーパーティー運動が揺るがすアメリカの政治と外交
The Tea Party and American Foreign Policy
ウォルター・ラッセル・ミード  アメリカン・インタレスト誌コン
トリビューティング・エディター  
フォーリン・アフェアーズ リポート 2011年5月号
 ポピュリストの政治的エネルギーが高まる一方で、主流派メディ
ア、外交エスタブリッシュメントに始まり、金融企業、一般企業の
経営陣、そして政府にいたるまでの確立されたアメリカの組織への
信頼が失墜しつつある。現在のポピュリスト運動の代名詞であるテ
ィーパーティー運動は、彼らが「憶測を間違え、腐敗している」と
みなす各分野の専門家に対する反乱とみなせる。しかも、2010
年3月にアメリカで実施された世論調査では、回答者の37%がティ
ーパーティー派を支持すると答えており、これは、少なくとも1億
1500万のアメリカ人がティーパーティー運動になんらかの共感
を示していることを意味する。アメリカの政策決定者、そして外国
政府の高官たちは、アメリカ政治における主要な勢力であるポピュ
リストを十分に理解せずして、もはや米外交に関する適切な判断を
下すことができなくなっていることを認識する必要がある。

<今に復活したティーパーティー運動>
 事件が起きたのは1773年12月16日の夜。モホーク・インディ
アンに扮装した数名を含む、30人から130名の集団が、イギリス
議会による一連の課税引き上げ策に対する不満をアピールしようと
、ボストン港に停泊していた3隻の商船を襲撃し、342箱の茶箱
を海へと投げ込んだ。この事件の首謀者は(建国の父の一人とみな
される)サミュエル・アダムスだと広く考えられてきたが、これを
裏付けるような、はっきりとした歴史的な証拠はない。ただし、「
事件には一切関係ない」と公言しながらも、アダムスがこの事件を
広く世に知らせようとあらゆることを試みたのは事実だ。 

 翌年には、より節度のあるティーパーティー(茶会)事件がノー
スカロライナ州のエデントンで起きた。ペネロープ・バーカー婦人
は、イギリスの課税政策に対する植民地の抵抗を支援するために会
議を主催し、これに51名の女性が参加した。この会議では茶箱が壊
されることも、紅茶が供されることもなかったが、この日起きたの
は、歴史的にはより大きな出来事だった。バーカー婦人が主催した
会議は、英領北アメリカでの女性による初めての政治会議だった。 
 この二つのティーパーティー事件はイギリスの世論を強く刺激し
た。ジョン・ウィルキーやエドマンド・バークのようなホイッグ党
の有力者は、ジョージ三世や国王が任命した政府とは袂を分かって
アメリカの立場を支持した。だが、ボストンの秩序が乱れているこ
と、それまで聞いたこともないエデントンの女性たちの活動を知っ
たイギリス人の多くは、植民地アメリカは暴力的で野蛮だと考える
ようになった。 イギリスの作家サミュエル・ジョンソンは、植民地
のティーパーティー事件、イギリスの課税に反対する運動を批判し
、「これらの反愛国的な偏見は一部の徒党勢力による愚かな堕落を
意味する」と切って捨てた。 

 21世紀に復活したティーパーティー運動についても、ジョンソン
の批判は現実を言い当てている部分がある。 
 現代版ティーパーティー運動が始まったのは2009年2月。C
NBCの金融リポーターがシカゴの商品取引所から、「住宅ローン
破産を税金で救済することに反対する運動を起こそう」と放送で呼
びかけたことがきっかけだった。バラク・オバマ政権下で政府支出
と政府権力が肥大化していると感じていた共和党員とそれに同調す
る(資金力豊かなスポンサーを持つ)独立系政治勢力は、全国的な
ネットワークを速やかに組織した。 
 ティーパーティー運動に同調するフォックスニュースの一貫した
報道に勢いづき、一方では、ティーパーティー派のヒロイン、サラ
・ペイリンが「落ちぶれた主流派」と呼ぶメディアの批判的な報道
によってますます結束したティーパーティー派の活動家たちは、瞬
く間に大きな政治力を持つようになった。2010年の中間選挙で
民主党は敗北を喫したが、これには、「大きな政府」に反対するテ
ィーパーティー派の台頭が大きく作用していた。 
 ティーパーティー派の台頭は、近年において最大の論争を呼んで
いる劇的な政治的展開だ。その支持者たちがこれを「アメリカの中
核的価値への回帰」と賞賛する一方で、反対派はこれを「人種差別
的で反動的な運動」とみなし、「多文化、多人種のアメリカ、そし
て(「大きな政府」に象徴される)介入主義の時代という新たに形
成されつつある現実に対する不毛な抗議行動」と考えている。 
 この論争を決着させるのはある意味で不可能だ。 
 ティーパーティー運動は、中道右派からアメリカの政治パラダイ
ムにおける両端の周辺に位置する勢力までを内包する個人や集団の
無定型な集合体によって展開されている。つまり、運動を指令する
中枢を持つヒエラルヒー構造もなければ、だれがメンバーで、だれ
がメンバーでないかを区別するシステムもない。しかも「ティーパ
ーティー派」というブランドが広く知られるようになるにつれて、
あらゆる政治的立場の人々がこのブランドの下に結集するようにな
った。資金力豊かなリバタリアン、地方の原理主義者、野心家の評
論家、守旧的なレイシスト、財政保守の主婦などを含む、あらゆる
人々が「自分はティーパーティー派の支持者だ」と公言している。

 フォックスニュースのホストを務めるグレン・ベックが、もっと
も有名なティーパーティー派のスポークスパーソンかもしれないが
、彼のモルモン的宗教観はこの運動にはフィットしない。ティーパ
ーティー運動には、社会的保守派よりも(自由思想と個人の自由を
重視する)リバタリアンのほうが熱心だし、リバタリアニズムの作
家とみなされているアイン・ライドのほうが、(19世紀のモルモン
教指導者)ブリンガム・ヤングよりも運動のより有力な預言者とみ
なせる。 
 グレン・ベックが夜の番組で示す読書リストや歴史的訓話は、運
動の支持者たちにとってそれほど大きなアピールはない(2010
年3月にアメリカで実施された世論調査では回答者の37%がティー
パーティー派を支持すると答えており、これは、少なくとも1億
1500万のアメリカ人がティーパーティー運動になんらかの共感
を示していることを意味する。だが、フォックステレビのベックが
司会を務める番組の視聴者は260万にすぎない)。 
 ティーパーティー運動の他の有力者のメッセージもはっきりとし
ない。テキサス州選出の下院議員ロン・ポールと、新たにケンタッ
キー州の上院議員になった、父ほどは教条的でない彼の息子のラン
ド・ポールは、いずれも、孤立主義を復活させようとしているかに
みえる。かたや保守派の評論家パット・ブキャナンは、(リアリス
トの政治学者)ジョン・ミアシャイマーが求める米・イスラエル同
盟批判に同調しており、これもティーパーティー派の思想とは相容
れない。実際、ティーパーティー運動のマドンナとされるサラ・ペ
イリンは「テロとの戦い」を全面的に支持し、アラスカ州知事時代
には、イスラエルの国旗を事務所に飾っていたほどだ。 
 このようにティーパーティー運動を明確に定義できない以上、こ
の運動が2010年11月の中間選挙にどのような影響を与えたかを
正確に分析するのは容易ではない。ただし、ペイリンのようなティ
ーパーティー派の著名人が作り出した追い風によって、共和党に有
力な立候補者が押し寄せ、資金調達も容易になり、多くの有権者を
投票所へと足を運ばせることに成功したのは事実だろう。 
 共和党は下院選挙で1938年以来の大差をつけて大きな勝利を
収めたが、ティーパーティー派が作り出した追い風がなければ、こ
れほど劇的な展開にはならなかっただろう。一方で、デラウエア州
から出馬したティーパーティー派の候補者、クリスティン・オドネ
ルのような、政治家としての資質を疑問視される人物を担いだこと
で、共和党は上院で2―4議席を失った可能性があり、これによっ
て上院でも多数派となる共和党の夢は潰えた(魔術を学んだことが
あると発言したオドネルは、結局「私は魔女でない」と訴えるTV
コマーシャルを流さざるを得なくなった)。 
 アラスカ州では、ペイリンとティーパーティー派の指導者は、と
かく刺激的なジョー・ミラーを公認し、彼は、共和党の予備選挙で
は現職のリサ・マコウスキー相手に勝利を収めた。しかし、マコウ
スキーは(投票用紙に事前に名前が記載されていない)記入候補と
してその後も果敢にキャンペーンを展開し、本選挙ではミラーを破
って当選を果たした。このスタイルで上院議員に当選したのは、
1954年のストーム・サーモンド以来、彼女が初めてだった。 
 リバタリアンの多いアラスカ州の有権者でさえ、ペイリンが公認
したティーパーティー派候補を拒絶したとすれば、ティーパーティ
ー派がアメリカ政治において支配的な影響力を長期的に維持できる
かどうか、大きな疑問符がともる。 
 だが、その政治的足跡が曖昧で一様ではないとしても、ティーパ
ーティー運動がアメリカ政治の琴線に触れているのは明らかだし、
外交問題の研究者も、このポピュリスト的でナショナリスティック
な政治的ゲリラ勢力が外交路線にどのような影響を与えるかを十分
に考える必要がある。アメリカの憲法制度では、少数派がフィリバ
スター(議事妨害)を通じて特定ポストへの指名や重要法案の成立
を阻止できるし、上院のわずか3分の1の反対で条約の批准を拒絶
できる。ティーパーティー派の拒絶主義が幅を利かす現状で、これ
は侮れない立法に対する影響力になる。 
 アメリカ政治の現在と未来を理解するには、過去を認識する必要
がある。ティーパーティー運動はアメリカの歴史的ルーツに関連し
ており、過去におけるポピュリストの反乱のエピソードは、現在の
ティーパーティー運動の今後の軌道を知的に考えていく上でも有益
なはずだ。 


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