4806.日米共同政策フォーラム1:キャンベルの講演



カート・キャンベル氏が「米国のリバランス政策について」という
基調講演を行った。この講演の記事録である。キャンベル氏は、第
1次オバマ政権でクリントン国務長官のもと、東アジア・太平洋担
当の国務次官補として活躍した。特に日本の立場を理解してくれて、
米国の外交政策に反映してくれた。との紹介後、登壇した。

オバマ大統領は、6日から始まるAPECに出席するために米国を出発
する予定であったが、米国政府の閉鎖でどうなるか心配であるが、
オバマ大統領も、米国は今でもアジア・太平洋にシフトさせる方向
である。2次政権も1次政権と同じである。重要な地域であること
で、アジアは変化しない。

しかし、米国の内政が心配である。国内政治の基盤が変化している。
海外へのエンゲージ(関与)を共和党、民主党の一部が手控えるべ
きと言っている。その理由は、米国国内の問題が大きく、海外まで
米国は関与する余裕がないというのである。

このため、シリアへの攻撃でも疑問視して、シリアへの軍事介入を
反対した。オバマ大統領への反発が長期的な変化になるのかどうか
、今後見ていく必要がある。

もう1つが、中東、南アジア政策と東アジア政策は結びついている。
密に関係しているので、この関係がどうなるかも見る必要がある。
今重要なことは、オバマ大統領がマレーシア訪問ができるかどうか
である。米国の政治がどうなるのかわからない。同盟国も心配して
いるが、わからない。以上が米国のバックグランドである。

それではオバマ政権のアジア政策はどういうものであるかを述べる。
アジアへの回帰は、超党派での結論である。リバランスとは、歴史
的にアジアに戻ることである。

中東からアジアに軸を移ることである。アジアの将来に米国は向き
合うことである。中東では投資が資金を生み出さないが、アジアで
は投資が資金を生み出している。

もう1つが、米国をアジアは歓迎している。アジア人が米国を受け
入れている。中東では米国を歓迎していない。このため、中東にい
ることはできない。

中国の台頭で、より強力になり、それと対抗できる米国を歓迎する
ということであるが、これがリバランスにも反映されている。

日本もアジアにフォーカスすることで、期待されている。今は日米
で中露に対抗して欲しいということのようである。クリントン前国
務長官時代に明確化した。その当時はビボットと言っていたが、今
は、リバランスとしている。

ビボットは劇的な変化の意味があり、リバランスは徐々の変化とい
う意味があるので、私(キャンベル)は、ビボットの方がしっくり
する。今まで米国外交は、ヨーロッパへの政策では成功したが、そ
れ以外の地域では成功していない。

ブッシュ前大統領は、アジアと中東を結び、両方をうまくやろうと
した。このため、日本はアフガニスタンとパキスタンの警察の給与
を援助した。しかし、中東の状況は深刻になり、シリア、エジプト
、アフガンなどうまくいかない。民主化ができない。

このため、米国は国際的な貢献をやめるべきとの勢力が出てきた。
内政問題にシフトするべきという。このため、外交的にアジアにビ
ボットするとの政策が実行できるかどうか不明である。

米国は中東での経験でテロ戦争の対応方法を身につけた。またアジ
ア専門家を育成してきた。エンゲージできる体制ができつつある。
この人たちを中心にして21世紀のアジア外交の戦略を作ってきた。

このアジア外交には、4つの学派がある。1つがエリート学派で、
キシンジャー、スコウクロフトなどで、中国への政策を正しくする
ことで、世界は良くなると言って、中国外交を始めた人たちである。
この考え方は、今では危険な外交であると認識されている。

2つ目は軍人を中心とした学派で、アーミテージなどで同盟国を中
心として、半島問題もその他の問題も同盟国との関係で外交をする
という考え方。

3つ目が、ブッシュ政権の考え方で、ラムズフェルドなどで中国は
敵国であると、19世紀の考え方。

4つ目が、アジアに関心がなく、問題の1ケ国に焦点を当てて、そ
れへの外交を行うという考え方である。

クリントン前国務長官は、4つの学派とは違う考え方で戦略を作っ
たのである。同盟関係は有効であり、実りが多い。手入れは必要で
あり、私も日本に手を焼いていた。しかし、実りも多い。手入れを
しないとリスクが高まる。

この上に、米国が中国にエンゲージすることにした。中国の覇権主
義を認めて、戦前のドイツに対した関係にせず、中国にも重要な役
割を果たしてもらうことである。このため、21世紀的な対話を持
ち込んだ。

中国は19世紀的な対話を望み、21世紀的な対話を志向しない。
米国がモンロードクトリンになることを望んでいる。しかし、米国
は、違うと言っている。中国に対してエンゲージメントを行うと言
っている。

TPPなど自由貿易も米日で指導してルールを作り、中国へ門戸を開く
ことである。米国のリバランスはアジアに投資することである。
特にASEANやインドネシアに注目している。このため、ASEANサミッ
トにも出席している。

軍事的もリバランスする。海兵隊をフィリピンやオーストラリアに
分散する。

日米関係を見ると、グリーンなど少数の人で対日政策を決めている
が、大学時代の日本人との関係が重要なのであるが、この頃ハーバ
ード大学でも日本人が4・5人と少ない。人と人の関係が重要なの
で心配している。

日本との関係では、民主党でも自民党でも基盤があるので心配して
いない。日本の政策を米国はサポートするが、円の通貨操作などの
マクロ経済政策には反対する。

日本も戦略的に考えて欲しい。日米中の3極関係が重要であり、協
力の領域を広げることである。歴史問題へのアドバイスとしては、
中国や韓国が感じることも考えて政策を構築して欲しい。

日本が平和国家であり、軍事国家になるとは思っていない。

現在、リバランスと言っているが、ビボットでも良いことになった。
2つのワードのどちらも利用できることになり、私はビボットの方
が良いので使っている。

質疑応答:
Q1:2010年の尖閣問題から中国の主張に米国は配慮しているように
感じるが、どうか?
A1:オバマ政権2期でも全体的なアプローチは同じである。今回の
米中首脳会談は非公式なものになったが、中国の本音を知るために
必要であった。また、今は一時的に中東に目を向けている。

Q2:アジア政策が変化したのか?
A2:同じであり、現在の担当も良いと思う。

Q3:日米2+2で中国に対してメッセージを発するのか?
A3:2+2で中国との正しい関係を作ることである。中国との関係
がおかしくなると、危機になり破壊的なことになる。このため、私
は、日中両国に対して、ハイレベルの外交で処理して欲しいと要請
している。日中関係を良好にして、土台として欲しい。

Q4:尖閣の対立をどのように処理すればよいか?
A4:日中両国がいろいろな人たちで協議して欲しい。米国は主権に
は関与しない。平和理に解決して欲しいと要請している。威嚇など
は止めるべきである。共有利益に話題をシフトして領土問題から関
心をシフトすることである。中国も安倍政権が長期になると認めて
、やっと歩み寄りに傾いている。

Q5:沖縄の海兵隊を日本国内へ持っていくことで米国はどう思うか?
A5:以前から沖縄問題はプランができている。この件で発言するの
は、非常に危ないので、しない。

Q6:辺野古の埋立てに沖縄県知事が許可しないとどうなるか?
A6:それには、答えないことにしている。政府の人間以外では危な
い。

Q7:日本の安倍首相は日米同盟関係を拡大しようとしてるが、米国か
ら歓迎しない声があるようであるが、どうですか?
A7:正しくない。ハイレベルで日米関係を拡大することに支持をし
ている。TPP参加、集団自衛権など支持しているが、外圧と取られな
いように行動している。米国は非常に注目している。
安全保障政策では2つがある。1つが日米安全保障関係の強化であ
り、もう1つが、日本の防衛能力の向上で、日本の役割を拡大する
ことである。これにより、日米のパートナーシップを強化できる。

Q8:集団自衛権の強化で中国を刺激するので米国は反対していると
の意見があるがどうか?
A8:米国の戦略家で、そのような発言をしている人はいない。米国
は2+2で支持している。機能する関係にして欲しいと思っている。
日韓関係の悪化には心配している。戦略的な問題だからである。

Q9:安倍首相をどう思っているか?右翼と思っているか?
A9:いろいろな意見がある。しかし、強力な指導者と見えている。
日本がやっと、前向きになった。しかし、安倍さんの歴史問題につ
いては、懸念している。歴史問題は学者に任せるべきであり、政治
家が出ていくことはやめるべきである。

Q10:秘密保持問題についてはどう思いますか?
A10:日米は密接な関係であり、情報の機密は重要である。




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