4786.官と民の違い?琵琶湖ヨシ復活への試み




官と民の違い?琵琶湖ヨシ復活への試み
                     平成25年(2013)9月3日(火)
                  「地球に謙虚に運動」代表 仲津 英治

1.民の試み「びわ湖よしよしプロジェクト」
 私の属しているびわ湖自然環境ネットワークでは大津みどりのNPOとともに
平成15年(2003)頃から、琵琶湖総合開発により急減したヨシ(葦以下同じ)を
復活させるべくびわ湖よしよしプロジェクトを進めてまいり、一定の成果を収
めて来ました。ヨシ苗は根付く頃に波から守る処置を施してあげないと、なか
なか根付かないのです。我々の試みた方法は次の通りです。

粗朶消波堤
 琵琶湖の波は1mにもなります。そこで浜辺の沖合10m位のところに間伐材
を使った杭を打ち込み、そこで里山で収穫した枝木を束ねた粗朶(そだ)を
積んでいきます。波を和らげる粗朶消波堤を作るのです(粗朶消波工とも呼ば
れます)。

竹筒にヨシ苗を埋め込む
 さらにヨシの苗を波から守るために竹筒にヨシが根を出す穴を開け、現地の
砂を入れてヨシ苗を埋め込みます。試行錯誤の結果、半割竹筒にヨシ苗を埋め
込む方法を見出し、成果を上げました。                
		
 そして粗朶消波堤から岸辺に向かって竹筒のヨシ苗を植えて行きます。              

 我々は3回目の試みを独立行政法人の水資源機構琵琶湖開発総合管理所の協力
も得て湖東の東近江市の栗見新田という浜辺で行ない、ヨシは見事に根付いて
くれ、成長しています。他の2か所(和邇中浜、新旭針江)も成功しています。
使っている素材は、全て自然のものでやがて自然に還って行きます。

2.官の試み 独立行政法人 水資源機構琵琶湖開発総合管理所 
 我々の成功を受け、びわ湖自然環境ネットワーク等のメンバーからのノウハウ
の提供も受け、独立行政法人の水資源機構琵琶湖開発総合管理所が同様の方法で、
独自に公共工事として、ヨシの復活を試みられました。場所は同じ栗見新田です。
 現地に「消波粗朶工」と書かれた水資源機構の立て看板も立っています。

 しかしヨシはほとんど根付いていません。なぜそんな答えの出ない結果になって
しまっているのか、去る8月18日現地調査のため、同行してくれた友人とびわ湖
自然環境ネットワークの寺川庄蔵代表と情報交換してみました。

 結果、当らずとも遠からずと考えられる原因は下記の通りです。
■	粗朶消波堤の粗朶は波で洗われ流出し、また腐食もするので補充する必要
があるが、ほとんどなされていない。我々は和邇中浜では最初のトライでしたので、
概ね毎年当該個所へ粗朶の補充と柵杭の補修を行ない、ヨシが根付くまで4年続け
ました。後の新旭針江、栗見新田では2年です。
■	竹筒のヨシ苗の活着率(根付いて新芽を吹く確率)は低いので、毎年活着
状態を点検し、状況に応じヨシ苗の追加植栽を行なう必要があるが、それもほと
んどなされていない。
■	ヨシが根付くのは陸地の方が高いのに現地を見ると竹筒は湖水があまり来
ないところに残っており、やはりヨシ苗の追加補充があまり、なされなかったの
ではないか。

 ではなぜプロジェクトは成功しなかったのでしょう。以下のような推定理由が考
えられます。
ア:行政団体、行政法人の特徴は単年度予算主義で、継続して維持・保守も必要な
事業を継続する予算が計上されていなかった。従って粗朶消波堤も保守されず、
ヨシ苗の追加植栽も行なわれなかった。
イ:当初の熱心な担当者は、その内に人事異動で交代し、後任者はあまり事業を
継続する意識が希薄であった。
ウ:行政等が予算を執行し、事業を行なう場合、公認されたコンサルタント等から
アドバイスを受けるが、びわ湖自然環境ネットワークのような任意団体には継続的
にコンサルを委託するようなスタンスに立っていなかった。

 結果、予算が無駄遣いされ、水資源公団にはノウハウも残らなかった、と思われ
ます。

  「地球に謙虚に運動」代表

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