4804.米政府機関閉鎖は確実、連邦債務上限問題に移る



下院が上院の暫定予算案を拒否したことで、米政府機関閉鎖は確実
な状況になっている。政府機関が閉鎖されれば1996年以来とな
る。緊急性の高い分野以外の行政サービスは縮小されるため、国民
生活への広範な影響が懸念される。

このため、連邦政府の一部機能が10月1日から停止し、約80万
人の職員が自宅待機となる見通しだ。期日が迫り、政府は職員選別
などの準備を始めている。

オバマ大統領は27日、記者団に対し「下院共和党は上院に協力す
るか、政府機能を停止するかを選ばなければならない」と述べ、共
和党の責任を指摘した。一方、共和党のベイナー下院議長は「国民
は政府機能停止を望んでいないが、医療保険制度改革も望んでいな
い」との談話を発表した。

しかし、共和党の動きは不可解である。共和党が多数派を占める下
院で、オバマケアへの支出を除外するとの但し書きを含む法案を可
決した。次に、上院の共和党議員団は、民主党が医療制度に関する
重要な文言を削除するのを阻止するために、下院で共和党が支持し
たこの法案を採決に持ち込む動議の可決を妨害したのだ。共和党の
上院と下院が逆の行動をしたことになる。

しかし、ユーガブが実施した世論調査によると、49%がオバマケア
の撤回を支持しているのに対し、拡大ないし維持に賛成しているの
は36%だった。医療制度改革の主要部分は裁量的経費に依拠してい
ないために、予算案での撤回は無意味である。

その上、共和党は2つの問題を悪化させる危険を冒している。1つ
目は、複数の共和党知事は、低所得者の医療費を負担するメディケ
イドへの追加補助など、オバマケアの一部については支持する姿勢
を見せている。

2つ目は、一般大衆が持つイメージに関する問題だ。2013年に入っ
て大学共和党全国委員会が出したリポートで、若い有権者は共和党
に対して「心が狭く」「融通が利かない」とのイメージを抱いてい
ることが判明。一方でこうした有権者は、オバマ大統領に対しては
、少なくとも事態を改善しようとしているとして、一定の評価を与
えている。

今後、米財政をめぐっては、連邦債務上限問題の期限も10月半ば
に迫っている。上限が引き上げられなければ、米国はデフォルト(
債務不履行)危機に陥るが、オバマ大統領は「引き上げは議会の責
任」として、共和党とは交渉しない方針であり、共和党はオバマケ
ア撤回が条件としている。

このため、共和党はここでも抵抗することが確実であり、債務不履
行危機もある程度見通せる状態である。

このため、ドルを売って円を買う動きが強まり、円高になる可能性
が高くなっている。


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米政府機関、閉鎖の恐れ=下院、上院予算案を拒否−保険改革延期
の修正案可決
 【ワシントン時事】米下院は29日未明、オバマ政権が重要政策
に掲げる医療保険改革法の1年延期を盛り込んだ2014会計年度
(13年10月〜14年9月)暫定予算案の修正案を賛成多数で可
決した。下院の過半数を占める野党共和党は28日、上院が可決し
た暫定予算案の受け入れを拒否し、今回の修正案を提出していた。
 民主党が主導する上院を通過する可能性は低く、30日までに予
算が成立せず、10月1日から一部の政府機関が閉鎖される公算が
大きくなった。
 政府機関が閉鎖されれば1996年以来となる。緊急性の高い分
野以外の行政サービスは縮小されるため、国民生活への広範な影響
が懸念される。採決前、カーニー大統領報道官は「共和党の要求は
無謀で無責任だ」と批判。修正案を拒否する姿勢を鮮明にした。
(2013/09/29-22:21)
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米政府職員80万人が自宅待機も…期日迫り準備
 【ワシントン=安江邦彦】与党民主党が過半数を占める米連邦議
会上院は27日、2014会計年度(13年10月〜14年9月)
の暫定予算案の修正案を54対44の賛成多数で可決した。
 修正案は、野党共和党が過半数を占める下院に回され、今後は下
院の対応が焦点となる。
 共和党は、修正案に盛り込まれている医療保険制度改革の関連予
算に反対しており、暫定予算成立のめどは立っていない。暫定予算
が9月30日までに成立しなければ、連邦政府の一部機能が10月
1日から停止し、約80万人の職員が自宅待機となる見通しだ。期
日が迫り、政府は職員選別などの準備を始めている。
 オバマ大統領は27日、記者団に対し「下院共和党は上院に協力
するか、政府機能を停止するかを選ばなければならない」と述べ、
共和党の責任を指摘した。一方、共和党のベイナー下院議長は「国
民は政府機能停止を望んでいないが、医療保険制度改革も望んでい
ない」との談話を発表した。
(2013年9月28日10時30分  読売新聞)
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米上院、暫定予算案を可決=政府閉鎖目前、下院の対応焦点
 【ワシントン時事】米上院は27日、与党民主党提案の2014
会計年度(13年10月〜14年9月)暫定予算案を54対44の
賛成多数で可決した。下院が可決した暫定予算案では医療保険改革
法関連の資金が除外されたが、上院案はこれを復活させるとともに
、暫定予算の期限を12月15日から11月15日に短縮した。今
後下院に送付され、下院多数派の野党共和党が受け入れるかが焦点
となる。
 30日までに予算が成立しなければ政府機関は閉鎖されるが、共
和党内保守派は上院案の拒否を求めている。党内では10日間だけ
の暫定予算を成立させ、政府閉鎖を一時的に回避しようとする動き
も出ており、30日の期限ぎりぎりまで予断を許さない状況が続き
そうだ。
 米財政をめぐっては、連邦債務上限問題の期限も10月半ばに迫
っている。上限が引き上げられなければ、米国はデフォルト(債務
不履行)危機に陥るが、オバマ大統領は「引き上げは議会の責任」
として、共和党とは交渉しない方針。(2013/09/28-08:11)
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米財政の影響で円高の動き強まる(世界通貨番付)
2013/9/28 12:00nikkei
 日経通貨インデックスを構成する25通貨中、27日までの1週間で
最も上昇したのは円だった。米国の債務上限問題や暫定予算案を巡
る米議会での協議の難航を背景に、ドルを売って円を買う動きが強
まった。量的緩和…
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米連邦予算を巡る攻防
悪夢と寝物語のデフォルトの危機
2013.09.30(月)  The Economist JBPRESS
(英エコノミスト誌 2013年9月28日号)
米国政府の財政が、誰が共和党を代表して発言するのかという争い
に巻き込まれている。
もし万人が望んでいないことが起きたら、それは一体誰のせいなの
だろう? この問いへの回答を探り当てる行為が、ガバメントシャ
ットダウン(政府機関の閉鎖)を回避するというパフォーマンスの
一部と化している。このショーでは、土壇場になって合意が形成さ
れるのが常だ。
共和党強硬派の不可解な妨害工作
 ギングリッチ氏の政治姿勢を受け継ぐ共和党議員たちは、ワシン
トンの政界全般に対する不満を追い風として、2014年に予定されて
いる中間選挙で上下両院の過半数を確保したいとの期待から、ベイ
ナー氏らの提案を拒否した。
 テキサス州選出の上院議員、テッド・クルーズ氏が率いる共和党
の議員グループは、政府の支出の承認と医療改革法の破棄を一体化
する計画を練り上げた。このグループはヘリテージ財団や経済成長
クラブといった保守系団体の影響で強硬な姿勢をさらに硬直化させ
るとともに、草の根の活動家からも大きな支持を得ている。
 この案なら、共和党は政府機関の業務継続に賛成票を投じること
ができるのに対し、民主党は法案に反対票を投じざるを得ない。そ
の結果、民主党は最愛のオバマケアの名の下に、政府機関の閉鎖に
投票したことになるわけだ。
 これは武装強盗の罪に問われた際に、銃弾を発射していないとい
う理屈で無罪を申し立てようとするのといささか似た話だ。しかし
、世論調査の結果を見ると、仮に政府機関が閉鎖に追い込まれた場
合、両党はほぼ同程度の責めを負うことになりそうだ。
 自らの計画を確実に現実にするために、共和党は一連の議会工作
を編み出したが、これはこれまでの工作の基準に照らし合わせても
不可解なものだった。
 この工作ではまず、共和党が多数派を占める下院で、オバマケア
への支出を除外するとの但し書きを含む法案を可決した。次に、上
院の共和党議員団は、民主党が医療制度に関する重要な文言を削除
するのを阻止するために、下院で共和党が支持したこの法案を採決
に持ち込む動議の可決を妨害したのだ。
依然として不人気なオバマケア
 本誌(英エコノミスト)の委託でユーガブが実施した世論調査に
よると、今では多数の回答者が、たとえ一時的に政府機関が閉鎖さ
れることになってもオバマケアを取りやめることに賛成している。
 49%が法律の撤回を支持しているのに対し、拡大ないし維持に賛
成しているのは36%だった。
 オバマケアに敵対的な案をさらにもう1度可決しても、連邦レベル
で大きな変化が起こるとは考えにくい。
 また、政府機関の閉鎖によりオバマケアが長期間延期されること
もないだろう。医療制度改革の主要部分は裁量的経費に依拠してい
ないからだ。
 しかし各州では、若者を説得し、医療保険移行制度への加入を思
いとどまらせて改革を挫折させようとする懸命の努力が始まってい
る。高額な治療を多く必要とするであろう加入者だけを残し、その
費用で制度が崩壊することを期待しているのだ。
 ある広告には、産婦人科の予約診療を受けに行く若い女性が登場
するが、彼女を診察するのは、よく反米運動の横断幕に描かれてい
るような、邪悪に戯画化されたアンクル・サム(擬人化された米国
の姿)だ。
共和党が抱える2つの問題
 共和党は、自らに勝ち目があると考える議論の流れを最大限に活
用しようと意気込むあまり、長く引きずっている2つの問題を悪化さ
せる危険を冒している。
 1つ目は、オバマケアを連邦議会から眺める者と、州知事公邸から
眺める者の間の乖離だ。複数の共和党知事は、低所得者の医療費を
負担するメディケイドへの追加補助など、改革法の一部については
支持する姿勢を見せている。
 2つ目は、一般大衆が持つイメージに関する問題だ。2013年に入っ
て大学共和党全国委員会が出したリポートで、若い有権者は共和党
に対して「心が狭く」「融通が利かない」とのイメージを抱いてい
ることが判明している。一方でこうした有権者は、オバマ大統領に
対しては、少なくとも事態を改善しようとしているとして、一定の
評価を与えている。
 どちらの問題についても、現在の予算を巡る戦いが共和党にとっ
てプラスになる方向性は考えにくい。
10月半ばには債務上限引き上げを巡る攻防
 仮に今回、議会で共和党がオバマケアへの予算打ち切りに失敗す
れば、債務上限の引き上げに激しく抵抗しようとする同党の決意は
さらに強固なものになるだろう。連邦政府の歳入は、歳出1ドルに対
して、わずか81セントという状況だ。
 既に5月には債務の上限に達しており、以降は財務省が政府機関の
各口座の資金をやり繰りして支払いを行ってきた。10月半ばには、
このような策を続ける余地も尽きてしまう見込みだ。このような形
のデフォルト(債務不履行)に陥れば、米国にとっては史上初の出
来事になるため、恐らく両陣営ともその引き金を引くのは避けよう
とするだろう。
 しかし、米国が16兆7000億ドルの債務を抱える借り手である以上
、もっと確実な見通しがあるに越したことはない。



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