4777.安倍首相が消費増税をするなら倒さなければならない



■安倍首相が消費増税をするなら倒さなければならない 
ー亡国の財務省とその手先どもー
                       佐藤
参院選が終わり、今秋に行われる来年4月の消費増税判断へ向けて
財務省が活動を再開した。
TVのニュースショーには、慎重を期し以前と異なりキャスターの
辛坊次郎氏やみのもんた氏に一歩引かせる代わりに、大和総研の熊
谷亮丸氏や慶応大学の小幡績氏ら財務省親派の証券会社系エコノミ
ストや経済学者を動員して、消費増税の必要性を語らせ増税既定事
実化を図っている。
 
◆国家財政と会社経営◆ 
日本の財政は逼迫し、国債発行残高は遂に1000億円を超えた。
積極財政派からは、国家資産を差し引けば実質債務は巨額とは言え
ないとか、国債の殆どが日本人と日本法人の保有のため実質的な借
金でないとかの楽観意見が唱えられ、それに一理は在るが、永遠に
借金を増やし続ける訳にもいかず、中長期の財政規律が必要な事は
言うまでもない。
 
財務省主計局とそのファミリーは、消費税増税が国際公約であり、
それを先送りにすれば国債の信用が失われ、売り浴びせられ金利が
上昇するとし、増税不可避を主張している。
 
それには賛否両論があるが、国際公約云々以前に、増税によって日
本の実体経済がどういう影響を受けるのかが遥かに重要であり、
それに基づき意思決定をし、対応策を含めて覚悟を持って国際社会
へ説明すべきであり、議論の順序が倒錯している。
 
現在の日本はアベノミクス第一の矢である黒田日銀による異次元の
金融緩和をもってしてもデフレ克服が未だ為されておらず、実質経
済も安定した成長を実現していない。
 
国家経営は、会社の経営と根本的には変わらない。
国家財政も、会社の財務状況と根本的に変わらない。
正確ではないが非常に単純化して言えば、日本中の企業の利益を集
約して、日本経済が成り立っている。
日本経済は今、企業に例えるなら、売り上げが落ち赤字が嵩み、資
金繰りの為に借入を増やし続けている状況にありこのまま行けば倒
産は免れない。
このような経営状況で当該企業の社長の行うべき事は、(1)賃金
カットを含む冗費削減と不採算事業からの撤退、(2)死に物狂い
の営業努力と工夫、(3)新規分野への研究開発投資の3つである。
これ無くして再建した企業の事例を、筆者はこれまで聞かない。
 
然るに財務省主計局は、歴代政権を手玉にとり、危機に陥った企業
が採るべき企業努力を怠り、企業に於ける安易な値上げに相当する
消費税増税を図らせようとしている。
 
危機に陥った企業が同じ事をすれば、顧客が離れ間違いなく倒産する。
企業が値上げするタイミングは、ギリギリの企業努力をし、少なく
とも売り上げが維持される見込みがあり、顧客に新しい付加価値を
提供し、それでも利益が出ない時以外にはない。
 
唯一国家と企業の違いがあるとすれば、国家が公共サービスに於け
る独占企業である事だ。
独占企業であるから、顧客は離れようがなく、従って値上げ(増税
)をしても売り上げ(税収)は落ちないとも言える。
局所的に観ればそれは正しいが、大局的に経済全体を観れば、正規
雇用が改善されず賃金が十分に上がらない中、財布が軽くなった消
費者は買い控え、或いはデパートやスーパーでナショナルブランド
製品を買う代わりに、より100円ショップやプライベートブラン
ド製品を選択して対応する。
即ち、実質GDPの下落とデフレの促進を招き日本経済は失速する。
 
◆アベノミクス成長戦略の不毛◆
では、政府は企業努力に相当するいかなる努力をすべきか。
企業に於ける「(1)賃金カットを含む冗費削減と不採算事業から
の撤退」に相当するのは、公務員賃金カット、天下り特殊法人の廃
止、精査した上での不要な公共サービス撤廃である。
「(2)死に物狂いの営業努力と工夫」及び「(3)新規分野への
研究開発投資」は、成長戦略に他ならない。
 
成長戦略は、大きく(A)政府の関与を減らす規制緩和と(B)逆
に特定分野への関与を高める政府ターゲティングポリシーに別れる。
 
しかし、アベノミクス第3の矢である成長戦略は、何も具体化して
おらず色々な思惑が渦巻いている。
現在政府の経済財政諮問会議と規制改革会議の中には、竹中平蔵氏
の様な規制緩和派と藤井聡京大大学院教授のようなターゲティング
ポリシー派が同居して、対立牽制し合いながら外に向かってバラバ
ラに吠えている状態だ。
 
しかし、お互いのレッテル貼りに終始した議論は意味がない。
筆者は、全体としては規制緩和に賛成だが、規制緩和には良いもの
と悪いものがある。
例えば、小さい事例だが竹中氏が小泉政権中手掛けたタクシー事業
の規制緩和は、仙台駅前に空車タクシーを溢れさせたタクシードラ
イバーを食えない職業にした。(因みにニューヨーク市ではタクシ
ー営業許可の総数を絞る代わりに自由に売買賃貸させて自由競争と
秩序を両立させている)
竹中氏の考える規制改革には、規制改革真理教に凝り固まったこう
言った見通しが甘いものや、米国の代理人として日本の国益を損ね
兼ねないものが含まれており、今回安倍政権に於いても十分な監視
が必要だ。
 
一方で、筆者は、高速道路や新幹線、リニア新幹線等の交通・産業
インフラ系の公共事業、新エネルギー、バイオ、航空・宇宙、防衛
、人工知能等の新産業分野への基盤整備投資等の特定分野について
、出資を含め政府が後押しするターゲティングポリシーは日本が国
際経済競争で勝ち抜いて行く為にも不可欠であると考えるが、その
判断をどのような仕組み・プロセスで行うのかが詰められていない。
これについて、民間の目利き能力と国家の推進意思を併せ持つ官民
ファンド設立は答えの1つではあるが、政府の野放し状態の為に早
くも乱立を招いており、かつて第三セクターのような責任主体の曖
昧さ等により、特定企業に不透明な発注が行われ使い物にならない
代物だけが残り、官僚の天下りと資金プールの器と化して終わるだ
ろう。
このため、事業1本1本の国会報告義務、責任体制の明確化、一貫
した監視体制の具体策が不可欠である。
 
このように、今安倍政権が行うべきは、消費税増税議論に現を抜か
し時間を空費する事ではなく、増税凍結を早期に決断し、アベノミ
クスの第3の矢を具体化し実際に使い物になるように仕上げ実行す
る事に他ならない。
 
◆財務省とその手先ども◆
そもそも何故、財務省主計局を頂点とする官僚機構が、日本経済に
とって何の勝算もない今の時点での消費税増税に固執するのかは、
単純に自分たちの食い扶持になることに加え、増税が特定業界に対
する免税や軽減税率適用決定の利権枠を増やす事に繋がり、霞が関
内で手柄としてカウントされるからである。
 
また、出身母体である住友化学が輸出戻し税により消費増税が法人
税減税とバーターでプラスにこそなれマイナスにならない米倉経団
連会長等の国際展開する大企業幹部、弟の公金横領疑惑が影響し選
挙公約と180度反対の消費増税を「国際公約」せざるを得なくな
った野田前首相を始め、似たような事情を抱えるか、元々定見のな
い与野党議員の過半、記者クラブ制度と放送電波割当制度、新聞の
再販価格維持制度の既得権維持の為に霞が関官僚機構と一心同体化
したマスコミと出演する電波芸者、米国債応札に日本の消費税を原
資にしたい米国政府とその意を受けた外資系金融機関、財務省や日
銀が外国為替取引等の顧客である日本の金融機関、東大法学部を頂
点とする学際ピラミッドが財務省主計局を頂点とする官民ピラミッ
ドと重なり出世の為に逆らえない経済学者等が増税翼賛会を構成し
ている事は、インターネットの普及により以前よりは知られるよう
になってきた。
 
ここで国際世論に目を向けると、ここへきてEUの緊縮財政の失敗
が効いたのか、ヘッジファンドの手先の様な米国格付け会社スター
ズ・アンド・プアーズのチーフエコノミストや、米国の保守系「国
策指導新聞」であるウォールストリート・ジャーナル紙が、消費税
増税による日本経済の失速に懸念を示し始める等、微かに変化の兆
しが現れ始めている。
安倍首相が財務省主計局に屈して消費税増税を行い、経済失政総理
として歴史に名を刻まない事を心より願いたい。
 
さてここまで、散々に財務省主計局と東大法学部出身者について皮
肉交じりの事を書いてきたが、彼らは元々国家有為の存在である。
しかし財務経理部が、狭い視野だけで会社を牛耳っていては会社を
潰す様に、彼らが取らぬ狸の目先のソロバン勘定と、受験戦争の延
長の様な手柄争いを目的に国家を牛耳っていては国家が果てしなく
衰退して行く。
 
彼らに不善を為させないためにも、有為の人材を活かす、真に国家
に資するミッション設定、それに基づく評価と名誉の授与、前述の
公務員賃金カットと矛盾する様だがエリートに対しては然るべき処
遇を含んだ公務員改革が必要となるだろう。
 
                    以上
佐藤 鴻全

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