4775.中国とロシアの連携の理由



前回の続きである「安全保障のジレンマ」を考察しようとしたが、
それより重要な事実がわかったので、またそれがわかったことで、
今後大きく世界の情勢は変化するので、それを考察することにする。
           津田より

0.米国の変化
ナショナル・インタレスト誌に「American Interest, American 
Blood」、ワールド・ポリティック・レビュー誌に「Strategic Horizons:
 The Revolution in American Security Policy」の2つの評論に、
私は衝撃を受けた。米国の変化を思い知ることになった。この米国
の変化を見て、日本の戦略を大幅に見直す必要を痛感する。

この2つの評論は下にURLがあるので、読んで頂ければわかるが、
もう、これ以上はアメリカ人の血を流すのは、ゴメンだ。もう世界
の紛争には巻き込まれない。それもリアリスト的なナショナル・イ
ンタレスト誌に載ることに危機感さえ感じる。2008年に大統領選挙
で健闘した外交政策で不干渉主義というリバタリアンのロン・ポー
ルと同じ主張である。

しかし、その主張をリアリスト的な立場の雑誌が行うのであるから、
大きな米国政治の動きを感じる。これと同じ趣旨をワールド・ポリ
ティック・レビュー誌にも出ているので、米国の一般的な感情なの
であろう。

米国が世界の警察を捨てることが確実になってきた。米国の覇権が
揺らぐと、その空白を埋めるような世界の動きが出てくる。また、
シリア紛争にもエジプトの混乱でも米国は動かない可能性が高い。

特に米軍が介入する可能性は、ほぼゼロであろう。オバマ大統領が
2つの紛争に動かないことを非難する評論もあるが、それより、
米国人の血を流さないという感情が米国民にあり、特に中東のイス
ラム教の人たちとの紛争には絶対に関わらないということのようで
ある。

米国は自国需要分のガソリンを自国で供給できるので、中東の石油
を必要としていない。このため、自国の石油のためには、中東に関
わる必要がなくなる。このため、今中東での戦争は中東石油を必要
とするアジアの日本、中国、韓国、ASEAN諸国のために行っているよ
うなものである。

イスラエルは、パレスチナからのロケット攻撃を追撃できるミサイ
ル防御システムができたので、防衛的な心配がなくなっている。
後は、イランの核ミサイルを封鎖することである。このため、米国
の中東撤退を問題にしていない。また、イスラエルも沖合に石油が
出ている。

トルコのエルドアン首相は20日、エジプト軍による事実上のクー
デターの背後に「イスラエルがいる」と主張したが、これは正しい
可能性が高い。

このため、現在、大きな歴史の転換期になっているのである。この
認識が日本にも必要である。

1.中国の外交
ディプロマットに「Chinese Diplomacy With Emotional Characteristics」
の評論が出ている。これによると、中国は日本や欧米に歴史的な怒
りを感じているのを基盤した外交をしていると。このため、日本と
の紛争もここから出ているので、解決が難しい。今まではトウ小平
が、その感情を隠して日本や欧米から技術や経済を盗めと言うので
、その感情を出さないで来たが、中国が第2の世界経済になり、と
うとう感情を前に出した外交ができるようになったのだと。

日本が尖閣諸島を盗んだという強い言い方するのも、中国の感情的
な行動と理解するしかない。このため、解決方法がないのが現状の
ようである。

中国国民の感情を対外強攻策にする教育をしているので、仕方がな
い。このため、中国との戦争をある程度、想定することになる。こ
の時、米軍がいない可能性がある。

ハメスが提案するオフシェア戦略を中国に向けたものではないと、
中国との戦争を避ける方向で議論が行われている。アジア・ピポッ
ト戦略(アジア重視)という米国の方針も、ケリー国務長官になり
完全に反故状態である。

エア・シー・バトルでも、中国への戦争で重要なのはA2/ADのため、
距離の長い攻撃ができる兵器開発が必要であるが、予算的な処置が
できるかどうかという問題が、発生する可能性がある。しかし、米
国民的には社会保障の方が大切ということになりそうである。

中国への対抗という意味でも、日本は米国を頼れない可能性が益々
増すことになる。このため、日本は2つの大きな問題を抱えること
になる。対中国とシーレーン防衛である。

2.ロシアと中国の連携
中国とロシアは、米国の根本的な変化を見て、チャンスと見なして
いる。このため、両国は戦略的な連携して、米国の覇権を引継ぐよ
うである。特に中東のシーア派を応援して、中東の石油を掌握する
方向である。

スンニ派のゲリラが、中国の東トルキスタン独立やチェチェン独立
などの紛争を引き起こしているので、それを防ぐこともできるし、
石油を手に入れることもできる。実に一石二鳥の効果がある。

米軍の中東撤退に伴う力の空白を中ロで埋める方向である。戦略的
な連携であり、欧米日などの利益を奪うことになる。特に中東の石
油は、日本にとって重要物資であり、このシーレーンを守る米軍が
居なくなると、日本は力の空白を独自で保持することが難しくなる。

このシーレーンをどうするかの問題が出てくる。

もし、米軍が残留すると、ロシア+シーア派軍と中国軍で追い出す
可能性もある。最終戦争という、いやな考えが浮かぶ。この戦争は
ロシア軍と中国軍+シーア派が勝つように思う。ヨハネの黙示録を
見ると、最終章に向かって世界は動いていると感じる。このように
米国の覇権放棄は大きい影響を与えることになる。

3.日本の戦略を考察
日本の国内で集団自衛権問題が大きくなっているが、世界は次の時
代に向かって大きく動き出している。米国の覇権放棄は、深刻な影
響を与える。

しかし、この米国の代わりを欧州はしない。それは各国軍備をGDP比
で2%以下まで少なくしている。欧州はもう1つ、地域の経済が弱く
て、それどころではないという雰囲気である。

英国は米国の裏で影響力を発揮してきたが、その英国も次の影響力
をどう発揮するかを検討している。英国が安倍首相の英国訪問を歓
迎した理由でもある。日英同盟の可能性も大いにあると思う。日本
は、また英国のアジア・中東での影響力保持を目指して、日本の自
衛隊を使う意向のようである。

日本は明治時代のロシアと対峙したときと同様な緊張した時代にな
ってきた。中国の力は、米国の覇権維持の意思がなくなれば、その
力を止める物がないと思われるほど、大きい。

この大きな力を止める可能性があるのは、日本しかないことになる。

このため、英国は日本に期待しているのである。最後の防波堤とい
う、明治時代と同じような役割を期待されていることになる。

このため、シーレーンという対象を米海軍+英海軍+日本海上自衛
隊+インド海軍+豪州海軍などが連携して守るしかない。この中に
中国海軍も参加するというなら、それも共通の対象という観点から
参加してもらいことである。

そして、世界の警察軍的な機構を国際的な仕組みとして作り、米国
の代わりをする必要になった時代である。

さあ、どうなりますか?


資料:
American Interest, American Blood
http://nationalinterest.org/article/american-interest-american-blood-7610

Strategic Horizons: The Revolution in American Security Policy
http://www.worldpoliticsreview.com/articles/13162/strategic-horizons-the-revolution-in-american-security-policy#.UhFVmTj7IMk.twitter

Beware Collusion of China, Russia
http://nationalinterest.org/article/beware-collusion-china-russia-8640

Chinese Diplomacy With Emotional Characteristics
http://thediplomat.com/china-power/chinese-diplomacy-with-emotional-characteristics/

Debating a Strategy for World War III
http://nationalinterest.org/blog/the-buzz/debating-strategy-world-war-iii-8941

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首相、中東歴訪へ出発 資源の安定確保目指す
 安倍晋三首相は24日午前、ペルシャ湾岸のアラブ6カ国でつく
る湾岸協力会議(GCC)加盟国のうちバーレーン、クウェート、
カタールと、アフリカ東部ジブチの計4カ国歴訪に向け、羽田空港
を政府専用機で出発した。原油や天然ガスの供給国であるGCC諸
国との関係を強化し、資源の安定確保を図る狙いだ。
 ジブチではソマリア沖アデン湾で海賊対処活動を行う自衛隊の拠
点施設を訪れ、隊員を激励する。
 出発に際し「包括的な関係を強化していきたい。成長著しい湾岸
諸国にトップセールスを行っていきたい」と羽田空港で記者団に語
った。
2013/08/24 11:29   【共同通信】
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背後にイスラエル=エジプト政変−トルコ首相
 【アンカラAFP=時事】トルコのエルドアン首相は20日、エ
ジプト軍による事実上のクーデターの背後に「イスラエルがいる」
と主張した。エジプトのイスラム組織ムスリム同胞団と関係が良好
なトルコのイスラム政党、与党公正発展党(AKP)の会合で述べ
た。
 首相は「証拠」として、ムスリム同胞団がエジプトで選挙に勝っ
ても権力維持は無理と予想した2011年のイスラエル法相の発言
を挙げた。
 これに対し、エジプトのベブラウィ暫定首相は「事実無根」と激
怒。イスラエル当局者も「ばかげている」と一蹴している。
(2013/08/21-12:39)



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