4766.人工光合成



デンマークの政治学者ビョルン・ロンボルグ氏はコペンハーゲンビ
ジネススクールの非常勤教授、コペンハーゲン環境評価研究所の前
所長である。彼はプロジェクト・シンジケートで「The Decline of 
Renewable Energy」の評論を出している。

1771年で世界のエネルギーに占める再生エネルギーは13.12%であっ
たのが、2011年では12.99%と再生可能エネルギーの割合は減ってい
る。しかし、再生可能エネルギーの内、木を燃料にしている地域は
貧しい。この人たちも徐々に化石燃料を使うようになり、再生可能
エネルギーの割合が減ってきたのである。

現時点では、先進諸国を中心に再生可能エネルギーを利用し始めて
いるが、現在主流なのが太陽と風からの電気を生み出すことである。
効率が悪くて、普及が進まないし、進むと安定性の問題を起こして
いる。

しかし、この方法が普及しても利用分野が限られて、プラスチック
原料や内燃機関のエネルギーを賄えない。このため、車の燃料やプ
ラスチックの材料を生み出す方法が必要になる。

この方法が人工光合成であり、この研究を日本が最先端で進めて行
くと、石油や化石燃料が必要なくなり、中東やロシア、アメリカな
どからの化石燃料輸入がなくなり、エネルギーでも一本立ちでき、
日本の再活性化ができることになる。

エネルギー産業が日本国内だけでできることになる。原料は水、CO2
と太陽光であり、全て無料である。完全な循環型社会ができること
になる。

そして、これが夢物語ではなくなっている。パナソニックの研究所
が、効率0.2%と植物の光合成と同程度の効率を達成したのであ
る。商品化するには、効率10%を目指すというが、効率2%でも
商品化する価値がありそうである。

日本は、太陽光発電用ペイントや藻類「オーランチオキトリウム」
での石油生産、燃料電池などが既に実用化寸前であり、その上に、
この人工光合成がある。日本は凄い優秀な技術者が多い国家である
と思う。

政治がそれをどう成長戦略化するかが問題なのである。日本の問題
は技術者に比べて政治家と官僚たちの能力が低いことである。

これらの1つでも本当に実用化できると、日本の製造業や産業全体
が変化するほどの産業革命を起こすことになる。

さあ、どうなりますか?

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人工光合成 無尽蔵なCO2と水から工業原料生産 
高い変換効率、世界をリード
2013.7.28 07:00 産経
研究進む人工光合成
 太陽光エネルギーは、地球に降り注ぐ1時間分だけで人類が必要
とするエネルギーの1年分に相当する。「水の惑星」とも呼ばれる
地球は表面積の約7割が水で覆われ、CO2は地球を温暖化させる
ほど増加が続いている。

 人工光合成は、これらの無尽蔵な資源から、燃料になるメタノー
ルや化学製品の基礎原料となるエチレンなどの多様な物質を、原材
料費ほぼゼロで生み出すことができる。

 研究は日本の独走状態だ。これまでは室内で疑似的な太陽光を使
った実験にとどまっていたが、パナソニックは昨年12月、屋外の
自然光での実験に成功し、単純な有機化合物のギ酸を作り出した。

 今年5月にはトヨタ自動車グループの豊田中央研究所(愛知県)
も、方法や条件が異なる屋外実験でギ酸を生成。いずれも世界初の
成功で、実用化への大きな一歩といえる。

 研究に火を付けたのは約2年前、大阪市立大の神谷信夫教授が発
表した論文だ。植物が光合成で水を分解する際に、触媒として働く
マンガンクラスターという物質の構造を初めて突き止めた。似た構
造の触媒を作れば人工光合成が実現に近づくため、世界中で競争が
始まった。

 実証実験に世界で初めて成功したのは豊田中央研だ。平成23年
9月、ギ酸を生成。太陽光エネルギーの変換効率は植物(0・2%
)の5分の1の0・04%だったが、現在は0・14%に向上して
おり、28年度末に1%を目指す。

 パナソニックは異なる条件で昨年7月、植物と同じ0・2%の変
換効率を初めて実現。生成物はギ酸だったが、現在は触媒の改善で
「効率は約2倍に向上し、メタノールやエタノール、エチレン、メ
タンも生成できた」(同社)という。

 目覚ましい進展の背景には、国を挙げての支援がある。その素地
を作ったのは22年のノーベル化学賞に輝いた根岸英一・米パデュ
ー大特別教授だった。受賞直後、根岸氏は「資源が乏しい日本は人
工光合成に注力すべきだ」と文部科学省幹部に直談判し、国家プロ
ジェクトを立ち上げた。

 経済産業省も昨年11月、文科省と連携して10年間で計約150
億円の予算投入を決定。28年度末に3%、33年度末に10%の
変換効率を達成目標に掲げた。

 低コスト化や大規模な装置開発など課題は多いが、神谷教授は「
新触媒を開発し、42年にメタノールの効率的生成を実用化したい
」と話す。欧米や中国、韓国の追い上げは激しいが、実用化でも日
本が優位性を確保し、エネルギー革命や経済成長につなげることが
期待される。

 植物の光合成のように、太陽光のエネルギーを使って水と二酸化
炭素(CO2)から有機物を作る「人工光合成」の研究が加速して
いる。地球のありふれた物質から、燃料や工業原料を生み出す夢の
技術だ。自然光を使った屋外実験や、植物並みの高い変換効率など
国内企業による世界初の成果が相次いでおり、日本の新たなお家芸
になりそうだ。(伊藤壽一郎)
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人工光合成「CO2からエネルギーを作り出す」|夢の扉+
TBSテレビの「夢の扉+(ゆめのとびらプラス)」でCO2から
エネルギーを作り出す人工光合成について放送されました。地球温
暖化の原因とも言われるCO2(二酸化炭素)は今は邪魔者、厄介
者。しかし、そのCO2からエネルギーを生み出そうと研究をして
いるのがパナソニック先端技術研究所の山田由佳(やまだゆか)さ
ん(49歳)。光と水を使いCO2からエネルギーを作り出す人工
光合成(じんこうこうごうせい)という新技術です。山田由佳さん
は3人の研究員と共にこのプロジェクトを率いています。そもそも
光合成とは太陽の光によってCO2と根っこが吸い上げた水が反応。
酸素、植物の栄養分となるでんぷんや糖が作られます。30億年以
上繰り返されてきた光合成により地球上の全ての生命は生かされて
きました。そんな植物が持つ能力を人工的に再現しようとしたのが
人工光合成です。植物の光合成はCO2を減らすと同時に栄養素を
作ります。一方、人工光合成は栄養分のかわりにエネルギーになる
有機物を作ろうとしています。目指すのは太陽の光で人工光合成を
行い都市ガスの主成分であるメタンガスやエタノールを生み出すこ
とです。

山田由佳さんたちは100m四方のプラントで年間10トンのCO2
を吸収し6000リットルのエタノールを生産する構想を進めてい
ます。それは同じ面積の森を作るのと同様のCO2削減効果があり
ます。人工光合成は地球と人類を救う技術なのです。

電機メーカーの研究員として半導体など最先端の研究をしていた山
田由佳さんに転機が訪れたのは13年前。きっかけは会社のポスタ
ー。描かれていたのは45億年もの歴史ある地球が、この250年
たらずでCO2を出し続け燃え尽きていく様。自分に何が出来るの
か悩む山田由佳さんに当時の所長だった安立さんは「これからの電
機メーカーの使命である環境エネルギーに取り組んで欲しい」と声
をかけました。山田さんが選んだ研究は出し続けたCO2をリサイ
クルしてエネルギーにかえる人工光合成。それは当時、世界中の科
学者が取り組むも植物のレベルには遠く及ばない技術でした。そこ
へ日本の電機メーカーが挑みました。始めに目指したのは人工の光
を使って水に溶かしたCO2を反応させること。ところが何度やっ
てもうまくいきませんでした。ネックになっていたのは光触媒。目
指す人工光合成には光を受けより効率的にたくさんの酸素と電子を
生み出す光触媒が必要でした。山田さんが率いる研究チームは理想
の光触媒を求め実験を繰り返しました。

きっかけとなったのは東京理科大の大川教授が行っていた窒化ガリ
ウムという半導体の研究でした。ついに理想の光触媒を見つけた山
田由佳さん。ところが光触媒から強い電気は生じるものの、それを
運ぶ燃料に辿り着く前にロスが生じ弱まってしまいます。すると、
研究員の一人が「電極ごと水に浸けてみたらどうでしょう?」と言
い出しました。実験を始めて2ヶ月、ついにCO2が反応。光を受
けた光触媒から発生した酸素と電子。強いパワーを保ったままの電
子は隣の水槽へと移動。そこにある金属触媒の力を借りて水中の
CO2を変換。ついにエネルギーとなりうる有機物を生み出したの
です。実験を繰り返した山田由佳さんたちは昨年、光からエネルギ
ーを生み出す変換効率をそれまでの0.04%から0.2%にまで
引き上げることに成功。本物の植物に追いつくという世界でもぶっ
ちぎりの人工光合成技術を実現したのです。



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