4742.「相互依存で戦争が起きない」との評論



プロジェクト・シンジケートに「Rethinking Interdependence」
(相互依存の見直し)Hans Kundnani氏の評論が異彩であり、これを
取り上げ、検討したい。  津田より

0.現時点の米中関係
米国の量的緩和は、新興国に投資を呼び、新興国を発展させた。し
かし、この量的緩和を縮小するとバーナンキ議長が予測した途端に
、ドルの巻き戻しが起きて、新興国の景気は落ちてしまった。

米中が外交・経済問題について話し合う第5回戦略・経済対話が7
月10、11日の両日、ワシントンで開かれた。その場で量的緩和
(QE)の縮小について、中国側が「時期尚早」と待ったをかけた。

何しろ、中国はこれまで公式的には、FRBがドル資金を大量発行
するQEに対し、新興国への投機を助長するとして強く反発してい
たのに、逆に米側がQEからの「出口」を模索し始めると、「まだ
続けてくれ」と言い出したのである。

この場で、米中両国はお互いの国への投資をしやすくするルールを
定める投資協定の締結協議を加速させることで合意。また、エネル
ギー政策などで共同歩調を取ることでも一致し、ウィン−ウィンの
関係に近づいた。米国は中国でのビジネスで利益を得ることができ
ると思っている。

しかし、人権の尊重や航行の自由といった国際社会のルールの位置
づけをめぐっては、両国が決して折り合えない関係にあるのは明確
である。中国国内の政治体制維持と国民の不満を解決するために、
できないという。しかし、経済合理性の追求は、戦争の危険より国
家にとっては重要なことである。経済がおかしくなると国民の不満
を一気に吹き出すことになるためだ。

このように政治思想体制は違うが、経済関係では関係を深めている。
米ソ冷戦時代の薄い経済関係とは大きく違うことは確かである。市
場経済を中国は取り入れたので、その面では経済関係が米中では相
互依存を深めている。

そして、ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの新興5カ
国(BRICS)財務相・中央銀行総裁会議が7月19日にモスク
ワで開かれ、米国に対し、量的緩和縮小に際しては新興国と協調し
ながら慎重に進めるよう呼び掛けた。

このように世界全体が市場主義経済になり、金融経済関係が世界的
に密接になり、またそのために大国同士の対話が行われている。G
7では世界の問題は解決できないとG20にしたが、経済関係は世
界的に深くつながっている証拠である。

この上に、相互関係の見直しが出てくる。

1.相互依存の有無
詳しくはプロジェクト・シンジケートの評論を見ていただきたいが
、民主的な市場社会では、相互依存で戦争がないことは、自明にな
り始めているが、相互依存が深まれば深まるほど、ゼロサムから、
ウィン・ウィンの世界になると言われている。しかし、EUでは多様
性のない単一通貨での相互依存になり、問題を起こしている。

また、米中関係を見ると、経済の相互依存関係が深まったことで、
戦争の危険が減少している。第1次大戦では経済の自殺で戦争にな
ったが、インターネットなどが出ていて、世界の一体性は確実に増
しているとして、このために相互依存が高まれば戦争に危険は無く
なることになる、という。

この評論を見たときに、これは違うと思ったが、その後、中国も米
国との対話を通じて、徐々に国内政策を変化させ、特に金融の自由
化などの規制緩和で取り始めている。民間経済の活性化をしないと
、中国も今以上の経済発展はできないと中国政府も考えていること
になる。

そして、逆のことも起きる可能性が出てくる。それはHarold James
氏の評論である「Financial Crisis and War」で景気がおかしくな
ると、戦争が起きる可能性が増すというのである。

1914年に始まる第1次世界大戦が起こったことは、景気低迷で国民
が、その原因を求めて海外的な敵を作り、それに対する攻撃を要求
して戦争になったという。この現状が中国、韓国に出て、それに対
応する形で日本にも出てきた。国民感情で相互関係を壊していくこ
とが行われて、そして、戦争に行き着くという姿である。

この2つはそう言う意味では、同じことの裏と表を表現しているこ
とになる。

今、心配なのは、日本も中国も偏狭な愛国主義者が、国民を煽り、
経済問題での失敗を海外に求めることである。中国のシャドー・バ
ンキングの処理を間違えて、バブルの崩壊が起きると、中国の景気
は、一気にどん底に行くことになる。また、日本もアベノミックス
の失敗と中国経済の崩壊の影響で、景気はどうなるか分からない。

この時、中国の経済崩壊が原因としても、日本は中国に責任を押し
付けることはできないし、中国も同様に日本の非難をしても、どう
しようもない。

世界経済は一体化し、かつその速度は増しているので、その動向に
追随しないといけない。そして、相互依存関係が深まならないと安
く性能が良い製品はできないし、市場を失うなど経済的な不利益を
受けることになる。

2.世界全体で経済は回っている
どうも、日本人は日本だけの景気だけを議論しているが、日本の大
企業も世界での売上高が増えてきたことで、日本の景気が世界景気
と連動してきている。この内、経済規模が大きいのは米国25%、
中国、日本10%、EU20%である。この地域を特に注意して欲し
いものである。

このため、世界的な経済の仕組みを考えて、その景気動向を見ない
と、アベノミックスの成功・失敗を見てていても、日本経済がどう
なるのか予測ができない。

勿論、アベノミックスが成功して、その成功で世界景気を押し上げ
ることもできるが、世界のGDPにおける日本のGDPは10%もないこ
とで、ほとんど無理がある。

それより、新しい産業やイノベーションを起こして、世界に貢献す
ることで、世界を変革することである。

日本だけを考えると小手先の改革でも良いが、世界景気が沈むと日
本も沈み、日本だけが好景気なることには無理がある。

世界の一体的な経済体制をどう利用して、日本が生きていくかを考
えるべきであろう。それを阻害する偏狭な愛国主義者の台頭を避け
るべきである。

それは、戦争への繋がっているいくことにもなる。相互依存関係を
増やし、対話を行い、影響をし合いながらお互いに経済を高めてい
くことである。


参考資料:
Rethinking Interdependence:
http://www.project-syndicate.org/blog/rethinking-interdependence-by-hans-kundnani

Financial Crisis and War
http://www.project-syndicate.org/commentary/financial-crisis-and-war-by-harold-james
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先進国、途上国と協調を=量的緩和縮小でBRICS
 【北京時事】ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの新
興5カ国(BRICS)財務相・中央銀行総裁会議が19日にモス
クワで開かれ、先進国に対し、量的緩和縮小に際しては新興国と協
調しながら慎重に進めるよう呼び掛けた。中国国営新華社通信が
20日伝えた。
 会議では「一部先進国が打ち出した量的緩和縮小計画は、新興国
からの大量の資金流出、通貨安、金融市場の変動を招いており、新
興国を含め世界の景気回復に悪影響をもたらしている」との見方で
一致。先進国側に政策の透明性を高め、新興国などとの意思疎通、
協調に努めるよう求めた。(2013/07/20-22:11)
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協調目指す米中間に横たわる深い溝
2013.7.20 07:00 sankei
 米中が外交・経済問題について話し合う第5回戦略・経済対話が
10、11日の両日、ワシントンで開かれた。両国はお互いの国へ
の投資をしやすくするルールを定める投資協定の締結協議を加速さ
せることで合意。また、エネルギー政策などで共同歩調を取ること
でも一致し、ウィン−ウィンの関係に近づいたとも言える。ただ、
人権の尊重など国際社会のルールをめぐっては、両国の間には深い
溝が横たわっている。最強の国家として国際社会で位置づけられる
米国と、21世紀に入ってから最大の新興国として存在感を示して
きた中国は協調を目指してはいるものの、その先行きは不透明だ。
ウィン−ウィンの関係
 「財務長官は私よりも頭がいい。おかげで協議を前進させること
ができた」。中国の汪洋副首相(58)は11日の閉幕時の共同会
見でジャック・ルー財務長官(57)に賛辞を贈り、笑顔で握手を
交わした。
 汪副首相が会合に満足感を示したのは、6月の米中首脳会談で習
近平国家主席(60)がバラク・オバマ大統領(51)に対して「
新型大国関係」という言葉で示した、ウィン−ウィンの関係の足が
かりを得ることができたと考えているからだ。
 現状では米国と中国の間にはさまざまな摩擦がある。中国の食肉
大手、双匯国際は5月、米豚肉加工最大手のスミスフィールド・フ
ーズを47億ドル(約4700億円)で買収することを提案したが
、米国内から「知的所有権や食肉の安全性を維持できるのか」との
反発があがり、買収交渉は難航している。
 また中国は経済成長の結果、エネルギー不足が深刻化しており、
シェールガスの増産で価格低下が見込まれる米国産の液化天然ガス
(LNG)の輸入を進めたい考えだ。しかし米国は法律で、中国を
含む自由貿易協定(FTA)を締結していない国々への輸出には米
当局による承認が必要と定めている。このため中国への輸入は実現
していない。
「重大な突破口」
 今回の会合で両国は、投資協定の協議を加速させることで合意し
た。中国側には投資協定が実現すれば、双匯国際が提案しているよ
うな買収交渉をスムーズに進められるとの期待がある。逆に米国で
は投資協定が実現すれば、外国企業からの投資が制限されている中
国国内に、投資がしやすくなるとの希望が広がる。投資協定の対象
は全ての産業分野が含まれるといい、ルー財務長官は「重大な突破
口になる」と評価する。
 さらに合意文書には米国から中国へのLNG輸出に関連して、「
米国は中国に必要な法律上のプロセスについて情報を与えることを
約束する」との文言が盛り込まれた。汪副首相は共同会見で、「米
国は中国へのLNG輸出をサポートしてくれる」と期待感を示す。
一方で合意文書には「中国は中国国内でのガス開発に対する外国企
業の参加を歓迎する」との文言も盛り込まれ、米国のエネルギー関
連企業にビジネスチャンスをもたらす配慮もなされている。
折り合えぬ人権問題
 ただし今回の会合では、人権の尊重や航行の自由といった国際社
会のルールの位置づけをめぐっては、両国が決して折り合えない関
係にあることも明るみに出た。
 「人権の尊重は米国のDNAの一部だ」。ジョン・ケリー米国務
長官(69)は10日の会合で中国側に人権問題への対応を強く求
めた。米国では中国当局が民主活動家を拘束するなどして人権を抑
圧していることへの批判が大きく、人権問題の解決なしに本当の協
力関係は築けないとの考えを示したかたちだ。
 ジョー・バイデン米副大統領(70)も10日の開会セッション
で「中国は国際的に認められた人権の概念を尊重すれば、もっと強
く、安定した、革新的な国になる」と強調した。米国が南シナ海や
東シナ海での航行の自由の確保を訴えるのも、中国に国際社会のル
ールを守らせることにこだわるからだ。
 しかし中国側の発言からは国際社会のルールに否定的な姿勢がう
かがえる。汪副首相はスピーチで「中国の体制や国益を損なうよう
な考えは決して受け入れられない」と明言した。中国では言論の自
由や航行の自由を認めれば国内体制の不安定化や国益を失うことに
つながるとの警戒感もあり、米国の主張に応じることは難しいのが
現実だ。
 両国は協調に向けた一歩を踏み出したものの、その先行きが見通
せているわけではない。(ワシントン支局 小雲規生)
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中小企業支援で合意=G20初の財務・労働相会合
 【モスクワ時事】20カ国・地域(G20)の枠組みでは初めて
の試みとなる財務相と労働相による合同会合が19日午後(日本時
間同日夜)、モスクワで開催された。会合では、長期的に成長と雇
用を両立させていくため、多くの国で雇用創出のけん引役となって
いる中小企業の資金調達環境の改善に取り組むことなどで合意した。
 財務・労働相会合で採択された声明は、「G20は雇用水準の引
き上げと持続的な失業率の低下に向けた努力を強化する」と強調。
職業訓練を充実させることなどを通じ、若年および長期失業者を支
援することを確認した。会合の結果はG20財務相・中央銀行総裁
会議の共同声明にも反映させる方針だ。(2013/07/20-01:16)
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世界一の超大国、米国から中国へ 国際世論調査
2013年07月19日 17:54 発信地:ワシントンD.C./米国
【7月19日 AFP】米独立系世論調査機関ピュー・リサーチ・センター
(Pew Research Center)が世界39か国・地域で行った国際世論調査
で、将来は中国が世界一の大国になると考える人が増えている一方
、世界の大半の地域では米国の方が良いイメージを持たれているこ
とが明らかになった。

 18日発表された2007年以来となる大規模な調査の結果によると、
バラク・オバマ(Barack Obama)大統領の就任で高まった米国の評
価は現在でも、反米感情の強いイスラム諸国を除き高いままだった。
 一方、中国に対する批判は東アジアや欧州を中心に強まっている
ものの、「今はまだ多くの国で世界一の大国は米国だとみなされて
いるが、大半の人々はいつか中国があらゆる面で超大国として世界
の先頭に立つと考えている」ことも分かった。特に西欧では、米国
人気がとりわけ高いイタリア以外の全ての調査対象国で、「世界を
リードする超大国」として中国が米国を抜きつつあるか、既に抜い
ていると考える人が多かった。
 しかし人気の面では、米国に好感を持つ回答が世界全体で63%を
占め、中国の50%を上回った。しかも反米感情が広範にみられる国
々でも、米国民に対する好感度は高く、また米政府は国民に個人の
自由を認めていると大半の人が考えていた。

■好感度、日本は米国に高評価・中国に低評価
 国別にみると、米中両国に対する認識はさまざまだった。
 米国に対する好感度が最も高かったのは、中国との領土問題が持
ち上がっている日本だった。69%の人が米国に好感を持っていると
答えた一方、中国に好感を持つ人はわずか5%で、どの調査対象国よ
りも低かった。
 反対に、米国に対する好感度がわずか11%にとどまったのはパキ
スタンで、同国政府が後ろ盾とみなす中国については81%の人が好
感を示した。
 また、アジア太平洋地域の国々は大方が米国に好意的だったが、
将来の予測となると見方が分かれた。中国が第一の超大国になると
考える回答者はオーストラリアでは3分の2を占めたが、日本とマレ
ーシア、フィリピンでは3分の1を下回った。

■文化面、外交面での主導権は遠い中国
 エコノミストらの大半は、米国の4倍を超える人口を擁する中国が
、経済規模で米国を抜くのは時間の問題で、数年以内だと考えてい
る。しかし文化や外交などで世界的な勢力を擁する米国に中国がす
ぐに追いつくという見解には、多くの専門家が懐疑的だ。
 今回の調査では、中国の技術的進歩はほとんどの国で高く評価さ
れていたが、中国の音楽や映画に対する関心があるのは中南米やア
フリカの国々に限定された。
 欧州ではここ2年間で中国に対して好印象を持つ人が大きく減って
おり、英国では11ポイント減、フランスでは9ポイント減となった。
この傾向は「商業上の競争相手としての中国に対する不安」や「外
交における中国の単独主義に対する欧州諸国の不満」に由来すると
ピュー・リサーチ・センターは分析している。
 今回の調査は、欧州に怒りを巻き起こした米政府による監視プロ
グラムの存在の暴露や、エジプトの軍事クーデターが発生する前の
3〜4月に実施された。(c)AFP/Shaun TANDON
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米中戦略対話で見えた中国の“危機”
2013.7.19 10:01 sankei[中国]
 ワシントンでは先週、米中戦略・経済対話が開かれた。中国の不
動産バブルや過剰生産の元凶視される「影の銀行」問題が焦点にな
ったと報じられたが、皮相的すぎる。筆者が着目したのは、米連邦
準備制度理事会(FRB)がめざしている量的緩和(QE)の縮小
について、中国側が「時期尚早」と待ったをかけた点である。何し
ろ、中国はこれまで公式的には、FRBがドル資金を大量発行する
QEに対し、新興国への投機を助長するとして強く反発していたの
に、逆に米側がQEからの「出口」を模索し始めると、「まだ続け
てくれ」と言い出したのである。一体、どういうことなのか。
(フジサンケイビジネスアイ)
 米QEの縮小の動きについてクレームをつけたのは中国の楼継偉
財政相で、「(米国の)高い失業率を考えれば時期尚早」と内政干
渉まがいの態度で臨み、「影響は米国のみにとどまらず、十分注意
すべきだ」と厳しく注文した。本来、金融政策は自国のために行わ
れるもので、米国の失業率をうんぬんしてまで、「まだ続けろ」と
迫るのはいかにも尊大で粗暴な「大国」中国らしい振る舞いだ。米
側のバイデン副大統領やルー財務長官、バーナンキFRB議長らを
あきれさせただろうが、それほど中国側にはQEを縮小、さらに打
ち切られては困る、切羽詰まった事情があるとみてよい。その一端
を示したのが、「影響は米国のみにとどまらない」という発言であ
る。
 ここで、グラフを見ていただこう。2008年9月の「リーマン
・ショック」後、08年8月に比べてどのくらい米FRBがドル資
金供給残高(マネタリーベース)増やしたか、また中国人民銀行が
人民元資金の供給量を反映する資産総額をドル換算で増やしたか、
その人民銀行資産のうちドルを中心とする外国為替資産をドル換算
でどのくらい増やしたかを示している。
 一目瞭然、人民銀行は米QEに合わせて資産を増やす、つまり人
民元資金を発行し、国内の金融機関や金融市場に流し込んでいる。
そのやり方はいたってシンプルである。まず、人民銀行は流入する
ドルなど外国為替資金をことごとく買い上げて人民元の対ドル交換
レートが高騰するのを抑える。その増える外為資産の範囲内で人民
元を発行する。




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