モルシ前大統領が軍当局に拘束されているということが分かった。 暫定大統領に就いたマンスール最高憲法裁判所長官(67)で、7 月1日に同裁判所長官への就任を承認されたばかりだった。 マンスール氏はカイロ大卒で、フランス国立行政学院(ENA)に も留学。ムバラク政権時代から長年にわたって裁判官のキャリアを 積み、1992年には同裁判所副長官に就任した。 2011年のムバラク政権崩壊後には大統領選に関する法律制定 に尽力したものの、モルシー政権やムスリム同胞団とは憲法改正な どをめぐって緊張関係にあった。 軍部はムバラク政権崩壊後の暫定統治期に厳しい批判にさらされた ため、今回は政治色の薄い文民をトップに据えて乗り切りを図る。 なお、暫定首相には、反政府勢力を代表してエルバラダイ国際原子 力機関(IAEA)前事務局長(71)が就くとの観測がある。 今後は、大統領選挙に向けた世俗・リベラル派の動向が焦点だ。「 反同胞団」では一致したが、昨年の大統領選では候補者乱立で共倒 れした。エルバラダイ前国際原子力機関事務局長や前回大統領選に 出馬したサバヒ氏ら有力候補の連携が鍵を握りそうだ。 このような動きに対して、ムスリム同胞団率いるイスラム主義連合 は、金曜の礼拝後に大統領権限を剥奪されたモルシ氏への支持を表 明する抗議活動を行うよう呼びかけている。 マンスール暫定大統領は、挙国一致内閣の樹立にムスリム同胞団も 参加するよう呼びかけた。ただ、同胞団の幹部は「権限を強奪した 者」には協力しないとの姿勢を崩していない。 選挙で「反同胞団」は一致した候補を出せるかどうかである。エル バラダイ前国際原子力機関事務局長が、サバヒ氏ら有力候補などと 連携が出来るかどうかである。 まだまだ、いろいろな困難が待ち受けているように感じる。 参考: 4640.エジプト情勢:ムスリム同胞団の政治方針 http://www.asahi-net.or.jp/~vb7y-td/250409.htm ============================== エジプト:経済失政が命取り…クーデター 毎日新聞 2013年07月04日 22時03分(最終更新 07月04日 22時55分) 【カイロ秋山信一】エジプトで3日発生した軍事クーデターは、 経済の低迷などに対する国民の強い不満に後押しされていた。 2011年の民主化要求運動「アラブの春」で軍の離反を招きムバ ラク独裁政権を崩壊させた大規模デモが、初の民主選挙で選出され たモルシ大統領も追い落とした。超法規的な国家元首排除が繰り返 され、エジプトは民政復活に向け再び険しい道を歩むことになった。 ◇観光低迷、投資は減少 モルシ氏の「終わりの始まり」は6月30日、就任1年の記念日 だった。全土で反政権デモが起き数十万人が辞任を要求。モルシ氏 の出身母体・穏健派イスラム原理主義組織ムスリム同胞団の本部が 襲撃された。 こうした事態を受け、軍は1日、モルシ氏らに48時間以内に妥 協しなければ介入すると通告した。だが、大統領は2日夜の演説で 、自らが留任する挙国一致内閣を提案。軍は「国民の要求に応えて いない」と判断し権限を剥奪、同胞団幹部も拘束した。 歴代政権に弾圧された同胞団だったが、2012年1月に終わっ た人民議会(国会)選挙では第1党に。昨年6月の大統領選決選投 票でもモルシ氏が勝利。国民も経済立て直しや民主化推進を期待し 昨年8月の支持率は72%に達した。 だが、経済政策の失敗が同胞団政権をつまずかせた。革命の影響 で主要産業の観光が低迷し、海外からの投資も減少。国際通貨基金 (IMF)からの融資導入を図ったが、条件であるパンや燃料の補 助金削減などを決断できなかった。補助金カットは同胞団が支持基 盤とする貧困層を直撃する恐れがあった。新憲法を巡っても野党と の対立が先鋭化。国政経験や人材が不足する同胞団政権は状況を打 開できなかった。 この結果、治安は悪化し物価は上昇。12年の殺人は前年比 約2.5倍の1885件。食料品価格は2年で約3割上がった。失 業者は革命前から100万人増え失業率も12%を超えた。 ◇強権対応で国民離反 強まる批判に政権側は強権的に対応し、批判的な活動家やジャー ナリストを相次いで「扇動」容疑で拘束した。「危機など存在しな い」との政権首脳の発言は、生活苦を痛感する国民の支持離れを招 いた。5月には大統領辞任署名活動が拡大。6月には支持率が25 %にまで低下していた。 今後は、大統領選挙に向けた世俗・リベラル派の動向が焦点だ。 「反同胞団」では一致したが、昨年の大統領選では候補者乱立で共 倒れした。 エルバラダイ前国際原子力機関事務局長や前回大統領選に出馬し たサバヒ氏ら有力候補の連携が鍵を握りそうだ。 ============================== 暫定大統領は無名のベテラン裁判官 2013.7.5 00:00 sankei[紛争・クーデター] エジプトでクーデターを敢行した軍の「行程表」に基づき、暫定 大統領に就いたマンスール最高憲法裁判所長官(67)。皮肉にも 、モルシー前大統領によって、7月1日に同裁判所長官への就任を 承認されたばかりだった。 軍が国政への直接介入に進むことへの懸念が反政府勢力にもくす ぶる中、深刻な社会分裂を抱えた同国のかじ取りへの手腕が問われ る。 マンスール氏はカイロ大卒で、フランス国立行政学院(ENA) にも留学。ムバラク政権時代から長年にわたって裁判官のキャリア を積み、1992年には同裁判所副長官に就任した。 2011年のムバラク政権崩壊後には大統領選に関する法律制定 に尽力したものの、モルシー政権やムスリム同胞団とは憲法改正な どをめぐって緊張関係にあった。 裁判官としての豊富な経験にもかかわらず、一般にはほぼ無名の 存在。軍部はムバラク政権崩壊後の暫定統治期に厳しい批判にさら されたため、今回は政治色の薄い文民をトップに据えて乗り切りを 図る。 暫定首相には、反政府勢力を代表してエルバラダイ国際原子力機 関(IAEA)前事務局長(71)が就くとの観測がある。 (カイロ 遠藤良介) ============================== 「偉大な業績」「危険なメッセージ」周辺国の反応さまざま 2013.7.5 00:06 sankei[紛争・クーデター] 【カイロ=遠藤良介】エジプトのモルシー政権が軍クーデターで 転覆したことについて、近隣諸国の政権からは4日、称賛から非難 まで多様な反応が相次いだ。モルシー前大統領がイスラム原理主義 組織ムスリム同胞団を母体としていたことに加え、周辺国の政権が 置かれたそれぞれの状況が評価の違いにつながっている。 内戦が泥沼化しているシリアの国営テレビは、軍によるモルシー 氏の追放を「偉大な業績だ」とする高官の発言を伝えた。アサド政 権とイスラム教スンニ派の対立が内戦の一つの構図となっており、 周辺からイスラム過激派が参戦している状況が根底にある。 2011年のムバラク政権崩壊以降、自国でムスリム同胞団の活 発化を警戒してきた湾岸アラブ諸国もエジプトの政変を好意的に見 ている。サウジアラビアのアブドラ国王はマンスール暫定大統領に 祝福メッセージを送り、「エジプトを暗いトンネルから救った」と 軍をたたえた。 カタールはモルシー政権に好意的だったが4日、マンスール氏に 祝意を伝達、サウジなどに同調した。 一方、イスラム色の強い与党、公正発展党(AKP)を基盤とす るトルコのエルドアン政権からは厳しい批判が上がった。 ダウトオール外相は「民主的な選挙で発足した政府が不法な手段 、まして軍事クーデターで転覆させられたことは受け入れられない 」と発言。AKPが世俗主義の牙城として力を持つ軍と緊張関係に あることや、5月末以降に大規模な反政権デモが行われたことが警 戒心を生んでいる。 「アラブの春」の端緒となったチュニジアからも、「アラブ諸国 民への危険なメッセージになる」とする政権与党の声明が報じられ た。 ============================== 弾圧されるムスリム同胞団 サイトに「国民は恩知らず」 2013.7.5 00:11 sankei[紛争・クーデター] 【カイロ=大内清】エジプト軍によるクーデターで、同国最大の イスラム原理主義組織ムスリム同胞団は民心をつなぎ留められず、 選挙で得た「力」を喪失した。今後は当局による団員摘発が加速す るとみられ、同胞団は、大弾圧を受けた1950年代以来の打撃を 受ける可能性がある。一部の強硬派による暴発への懸念も根強い。 「エジプト国民は恩知らずのばかだ」−。インターネットの同胞 団系サイトには4日、団員らの怨嗟(えんさ)の声が渦巻いていた。 草の根の慈善事業を展開する同胞団は、2011年の政変以降、 各種選挙で大っぴらに団員を大量動員して貧困層に食料品などを配 布。同時に、対立する世俗派勢力を「非イスラム的」と断じ、イス ラム教の価値観を重んじる庶民層を取り込んできた。識字率が6割 程度にとどまるとされる同国では、有効な戦術だった。 だが、政権に就き経済運営の責任を問われる立場になると、貧困 層の不満は同胞団に向いた。デモ発生後、モルシー氏は自身の「正 統性」を繰り返し強調したが、政策論より貧困層のニーズをくすぐ り利用する手法をとってきた同胞団への支持は戻らなかった。 エジプトでは今、治安当局が同胞団幹部らの逮捕を進めている。 追及が一般団員にも向くかは不明だが、大きな打撃となるのは間違 いない。 同胞団は1954年、それまで協力関係にあったナセル首相(後 に大統領)と対立。団員が起こしたとされるナセル暗殺未遂事件を 機に非合法化されて当局の徹底弾圧を受け、幹部は軒並み投獄され た。再建が進んだのは、体制内の権力闘争を有利に進めようとイス ラム勢力に接近したサダト元大統領が、幹部らの釈放を進めた70 年代になってからだ。 同胞団の前副団長で現在は組織を離れているムハンマド・ハビー ブ氏は「軍を敵に回した以上、同じことが起きても不思議はない」 と語る。 一方で、モルシー政権下で存在感を強めたかつての過激派組織「 イスラム集団」などは、今回のクーデターを「イスラムに対する攻 撃だ」と非難、過激派が拠点とする東部シナイ半島では4日、軍キ ャンプへの襲撃も発生したもようだ。こうした勢力と同胞団の一部 が結び付く可能性もあり、治安状況は予断を許さない。 ============================== 「エジプト軍介入支持せず」「国民の選択尊重」各国反応 2013年7月5日1時12分 英国のキャメロン首相は4日、BBCなどに「(エジプト)軍の 介入は支持しない。すべての人が参加して真の民主体制に移行する ことを、英国も同盟国も求めている」と述べた。 また、ヘイグ外相は4日、BBCなどに「公正で民主的なプロセ スによって政府をつくることを望む。エジプトが直面している困難 な経済情勢を改善することに取り組まなければならない」と述べた。 クレッグ副首相は4日朝のラジオ番組で、「クーデターは支持し ない。なるべく早く民主的な政府に戻ることを望む」と話した。 (ロンドン=星野真三雄) ◇ 【北京】中国外務省の華春瑩副報道局長は4日の定例会見で、「 中国はエジプト情勢に強い関心を寄せている。我々はエジプト国民 の選択を尊重する」と、事態の展開を注意深く見守る姿勢を強調し た。「各勢力が暴力を排し、対話を通して対立を解くことを希望す る」と自制を求めた。 軍による政権掌握の動きが強まって以来、中国国営中央テレビが カイロからの中継を交えて詳しく報じるなど、メディアも強い関心 を示している。2011年の「アラブの春」では、中国でも共産党 政権に抗議する運動が呼びかけられていた。 ============================== エジプト治安当局、ムスリム同胞団の指導者を拘束 2013年 07月 5日 03:34 JST [カイロ 4日 ロイター] - エジプト治安部隊は4日、解任され たモルシ大統領の出身母体であるムスリム同胞団の指導者を拘束し た。 ムスリム同胞団率いるイスラム主義連合は、金曜の礼拝後に大統領 権限を剥奪されたモルシ氏への支持を表明する抗議活動を行うよう 呼びかけている。 同日、暫定大統領に就任した最高憲法裁判所のマンスール長官は、 挙国一致内閣の樹立にムスリム同胞団も参加するよう呼びかけた。 ただ、同胞団の幹部は「権限を強奪した者」には協力しないとの姿 勢を崩していない。 ============================== 軍批判を極力抑える=エジプト政変、苦渋の黙認か−米 【ワシントン時事】オバマ米政権はエジプト情勢が緊迫して以降 、モルシ大統領に対して国民の懸念に応えるよう再三促しつつ、大 統領に退陣を迫る軍への批判は極力抑えてきた。安定化を最優先と し、「特定の政党ないしグループを支持しない」(オバマ大統領) 立場を取ることで、政変の結末を事実上黙認した形だ。 オバマ大統領は3日の声明で、民主的に選ばれたモルシ大統領が 軍によって権限を剥奪されたことに「深い懸念」を表明した。しか し「クーデター」や「非難」といった厳しい表現は慎重に避け、軍 に対して国民の権利の保障や迅速な民政復帰などを強く促した。 (2013/07/04-15:39)