4721.世界経済が混乱状態に



バーナンキFRB議長がQE(金融量的緩和策)を終えるかもしれないと
予想を発表してから、世界経済は混乱状況になっている。それに新
興国の反政府暴動もあり、これからどうなるのか検討する必要があ
る。欧米では、QEと世界的な経済混乱との関係に面白い評論が出て
いる。この紹介と検討をしたい。      津田より

0.世界の変調
バーナンキFRB議長のQE3(金融量的緩和策)を終えるかもしれない
との発言で、世界的な株価の下落が起きている。特に、米国の実体
経済にはプラスの材料が現れているのに、ニューヨーク市場の株価
が大きく下落した。つまり、実体経済の見通しと株価が逆方向に動
いたということである。

この理由は、QEで流動性が高まりバブル状態であったので、QE終了
でこのバブル状態の終焉が来ていると投資家は見なしたからである。

これを実証しているのが、「金」の市場だ。金の先物価格が下げ止
まらない。28日のニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先
物相場は1オンス=1223ドルで終了。この3カ月間の下落率は
23%に達し、株価とは比べ物にならないくらい、暴落している。
安定的な金資産から資金がシフトしている。

また、ドルが円に対しても強くなって、96円/ドルになっている。
しかし、円安であるのに東京株式市場は株価が下落した。

このような世界的な変調から、反省もこめて全体的にQEとは何であ
ったのかということが話題になっている。バーナンキFRB議長が期待
した効果がQEにはなかったのでないかという疑問が出ているのだ。
これは後で述べる。

そして、東京市場より大きく暴落しているのが上海市場である。中
国のシャドウバンクの問題があり、この金融商品がサブプライム問
題と同様な問題を起こすと見て、中国市場から短期資金撤退が起こ
っているためである。

1.中国の現状
中国の銀行業監督管理委員会は29日、高利回りの資産運用商品であ
る理財商品の2013年3月末の残高が8兆2000億元(約130兆円)に達
したと明らかにした。理財商品の残高は中国の12年の名目国内総生
産(GDP)の約16%、人民元預金残高(67兆元)の約12%に相当
。理財商品を通じて企業や個人から集まった資金は主に地方政府の
不動産・インフラ投資に流れており、個人や企業にリスクが広がっ
ている。

理財商品は銀行の通常の預金・融資とは別ルートで資金を集める中
国の「シャドーバンキング(影の銀行)」の代表的な存在。利回り
は約3%の1年物定期預金金利を上回る5〜10%になる。このため
一般の銀行から借りて、理財商品を買い、利ざやを稼ぐ個人や企業
が多くある。しかし、中国経済が停滞すると、高金利での運用がで
きなくなり、行き詰まる可能性が高いと世界の金融関係者から見ら
れている。次の大恐慌の発火点になる可能性もある。

このシャドーバンキングに中国人民銀行は対策を打ち始めた。今月
、銀行間取引市場の流動性の引き締めを始めたのだ。この市場では
銀行同士が融資し合うほか、影の融資業者の大手数社への融資も行
われており、通常は2〜3%の間でおさまっている銀行間金利が24日
に6.64%に下がるまで一時は25%の水準にまで跳ね上がった。

しかし、中国経済の膨張する信用をしぼませる狙いで銀行間取引市
場の流動性の引き締めを行ったことで必要な資金の不足にも見舞わ
れているようだ。銀行にとっての借入金利が高止まりすれば、痛み
は他の分野へと広がる可能性もある。

また、中国は世界から資源を買い集めている。中国経済の変調を来
たしてきたので資源価格も下落している。2011年に高値をつけてか
ら、銅価格は35%下げ、鉄鉱石の価格は40%、金の価格は36%下落
した。

2.新興国市場
中国、インド、ブラジル、トルコ、エジプトなど新興中進国経済の
成長が停滞し始めた。経済が次の発展をできる体制への移行するた
めの高い壁に突き当たっている。より高次元への経済体制が必要に
なっている。

しかし、この経済的な問題から政治的な暴動が起きている。この暴
動は、一般庶民の経済的な不満から起きていると見た方が良い。大
学を卒業しても就職先がないとか、投資資金を集めるために金利を
上げたが、投資資金の引き上げが起こり、その上に物価上昇が急速
であるとかの理由なのであろう。

米国がQE終了となると、投資資金が回収されることになる。より一
層、経済的な問題が新興国に降りかかることになる。QEが世界的な
バブルを冗長した可能性は否定できないが、それにより、新興国経
済は発展したことも事実である。そのQEが終了となると資金回収に
投資家は勤しむことになる。一方、米国も日本もインフレが起こる
気配がない。QEとはどのような効果がるのであろうか?という疑問
が浮かんでいる。

3.QE(金融量的緩和策)の神話
巨匠コッポラ監督の娘である音楽家フィランシス・コッポラ氏が、
「QEの神話」という評論を書いている。この評論を紹介すると、QE
(金融量的緩和)には5つの神話があるという。1つめの神話は、
金融量的緩和でインフレが起こるという神話である。しかし、実際
にはインフレは起こっていない。

2つめの神話は、金融緩和で銀行が強制的に資金を貸し出すので、
景気を刺激するという神話である。しかし、貸倒のリスクが高い会
社が多いので貸出をしなく、日銀の当座預金に置いてくことが増え
ているために、そうなっていない。

3つめの神話は、金融量的緩和で企業の投資が増えて、景気を刺激
するという神話である。しかし、銀行が安い金利の資金を貸し出さ
ないので、企業も投資できない。このため、そうなっていない。

4つめの神話は、金融量的緩和で消費者の収入が増えてくるので、
消費を増やし景気を刺激するという神話である。しかし、実際は、
収入が増えないので消費も増えない。

5つめの神話は、金融量的緩和で通貨が切り下り輸出が増えるとい
う神話である。しかし、実際には輸出は増えていない。GDPに大きな
影響を与える世界的企業はすでに海外で作ることが定着していて、
切り下げたからと自国に工場を戻さないことによる。

というように金融量的緩和は、経済に良い影響を与えないようであ
る。しかし、経済人も政治家も金融量的緩和によって、このような
神話が起きると信じることで、心理的な効果を起こして、一部その
ようなことが起きるのである。この心理の大きな効果を日本の金融
量的緩和で見たが、心理的な効果がなくなると収まることになる。

この心理効果が、金融量的緩和をする理由でもあるため、心理効果
が無くなるまでには、財政的な対応や実需を増やさなければならな
いことになるのである。

4.世界的な変調に対して、日本企業はどうするか?
日本企業は、実体経済で必要と思われる商品を開発することである。
最終的にどこで作るかより、何を作るかが重要になっている。作る
のは場所を選ばないが、何を作るかを考えるのは、人が重要である。

このため、日本企業は研究機関を日本に起き、デザインや工場は、
それぞれ、最適な場所に置いていくしかない。日本の国力は、日本
企業の活躍によるので、日本企業の力を維持することが必要である。

米国は投資会社の経済における位置が高すぎる。投資会社が強いと
バブルを起こし、皆がついてきたら、そのバブルを崩壊させて儲け
ることになる。しかし、これは経済を変調させる原因であり、この
ようなことをすると、真面目に働くことはできずに、実体経済に必
要な商品を開発できなくなる。

さあ、どうなりますか?

参考資料:
QE myths and the Expectations Fairy
http://coppolacomment.blogspot.jp/2013/06/qe-myths-and-expectations-fairy.html

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全球的中産階級の革命 トルコとブラジルの共通点 
Atlantic  JUN 23 2013
2013年06月29日 SummingUp(要するに)
 トルコとブラジルとの対比で共通項を炙り出そうとした記事。
《骨子》
1.26歳のトルコ人企業弁護士Alperは首相レジェップ・タイイッ
プ・エルドアンの支配から莫大な利益を得て来た。彼は同国の経済
ブームに乗って祖父らが想いもしなかったライフスタイルへと変っ
た数百万のトルコ人若者の一人だ。

2.だが彼はエルドアンを怨み、タクシム広場のデモに参加した。
そしてイスタンブールでの新しい「立ちんぼ」抗議に参加している。

3.「首相はデモについて露骨に嘘を吐き続けている」とAlperは語
った。「若しこの瞬間を停めたら、その時は政府がもっと実力行使
するのを自由に感じるだろうと人びとは現実に恐れている」。

4.トルコからブラジル、イランまで全球的中産階級が政治的に目
ざめつつある。抗議の規模、焦点、範囲は変るが、これはカオスの
展開ではない−それは生まれたばかりの民主主義だ。市民らは基礎
的な政治的権利、説明能力のある政府、それとより公平な資源の配
分とを要求している。

5.運動は道に迷うかもしれない。組織化された政治運動にならな
ければデモには制限的な長期的衝撃しかあるまい。ブラジルの一部
の抗議で出現した暴力と犯罪とが大衆的反撥を招いた。

6.だが総じて、世界的事件に鏤められるアメリカ人は行動主義を
肯定的に見るべきだ。抗議者たちは先進諸国の中産階級と同じ役割
を実践しているのだ。生活水準が上がるに連れて、政府への期待が
上がるのだ。

7.各国の政治力学は勿論異なる。トルコで抗議は、中東中の政府
を顛覆させたアラブの春デモの等価物ではない。また単純に宗教的
保守派と世俗的リベラル派との間に投げ込まれた争いでもない。そ
うではなくて、それは真底トルコ的だ−そして途方もなく重要なの
だ。

8.トルコ国家支配の数十年の後に、至上の若いトルコ人が多極主
義と基礎的な個人の諸権利を要求している。トルコ国家は民衆に説
明すべきだ、人びとが国家に説明責任をおうのではなくてだと人び
とが言い立てる。

9.「平和的集会の権利のような基礎的自由が警察や政府により切
り崩されている」とAlperがeメールで言った。「警察官やその上級
者になんら意義のある反響がこれまでない」。

10.何年も、イスタンブール・ビルジ大学国際関係論と政治学と
の教授Soli Ozelは、トルコを中東のモデルと観る西洋人を一蹴して
来た。しかしながら、新しい抗議が彼にそのラベルを適用しても構
わぬかなと感じさせる。

11.「この前例ない動員の後」、と彼が電話インタビューで語っ
た、「我々には非常に活気のある非常に生き生きした市民社会があ
る」。

12.ブラジルは異なった力動を見せる。与党労働党は左傾してお
り、その経済改革は貧者と中産階級とを助けて来た。併し今は、渋
くなった経済、汚職スキャンダルと2014年ワールドカップ・ス
タジアムへの120億ドルの政府支出が100万人に点火し街頭に
繰出させた。

13.一流のブラジル人社会学者Marcelo Ridenti曰く、不平等の減
少と教育の増大とが期待感を高めた。例えば、ブラジルの大学生数
は2000年から2011年で二倍になった。

14.「これが社会変化を発生させた、それには若者の間の期待の
変化がある」と彼はニューヨーク・タイムズに告げた。「彼らが期
待するのは単なる仕事じゃない、良い仕事だ」。

15.イランの最近の出来事はもっと判別が難しい。ブラジルとト
ルコとの政治制度は相対的に開放的だけれども、イランのは緊く統
制されている。先週末の大統領選挙まで、強硬派宗教指導者が、同
国2009年の緑色革命の衝突後、権力掌握を強めたかに見えた。

16.驚くべき結果で、先週末の大統領選挙にハッサン・ロハーニ
が地滑り的勝利を収めた。親改革派で都市部のイラン人が同国の弱
い経済、孤立して保守的な権力独占に不満を抱き、ロハーニに大統
領職を手渡したかに見える。ロハーニは期待よりもっと保守的であ
ることを実証するかもしれないが、彼の勝利が数千人のイラン人を
街頭に繰出すべく促したのだ。

17.「私は未来に希望があります」とHodaがロイターに語った。
「希望はイランに於けるもっと社会的な自由、もっと安定、他国と
のより良好な関係それに願いですがもっと良好な経済です」。

18.異なる国の政治運動比較にはリスクが伴う。社会は途轍もな
く違うものだ。併し、観察子はブラジルの抗議、インドの反腐敗運
動、ヨーロッパの財政緊縮抗議、米国のオキュパイ運動やイスラエ
ルの類似したデモに平行現象を見る。

19.トルコ、ブラジルやイランへの私の焦点は最近の出来事や楽
観主義に動かされている。肯定的な力学が全三か国に働いているの
だ。

20.第一、社交メディアの爆発的普及が運動で役割を果たした。
似たような気持の人びとのネットワークがお互いの即時意思疎通−
そして潜在的な動員−を可能にした。一部のオンライン情報はガセ
或は限定的だが、技術変化が疑いなく政治的組織化のペースを迅速
化した。

21.第二、三つの運動すべてが基礎的な個人の権利と説明出来る
政府とを要求している。自由な抗議、集会や言論の権利を尊重する
腐敗しない指導者を欲している。トルコの少数者権利からイランの
公平な選挙、ブラジルのより良い警察、保健とトランジットまで、
抗議者たちはガバナンス改善を欲している。

22.今後数週間、後退、行き過ぎや混乱があるだろう。併し、ト
ルコ、イラン及びブラジルで急成長する中産階級の行動主義は歓迎
されるべきだ。先進諸国の兄弟のように、彼らは政府の行き過ぎの
チェック係りだ−そしてもっと強い、もっと活力に満ちた社会を生
み出すのだ。(止め)
***
 随分と楽観的な展望/希望をもった小論を紹介したが、私は大衆
運動の底割れを疑い、情動性を危ぶんでいる。確かにデモは政治の
正式チャンネルに乗らない不満や要求を表明する民主的権利なのだ
が、それは議論の所在を明らかにし、議論を開始するためにある。
それを政治が吸い上げて議会(言論の府)で討議して妥当な解決策
を見出さねばならない。
 「人民の力」礼賛派は議論を何処でするのか、どうするのか、最
終的にどう処理するのかを展望しないケースが多い。確かに不公平
な選挙制度で自らの意志が反映されない場合があろう。だからと言
って、街頭で国政が左右されるのは問題なのだ。言論を通じた問題
処理こそ議会制民主主義の鉄則でなければならない。
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中国「影の銀行」の高利回り商品、残高130兆円に 
2013/6/30 0:30日経
 【上海=土居倫之】中国の銀行業監督管理委員会の尚福林主席は
29日、高利回りの資産運用商品である理財商品の2013年3月末の残
高が8兆2000億元(約130兆円)に達したと明らかにした。理財商品
を通じて企業や個人から集まった資金は主に地方政府の不動産・イ
ンフラ投資に流れており、個人や企業にリスクが広がっている。
 上海市で同日閉幕した金融フォーラムの講演で明らかにした。理
財商品の残高は中国の12年の名目国内総生産(GDP)の約16%、
人民元預金残高(67兆元)の約12%に相当する。
 理財商品は銀行の通常の預金・融資とは別ルートで資金を集める
中国の「シャドーバンキング(影の銀行)」の代表的な存在。信託
会社などが組成し、主に銀行を窓口に販売する。利回りは約3%の
1年物定期預金金利を上回る5〜10%。低金利に不満を持つ預金者
の需要を取り込み、数年前から急膨張してきた。集まった資金の運
用先は地方政府傘下の投資会社(融資平台)の貸出債権や債券、短
期金融市場など様々な種類がある。
 規制のはざまで拡大してきた金融商品で、当局の監視の目が行き
届いていない。デフォルト(債務不履行)時に投資家である個人や
企業、販売者である銀行、インフラ開発の実質的な主体である地方
政府など、誰が損失を負担するのかも曖昧なままだ。投資プロジェ
クトなどが行き詰まれば、幅広い関係者が損失リスクを負担しなけ
ればならない可能性がある。
 尚氏は講演で「正確な対応措置さえ取れば、リスクは十分管理可
能だ」とリスク管理の重要性を訴えたが、米著名投資家のジョージ
・ソロス氏は「米サブプライムローン問題に似ている」と警告して
いる。
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金価格、最大の下落率=長期上昇局面終わり?−4〜6月
 【ニューヨーク時事】金の先物価格が下げ止まらない。28日の
ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物相場は1オンス=
1223ドルで終了。この3カ月間の下落率は23%に達し、同取
引所で取引が始まった1974年12月以降、四半期ベースで最大
となった。米国の金融緩和に支えられた10年以上にわたる長期的
な上昇相場が終わったとの指摘が増えており、投資家が売りを急い
でいる。(2013/06/29-16:34)
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金市場の暴落が意味するもの
「本命」の米国に、再び恋愛意欲を高める投資家たち
小幡 績 :慶應義塾大学准教授 2013年06月29日
東洋経済
世界の株式市場は変調をきたしている。第一の表出が、米国で実体
経済にプラスの材料が現れると、株価が大きく下落することだ。つ
まり、実体経済の見通しと株価が逆方向に動くということである。

金融政策の動向だけで決まる株式市場
これは、本来であればおかしいが、バブルであれば普通であるし、
昨今ではバブルでなくとも、日常的にこれがみられるようになって
いる。だから、変調というのは、もう10年以上も続いている日常な
のであるが、ここに来て、それが激しくなった。それは、相場が大
きく動くことを示唆している可能性があるから、やはり注目する必
要があるだろう。
逆行する理由はただ一つで、米国FRBの金融政策の方向と実体経済の
方向とが逆であり、株式市場は金融政策の動向だけで決まっている
からである。
これはもはや誰でも知っていることで、FRBが量的緩和をやめ、そし
て金融引き締め、ゼロ金利から脱却し、金利を上げていくプロセス
に入ること、いわゆる「出口戦略」の動向の見通しに、投資家は一
喜一憂しているということだ。
金融緩和が終わるのであれば、カネがあふれることによって支えら
れていた株式(と投資家みんなが信じているから、実際にも金融緩
和で株が上がる)は、暴落すると思ってみんなが売るから、やはり
暴落する。バーナンキの発言は、単なる合図のようなもので、量的
緩和の実際の効果は関係ない。バブルからどのタイミングで逃げる
か、と誰もが間合いを計っているときに鳴らされた号砲のようなも
のだからだ。
しかし、問題は、今後だ。
バブルがいったん崩壊するのはわかった。投資家がいったん利食い
、売り浴びせるのはわかった。しかし、いったん下がった後、彼ら
はどちらに動くのか。

気になる、金投資意欲の喪失理由
バブルが崩れたら、一気に奈落の底まで暴落するかと言うと、そう
でもない。直近までバブルであったということは、投資家の投資意
欲は強いということだからだ。その相場が一山終わった後、もう一
山目指すかどうか。それは、いったん崩れた後の投資家の意欲、そ
れをサポートする環境にかかっている。今回はどうか。
量的緩和の出口ということで、今後も、米国株式は乱高下していく
だろう。しかし、景気が良くなっていることもあり、また今回のバ
ブル崩壊からうまく抜け出す機会は十分にあったので、投資家は意
欲も財力も残っているだろう。いや、むしろ増加している。だから
、次の山もあるはずである。
このとき、注目すべきは「金」の市場だ。株価とは比べ物にならな
いくらい、暴落している。2011年8月の1オンス1900ドル台から、つ
いに一時1200ドルを割り込むほどの勢いで下がっている。中国の景
気減速、金融の混乱が大きな理由だが、資源国、ブラジルなど新興
国が全体として弱くなっていることも影響している。
しかし、ここで重要なのは、金暴落を説明するストーリーでなく、
金暴落をもたらしている投資家の、金への意欲の変化だ。投資意欲
があるときは、どんな理由をつけてでも資産価格は上昇する。暴落
していることは、意欲の喪失を表している。問題は、意欲の喪失の
理由だ。
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市場乱高下、デフレ脱却策への脅威にならず=浜田内閣官房参与
2013年 06月 29日 03:09 JST
[ニューヨーク 28日 ロイター] - 安倍晋三首相のブレーンで
ある米エール大名誉教授の浜田宏一内閣官房参与は28日、市場が
このところ大きく動いていることは懸念材料にはならず、日本のデ
フレ脱却策に対する脅威とならないとの見方を示した。
浜田参与はニューヨークのジャパン・ソサエティー(日本協会)で
講演し、株式市場はその性質からして値動きが大きく、外為相場は
しばしば大きく上昇すると述べた。
日銀はデフレ脱却に向け4月に大規模な金融緩和を実施。これを受
け、5月に円がドルに対し4年半ぶり安値に下落するなど、金融市
場は大きく動いた。28日の取引ではドル/円は99円近辺で推移
している。
東京株式市場では日経平均株価が5年半ぶりの高値を付けた後はこ
こ数週間下落傾向にあり、安倍政権が押し進める積極的な金融・財
政政策が長期的に成長を支援できるのか疑問も出始めている。
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コラム:米国が直面する「賃金危機」
2013年 06月 28日 15:38 JST
By Richard L. Trumka and Christine L. Owens
米国の勤労世帯は現在、「賃金危機」にある。仕事の質は低下し、
低賃金労働者層は増加、そして米国の賃金格差は紛れもなく恥ずべ
きレベルにある。
皮肉にも、公正労働基準法(FLSA)が制定されてから6月25
日で75周年を迎えた。現在では米国での大半の職種や労働者に適
用されるこの法律が、制定当初の1938年に定めた最低賃金は時
給25セント。2009年以降は時給7.25ドルにまで上昇した。
しかし、最低賃金の価値はかつてとは異なる。1960年代後半の
最低賃金は平均賃金の約半分であり、最低賃金でも正規雇用者1人
の年間所得で、3人世帯を養うことができた。だが、今は違う。最
低賃金は平均賃金のわずか37%で、それだけでは貧困線を下回る
生活を余儀なくされる。
もし最低賃金が1969年以降の物価上昇を反映していれば、現在
約10.70ドルに、生産性上昇を加味していれば約18.72ド
ルに、最富裕層1%の賃金上昇に一致させるなら28.34ドルに
なる。
このように最低賃金の価値が下がる一方で、最富裕層の実質賃金は
過去30年で275%増と天井知らずだ。
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中国金融機関の12年の不正融資額は284億元=新華社
2013年 6月 28日 17:22 JST  WSJ
 中国の国有銀行と民間金融機関は2012年に284億元(約4544億円)
もの不正融資を実施していたことが明らかになった。国営の新華社
通信が27日、国家審計署(会計監査院に相当)の年次報告を引用し
て伝えた。
 国有銀行と民間金融機関に関する同報告書は、これらの27支店が
十分な保証を持たない、あるいは適切な文書が不足したプロジェク
トに融資を実行していたと指摘した。
 国内金融セクターに関する年次報告書はまた …
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コモディティー・スーパーサイクルの死商品相場や鉱業株の急落は
ほんの手始め?
2013.06.28(金) Financial Times  JBPRESS
2013年6月27日付 英フィナンシャル・タイムズ紙
コモディティー(商品)の「スーパーサイクル」は死んだ。中国の
急成長を原動力に価格が果てしなく上昇する時代が終わったかどう
か、まだ疑問に思っている人がいたとしたら、この1週間の出来事が
間違いなく疑いを払拭したはずだ。
 米連邦準備理事会(FRB)が「量的緩和」プログラムの縮小をほの
めかした後の米ドル高騰と、中国での流動性逼迫への懸念が相まっ
て、コモディティー業界に不安の波紋が広がった。
 では、投資家はどうすべきなのか? その答えは、見た目ほど明
白ではないかもしれない。大半のコモディティーの価格は既に劇的
に下げている。2011年に高値をつけてから、銅価格は35%下げ、鉄
鉱石の価格は40%、金の価格は36%下落した。
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中国の資金不足、実体経済への広がりも
2013年 6月 27日 15:08 JST  WSJ
 【北京】中国当局高官らが資金をめぐって手綱を緩めることを示
す中、流動性は一部で一段と見いだしにくくなり、顧客は別の手段
に転じていると一部の企業は明らかにした。
 流動性問題が金融セクターからどの程度広がっているかは不明だ
が、同セクターは中国経済の膨張する信用をしぼませる狙いがある
と見られる資金不足に今月に入って見舞われている。銀行にとって
の借入金利が高止まりすれば、痛みは他の分野へと広がる可能性も
あ …
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資産バブルの懸念をあおる中国の「影の銀行」
By LINGLING WEI, BOB DAVIS
2013年 6月 26日 21:03 JST  WSJ
 【北京】北京の各国大使館が集中する地区の緑の多い通りを見下
ろす52階のオフィスで、中国中信集団公司(CITIC)の400人もの担
当者は、不動産開発業者や鉄鋼所のほか、資金に飢えているのに通
常の銀行から閉め出されてしまった企業などへの融資案件をまとめ
ている。
 中国の「影の銀行(シャドーバンク)」を構成する中信公司など
の融資業者はこの国で最もウォール街の文化に近いものを作り上げ
た。従来の銀行がとらないようなリスクをとり、最上級のお酒やマ
ホガニーの家具といった資産のための投資ファンドを作るまでにな
っている。こういった金融機関の幹部らは高級車に乗り、高級クラ
ブに出入りしている。
 今や中国の影の銀行――信託銀行や保険会社、リース会社、質屋
、監視の限られた非公式な融資業者の多様な集団――は中国の減速
する景気が債務危機を引き起こすかどうかをめぐって膨らみつつあ
る懸念の中心にある。
 中国政府は最近、規律を失った融資の取り締まりに乗り出してお
り、中国の株価は24日、1営業日の下落としてはこの4年近くで最悪
となる下げ幅を記録した。中国人民銀行(中央銀行)が信用拡大の
暴走を食い止める動きに出ていることを示す声明を発表したためだ。
株価は翌25日の朝もさらに下げた。
 中国人民銀行は今月、銀行間取引市場の流動性の引き締めを始め
た。この市場では銀行同士が融資し合うほか、影の融資業者の大手
数社への融資も行われており、通常は2〜3%の間でおさまっている
銀行間金利が24日に6.64%に下がるまで一時は25%の水準にまで跳
ね上がった。
 中国の新華社通信は23日、人民銀が暴走する影の融資活動を抑え
るため、流動性の引き締めを図ったと報じ、人民銀の金融政策が「
量」から「質」へ照準をシフトさせたことを示唆した。新華社は「
投機的な投資を待っている短期資金が多くあり、民間の融資は依然
として広く存在している」と伝えた。
 人民銀は24日、声明を発表し、流動性のひっ迫に関する沈黙を破
った。「すべての金融機関は・・・金融環境の安定性を促進させる
ため、流動性管理を強化し続けなければならない」。
 声明は人民銀の戦略や懸念をほとんど明確にせず、投資家をなだ
めることもなかった。中国株は5.3%下落した。下げをリードしたの
は銀行株だった。
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バーナンキFRB議長が送らなかったタカ派的なシグナル
By DAVID WESSEL
2013年 6月 26日 14:45 JST  WSJ
 マーケットはベン・バーナンキを読み違えた。
 米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長の1週間前の記者会
見は、FRBが金融緩和から撤退する準備をしつつあるとのシグナルと
して広く受け止められた。そして、それは恐らく予想よりも早い時
期になるだろう、と。
 これを受けて、世界の株式市場が急落した。債券市場では、10年
物米国債の利回りが2.6%近くまで押し上げられ、2011年8月以来の
高い水準に達した。HSHアソシエーツによると、期間30年の固定住宅
ローン金利は今週4.6%となり、前週の4.1%から上昇した。先物市
場は、FRBが早ければ2014年半ばにゼロ金利を解除するかもしれない
と予想している。
 しかし、それは議長が予想していたものでもなければ、意図した
ものでもない。議長は会見で「ここでは、政策変更は一切ない」と
述べた。
 議長は、もし経済がFRBの予想通り展開するならば(そして、彼は
「もし」を強調した)、米国債とモーゲージ担保証券(MBS)の買い
入れ規模(現在は月間850億ドル)を年内に縮小するだろうと述べた。
また、もし「今後のデータが(失業率が約7%に低下するとの)われ
われの現行予測にほぼ沿ってなお推移し続ければ」、量的緩和、つ
まり債券買い入れを2014年半ばに停止するシナリオがあると述べた。
 議長はさらに、少なくとも失業率が6.5%まで低下するまでは短期
金利をゼロ近辺にとどめるとの方針を繰り返した。それは恐らく15
年以前ではないだろうという。
 ディーラーとアナリストを対象にした連邦公開市場委員会(FOMC)
前の調査によれば、これはまさに彼らの予想していたことだった。
議長の発言を子細に読めば、FRBのこのスケジュールは経済がどの程
度好調に推移するかに左右されることが想起されている。
 議長は「そして、それは、市場にいくらか安心感を与えるはずだ。
なぜなら、もし経済がわれわれの予想する通りに好転しなければ、
われわれは追加的な支援を与えると彼ら(市場関係者)は理解する
だろうからだ」とも述べた。
 それでは何が市場を動かしたのか。



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