4718.アジアをめぐる米中対立の現状



アーロン・フィリードバーク・ブリンストン大学教授の講演会を昨
日は聞いた。2011年に「A contest for spremacy」で米中対立
を述べている。日米同盟の日米での合同研究会に出席のために来日
されていると紹介があった。
(講演会)
中国に対する問題を提起したい。中国はどう考えているのかという
3つのモデルを提案する。トウ小平は3つの軸で戦略を立てていた。
1つが、衝突を避けること、2つには経済能力を上げること、3つ
には、米国を弱めていくこと。と本で言った。

その根本は、中国共産党を維持することであった。しかし、最近の
中国の行動を見ると、これを再検討する必要がある。中国の戦略を
見ると、孫子の考え方で敵同盟国の離間策を使い、軍事能力を使わ
ずに、自分の思い通りにする行動をとる。

しかし、ここ2年を見ると、漸進主義を捨てて衝突も厭わない高圧
的な対応が目立っている。大国主義が出て、昔の領土を守ると言い
始めた。軍事主義が顕になっている。

これに対して、日米はどうのような対応策をあるのであろうか?
中国の行動を3つのモデルとして分類してみる。
1つが、米国の中国ウォッチャーが言うのですが、高圧的な行動は
一時的なものであると、偶発的な反応であると。2012年のトップ交
代で軍部を取り込みたいために強硬な行動をとった。軍部の少数の
強硬派が2010年までは発言していたが、この頃は高級将校が発
言しているが、一時的なことで、生産的ではないので、その内緩和
するだろうという。

このため、過剰反応を取ってはいけない。そのように行動すると現
実化してしまうと。

2つが、深い変化で、高圧的な態度に変わった。国民のナショナリ
ズムを刺激して、国内問題から海外に目を移そうとしている。この
ため、意思決定が高圧的になっている。国民から弱虫と見られたく
ないためである。中国の意思決定がオープン化して多くの参加者が
いる。この参加者はアグレッシブな政策を支持しやすい。

このように考えると、日米はバランシングの対応をして、最悪な状
態を想定して準備する必要がある。オーバーアクションはやめたほ
うが良いが、意思は示すべきである。

3つが、理性的な戦略から行動している。中国指導層の戦略家は米
国が衰退して、その代わりに中国が台頭してきていると見る。現状
で中国はハードな行動ができる。それの方が利益が大きいと見る。

この考え方から新しい大国関係を作ることを考える。G2との考え
方である。日本、ベトナム、フィリピンに楔を打ち込み、日米同盟
を破壊する方向で行動する。

このモデルでは、日米だけではなく、共同戦線を構築して中国に対
応することが必要である。

さあ、現在の中国は、どのモデルであろうか?第1のモデルではな
いことは、トップ交代後も高圧的な行動が変わらないので違うと見
る。

第2、3のモデルのどちらかであるが、分からない。これには対応
することが必要になる。共同戦線を作ることである。

中国には悪い要素が出ているということである。

(中西京大教授からの質問)
Q1.第1次大戦の時のドイツとイギリスと比較すると、ドイツはオー
ストリアに過大な約束とし、イギリスはベルギーに過小な約束しか
しなかった。これが原因で戦争になったと見るが、現状ではどうで
あろうか?
A1.尖閣に対して、日本に米国はコミットメントしないことはない。
米国は日本が過剰に行動すると思っていないので、コミットする。
言うだけではなく、行動が必要とカリフォルニアで上陸演習も行な
った。

Q2.米中首脳会談が行われたが、米国は強い態度を取り続けられるの
か?
A2.米国の一部でも米国の衰退論がある。予算上の問題で政治的な問
題で軍事費を減少させることになるが、GDPは上昇している。同盟国
と共同で対応することで対応できる。
逆に、中国は急速に経済は落ち込む可能性が高い。軍事費も減少さ
せることになる。
どちらにしても、日米の軍事行動の効率を上げることである。この
観点から集団的自衛権を確立して、日米共同艦隊を作ることである。
また、日本の防衛予算を増やすべきである。と思う。

ここから会場からの質問
Q3.世界は協調的な関係を築くことができるようになるのか?(大使)
A3.経済的な関係で戦争がなくなるという幻想がある。しかし、感情
があり、それだけでは戦争はなくならない。ナショナリズムの問題
である。

Q4.中国はミサイル、サイバー、宇宙などと最先端の分野を強化して
いるが、それに対してどう対応するのか?(私の質問)
A4.非対称戦を中国は目指している。これを米国は気づくのが遅れた。
しかし、気がついたので、それに対する対応を精力的に行なっている。
サイバー戦争は、起こった場合がどうなるか、まだ分からない。
しかし、これは先行したほうが有利である。

Q5.ロムニー政権になったら、対中政策は変化したのであろうか?
A5.わからない。共和党も民主党でも対中国政策は基本は同じである。
バランス+関与の方向である。しかし、共和党内でも、キシンジャ
ー、スコウクロフト氏などの親中派と自分達の反中派とは考え方が
大きく違うので、どちらが政権を担うかで、大きく違うことになる。

Q6.中米関係と日中関係では、日中関係は経済関係が少なくなってい
る。この影響はどう思うか?
A6.経済相互依存は重要であるが、中国も国内の需要が増えてきて、
外部依存が減ってきている。その代わりに資源や食糧の輸入が重要
になっている。この資源のために、高圧的な対応にもなり、この件
で平和的になるとは限らない。

Q7.中国の国際法無視に対しては、どう思いますか?
A7.国際法が自国に有利な場合は守るし、自国に不利になる時は守ら
ない。これはどこ国でも行うことである。明らかに国際法を犯して
も正当化することである。

Q8.日本もナショナリズムが出てきて、それはどう思うか?
A8.日本の変化は、外部環境の変化から来ている。日本が歴史問題を
正当化すると、孤立してしまい、中国に得なことになる。国際緊張
も引き起こしてしまう。非常に心配である。国益を広い意味で守る
ことが重要である。

2011年の「A contest for spremacy」は、日本語の翻訳本が6
月に販売開始したということです。日本名は「支配への競争」日本
評論社からである。3150円とのこと。

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