4714.現在は第2の大恐慌か?



ケインズ学派のアラン・ブラインダー・プリンストン大学教授が、
「The Financial Crisis, the Response, and the Work Ahead」と
いう本を出し、現在の経済状況を第2の大恐慌であると述べている。
日本も、経済が低調な状況から20年以上も抜け出すことができな
いでいる。

これは大恐慌と同程度の厳しい状況と認識しないといけないように
思っていたが、その私の問題意識と同じようなことを述べている。
現在の状況の確認とそこから脱出する方法を検討したい。
                     津田より

0.大恐慌の経緯と今
1929年にニューヨーク株式市場で大暴落が起きる。ルーズベル
ト大統領は、TVAの公共事業を行うが、景気は回復しなかった。この
恐慌から抜けることができたのは、12年後の第2次大戦による特
需であった。これはほとんの国が一緒であった。

この大恐慌にうまい対処をしたのが、ナチスドイツであり、アウト
バーンという高速道路を作り、同時並行で国民車としてのフォルク
スワーゲンで公共事業と民需が相乗効果を生み出してブーム化して
乗り切れた。国民が車という消費財を買うということで、景気が戻
ったのである。しかし、ブロック経済圏を持たないために、植民地
の再分配を要求して戦争に突入した。

当時は通貨が金と連動していたが、この連動を切り通貨切り下げ競
争が起きた。次にブロック経済圏を引き、貿易競争を有利にして経
済的な繁栄を取り戻そうとした。

日本も金本位制からの離脱が遅れて、景気は最悪になったが、世界
標準の金との連動を切って、円札を大量に発行して乗り切る。日本
もドイツと同じで国民に欲しいモノが有り景気が回復したが、ドイ
ツと同じく中国を自国経済圏とするべく行動したことで戦争になる。

現在の状況もこの大恐慌の経緯と同じような経緯をしている。現在
は、金利を0%にして量的緩和というお札を大量に供給している。
それと日本は金融緩和政策を途中で止めてしまい、元に戻るという
失敗もしている。

この大量なお札は、いろいろな所に投資されて、バブルを起こして
る。最初に1989年に日本の土地バブルが崩壊して、日本は金利
を0%にしたことで、米国投資家は日本の円を借りてITに投資した。

このため、ITバブルが起き、これが2000年に崩壊、このため、
当時のFRB議長のグリーンスパンは金利を0%にして、ドルを大量に
供給した。このドルを住宅に投資した。サブプライム問題の発生で
ある。このバブルが2008年に崩壊した。バーナンキも日本も本
格的に量的緩和を行い、それが新興国と南欧に投資されて、南欧と
新興国が発展した。需要も増えたが、無理な投資の上に成り立って
いた。

過去と違うのは、新興国の産業参加であり、そこに工場ができ、新
興国の国民の需要を増やしている。日本企業は中国に工場を作り、
次に東南アジアに作り、日本から雇用を移している。このため、国
内の雇用が増えない。これは米国も欧州も同じである。

2008年リーマン危機で中国は、国民に買いたい物が有り、この
危機を乗り越えた。ナチスドイツと同じような状況である。これに
比べて、日本や米国は惨めである。中国はナチスドイツのアウトバ
ーンと同じで高速道路を作り、自動車が売れることで景気を保持し
た。

アラン・ブラインダー教授も米国の2007年の労働可能な人の雇
用率は63%であったのが、現在59%まで落ちているという。失
業率が2008年の10%から現在8、7%にさまよっている。

このため、ナチスドイツや中国のような爆発的な需要を生み出し、
同時に雇用も増やすことがないので、経済状況は、弱いままになっ
ている。しかし、金融緩和政策などやセーフティネットなどの社会
的な仕組みが充実しているため、前回のような悲劇が起きていない
だけである。

しかし、全体的な状況は前回の大恐慌と同じである。その認識が薄
いために、日本は根本的な対策を取らないことになっている。そし
て、同じ失敗を今、米国はしようとしている。財政の均衡化をして
支出の削減をするという。

1.次のバブルを要求
ただ、前回の経験があるので、その状況を深刻化しないようにでき
るだけであり、需要と雇用は増えないので、景気が回復しない。だ
らだらと低成長が続くことになる。日本などはバブル崩壊後、20
年以上も低成長な状態が続いている。

しかし、中国やブラジル、トルコなども投資が徐々に土地などの資
産や低利益な産業に移り、バブルが起こっていた。このバブルが、
そろそろ崩壊しそうである。特に中国はサブプライムと同様な問題
が起きている。そして、既に南欧はバブルが崩壊して、しかしユー
ロ圏ということで復活の方法を無くしている。しかし、ドイツはそ
の深刻さを感じていない。ドイツは実力より低いレベルの通貨で貿
易競争力があり、それで深刻さがない。

また、日本は一度、公共事業の増額と金融緩和で少し景気が戻った
が、財政の正常化ということで2003年に消費税を上げて、また
低成長に戻した経験を持つ。

これと同じで、アラン・ブラインダー教授は、米国議会、政府とも
に現状の経済状況を深刻に考えていないと批判している。今回の安
倍首相の成長戦略も、経済を深刻な状況と見ていないために解決策
が今までの延長上にあるものしかない。これでは無理である。EUも
同じであり、復活できない。

そろそろ、全世界が解決策を無くして、本当に大恐慌状態になる可
能性がある。それを新しいバブルを起こして、救おうとしているが
、バブル崩壊の損失をカバーするためには、それ以上のバブルを起
こす必要がある。

今までに、日本の住宅バブル、米国のITバブル・住宅バブル、ユー
ロバブル、新興国バブルとバブルを作り崩壊させてきた。この次の
バブルは今以上に大きくないと損失をカバーできない。

ということで、シェールガス・バブルが起きている。米国はそのバ
ブルで正常化しようとしている。このバブルのおかげで、米国は政
府予算縮小をしても景気を活性化させているように見えている。

もう1つがアフリカへの投資を増やそうとしている。このアフリカ
を開発したのが中国の投資である。それによりインフラが整備され
た。その整備されたインフラ上に工場などを作り、安い製品を世界
に供給しようと、世界の企業が狙っている。

しかし、日本の低成長はそのままである。再活性化させることはで
きない。

2.日本の意識改革へ
このため、日本はどう生きるのかの選択が必要になっている。日本
の道は、過去の工場大国になることではなく、イノベーション大国
や文化大国としてしか生きることができないと見る。

日本国内の工場は、これ以上は増えない。日本企業でも海外に工場
を作り、そこで売るしかない。メンテ工場も海外になり、日本国内
での産業は、研究開発や農業・水産業などの1次産業とニッチ産業
しかなくなる。このため、見方を変えて日本の拡大戦略を作りしか
ない。

世界に日本人が出ていくしかない。このような意識の改革して成長
戦略を考えないと方向が間違えているように感じる。

日本人が豊かな生活を、世界のどこでもできる支援を国が行うこと
である。日本国籍の人が世界で危険な状態になったとき、助ける機
能など、国家の枠を越えた支援を考える時期に来たように感じてい
る。世界のどこでも、特に経済成長する地域に行って、そこでビジ
ネスするしかない。

このための教育を考えるべきである。英語力の増強がどうしても必
要である。

そして、規制緩和して、国内産業の活性化すると共に、世界から優
秀な研究者、芸術家や起業家を呼んで、このイノベーション大国、
文化大国を確固のものとするしかない。

アラン・ブラインダー教授も解決方法については行き詰まっている。
7つの方法を提案しているが、マーケットに情報を提供するとか、
研究投資に優遇するとかの政策を提言しているが、あまり有効とは
思えない。

米国は規制を強化する方向であり、覇権国家から地域国家にシフト
している。世界からの人材を追い出す方向で移民法を変化させる方
向であり、日本は世界の有能な人材を集めることができるようにな
る。

世界で勝負が必要な時代になっている。世界の情報を見ている必要
もある時代のようである。今回はアラン・ブラインダー教授の見解
から私が感じたことを述べたが、

参考資料:
The Second Great Depression
http://www.foreignaffairs.com/articles/139464/j-bradford-delong/the-second-great-depression



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