4704.国際言語学者会議



国際言語学者会議
From: KUMON KIMIAKI TOKUMARU
皆さま、

来月ジュネーブで、ソシュール没後100年記念の国際言語学者会議があり、そこ
に2本の論文を投稿したところ、2本とも採択されました。

参考までに梗概を示しますが、わけがわからないという点では、少しも進歩して
いない。よくもこれで受かったものだという印象を持ちます。
得丸

http://www.cil19.org/cc/en/abstract/contribution/552/

http://www.cil19.org/cc/en/abstract/contribution/396/

−1ー
論理的音節が生みだすデジタル言語 − ヒト言語の起源とメカニズムについての
諸仮説

ヒト言語は複雑系システムである。そのメカニズムと起源は、人類にとって最大の
謎でありつづけたが、それらを説明するたったひとつの仮説すら存在していな
い。我々は日々言語を使っているのに、そのメカニズムを我々は感じることがな
い。おそらく、言語は、さまざまな繊細な論理的信号伝達と翻訳システムによって
構成されており、そのひとつひとつが学際的研究の対象であるのだろう。言語
学、音響工学、通信理論、神経生理学、免疫学、論理学、考古学、解剖学など。
とくに免疫学と情報理論が決定的に重要であることについては、ニールス・イェル
ネ(1911-1994)とジョン・フォン・ノイマン(1903-1957)がそれぞれ簡単に検討をし
ており、講演記録として残されている。彼らの講演を何度も熟読し、必要な補完的
研究を行なうことによって、著者はヒト言語の論理的および生理的メカニズムにつ
いて、まがりなりにも概念化した。

1. 五官で感じることのできないメカニズムを認識するためには、クロード・シャノ
   ンの一般通信モデルや、コンピュータ・ネットワークのOSI参照モデルや、時実
   利彦の脳内意思決定ネットワークモデルなどの参照モデルを活用する必要があっ
   た。
2. 筆者は、チョムスキーの難題「成熟した話し手は、必要に応じて彼の言語で新し
   い文を生みだすことができ、他の話し手はその文を初めて耳にするにもかかわら
   ずそれを直ちに理解できる」を2つの別々の質問、通信回線と脳内情報処理回路
   の問題に分割する。
   i  )  なぜ話し手は言語メッセージをたった一回話すだけなのに、聞き手はその
   メッセージをひとつの音節の誤りもなく聞き取ることができるのか。
   ii)  なぜ話し手は、無意識のうちに、概念を文法によって結合して適切な文を
   紡ぐことができるのか。聞き手は、文法的な修飾を完全に理解して、そのメッ
   セージの複雑な意味を自動的に再構築することができるのか。
3.   これらの通信路と情報源の符号化メカニズムの解明は、いくつかの仮説を生ん
   だ。
   i)  論理的音節が、ヒトとヒト以外の音声コミュニケーションの唯一の違いであ
   る
   ii)  後期更新世(72-71kaのStill Bayと、65-60kaのホイソンズプールト)にお
   ける二段階のヒト言語獲得プロセスが、南アフリカのインド洋沿岸の洞窟でおき
   た。クリック子音の獲得による概念化と、7千年後の喉頭降下によって母音を獲
   得し、文法にもとづく修飾が可能になった。
4. 多次複雑概念の論理的フラクタルメカニズム

現生人類は、65kaに南アフリカの洞窟内で、論理的音節を獲得して、音声コミュニ
ケーションをデジタル化した、と結論できる。音節情報の長期記憶のための体外言
語符号である文字の発明は、言語情報を地理的・時間的に離れた人々に送る道具を
人類に与え、文明が生まれた。
21世紀に、我々はコンピュータ・ネットワークとともに生きており、電子的媒体に
よって情報を保存・送信することの恩恵をこうむっている。これは論理的音節や文
字セットと同じくらい深淵なことであり、人類をさらなる知的進化へといざなうで
あろう。

−2−
概念と文法は免疫グロブリン分子構造の可変部分と不変部分の両方を使っている
ヒト意識の脳室脳脊髄液内免疫ネットワーク仮説

今までほとんどの科学者はヒトの意識をニューロン、シナプス接続、大脳新皮
質、電気パルスによって説明しようと試みてきたが、説明できていない。イェルネ
(1974,    1984)の論文を繰り返し熟読することによって、筆者はヒトの意識と「概
念」と「文法」の分子構造についての新たな仮説を得た。
イェルネ(1974)によれば、「免疫システムは、神経システムに驚くほどよく似てい
る。これらの2つのシステムは、体内の他のすべての器官と比べて、驚くほど多様な
信号に十分に対応する能力をもつ点で傑出している。どちらのシステムも、二分法(
パターン認識)と二元論(信号経路)の論理を示す。どちらのシステムの細胞も、信号
を受信するとともに送信する。どちらのシステムにおいても信号は興奮性か抑制性
である。」この「免疫」という名前が、真実を偽っているのであり、過小評価を招
くのだ。それらの機能は、モバイルアドホックネットワーキングニューロンであ
る。
「この2つのシステムは、体内の他のほとんどの組織のなかに侵入するが、いわゆる
血液脳関門(BBB)によって隔離されているように見える。」今日、免疫細胞はBBBを
超えて脳脊髄液中に侵入し、活発に活動していることが確認されている。免疫細胞
のなかでも、「リンパ球は神経細胞よりも100倍数が多い。彼らはネットワークを形
成するのに繊維を必要としない。リンパ球は自由に動けるので、直接接触による
か、放出する抗体分子を通じて、相互作用を起こす。
この仮説は、言語を脊髄反射の発展したものとみなす。内容語、つまり「概
念」は、本能的記号や条件反射刺激とほぼ同じである。生物学的には、それらは脳
室内脳脊髄液中のBリンパ球や免疫グロブリンの「パラトープ」、あるいは抗原結合
領域(FAb)によって表現される。
会話は、高低や強弱というアクセントをもつ音節の連続である。これらのアクセン
トが、脳幹網様体にあるCSF接触ニューロンに十分なエネルギーを送るので、概念と
文法が自動的に処理されるのだ。
イェルネが示したように、Bリンパ球は、概念のために必要な生物メカニズムをもっ
ている。(1)  抗原と抗体抗原結合領域の数百万の選択的結合性、(2) 新しい刺激に
対応する柔軟性、(3)  抗体間の相互認識によるネットワーク、(4) 会話信号の振幅
包絡線のアナログな形状から、音節を表現するデジタルペプチド配列の変換。
一方、機能語と文法的修飾の生理メカニズムは、言語においてもっとも超自然的と
して隠されてきたところであり、ひとつの仮説も存在しない。筆者は、それぞれの
概念が、関係のある文法規則によって修飾されるということに気づいた。それは
「文法+概念」(図1)か「概念+文法」(図2)かのどちらかの複合体単位として会話の
中で表現される。そして、ヒト以外の動物にとっては行動の速度と方向を示す記号
のベクトル成分が、文法的修飾あるいは意味的ベクトルに転用されたと提案す
る。つまり成熟した人間は、文法的修飾のためにベクトル情報を犠牲にしたという
ことだ。これはもっともらしい。生物学的には、文法的修飾は免疫グロブリンのCH(
不変部重鎖)のイディオトープと膜Fc受容体の間の信号伝達である。
したがって、「文法+概念」、「概念+文法」表現は、ひとつの免疫グロブリンの可
変部・不変部の結合単位として処理されているとみられる。



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