4692.欧州不況の現状



昨日、ある人と話していたら、「欧州危機は通り過ぎたから問題が
なくなったのですよね。」と言われた。これは日本の新聞が欧州を
取り上げないために、日本国民に情報が届いていないからのようで
ある。

海外特に、欧米諸国のテレビ、新聞は欧州問題を大きく取り上げて
、今後のEUはどうなるのであろうかと大変である。その報道と日本
の報道に大きな落差があるからだ。ということで、欧州機構の現状
を今回は取り上げる。

EU全体が、今経済成長がない事態になっている。少し前まではドイ
ツ、フランス経済が成長して、南欧諸国が経済危機になっていた。
しかし、ドイツ経済は昨年第4・四半期は0.7%のマイナス成長
に沈み、ことし第1・四半期も0.1%の低成長にとどまった。と
いうように欧州全体に不景気が押し寄せているのである。

また、ユーロ圏のキプロス支援策の失敗による影響で、4月はユーロ
圏加盟国17カ国の多くで小規模な取り付け騒ぎが発生し、実体経済
への融資が縮小しているという。

この原因は、ドイツのジョブレ財務相が推し進める緊縮財政である
ことが分かっている。それではどうすればよいのかという議論にな
っている。

ジョブレ財務相は緊縮財政を良い調整の推進力だという。緊縮財政
のために輸入が減少し、経常収支は赤字から黒字に転じている。デ
フレが進めばその国の輸出競争力は高まるとの見方があり、それを
支持する人たちは、そこまで来れば経済成長率が少しずつ上向き始
めると期待する。これは、2000年代のドイツで起こったことでもあ
る。

しかし、2つの要因でそうならないと見る。第1の要因は、金利がゼ
ロ時、緊縮財政が経済成長に及ぼす悪影響である。第2の要因は、未
解決の銀行危機とそれに伴う信用収縮である。その上に、欧州中央
銀行(ECB)はインフレ率の上昇を容認しないし、ドイツはユーロ共
通債を容認しない。

その中で出てきたのが銀行同盟である。しかし、その資金の大半が
加盟各国から拠出されることになり、かつ債権の最終的な落としど
ころがない。もう1つは、自国銀行を守ることが優先になり、危機
が発生しても、銀行の規模を縮小しないで解決し、次の景気回復で
取り戻すという考え方になっている。

このため、何度もの危機で金融機関が規模をゆっくりと縮小させて
いく間、民間セクターも弱々しいままで、かつ公的セクターは、多
額の財政黒字を計上せよという条約の義務に縛られることになるの
で、日本を過去「失われた20年間」と同じ低成長時代に、欧州がな
ることが明白になってきた。

この状況を見て、英国はEUを離脱する動きを見せている。

フランスのオランド大統領も不快感があるが、ドイツのメルケル首
相との首脳会談で、年金システムと労働市場の改革に取り組む意欲
を示した。

欧州委員会は29日、EU加盟国の経済に監査する報告書を発表。
フランスに対しては、財政赤字削減目標の達成期限を2年延長する
一方、支出抑制や年金制度改革、労働コスト削減を促した。

というように、まだ欧州委員会でもドイツの影響が強く、緊縮財政
に誘導している。このため出口がなくなっている。ソロスも欧州の
現状は破滅的であると言っている。解決策を見出していないからで
ある。

さあ、どうなりますか?

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独仏首脳会談で仏大統領が改革実施を明言、欧州委の提言には不快感
2013年 05月 31日 08:30 JST
[パリ/ベルリン 30日 ロイター] - フランスのオランド大統
領は、ドイツのメルケル首相との首脳会談で、年金システムと労働
市場の改革に取り組む意欲を示した。ただ同時に、実施の方法は欧
州委員会ではなくフランス政府が決めることと主張した。
共同会見で、欧州連合(EU)幹部は加盟国の改革を「指図する」
ことはできないとの自身の発言を擁護した。
会談で両首脳は、ユーロ圏のフルタイムの大統領職の設置や、経済
政策を調整するために首脳会議の開催を増やすことなどで合意。若
者の失業対策のEU基金を早期に活用することでも一致した。
オランド大統領は、フランスは2017年までの財政均衡目標とユ
ーロ圏による新たな目標の実現を目指す方針を強調。その一方で、
欧州委員会による細かな提言に不快感をにじませた。
「具体的な内容や手順は政府と国家の責任だ。そうでなければ国家
主権が存在しなくなってしまう。欧州委員会は提言を行っても、加
盟国に代わってやるべきことを指示するものではない」と述べた。
メルケル首相はこれに直接コメントしなかったものの、フランスが
改革実施のため赤字削減目標達成に2年の猶予を与えられたことに
言及した。
その上で、これらは連動して行われるものとの見解を示し、スペイ
ン、イタリア、ギリシャ、ポルトガル、アイルランドではすでに大
胆な構造改革が実施されたと指摘した。
欧州委員会は29日、EU加盟国の経済に監査する報告書を発表。
フランスに対しては、財政赤字削減目標の達成期限を2年延長する
一方、支出抑制や年金制度改革、労働コスト削減を促した。
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複数のユーロ圏加盟国、キプロス危機で4月に預金流出
2013年 5月 30日 08:33 JST  WSJ
 ユーロ圏のキプロス支援策の失敗による影響で、4月はユーロ圏加
盟国17カ国の多くで小規模な取り付け騒ぎが発生し、実体経済への
融資が縮小している状況を一段と悪化させた。欧州中央銀行(ECB)
が29日に公表した統計で明らかになった。
 キプロス支援策は、システム上重要な国内銀行の資本を許容水準
まで引き上げるため、ユーロ圏で初めて預金者に負担を課したこと
で注目を集めた。
 欧州高官らはキプロス問題が同国だけの …
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欧州版「ニューディール」提案へ=独仏、共同で若者雇用対策
 【パリ時事】フランスとドイツは28日、パリで雇用関係の合同
閣僚会議を開き、欧州連合(EU)内で深刻化している若年層の雇
用回復に向けた計画を共同で策定することで合意した。若年労働者
の受け入れ先として期待されている中小企業の振興が柱で、6月下
旬のEU首脳会議に提示するという。
 独仏の計画は、1930年代の世界恐慌時に米政府が行った経済
政策名を引用し「ニューディール計画」と仏メディアで呼ばれてい
る。
 オランド仏大統領は会議冒頭、欧州で失業中の若者が公式統計で
600万人に上り、「(実際には)1400万人近くは仕事がなく
、教育や訓練も受けていない」と指摘。フォンデアライエン独労働
社会相は「中小企業向け融資の利子は極めて高く、悪循環に陥って
いる」と述べ、資金調達面での支援が有効だとの認識を示した。
(2013/05/29-08:39)
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欧州の将来はドイツ風ではなく日本風「失われた20年」の再現か
2013.05.28(火)
 Financial Times
(2013年5月27日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
ユーロ圏危機を解決するのは簡単だ――。筆者は先週、あるエコノ
ミストがあの複雑でややこしい話を典型的な「上がったものは必ず
下がる」式の議論で説明するのを聞き、改めてそう思った。
 ドイツは2000年代、賃金を抑制することでユーロ圏に対する相対
的な競争力を高めた。しかし今日、ドイツの賃金水準はスペインや
イタリアを若干上回るペースで上昇している。
 競争力を何で測るのかという好みと、どれぐらいの規模の調整が
必要なのかという見立ては人によって異なるが、それが決まれば、
競争力の逆転に何年かかるかを計算することは可能だ。
 緊縮財政はこの調整の推進力になっている。緊縮財政のために輸
入が減少し、経常収支は赤字から黒字に転じている。デフレが進め
ばその国の輸出競争力は高まるとの見方があり、それを支持する人
たちは、そこまで来れば経済成長率が少しずつ上向き始めると期待
している。2000年代のドイツで起こったことがそのまま再現される
というわけだ。

ドイツのような成長率の上昇が見込めない理由
 しかし、この後半の期待は誤りだ。2つの要因を過小評価している
からだ。
 第1の要因は、本稿でもたびたび論じてきた、金利がゼロに近い時
に緊縮財政が経済成長に及ぼす自滅的な影響である。第2の要因は、
未解決の銀行危機とそれに伴う信用収縮である。
 銀行危機と信用収縮は今後、名目の経済成長率をさらに押し下げ
ることになろう。名目成長率が低い環境では債務がインフレで目減
りせず高止まりする。欧州中央銀行(ECB)はインフレ率の上昇を容
認しないし、ドイツはユーロ共通債を容認しない。ドイツについて
は、今年9月の総選挙が終わった後も、容認に転じることはないだろう。
 政策立案者は、銀行同盟がすべてを解決してくれるという希望に
しがみついている。しかし、仮にそういう新しい体制が来年できた
として、果たしてそんな仕事を成し遂げることができるのだろうか? 
 銀行セクターの大規模なリストラを断行するとか、赤字の金融機
関を閉鎖するとか、合併を促すとか、一部国有化を強制するといっ
たことができるのだろうか? 当然ながら、できないだろう。

銀行同盟の限界
 第1に、作られて間もない段階の銀行同盟は、その資金の大半が加
盟各国から拠出されることになる。各国で整えられた破綻処理制度
とそれらを中央で監督する担当者で構成されるだろうが、破綻銀行
の債権者や預金者を救うユーロ圏のバックネットは組み込まれない。
 この銀行同盟自体は比較的ましなものになるだろうが、それは、
ここ数年行われている金融機関破綻処理政策の最大の特徴である再
国有化が行われないと仮定した場合の話だ。どういう意味かと言う
と、再国有化を伴う処理では、債務をある経済セクターから別の経
済セクターに移すだけに終わる、ということだ。
 例えばイタリアの銀行が破綻して、その債券を保有するイタリア
の年金基金に損失を一部負担させる(ベイルイン)場合でも、その
破綻銀行を国有化すれば、イタリア政府が結局はその年金基金の受
給者を支援することになるかもしれない。ユーロ圏全体には債務を
吸収する能力がいくらかあるものの、多額の債務を既に抱えるユー
ロ圏周縁国にはそんな余力はない。
 2番目の理由はもっと複雑だ。そもそも欧州には、抜本的な銀行破
綻処理の伝統がない。欧州の銀行監督者たちは国家という枠組みを
超越した審判ではなく、本質的には出身国の代表者である。
 彼らは自国の銀行業界と結託し、自国の銀行を外国との競争から
守ることが自分の仕事だと考えている。危機が発生しても、銀行の
規模を縮小してこれを解決するということはせず、次の景気回復に
この問題の処理を任せている。
 銀行同盟の創設は長期的には重要な改革になると筆者は考えてい
るが、新たにその任に就く銀行監督者たちが、自国の銀行を監督し
ていた時代にはまったく見せることのなかった決意をもって欧州全
体の銀行業界の問題解決に取り組むだろうという見立ては、かなり
甘いと言えよう。

信用収縮と債務デフレが景気回復を阻害
 従って我々の手に残る銀行の破綻処理戦略――もしそう呼びたい
のであればの話だが――は、怪しげなストレステストや資産査定の
結果に基づく銀行の不適切な資本増強で始まり、戦略の短所が露に
なるにつれて対策を小出しにしていくというものになる。その際に
は、規制当局が銀行に対し寛大な姿勢を示すことになろう。このパ
ターンは既にスペインで展開されている。
 次の景気回復に問題の処理を任せるやり方は、今回は通用しない
だろう。信用収縮と債務デフレが景気の回復を妨げるからだ。銀行
の破綻処理は、経済成長の前提条件の1つなのである。
 しかし、政策立案者たちは債務デフレの問題や緊縮財政による大
きな打撃は存在しないという立場を取っており、本当に抜本的な施
策が彼らから示されることはないと思われる。
 ソブリン債務の処理はどうなるのだろうか? こちらについては
、返済期限の延長と金利の引き下げによる、周縁国債務の隠れ共有
化という形で進められることになるだろう。返済期限延長と金利引
き下げを極限まで推し進めれば、表面利率ゼロ%の永久債という逆
説に行き着く。
 債権者は投じた資金をすべて失うが、公式的にはそうは認識され
ない。かくして欧州安定メカニズム(ESM)は、隠れユーロ共通債を
提供する機関となる。

「低成長とゾンビ銀行」の時代
 従って、我々が今日目にしているのは規制当局の寛大さ、小規模
な資本増強、およびデレバレッジング(負債圧縮)が並行的に進め
られているという状況であり、これが完了するには長い年月がかか
るだろう。
 金融機関が規模を縮小していくこの間は、民間セクターも弱々し
いままだろう。その一方で公的セクターは、多額の財政黒字を計上
せよという条約の義務に縛られることになる。
 ユーロ圏周縁国の輸出セクターは小幅な成長を遂げられると筆者
は見ているが、上記の2つの影響を打ち消すにはとても至らないだろ
う。我々は今、日本を過去20年間痛めつけてきたものによく似てい
る低成長とゾンビ銀行の時代を目の当たりにしているのだ。
By Wolfgang Munchau
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焦点:ドイツ経済、今後回復の見通しも足取りは弱そう
2013年 05月 27日 14:58 JST
[ベルリン 24日 ロイター] - 冬に低迷したドイツ経済は今後
回復に向かう見通しだが、過去数年間のような力強い成長は見込め
そうにない。ユーロ圏の景気後退(リセッション)や世界経済の減
速が輸出や投資を妨げるからだ。
国内でも、9月の総選挙結果次第で政権の色彩が変わりかねないと
いう不透明感に加え、メルケル首相の規制過剰とエネルギー政策に
対する懸念が指摘されている。
ドイツ経済はユーロ圏債務危機に持ちこたえてきたが、昨年第4・
四半期は0.7%のマイナス成長に沈み、ことし第1・四半期も
0.1%の低成長にとどまった。
ドイツ連銀は今週、第2・四半期の景気がしっかり回復するとの見
通しを示した。厳しい冬が終わり建設部門が回復する上、低失業率
、インフレ率を上回る賃金上昇、低金利などを背景に個人消費も伸
びそうだという。
しかし2013年の成長率は政府見通しでさえ0.5%どまり。し
かもエコノミストの見方では、ドイツ企業が短期的に積極的な設備
投資を始めるとは考えにくい。
ドイツ政府の経済諮問委員会(5賢人委員会)のクリストフ・シュ
ミット委員長は「ことし力強い成長を予想する者は皆無だ。第1・
四半期が非常に低調だったためなおさらだ」という。
シュミット氏は「輸出は成長に大きく寄与しない見通しで、足を引
っ張る可能性さえあるため、残るは内需だ。個人消費は比較的安定
しているが、設備投資は抑制されており、いつ、どの程度持ち直す
かが鍵を握る」と述べた。
レスラー副首相兼経済技術相はロイターに対し、「経済の前向きな
動きは続き」、設備投資は復活すると話す。


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