4691.チャイナ・リスクと企業の対策について



中国への進出をしている企業も、しようとしている企業も、中国進
出のリスク、利益を測りにかけて置くことが必要になっている。

10年前と比較して、中国の労働力コストにおける優位性は低下し、
一部製造業は東南アジアへとシフトしている。これに加えて、先進
国の「再工業化」が加速している。今後は価格よりそれ以外の価値
があるかどうかが、中国の製造業の価値を決める。

当面、中国の労働者やサプライチェーン面で優れており、多くの米
国企業は中国での運営と生産を継続するだろうと米国マーケティン
グ専門家はコメントしている。

高速道路や港湾設備などが、東南アジア諸国より現時点では優れて
いる。この設備の多くを日本のODAで作ったことを考えると、今後ODA
を東南アジア諸国にして、中国の設備以上の設備をすると、中国の
競争力はこの面ではなくなる。

労働力の良いが、しかし、育てると逃げていくことまで考えると、
東南アジアの家族的な雰囲気での経営の方が育てがいがある。

ということで、熊谷さんは、中国に対して日本は「バッシング」で
はなくて「パッシング」、すなわち「非難」するのではなく、もう
「通過」「素通り」してもいいのではないかという。

反日の中国ではなく、日本のすぐ近くには、タイ、インド、インド
ネシア、ミャンマー、ベトナムなどの国々を筆頭とする「南アジア
」という巨大な潜在市場がある。彼らは、戦後の焼け野原から不死
鳥のように立ち上がり、アジアから初めて先進国の仲間入りを果た
した日本人に対して、ある種の憧れを持っている。極めて「親日的
」な国が多いのだ。こちらの方が商売は数段、やりやすいし、労働
者の忠節心も高い。

日中関係の悪化がわが国の実体経済に及ぼす直接的な影響としては
、3つが考えられる。日本からの対中輸出の減少、中国にある現地
法人の売上高の落ち込み、そして日本を訪れる中国人観光客の減少
である。

だが、熊谷さんの試算では、日中関係の悪化は、最悪のケースでも
2013年度の日本の国内総生産(GDP)を0.2%押し下げる程度
の影響しかない。まさに、日本経済にとっては「蚊が刺した」程度
の影響だという。

しかも、国際通貨基金(IMF)と経済協力開発機構(OECD)
は29日にそれぞれ、中国の2013年の経済成長率の見通しについて、
8%を下回る水準に下方修正した。

これに対して、中国は都市化計画で、発展させる方向であったが、
地方政府はこの政策を利用して大々的な建設投資を進めようとする
動きを見せ、中国共産党中央党校の機関紙・学習時報も「中国都市
化発展のリスク」と題した記事を掲載。やみくもな都市化は都市と
農村という差別を都市内部の差別に転換するだけとした。このため
国家発展改革委員会が作成した都市化推進政策の草案を李克強首相
が否決したとの噂が出ている。

また、「中国の経済危機は2013年7月か8月に起きる」と予測
した国務院発展研究センターの内部報告が、専門家の間に静かに出
回っている。

その根拠となるのが巨額のデフォルト(債務不履行)懸念だ。貸借
対照表(バランスシート)に反映されない「シャドーバンキング(
影の銀行)」という銀行の資金運用。さらに地方政府の債務で、こ
の2つは密接に結びついている。

「中央と地方の債務を合わせると最大で名目GDP比90%に及ぶ
」と見る市場関係者もいる。国債など中央政府の公表ベースの債務
が7兆7600億元。さらに隠れ債務も含む地方政府分が20兆元
、これに高速鉄道網の建設ラッシュを続けた旧鉄道省の分や、年金
部分まで加えた債務を合わせると最高で50兆元前後になるという
のだ。
 こうした厳しい財政状況の習政権に突きつけられたのが格付け機
関大手フィッチ・レーティングスによる14年ぶりという「格下げ
」だ。これで米国のサブプライム崩壊と同じことが起こると言われ
ている。

なるべく、早く中国から脱出することが進出企業でも必要のようで
あると見える。

このように中国国内問題があり、かつそれが解決できないので、金
融政策を先行させ、魅力を出そうとしている。1つが投資の自由化
である。

もう1つ、中国人民銀行(中央銀行)の陳雨露・金融政策委員は、
人民元は米ドルに代わる国際通貨となりつつあり、2015─2020年に
は中国の資本勘定が完全に自由化されるとした。

さあ、どうなりますか?

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中国成長率、今年も8%割れ IMFなど見通し 
2013/5/30 0:19nikkei
 【北京=大越匡洋】国際通貨基金(IMF)と経済協力開発機構
(OECD)は29日にそれぞれ、中国の2013年の経済成長率の見通
しについて、8%を下回る水準に下方修正した。世界経済の回復の
遅れなどで国内外の需要が伸び悩み、12年(7.8%)と同水準になる
との予想だ。中国政府が目標とする7.5%は上回るが、景気は力強さ
を欠く。
 中国経済は今年1〜3月期の成長率が前年同期比7.7%と、4四半
期連続で8%を下回った。IMFは4月時点で8.0%としていた今年
の成長率見通しを7.75%に下方修正。OECDも7.8%との見通しを
示し、従来予想(8.5%)から大きく引き下げた。
 IMFは「中国経済は短期的には比較的楽観できる」としつつも
、投資に過度に依存する成長モデルを消費主導型に転換するなど経
済の効率化を進めるよう促した。
 同時に、財政の健全性にも懸念を示した。地方政府傘下の資金調
達会社「融資平台(プラットフォーム)」の負債を含めた広義の政
府債務は、国内総生産(GDP)の「50%近くに達する」と分析。
「中期的な財政の健全性、持続可能性を確保すべきだ」と指摘した。
 中国経済は不動産などへの投資が底堅い半面、企業の在庫増が深
刻化し、回復の足どりは重い。民間金融機関でも7%台後半の予想
が増えている。ただ雇用に大きな問題が生じていないため、中国政
府は無理に景気を刺激せず、規制緩和などの改革を優先する構えだ。
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中国の「世界の工場」としての地位は不動=先進国の再工業化にも
優位性は変わらず―中国メディア
Record China 5月28日(火)8時40分配信
2013年5月25日、ここ最近注目を集めている「米国に製造業が回帰し
、中国の製造業が競争力を失う」という見方に対し、ウォール街関
係者は浙江省杭州市で開催されたフォーラム『ウォール街伝奇』で
、中国の製造業の優位性は健在であり、「世界の工場」の地位は不
動であると述べた。
10年前と比較して、中国の労働力コストにおける優位性は低下し、
一部製造業は東南アジアへとシフトしている。これに加えて、先進
国の「再工業化」が加速すれば、中国の製造業の優位性はどうなる
のだろうか。
世界有数のマーケティング企業であるアプコの中国エリアチーフを
務める季瑞達(ジー・ルイダー)氏は、中国にいる米国企業の3〜4
%が米国に戻っているが、中国は労働者やサプライチェーンの面で
優れており、多くの米国企業は中国での運営と生産を継続するだろ
うとコメントしている。
製造業の優位性は健在であるものの、中国製品が直面している課題
は以前より大きくなっている。あるコンサルティング会社の調査に
よると、米国の消費者のうち、3分の1が中国製品をあまり信用して
いないという。
マッキンゼーで17年以上勤務した経歴をもつマイク・シャーマン氏
は、「中国ブランドのプロモーション不足が理由、鍵となるのはや
はり品質だ」と述べた。(翻訳・編集/岡本悠馬)
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<中国気になる話>李克強首相の目玉政策「都市化」に逆風、党校
機関紙が反対記事を掲載
Record China 5月28日(火)10時32分配信
2013年5月26日、ニュースサイト「KINBRICKS NOW」は、「李克強(
リー・カーチアン)首相が発展改革委員会の都市化草案を否決した
」との海外メディアのスクープが話題になっていると報じた。
ロイターは23日、「中国都市化計画に遅延の可能性、地方政府の債
務拡大懸念が浮上=関係筋」との記事を配信。中国国家発展改革委
員会が作成した都市化推進政策の草案を李克強首相が否決したと報
じた。
李首相の目玉政策である都市化には、今後10年間で40兆元(約640兆
円)という膨大な資金が投じられると伝えられている。地方政府は
この政策を利用して大々的な建設投資を進めようとする動きを見せ
ており、李首相ら中央政府の懸念を招いたという。
一方、中国国家発展改革委員会の関係者らは草案はなお作成中の段
階であり、否決との報道は事実ではないと否定している。
都市化は都市と農村の二重戸籍の解消、都市で暮らす“出稼ぎ農民
”の権利保障、内需拡大とサービス業中心の産業転換などを目的と
したもので、中国にとっては長年の宿題でもある。しかし社会の根
幹部分にメスを入れる大改革であること、多額の資金を必要とする
ため乱開発につながりかねないとの懸念も少なくない。
中国共産党中央党校の機関紙・学習時報は20日、「中国都市化発展
のリスク」と題した記事を掲載。やみくもな都市化は都市と農村と
いう差別を都市内部の差別に転換するだけ、これまでの都市化は耕
地面積の減少は招いたが農民人口の減少にはつながっていないと指
摘し、「もっとゆっくりした都市化を」と呼びかけた。李首相の目
玉政策である都市化を、中央党校の機関紙が批判するという異例の
展開となっている。
上述のスクープにしても、李首相が否決したかどうかはともかくと
して、都市化の具体案をめぐり水面下で激しい駆け引きが行われて
いることは間違いないだろう。(筆者:高口康太)
■中国在住経験を持つ翻訳者・高口康太氏は、ニュースサイト
「KINBRICKS NOW」を運営。ネットの流行から社会事情、事件、スポ
ーツ、芸能など中国関連のトピックを幅広く紹介している。
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人民元、40年までにドルに代わる国際通貨に=人民銀金融政策委員
2013年 05月 27日 11:36 JST
[上海 27日 ロイター] - 27日付の中国証券報によると、中
国人民銀行(中央銀行)の陳雨露・金融政策委員は、人民元は米ド
ルに代わる国際通貨となりつつあり、2015─2020年には中
国の資本勘定が完全に自由化されるとの見方を示した。
同紙によると、陳委員は最近の論文で、中国は2040年までの30
年で人民元の国際化実現に向けた3段階の戦略を採用すべき、と主
張。最初の10年で近隣諸国における人民元の存在感を高め、次の
10年でアジアにおける元の使用を拡大、最後の10年で元の完全
な交換性と国際化を達成するとの見通しを示した。
陳委員はまた、中国の資本勘定の自由化は避けられず、長期的には
この自由化が金融の安定を助けるとも論文で指摘した。
中国の当局者は人民元の自由化実現の期限などは明らかにしていな
いが、中国人民銀行は2015年までに人民元を「基本的に交換可
能」にするとしている。
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コラム:「パッシング・チャイナ」という選択=熊谷亮丸氏
2013年 04月 30日 18:16 JST ロイター
熊谷亮丸 大和総研 チーフエコノミスト(2013年4月30日)

かねてより筆者は、中国に対して日本は「バッシング」ではなくて「パッシング」、すな
わち「非難」するのではなく、もう「通過」「素通り」してもいいのではないかという主
張をしている。

日本のすぐ近くには、タイ、インド、インドネシア、ミャンマー、ベトナムなどの国々を
筆頭とする「南アジア」という巨大な潜在市場がある。彼らは、戦後の焼け野原から不死
鳥のように立ち上がり、アジアから初めて先進国の仲間入りを果たした日本人に対して、
ある種の憧れを持っている。極めて「親日的」な国が多いのだ。

今後、日本企業にとっては、中国に固執せず「チャイナ・プラス・ワン」、つまりは中国
以外にもうひとつ海外拠点を作ることこそが喫緊の課題になるだろう。

もちろん、筆者の見解に対して、「中国経済を通過あるいは素通りして、日本経済は本当
に大丈夫なのか」と疑問を呈する向きもあるだろう。事実、日中関係の悪化がわが国の実
体経済に及ぼす直接的な影響としては、3つのルートが考えられる。日本からの対中輸出
の減少、中国にある現地法人の売上高の落ち込み、そして日本を訪れる中国人観光客の減
少である。

だが、筆者の試算では、日中関係の悪化は、最悪のケースでも2013年度の日本の国内
総生産(GDP)を0.2%押し下げる程度の影響しかない。まさに、日本経済にとって
は「蚊が刺した」程度の影響なのだ。

他方で、金融・為替市場を通じた悪影響には一定の警戒が必要だ。後述するように、中国
にはリスク要因が山積している。中国における「バブル崩壊」は、世界的な信用不安を引
き起こし、消去法的な円高圧力を再燃させることが懸念される。こうしたリスクを勘案す
ると、今後、日本企業は従来にも増して戦略的な取り組みを強化する必要がある。

<2015年中国バブル崩壊説「5つの根拠」> 
中国経済の「バブル」は15年前後から、いつ崩壊してもおかしくない。その根拠として
以下の5つの要素が考えられる。

第一に、1979年から採用された「一人っ子政策」による少子高齢化の進展が懸念され
る。少子高齢化の進展は、税収の低迷などを通じて、財政赤字拡大を招きかねない深刻な
問題である。

第二に、中国の「政治リスク」も深刻だ。中国では政治指導者が交代する5年毎に混乱が
起きる傾向があり、将来的には中国共産党による事実上の一党独裁制が崩れる懸念が強ま
るだろう。

第三に、「不動産バブル」の崩壊も心配である。中国の経済成長モデルは、不動産価格の
上昇による「錬金術」を中核に据えている。驚くべきことに、地方政府の収入の6割程度
が、不動産関連収入に依存している。

第四に、中国では設備の過剰感が強まっている。GDPに占める設備投資の割合は個人消
費を上回っており、個人消費がGDPに占める割合は米国で7割超、日本でも6割程度だ
が、中国では35%に過ぎない。

特にここ数年、資本や設備の過剰が積み上がり、経済の効率が非常に悪くなっている。
12年点で経済成長率が11―12%に達するという前提の下で設備投資の意思決定が行
われているのだ。実際の経済成長率の実力は7−8%程度なので、日本のバブルのピーク
時に匹敵するか凌駕するほどの設備の過剰感がある。この先、3―5年のスパンでみると
、15年以降に設備バブルが崩壊する可能性が高まるだろう。

第五の問題点は、賃金インフレの進行である。中国にとってインフレは「天敵」だ。イン
フレが進行すると、低所得階層の不満が爆発し、政治的・社会的混乱を伴いながら、経済
が「ハードランディング」に至るケースが多いからである。

<「チャイナ・プラス・ワン」の推進がカギ>
日本企業は「技術で勝って、商売で負ける」と言われる。マーケティング力が弱いという
のが日本企業の致命的な欠陥である。野球のピッチャーに例えれば「技術力」の高さは速
い球を投げる能力だ。日本企業は時速150キロ台の剛速球を投げる能力を持っている。
しかし、韓国企業という、球速は時速130―140キロ台だが、絶妙のコントロール(
「マーケティング力」)を有するピッチャーに苦戦しているのだ。

今後の日本企業の戦略としては、剛速球に一層の磨きをかける(最先端の「技術力」を磨
く)ことと、コントロールを良くする(「マーケティング力」を高める)ことの双方に、
バランス良く取り組む必要があるだろう。同時に、日本企業は中国への依存度を下げてい
くべきである。

我々は、「パッシング・チャイナ」という新たな選択を迫られている。日本企業は、中国
における「バブル崩壊」のリスクを認識した上で、「チャイナ・プラス・ワン」を積極的
に推進すべきなのだ。

*	熊谷亮丸氏は、大和総研経済調査部チーフエコノミスト。日本興業銀行(現みず
ほFG)、興銀証券(現みずほ証券)、メリルリンチ日本証券を経て、2007年に大和
総研入社。2002年―2011年、財務省「関税・外国為替等審議会」専門委員。東京
大学法学部卒業、東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了。近著に「パッシング・
チャイナ 日本と南アジアが直接つながる時代」(講談社)。
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中国「7月バブル崩壊説」 深まる債務の「闇」上海支局長・河崎真澄
2013.5.26 08:16sankei[中国]
 「中国の経済危機は2013年7月か8月に起きる」と予測した国務院発展研究センタ
ーの内部報告が、専門家の間に静かに出回っている。
 同センターの李佐軍研究員が湖南省の母校、華中科技大学で2年前に内部向けに行った
報告で、胡錦濤政権時代の経済政策のツケが今年3月の習近平政権発足後、数カ月で噴出
し、民間企業や銀行、地方政府が相次ぎ経営破綻に追い込まれる、と見通した。
 その根拠となるのが巨額のデフォルト(債務不履行)懸念だ。李氏の報告では直接触れ
ていないが、貸借対照表(バランスシート)に反映されない「シャドーバンキング(影の
銀行)」という銀行の資金運用。さらに李氏が指摘する地方政府の債務で、この2つは密
接に結びついている。
 08年9月のリーマン・ショックを受け、中国の胡政権は同年11月に4兆元(現在の
レートで約66兆円)の緊急経済対策を打ち出して、世界最速で金融危機から脱出した。
 だがその過程で、銀行や地方政府が不健全な資金流通を肥大させる副作用が生じ、胡政
権は顕在化を強権で抑えてきたフシがある。一方、習政権は「負の資産」を引きずり続け
ることができず、3、4カ月内にデフォルトなど処理を進めるというのが李氏の見解。市
場関係者の間でささやかれている中国「7月バブル崩壊説」の根拠といえる。
 中国社会科学院が4月25日にまとめた報告では、銀行による簿外の資金運用規模は明
らかになっているだけで、12年に14兆5710億元に達している。同年の名目の国内
総生産(GDP)に対して約29%の規模だ。2年間で約2・6倍に膨れあがっている。
 このうち約半数は、銀行が年利10%など高利回りをうたって個人投資家らに販売して
いる「理財産品」と呼ばれる金融商品が占める。だが、この金融商品は裏付けとなる資産
が不透明で、地方政府による地上げなどグレー資金に回されている可能性が高い。
 銀行は簿外で「資金池(プール)」という信託会社などを経由し、中央政府の中国銀行
業監督管理委員会などの規制や監査をすり抜ける手口を編み出した。ただ、昨年暮れには
中堅の華夏銀行が理財産品の期日に元利金を支払えなくなり、個人投資家が上海で座り込
む騒ぎを起こした。
 高利回りが保証可能な資金運用先は乏しく、地方政府などの融資先がデフォルトを起こ
せば、連鎖反応が広がって金融システムリスクを引き起こすことも十分ありえる。
 さらに、4兆元の緊急経済対策などで、財政支出を求められた地方政府が資金調達機関
の「地方融資平台(プラットホーム)」を通じて集めた債務残高が、同委員会の調べで12
年末に9兆3千億元に達したことが分かった。理財産品などの資金が流れ込んだ可能性が
高いが、債務残高のうち37・5%にあたる約3兆4900億元は16年までに返済期限
を迎える。しかし、返済へ財政的余力のある地方政府がどこまであるか疑問だ。
 加えて、「中央と地方の債務を合わせると最大で名目GDP比90%に及ぶ」と見る市
場関係者もいる。国債など中央政府の公表ベースの債務が7兆7600億元。さらに隠れ
債務も含む地方政府分が20兆元、これに高速鉄道網の建設ラッシュを続けた旧鉄道省の
分や、年金部分まで加えた債務を合わせると最高で50兆元前後になるというのだ。
 こうした厳しい財政状況の習政権に突きつけられたのが格付け機関大手フィッチ・レー
ティングスによる14年ぶりという「格下げ」だった。
 フィッチは4月9日、人民元建て長期国債格付けを「AAマイナス」(最上位から4番
目)から1段階下げ、「Aプラス」として市場に衝撃が走った。ムーディーズ・インベス
ターズ・サービズは4月16日の段階で、国債の格付けを「Aa3」(最上位から4番目
)に据え置いたが、「ポジティブ」から「安定的」へと見通しを引き下げている。
 他方で、「7月バブル崩壊説」に異を唱える専門家も少なくない。最大手の中国工商銀
行など国有商業銀行は06年以来の上場で経営体力を備えており、「不良債権を独自に償
却する余力が十分ある」というのだ。理財産品でも投資家に金利だけ支払えば不良債権化
せず「自転車操業を続けることも可能」だからだ。
 まして3月末段階で過去最高の約3兆4400億ドル(約350兆円)もの外貨準備高
を誇る中国は、「地方政府がデフォルトに陥っても、共産党政権の鶴の一声で債務処理が
できる強み」がある。李氏のいう「経済危機」がどの段階で臨界点を迎えるか。まだ見え
ぬ「闇」の中にある。




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