4687.アベノミクスの評価は?



安倍首相は、日本復活のために金融緩和政策、財政出動政策、そし
て異次元の成長戦略を行うとしたが、前の2つはすでに行なって、
効果を出している。しかし、継続的な効果の持続には成長戦略の善
し悪しが大きくモノを言う。その成長戦略が徐々に見えてきたので
、アベノミックスの評価を検討しよう。  津田より

0.経緯
民主党・自民党の歴代政権で成長戦略が出されている。特に2006年
以降、年中行事のように作られては大部分が忘れられている。その
大きな理由が規制緩和なしの各省庁からの政策をポッチキスで止め
た政策の羅列であり、真剣度がないことが明らかであった。歴代の
成長戦略でも、子供園などでの待機児童緩和や再生エネルギーの開
発などがあったが、安倍首相が異次元というからには、このような
成長戦略ではないということのようであると見た。

そして、各政権でも規制緩和を言っていたが、既得権益者が痛みを
伴うため反対した規制緩和は全然出来なかった。この規制が岩盤規
制として残っている。それが日本の活性化を著しく阻害している。
この岩盤規制をどこまで崩せるかが成長戦略のカギであると見てい
た。

その岩盤規制は、農業の企業制限、混合治療禁止、認可保育園の基
準、薬品のネット販売規制、雇用の柔軟性などである。この規制で
新規参入や自由な企業活動が阻まれて、世界的な競争環境の中で日
本企業は適合できていなかった。

異次元の成長戦略と言うからには、この規制の緩和があると思って
いた。世界の投資家もそれがあるなら、黒田日銀総裁の金融緩和で
、日本を買えると見たはずである。

その上に、小泉元政権で規制緩和を歴代政権、以後政権より実行し
た時の大臣であった竹中さんが産業競争力会議のメンバーにいるの
で本当に規制緩和ができると期待した。「過去7年で7回の成長戦
略が作られたにもかかわらず十分な経済成長が実現しなかった」と


黒田日銀総裁の金融緩和策は、心理的な効果で企業の衰退を止める
円安であり、円安にシフトさせることで改革実行の時間稼ぎができ
、その心理的な効果時間には限度があることも明確である。

金融緩和で心理的な要因で高級品が買われているが、一般消費は増
えていないし、価格の下落は続いている。貿易収支も一層の赤字に
なり、日本からの輸出増は石油・LNG輸入の金額増加より低い。

経済効果は、円安で割安感が出ている不動産を海外富裕層が買って
いることと、日本への旅行がしやすくなって海外からの旅行客が増
えていることぐらいである。企業が日本への投資を増やした感じは
ない。というように心理的効果での東証の株価指数は大きく値上が
りしたが、実体経済はあまり違わない。

そしてとうとう、5月23日・24日の両日、日経平均は大きく乱
高下したことで、その効果の限界を表した。東証の買いに回ってい
るのは、海外投資家であり、日本が本格的な改革を行うという期待
値から買っているのであり、その神通力は本当の改革的な政策が出
ないと長続きはしない。

成長戦略が1弾、2弾と出てきたが、期待値が高いので、期待値よ
り大きく見劣りする内容であると言わざるを得ない。

海外の投資家の動向が気になる事態になっている。

1.成長戦略で必要なこと
日本経済の成長に必要なことは、企業活動の活性化と新しい分野で
企業ができることである。2つの面で見る必要がある。

今回の成長戦略で、効果がある成長戦略に絞られているのであろう
かという疑問である。各省庁が優先したい多くの政策を並べても、
予算に限度があり、費用対効果の大きな政策に絞るべきである。
成長戦略の看板を錦の御旗にして関連事業の予算を増加させようと
各省庁が狙っている。
今回、多くの政策から効果の大きな政策を選択したのであろうか?

次に、通信分野の自由化でわかるように、規制緩和で大きな市場が
できるものであるが、既得権益がある企業が規制を撤去させない圧
力を掛けて、薬品のネット販売のように一番効果ある分野ですら、
規制緩和を行うことができない。TV電話での対話が必要などという
規制緩和をした格好にするだけである。規制緩和で新市場を生み出
しているのか?

また、企業活性化に必要なのは、企業活動を制約する「六重苦」を
軽減することである。「六重苦」とは円高、法人税率の高さ、自由
貿易協定の対応の遅れ、労働規制、環境規制、電力不足である。

アベノミクスは6つのうち、円高と自由貿易協定には対応している
ことがすでにわかっている。

成長戦略で話題になっているものを列挙すると、
A.電力不足は、原子力規制委員会が安全と認めた原発は「再稼働を
進める」を明記の方向と、東電の国有化で自由化阻止圧力が減り、
電力自由化も進める方向のようである。しかし、日本国内でできる
再生可能エネルギーの推進がない。今後も海外産のエネルギーに依
存することになる。

B.国や地方がインフラや建物の所有権を持ったまま、運営権を企業
に売ったりする仕組みなどを新たに導入する検討はされている。
既得権益が国有企業であるために、規制緩和されそうである。

C.労働規制は、雇用の柔軟性も不十分であるし、環境規制でもまだ
まだである。コーポレート・ガバナンス(企業統治)を実現する重
要な手段といわれる「独立取締役の選任義務」も外された。国際基
準の基準を制定できなかった。

D.都市の特区構想も検討されていたが、まだ正式に公表されてない
。とくに地下鉄の24時間化は猪瀬知事も消極的であり、なくなっ
たようである。世界、アジアの都市との競争に負けることになる可
能性も高い。竹中さんも積極的に推進していたが、難しいようであ
る。

E.「法人税の引き下げ」も財務省の反対にあって却下。「企業によ
る農地取得の自由化」や「農業生産法人への出資規制緩和」も、農
業は一般の産業とは違うなどの理由で、農業協同組合や農水省の強
い反対にあった。そして、民間企業の参加なしに、農産物・食品の
輸出額を2012年の4500億円から20年に1兆円に倍増することも掲げ
た。企業的な経営ができない農家だけでは、この目標は無理である。

F.医療分野でいえば、保険診療と保険外診療を併用する「混合診療
」の解禁が日本医師会などの反対によって見送られた。代わりに先
端医療研究に関する戦略や予算配分の決定権限を持つ「日本版NI
H」の創設を表明した。

G.待機児童解消に向け平成25、26年度に20万人分の保育の受
け皿を確保し、「29年度までに待機児童ゼロを目指す」と明言し
たが、保育園の認可基準は変えなかった。

H.国立大学のグローバル化、イノベーション人材育成の促進のため
の「大学改革」を進める。小学4年から英語教育の必修化になる方
向である。日本企業の国際化のためには必要である。

I.新たなイノベーションに果敢に挑戦する企業を応援のために、エ
ンジェル投資や夢のような壮大な実験が規制の特例を認める制度が
できるようである。

G.観光立国、放送コンテンツの海外展開などを進めるという。

というように、多くの成長政策が並べられているが、電力自由化と
公共施設の運営以外の岩盤規制の規制緩和がほとんど進んでいない
ことが分かる。この規制緩和ができないことで、大きな市場ができ
ことになっている。

そして、世界市場での市場規模を見ているのであろうか?医薬品市
場は50兆円程度である。高い利益が得られるがAV市場の規模より
小さい。自動車市場は100兆円であり、エネルギー産業は300
兆円もの規模がある。

米国が復活しそうな理由がシェールガスである。これは大きな市場
規模のエネルギー産業であるからである。また、軍事産業も150
兆円である。

ベンチャー企業、特にIT企業は利益はすごいが、規模的には小さい。
それに雇用数が少ない。日本の製造業復活には、どうしてもエネル
ギーや軍事産業の創造が必要である。この明確な戦略が必要である。

農業は大きな市場規模にはならないが、海外への展開を考えるなら
企業の参加が重要である。これからは大規模な植物工場でコストを
下げて、かつ多様な売込み先を開発することが重要である。

このためには、大きな企業の農業参加が重要であるが、それをしな
いで、どう成長させるのであろうか?

医療分野では、新薬を許可する時間も重要であるが、新薬を使って
もらう日本での市場規模を確保することがもう1つ必要である。今
後の高齢化社会を考えると、予算の制限から混合治療を解禁しない
と新薬の市場が大きくならないことになる。このため、やっている
ことがおかしい。

というように、規制緩和が進まなかったことで、安倍政権の成長戦
略は、民主党政権時代の成長戦略に比べると良いが、これで日本が
復活する気がしない。もう少し、既得権益がある企業・集団から離
れて、日本の将来を考えて、規制を崩さないと本当の復活はないよ
うに感じる。

さあ、どうなりますか?

海外の投資家がどう思うかで、今後の東証の株価が変化するので、
国内投資家の皆様も要注意である。

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成長戦略に原発再稼働を明記へ 安倍政権、経済界や自治体に配慮

 安倍政権が成長戦略に盛り込むエネルギー政策の原案が25日判
明した。原子力規制委員会が安全と認めた原発は「再稼働を進める
」と明記し、立地自治体などの理解を得るため「政府一丸となって
最大限取り組む」との姿勢を強調した。早期再稼働を求める経済界
や立地自治体などに配慮したとみられる。

 政府は6月14日までに成長戦略をまとめ、閣議決定する方針。
自民党も参院選の公約に原発再稼働方針を盛り込む見通しで、政府
、与党が足並みをそろえて原発を活用する姿勢を明確にする形とな
る。

 安倍首相はこれまで国会答弁などで、規制委が安全性を確認した
原発を再稼働する考えを示してきた。
2013/05/26 02:00   【共同通信】
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インタビュー:成長戦略・財政健全化を確実に実行=内閣府副大臣
2013年 05月 23日 23:52 JST
[東京 23日 ロイター] 内閣府の西村康稔副大臣は23日、
東京市場で日経平均株価が1100円を超す大幅な下落となったこ
とについて、中国の経済指標下振れなど外部要因が背景とし、アベ
ノミクスや日銀の金融政策運営に対するネガティブな評価が原因で
はないと語った。

同日の株価急落はこれまでの急ピッチな相場上昇に対する一時的な
調整と述べるとともに、政府として、市場の期待を維持しながら、
現実に変えていく努力をすると強調。具体的には6月に英国で開催
される主要8カ国首脳会議(G8サミット)の前に成長戦略と財政
規律を「骨太の方針」で示し、確実に実行すると語った。ロイター
とのインタビューで述べた。

<株価急落は外部要因、アベノミクスへの評価後退ではない>
西村副大臣は23日の株価急落について、5月の中国製造業購買担
当者景気指数(PMI)速報値が市場予想よりも下振れたことなど
「外部要因が背景」とし、アベノミクスや22日の日銀の政策決定
など日本の経済・金融政策に対する「ネガティブな評価によるもの
ではない」との見解を示した。アベノミクスへの期待や日銀の異次
元緩和などを受けて「急ピッチの円安・株高が続いていた」だけに
、今回の株安は急速な相場上昇に対する「一時的な調整」と指摘。
これまでの株価上昇は「バブルではない」とし、調整を機に「相場
に参加したくてもできなかった人達にとって、いい買い場になるこ
とを期待したい」述べた。

<消費税率引き上げの方針に変わりない>
株安を受け、政府として「市場の期待を維持しながら、それを現実
のものに変えていく」とし、特に成長戦略の確実な実行と財政健全
化に向けた取り組みが重要と語った。6月のサミットまでに目標や
工程表を含めた具体的な成長戦略を示すとともに、財政規律では、
2015年度に基礎的財政収支(プライマリー・バランス)の赤字
を半減、2020年度に黒字化する財政健全化目標を堅持し、「骨
太の方針」に明記する考えを示した。消費税率の引き上げについて
は、1─3月期に続いて4─6月期の国内総生産(GDP)が好調
な内容となれば「来年4月から上げる基本方針に変わりない」と明
言。「そのための経済環境をしっかり整える」と語った。

<アベノミクスの成果、夏ごろに実感できる>
23日の債券市場では長期金利が一時、2012年4月以来となる
1%に上昇した。大規模な国債買い入れを柱とした「量的・質的金
融緩和」の導入で長期金利を引き下げるとしていた日銀の意図に反
する動きとなっているが、西村副大臣は「日銀は金利が上昇しない
よう、しっかりやってくれている。市場とのコミュニケーションを
大事にし、臨機応変に対応してくれる」と述べた。為替動向に関し
ては「水準についてはコメントを控えたい」とし、円安は政策の目
標ではなく、日米の金融政策の方向性など「政策の結果として相対
的に決まるものだ」と指摘。円安進行や予算執行を含めて「アベノ
ミクスの成果が夏ごろには実感いただけることを期待している」と
述べる一方、円安に伴う原材料や燃料費の高騰が価格転嫁できてい
ない中小企業に対する「一定のつなぎ融資」を検討する必要性も指
摘した。
(ロイターニュース 伊藤純夫 梶本哲史;編集 石田仁志)
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成長戦略、6月14日閣議決定
 政府は23日、安倍政権の経済政策「アベノミクス」の「第三の
矢」となる成長戦略について、6月14日に閣議決定する方針を固
めた。安倍晋三首相が決定内容に関し、6月17、18両日に英国
で開かれる主要国首脳会議(サミット)で説明し理解を求める。
 これに先立ち、首相は6月5日に東京都内で講演し、成長戦略第
3弾として民間活力の活用を通じたインフラ整備やベンチャー企業
振興策を打ち出す方針。(2013/05/23-11:22)
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成長戦略第3弾判明 民間活力「PFI」推進 10年で数兆円呼
び込み
2013.5.23 07:02 産経
 安倍晋三政権が来月打ち出す成長戦略第3弾の骨格が22日、明
らかになった。インフラ投資に民間のお金を使う「PFI(民間資
金活用による社会資本整備)」制度の規制緩和を目玉に据え、向こ
う10年間で数兆円規模の資金を呼び込むことが柱。国が主導して
税制優遇などを行う特区制度や、創業間もないベンチャーへの投資
を減税する「エンゼル税制」の拡充も盛り込み、経済の活性化を目
指す。第3弾は、安倍首相が6月5日に発表する予定だ。
                   ◇
 成長戦略は、大胆な金融緩和と機動的な財政出動に続く、安倍政
権の経済政策「アベノミクス」の「第3の矢」。日本経済再生の最
大のカギとされ、第1弾では女性の活用、第2弾で農業・産業の競
争力強化を打ち出した。

 政府が第3弾の柱にPFIの積極推進を位置付けたのは、インフ
ラ整備の主役を「官から民に」移すことで、企業活動の刺激による
成長力底上げと、財政負担の軽減の一挙両得を図る狙いがある。

 PFIはこれまで、国や自治体が建設費を負担するケースがほと
んど。対象も学校や庁舎など小型案件が大多数で、企業の参入メリ
ットが小さく、平成24年3月末の累計事業費は4兆円に届かない
状況だ。

 このため、規制緩和によって、民間企業に建設そのものを任せた
り、国や地方がインフラや建物の所有権を持ったまま、運営権を企
業に売ったりする仕組みなどを新たに導入。企業の参入意欲を高め
る方針だ。

 一方、日銀による大規模な金融緩和で、市場には低金利のお金が
潤沢に供給されている。これに伴い投資家がより高い利回りの得ら
れる運用先を探す動きが活発化しており、政府にはPFIを投資運
用の受け皿とする思惑もある。
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成長戦略の重点項目を点検 諮問会議、今秋にも 
2013/5/20 21:41
 政府の経済財政諮問会議は20日、成長戦略の重点項目を点検し、
2014年度予算案に反映することで一致した。政府は具体的な仕組み
づくりの検討に入り、今秋にも人材活用策や産業振興策の進捗状況
や成果の検証を始める。成長戦略の看板を錦の御旗にして関連事業
の予算が過度に膨らむことを防ぐ。

 民間議員4人が同日、政策点検の新しい仕組みづくりを提言。安
倍晋三首相が「民間提案を取り込んだ政策評価の改善と、PDCA
(計画・実行・検証・見直し)の仕組みづくりを進めてほしい」と
閣僚に指示した。

 民間議員は今秋以降、女性の活用や医療機器の開発促進といった
成長戦略の目玉政策を重点的に点検することを提言した。諮問会議
が項目を絞り込み、実際の点検は省庁横断の政策評価を手がける総
務省と連携する。途中経過や成果を確かめ、効果が不十分なら次年
度の予算額を削る。社会保障費や公共事業費、文教費も対象にする。

 新しい仕組みをつくるのは、現在の政策評価が十分に機能してい
ないため。各省の自己評価は甘くなるうえ、財務省による査定は省
ごとの縦割りで、政治家の介入も受けやすいといわれる。総務省に
よる評価は予算に生かされにくいとの批判があった。諮問会議が総
務省と連携することで予算額や政策の見直しにつなげる。

 政府は7月に参院選を控え、「痛みの伴う歳出削減策は議論しに
くい」(内閣府幹部)状況だ。体制づくりを先行させ、今夏以降の
財政再建に向けた議論に布石を打つ。
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民間投資70兆円に拡大…首相が成長戦略第2弾
 安倍首相は17日、東京都内で講演し、成長戦略の第2弾を発表
した。今後3年間を「集中投資促進期間」と位置付け、「税制、予
算、金融、規制改革、制度整備などあらゆる施策を総動員する」と
訴え、企業別の新たな特区制度の創設などを打ち出した。

 環太平洋経済連携協定(TPP)交渉参加を控え、「農業・農村
の所得倍増」の目標も掲げた。6月にまとめる政府の成長戦略に盛
り込む。

 首相は先月19日に、女性の社会進出や医療産業の育成を柱とし
た成長戦略を発表しており、今回の講演は「成長戦略第2弾スピー
チ」と位置づけられた。

 民間の設備投資を現在の年間63兆円から70兆円規模に増やす
目標を掲げ、「新たなイノベーション(技術革新)に挑み続ける『
モルモット精神』を持つ企業にチャンスをつくる」と強調した。具
体策としては、従来は主に地域が対象だった特区制度に加え、個別
企業が求める規制緩和策を特例で認める「企業実証特例制度(仮称
)」を設け、一定期間後、政府が有効と判断すれば、全国展開でき
るようにする。

 農産物・食品の輸出額を2012年の4500億円から20年に
1兆円に倍増することも掲げた。「ブリやサバは、東南アジアやE
Uなどで需要開拓の余地がある」などとして、重点品目と、需要の
大きい国・地域を絞り込み、輸出に必要な衛生証明書の発給を迅速
化することで成長につなげる考えを示した。農地集積や担い手確保
へ、都道府県に新設する「農地中間管理機構(仮称)」が農地を借
り、基盤整備をしたうえで法人などに貸し出す仕組みの創設も掲げ
た。首相が「儲もうかる農業開拓ファンド」と呼ぶ基金の展開、活
用を通じ、農林水産業を成長させる新たなアイデアを支援していく
とした。
(2013年5月17日23時43分  読売新聞)
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骨抜きされた成長戦略なら国内外の失望を買う
田原総一朗の政財界「ここだけの話」
2013年05月16日日経BP
 安倍晋三首相は、産業競争力会議の議論を踏まえ、「第3の矢」で
ある成長戦略の第2弾を5月17日に発表する予定だ。

 4月19日に発表された第1弾では、女性の活躍を中核と位置づけた
ほか、医療研究開発の指令塔「日本版NIH」の創設などが盛りこまれ
ている。

「痛みをともなう改革」が外されている
 しかし、最近の産業競争力会議の議論を見ていると、「痛みをと
もなう改革」が次々にテーマから外されているように思える。私は
そのことに危機感を覚える。

 今まで日本経済がジリ貧だったのは、「改革、改革」と言いなが
ら、少しも改革が行われてこなかったからだ。大胆な構造改革を断
行しなければ、日本経済の成長はない。

 なぜ改革ができないのか。3月30日付の本コラム「既得権を崩す『
新しい革新』が日本を変える」ですでに書いたが、日本は既得権益
集団にあふれている。現状維持を望み、改革などしたくないのが彼
らの本音だろう。

 第一に挙げられる既得権益者は、霞が関の官僚である。「規制改
革」と口では言うが、規制があるからこそ官僚は強い許認可権を持
ち続けることができる。もし規制緩和をすれば権限を失ってしまう
から、規制改革には反対なのである。

既得権益者の抵抗
 第二の既得権益者は政治家、つまり国会議員である。今年3月に
2012年衆院選の「1票の格差」をめぐる訴訟判決で、相次いで違憲・
無効の判断が下されたが、国会には抜本的な格差是正に取り組む姿
勢があまり見られない。もしそれを行えば、次の選挙で落選する議
員が数多く出る可能性があるからだ。

 さらにいえば、地方分権改革に賛成する国会議員は多くない。中
央集権的な現在の仕組みの中では、中央から生まれる仕事やカネを
地方に運ぶのが自分たちの役割であり、もし地方分権が実現したら
自分たちの存在意義がなくなってしまうと考えている。

 既得権を守りたい人たちは他にもいる。農業関係団体や農林水産
省、日本医師会、日教組(日本教職員組合)などをはじめ、大手企
業の経営者たちもそうだ。

 産業競争力会議のメンバー(民間議員)で、構造改革を強く主張
しているのは竹中平蔵慶応義塾大学教授、三木谷浩史楽天社長、新
浪剛史ローソン社長の3人だが、彼らは官僚や政治家、財界人の抵抗
や反対にあっている。思い切った構造改革のテーマを盛り込めない
のが現状だ。

重要なテーマが次々に外される
 その一つが雇用改革制度。時代に合わなくなった企業から時代に
合う新しい企業への新陳代謝を促すには、労働力の流動化、雇用の
自由化がなければならない。もちろん、その一方ではセーフティネ
ットの整備が重要である。

 労働力の流動化を促すためには「解雇ルールの法制化」が必要な
のだが、もともと財界から要望の多かったこのテーマは、財界出身
の民間議員が嫌がったため、6月中旬までにまとめる成長戦略から外
されることになった。

 コーポレート・ガバナンス(企業統治)を実現する重要な手段と
いわれる「独立取締役の選任義務」も外される。独立性の高い取締
役によって企業経営を厳しくチェックするのが狙いだが、これも財
界出身の民間議員の反対で先送りされることになった。日本企業の
トップたちはいつまでも「お殿様」でいたいのだ。

 「法人税の引き下げ」も財務省の反対にあって却下。「企業によ
る農地取得の自由化」や「農業生産法人への出資規制緩和」も、農
業は一般の産業とは違うなどの理由で、農業協同組合や農水省の強
い反対にあった。

 医療分野でいえば、保険診療と保険外診療を併用する「混合診療
」の解禁が日本医師会などの反対によって見送られた。

 このように重要なテーマがいくつも既得権益者の反対にあい、取
りまとめの最終段階にきて外されている。

安倍首相は成長戦略をどういう形で発表するのか
 アベノミクスは大胆な金融緩和と財政出動により、これまでのと
ころ成功を収めている。日本経済復活への期待を本物にするために
も、「痛みをともなう改革」を盛り込んだ成長戦略の策定は重要だ
。そこに外国政府をはじめ国内外の投資家が大きく注目している。

 革新的な構造改革をどこまで実現できるか、そのための具体的な
政策は何かを議論するのが産業競争力会議の役割である。しかし、
成長戦略の柱になるはずの重要テーマが既得権益者の反対によって
先送りされ、改革への姿勢が否定されているように見える。

 そんな成長戦略を、安倍晋三首相はどういう形にまとめて6月中旬
までに発表するのだろうか。

 もしその中身が期待外れのものなら、マーケットは失望し、7月の
参院選前に株価が下落することも考えられる。それどころか、株価
の暴落も懸念されるのだ。
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コラム:アベノミクス成長戦略に「異次元」は必要か=熊野英生氏
2013年 05月 9日 18:29 JST ロイター
熊野英生 第一生命経済研究所 首席エコノミスト(2013年5月9日)

5月に株価が下がるという「アノマリー(季節的規則変動)」も、
今年に限って成り立たないということなのだろうか。大型連休が明
けて日経平均が急上昇している。逆に今後、何かのイベントが期待
外れになりはしないか、といぶかしく思ってしまう。これは、高所
恐怖症の心理なのだろう。

当面のイベントを確認すると、5月は企業決算、6月は安倍晋三政
権の成長戦略、7月は参議院選挙という予定がある。この中で、最
も期待されていて、実際はサプライズがなさそうなのは、成長戦略
である。

これまでの政策運営は、2月の日米首脳会談、3月の環太平洋連携
協定(TPP)参加表明、4月の金融緩和と、経済分野では立て続
けにサプライズを連発してきた。黒田東彦日銀総裁の采配は、円安
・株高を後押しする起爆剤になったこともあり、異次元緩和と呼ぶ
人もいる。同様に、経済成長戦略は「異次元」と称されるほどにポ
ジティブ・サプライズを演出できるのだろうか。

<「今回は違う」は成り立つか>
成長戦略に関しては、慶応大学の竹中平蔵教授が鋭い指摘を行って
いる。「過去7年で7回の成長戦略が作られたにもかかわらず十分
な経済成長が実現しなかった」(日本経済研究センター「竹中平蔵
のポリシー・スクール」3月22日)というものだ。「成長戦略」
という名称を冠したプランは、2006年以降、年中行事のように
作られては大部分が忘れられている。現状、多くの企業経営者・ビ
ジネスマンが期待を寄せるアベノミクスの成長戦略に限っては、「
今回は違う」が成り立つのだろうか。

過去の成長戦略なるものが登場してきた経緯を述べておこう。06
年6月、小泉純一郎自民党政権の末期に新経済成長戦略が策定され
た。これが、「成長戦略」という表現が意識的に使われた最初であ
り、その流れが民主党政権を経て、現在に続く。06年以降の成長
戦略は単に決意表明として作成されただけではなく、きちんとプラ
ンの進捗状況が検証されてきている。

08年9月の「新経済成長戦略 フォローアップと改訂」では、全
53分類の個別具体的な進捗状況について記され、さらに今後の取
り組み方針まで描かれている。この報告では、新経済成長戦略の実
施により期待される成長率(04―15年度平均)として、実質
2.2%成長とされている。また、施策が実施されなかった場合は
、実質0.8%成長に止まるとある。ちなみに、リーマンショック
前の04―07年度の平均実質成長率は1.75%だった(04―
11年度単純平均0.6%)。それなりに成長戦略は実施されたも
のの、その成果はあまり大きなものではなかったことが分かる。

実は、成長戦略に類似したものに、小泉政権下でとりまとめられた
「骨太の方針」がある。01年から09年まで続けられた。予算編
成では特別枠が設けられて、「骨太の方針」に盛り込まれた内容が
予算化された。この時代の前半は、成長戦略という言葉の代わりに
、構造改革という似た言葉もあった。

さらに、遡ると、55年から5カ年計画として「経済計画」が策定
されている(48年と49年には2回の「経済復興計画」)。池田
勇人内閣の「所得倍増計画」(60年)や、宮沢喜一内閣の「生活
大国5カ年計画」(92年)を記憶している人も少なくないだろう。
最後は、99年の小渕恵三政権の政策指針が存在し、それから「骨
太の方針」や成長戦略に代替わりした。

こうして歴史を鳥瞰(ちょうかん)すると、日本人は「計画」や「
戦略」が好きであると理解すべきなのかもしれない(中国や欧米に
もあるが)。

<成長戦略は「魔法の杖」ではない>
注意深く考えてみると、多くの人が期待する「成長戦略」なるもの
には、いくつかの誤解がある。その誤解を解きつつ、成長戦略の特
徴を正しく捉えると、以下の3点にまとめられるだろう。

第1に、何か計画を立てれば、定量的な経済効果が得られるという
ものではないということ。第2に即効性を期待することはできない
ということ。第3に、企業間の競争を通じて摩擦を伴いながら、結
果的にプラスが得られるということだ。

TPP参加についても、日本の経済成長と同じように、業界によっ
てプラスとマイナスのコントラストが現れるであろうし、政府がで
きることは民間企業の競争環境を整備することに限られる。経済効
果に関しても、たとえ政府の公式見解として○○兆円の実質GDP
の押し上げが見込まれると、試算値が出たとしても、そうした計算
値は大雑把な目処でしかない。

卑近な例を挙げると、企業が何をすれば稼げるかは、先見的には分
からない。これをすれば商売は失敗するという事例はあっても、こ
れをすれば商売が成功するというプランはない。馬を水飲み場に連
れて行くことはできても、馬が水を飲むかどうかは、馬次第である。
分かっていることは、好ましいかたちで競争が促進されれば、創意
工夫が生まれて結果的に成長が得られるという経験論である。つま
り、「異次元の成長戦略」というものは原理的に成り立たない。

よく考えたいのは、成長戦略の位置づけである。成長戦略は「魔法
の杖」でないことを戒めたい。成長戦略とは、あらかじめ確定的な
成果が得られなくとも、企業の競争環境を整備するために積極的に
推進されるものであろう。重要なのは、環境づくりとして何をする
かである。

<誰の話を聞くか>
歴代政権が策定してきた成長戦略は、政府が主導して内容を選んだ
ものである。これは、政府自身が規制緩和の当事者であることとも
関係している。しかし、民間企業の活動を制約している規制に関し
ては、政府よりも民間企業自身が一番よく知っている。

政府は、民間企業が考えている競争制限的な規制について、真摯に
耳を傾ける必要があろう。たとえば、企業活動を制約する問題とし
て「六重苦」ということがよく言われる。円高、法人税率の高さ、
自由貿易協定の対応の遅れ、労働規制、環境規制、電力不足の6つ
である。アベノミクスは6つのうち、円高と自由貿易協定には対応
しているが、まだ残り4つは成果が得られていない。

また、日本経団連は、規制改革要望を毎年作成している。政府は、
民間企業の要望についてすべてを鵜呑みにすればよいわけではなく
、第三者の視点から競争環境の整備に資する内容を選択することが
求められる。

アベノミクスの中核になる成長戦略については、たとえ市場のサプ
ライズを演出できなくても、それが「不断の構造改革」の入り口で
あると理解されればよい。

今後、海外からの対日株式投資を増やしていくためには、一過性の
サプライズよりも、安倍政権がその求心力を高めつつ、日本企業の
収益拡大を持続させることである。

現下とよく似ているのは、05年8月から06年5月までの対日株
式投資の拡大である。始まりは、小泉首相が郵政解散を行って騒然
とした時だった。その後、景気拡大が進んで株価は上昇した。今後
のイベントリスクに関しては、より持続的な政策期待へとスイッチ
していくことが望まれる。
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新機構で農地集約=解雇規制緩和は見送り?競争力会議
2013年 4月 24日 00:39 JST
 政府は23日、産業競争力会議(議長・安倍晋三首相)を首相官
邸で開き、成長戦略の主要項目を議論した。農地を集約して競争力
を強化する一方、正社員の解雇規制の緩和は見送られる方向となっ
た。6月の成長戦略策定に向けて法制化の手続きや工程表の作成な
ど詰めの作業に入る。

 環太平洋連携協定(TPP)交渉参加に備えた農業強化策として
は、小規模農地集約の受け皿となる「農地中間管理機構」(仮称)
を都道府県単位で新設する。農地の貸借を容易にするため補助金な
どの国費を投入し、市町村や農協(JA)、民間企業の協力を得て
農地の大規模化を加速し、農業経営を効率化する。

 また、「和牛」や「日本酒」など品目ごとに輸出戦略を検討する
。ロシア・中東・トルコ歴訪を控える安倍首相は会議で「日本の農
産品を持って行き、積極的な売り込みを図りたい」と強調した。

 正社員の解雇規制の緩和は提案していた民間議員が取り下げた。
成長戦略の雇用政策としては、余剰人員の再就職を支援した中小企
業に支給している「労働移動支援助成金」を大企業にも支給するこ
とを盛り込む。衰退産業から成長産業への「失業なき労働力移動」
を促進し、中小企業などの最低賃金の引き上げを可能とする環境整
備も明示する。 
[時事通信社]
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安倍首相、「日本版NIH」創設を表明
2013.4.20 00:39 sankei[安倍首相]
 安倍晋三首相は19日、東京・内幸町の日本記者クラブで記者会
見し、冒頭のスピーチで「再生医療」「雇用」「女性」に絞った成
長戦略を発表した。米国の政府機関で医療分野の一大研究拠点とし
て知られる国立衛生研究所(NIH)をモデルにした先端医療研究
の司令塔「日本版NIH」創設や大学生の就職活動解禁時期の繰り
下げ、育児休業期間延長を打ち出した。6月にまとめる全体の成長
戦略に盛り込み、夏の参院選の目玉にしたい考え。

 政権の経済政策「アベノミクス」の「大胆な金融緩和」「機動的
な財政政策」に続く3本目の矢である成長戦略の具体的な内容が公
表されたのは初めて。

 成長戦略のキーワードとしては「挑戦」「海外展開」「創造」を
掲げた。海外展開では、大型連休中のロシア・中東訪問で「先端医
療センター」の設置で合意するなど自らトップセールスに乗り出し
、経済外交も本格化させる。

 首相は、成長戦略の柱に「健康長寿社会」を位置付け、先端医療
研究に関する戦略や予算配分の決定権限を持つ「日本版NIH」の
創設を表明。人工多能性幹細胞(iPS細胞)の利用など再生医療
の実用化に向け、規制緩和や医薬品の審査期間を短縮するための法
案を今国会に提出する。

 「今必要なのは世界に勝てる若者だ」と述べ、大学生が学業に専
念する時間を確保するため、就職活動の解禁時期を現行より3カ月
繰り下げ、大学3年の3月からにすべきだとした。

 「女性の活躍は成長戦略の中核をなす」とも強調。全上場企業が
役員に1人以上の女性を登用するよう求めたほか、女性の雇用を促
すため、待機児童解消に向け平成25、26年度に20万人分の保
育の受け皿を確保し、「29年度までに待機児童ゼロを目指す」と
明言した。現行で子供が最長1歳6カ月になるまで取得可能な育児
休業を3歳まで取得できるよう、企業に助成金を支給する方針も示
した。

 会見に先立ち首相は、経団連、経済同友会、日本商工会議所の代
表と官邸で会談し、大学生の就職活動解禁時期の繰り下げや育児休
業期間の延長を要請した。

 首相は会見で憲法改正の発議要件を緩和する96条改正に関し、
日本維新の会などの賛同を踏まえ、発議に必要な衆参両院での3分
の2の確保が「可能性も出てきた」との認識を表明。18日の春の
園遊会で中国の程永華駐日大使に会い「戦略的互恵関係の基礎に戻
り、日中関係を再構築したいと話をした」と明かした。



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