中東・イスラム情勢を知るには、エジプトの方向性が重要である。 これを知ることができる講演会に溜池へ行ってきた。講演者はファ リー・イスマーイール博士、自由公正党執行メンバーでムスリム同 胞団幹部である。2005年人民会議議員、2012年モルシ大統 領政権下で憲法起草委員会メンバーとして新憲法草案にも従事した。 (講演) 2011年1月25日革命が起き、2月独裁者ムバラク大統領は国 民の突き上げを受ける形で辞任。2012年6月30日モルシ大統領が就任 、新憲法制定は始まり、2013年3月19日憲法改正に関する国民投票が 行われ、承認された。 70%の国民が投票し、自由意思でモルシ大統領を選出した。この 間には隣国や大国からの干渉や経済封鎖包囲網があり、大変であっ た。今、民主主義の構築に向かって努力している。 自由公正党はムスリム同胞団が設立した。このムスリム同胞団はハ サン・アル=バンナが、1928年に西洋からの独立とイスラム文化の 復興を掲げて設立した。イスラーム法(シャリーア)によって有徳 の社会を作る目的である。利他と徳を持った社会で、この社会をエ ジプトは目指している。 エジプトは人口9200万人、経済面でもアフリカの入口であり、スエ ズ運河があり、大動脈である。巨大なプロジェクトも計画中であり 、日本の参加を待っている。日本とエジプトの友好を祈念している。 アラーの御慈悲を願い、終わりとしたい。 (質疑応答) Q1:政治におけるイスラム主義とは何か? A1:政治は国民の代表が行い、神の代表は統治しないことである。 Q2:ムスリム同胞団の対米、対イスラエル、対イランの政策はど のようなものか? A2:あらゆる国と和平関係を維持し、契約を遵守することである が、契約は相互主義であることも忘れてはいけない。 Q3:サウジアラビアとの関係は? A3:モルシ大統領は、サウジアラビアを訪問している。両国関係 は良好である。湾岸諸国とも良好である。 Q4:現在の政治団体の数はいくつですか? A4:政党の数は70以上、その中でも強い政党は10 Q5:憲法にシャリア(イスラーム法)が反映されているのか? A5:80年憲法で、すでにシャリアの条項があった。当然、新憲 法にも入っている。しかし、自由の保証を20項目も入れた。 特に、キリスト教コプト派に配慮している。 エジプト大使館に翻訳した本があるので、見てください。 Q6:経済封鎖包囲網というがどのようなものか? A6:IMFの圧力、諸外国の圧力、燃料の供給など多岐にわたる。 Q7:モルシ大統領が最初に訪問したのは、中国でしたがなぜです か? A7:200億ドルをアフリカに援助し、その内50億ドルがエジ プトであるためです。イランも訪問している。今までとは違 い、すべての国と友好関係を構築するためです。 Q8:IMFとの交渉はどうなりますか? A8:IMFとの交渉で、エジプトが指示される側ではなく、対等な関 係を要求しています。 Q9:経済のUPをどのようにするのですか? A9:腐敗の構造を払拭すること、巨大プロジェクトを立ち上げて 投資を呼び込むこと、しかし、投資活動ではエジプトの政治 に介入しないことが条件です。それと、貧困対策、市場の自 由化、経済体制の変革などです。 Q10:2012年玄葉外相がエジプトを訪問後、積極的に支援すると言 ったが、現状はどうですか? A10:そのような関係を構築できることを希望しています。 第1歩として、人材交流を進めたい。エジプト経済は大きな 潜在力を持っています。 Q11:ハマスとの関係はどうか? A11:キャンプ・デービットなどの契約を相互遵守することを前提 に、ハマスとイスラエルの関係の平静化に寄与したと思って います。国境のチェックポイントであるラハワを開放しまし た。ガザの封じ込めを止めています。ガザとエジプトの関係 は正常化している。 この講演会には、NHK中東地域の論説委員である出川展恒さんも来て 録画していたので、どこかで番組に使う可能性もあるのだろう。 200名以上の聴衆がいて、部屋が満杯である。私の隣の人は日本人 のような格好であるが、翻訳装置を使っていたので、中国大使館関 係者だと思う。商社系の人も多く、各国大使館関係者も多かったよ うに感じる。 日本語への逐語訳であり、時間割に内容が少なめであり、日本語に 訳した後に英語の同時通訳というスタイルであったために、日本人 は翻訳装置を必要としなかった。勿論、質問時は英語での人が数人 いたが。