4630.オフショア・コントロールとは



米国の国防費削減が今後も続くことになるので、経費をかけないで
防衛をする必要になる。その手段が「オフショア・コントロール」
で、米国防大学の研究所T.X.ハメス(T.X.Hammes:元海兵隊大佐)
上級研究員が提唱した。

戦略としてのオフシェア・バランスの戦術としてエア・シー・バト
ルが策定されたが、このASBでも経費が掛かりすぎであり、それより
コストが安い戦術として提言されている。

オフショア・コントロールは、領土を守る意志のある国と組みなが
ら中国の海上貿易を阻止し、決定的な軍事上の勝利よりも、手詰ま
りと停戦をもたらすことを目標にする。

中国本土のインフラへのダメージを極限しつつ経済的に消耗させる
戦いを追求する。

米海空軍は中国本土から離れたところに動かし、中国と遠方から戦
わせる一方で、米国と同盟国が統合海空防御の一員としてその領域
上で戦う。米国の損害を減らす。

インドネシアの列島線に沿ったチョークポイントで遠距離海上封鎖
を敷き、中国の海上交通阻止を行う。貿易ができないようにする。

第一列島線の内側で、中国の侵入できない排他的海上区域を、優勢
な潜水艦、機雷と限られた数の航空戦力で設定する。

この米軍の方向を見定めて、日本も防衛力を増強することが必要で
ある。中国とのパワーバランスが崩れると、戦争に結びつき安いの
で、パワーの均衡を取るしかない。

勝つと思えば、中国は戦争という手段に訴えてくるという厳然たる
心理を、日本人は知る必要がある。それを認識できないと日本の滅
亡に繋がるであろう。

日本人は、目を覚ますことである。

さあ、どうなりますか?
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オフショア・コントロールを学ぶ [Air-Sea Battle Concept]
2013-03-19 05:00東京の郊外より・・・
防衛研究所と米国防大学の研究所 (INSS)は、戦略的に重要と思われ
る様々な問題をテレビ会議で議論する関係にあるようで、2月1日に
は「オフショア・コントロール」の提唱者T.X.ハメス(T.X.Hammes
:元海兵隊大佐)上級研究員と議論が行われた模様です
(NIDS NEWS:2013年3月号より)。
同会議でハメネス氏は、「Offshore Control:予期せぬ衝突に備え
た軍事戦略」というテーマで、オバマ政権がアジア太平洋地域のリ
バランスを提唱するなか、軍事戦略として検討されるOffshore Control
戦略の意義と戦略的利点として、以下5点を指摘したそうです。
@抑止及び安心供与の度合を高める一方、急速なエスカレーション
 の可能性を低下させる、
A決定におけるタイムラインを伸ばす、
B平時におけるコストを低下させる、
C米国の強みを生かすことができる、
D貿易の再構築を可能とする・・・・・等が指摘されました。

ちなみに、ハメネス氏の「オフショア・コントロール」論文は2012
年春号のInfinity Journalに掲載され、同年6月INSSの
「STRATEGIC FORUM」にも掲載されています。
「Offshore Control: A Proposed Strategy」
→http://www.ndu.edu/inss/docuploaded/SF%20278%20Hammes.pdf

防衛研究所が勉強を始めたと言うことは、米国防関係者の中で「オ
フショア・コントロール」がそれなりの地位を得た可能性を示唆し
ていますので、ご紹介したいと思います。
なお、本日の「オフショア・コントロール」に関する説明は、26歳
の安全保障研究者によるブログ「Till the end of history」の記述
を借用しています。
その1→http://alfred-geopolitik.blogspot.jp/2012/04/blog-post_13.html
その2→http://alfred-geopolitik.blogspot.jp/2012/04/blog-post_15.html
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オフショア・コントロール(「OC」とする)とは
「OC」の概要イメージ・
●エアシーバトルASBについてハメス氏は、エスカレーションを招き
やすい(北京の意思決定者の不確実性を高め核報復のリスクが高ま
る)、そして新たに高価な装備を調達する必要があり財政負担が重
く持続可能でないと懐疑的
●OCでは、領土を守る意志のある国と組みながら中国の海上貿易を
阻止する。また、決定的な軍事上の勝利よりも、手詰まりと停戦を
もたらす。
●このため、中国本土のインフラへのダメージを極限しつつ経済的
に消耗させる戦いを追求する。戦争終結は物理的破壊よりも経済面
での摩耗(消耗?)を通じ達成することを狙う。

具体的な「OC」での行動
●具体的に「OC」では3つのD(deny、defend、dominate)を実施する
---deny:第一列島線の内側で、中国の侵入できない排他的海上区域
を、優勢な潜水艦、機雷と限られた数の航空戦力で設定する。侵入
する中国艦艇を沈めることで達成する。

---defend:積極的に米国を支援する同盟国を守るためすべての軍事
アセットを用いる。海空軍は中国本土から離れたところに動かし、
中国と遠方から戦わせる一方で、米国と同盟国が統合海空防御の一
員としてその領域上で戦えるようにする。

---dominate:インドネシアの列島線に沿ったチョークポイントで遠
距離海上封鎖を敷き、海空陸そして民間から借りたプラットフォー
ムも利用し、海上交通阻止を行う

●以上により、戦争の穏健な帰結を迎える。核兵器がある以上、中
国共産党の崩壊や降伏を目論み追い込むのは危険すぎる。ゆえに戦
争終結のゴールは停戦し戦前の境界線・領土に戻ること。

「OC」の準備と訓練
●最優先は同盟国の防衛強化。次に遠距離海上封鎖。それから排他
的海上区域の設定。最後に第一列島線の外を支配して対中封鎖を締
め付けるとともに同盟国への貿易の流れを確かにする。
●特に重要なのが平時の準備。この戦略は透明性が高いので、同盟
国に説明し公開して全てを訓練演習できる。

穏健な戦争終結に向けて
●OCでは、中国共産党に、かつてのインド、ソビエト、ヴェトナム
との紛争終結と同様の戦争終結模索を認める。つまり、中国が「敵
に教訓を教えてやった」と宣言することを認める。
●中国本土の施設等への攻撃を禁じることで、エスカレーションの
可能性を減らし、中国が前述の宣言をしやすいようにお膳立てし、
戦争を終える。
●「OC」では決定的勝利を求めない。これは核大国相手の決定的勝
利という概念が時代遅れだとの認識に基づいている。

「OC」はASBより優れている
●「OC」はASBより以下の点で優れている。まず、ASBは新技術を用
いるため機密要素が大きく、敵国にも同盟国にも信頼度や透明性が
低い。OCはその点オープンであり実行可能性も高く確証値が高い。
従って抑止効果も高い
●またOCは、オーストラリアを除いた同盟国に駐留基地を必要とせ
ず、同盟国への依存を減らせる点で利点が大きい。オーストラリア
からマラッカ、スンダ、ロンボクの海峡を封鎖するのを支援する基
地のみが必要だからです

●同盟国等は、自国の海空領域で中国の攻撃から米軍が自身を防衛
ことを容認しさえすればよい(defendの達成)。
●防御は地上基地からの防空と短距離の機雷と対機雷の能力を含む
海防に大きく依拠するから、米国は平時、潜在的同盟国の同能力を
向上させるため訓練を行う。

●「OC」では、同盟国等に必要な戦力強化と連携向上を求めるが、
米国が中国を攻撃する際の基地使用や、紛争の際の米側に加わるこ
とは求めないだろう
●繰り返しになるが、OCはASBと反対に、外交官や軍人に戦略と作戦
のアプローチを対外的に説明することを許容するので、不確実性を
引き下げることが出来る
●「OC」では中国の早期警戒・指揮管制システムが脅かされること
なく、北京が余裕をもって判断できるようにする。逆にASBの求める
攻撃は、中国に不十分な情報に基づいて性急な決定を迫るものです
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「オフショア・コントロール」論を概観してまず思うのは、日本は
どうなるんだろうか?・・・との疑問です。
米軍は「一緒に戦ってくれなくても、基地を使用させてくれなくて
も構いません。日本は自分で守ってくれ。米軍は遠方から、又は第
一列島線の一部戦力や機雷を中心に作戦するから・・」と言ってい
るように聞こえます

防衛研究所の発表が、その辺りに触れていない点が気になります。
はっきり言われたのかもしれません。米国はお金がないから、日本
は自分で頑張ってくれ・・・と。

オバマ大統領チーム(ヘーゲル、ケリーを含む)の姿勢、強制削減
による国防費の減額等々からすれば、「オフショア・コントロール
」論が勢いを得てくる可能性はこれまでよりも高いと考えられます
全部ではないにしろ、その一部を借用しようとの気持ちになるかも
しれませんね。




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