4624.キプロス問題はドイツの陰謀?



ユーロの危機がまた、起こった。円安でドイツの製造業は苦しくな
っている。日本の金融緩和にドイツ・メルケル首相は「国際秩序を
乱す」と文句を言ったが、米国・英国なども金融緩和をしているの
で、日本を支持したことで、ドイツは支持を得られなかった。

何かするだろうと、見ていたら、キプロスが金融支援を要請してか
ら8カ月後の3月16日、ユーロ圏の財務相たちは、同国のユーロ圏加
盟維持を危うくする支援計画をまとめた。この裏にドイツの意向が
ある。

条件は、預金課税と「連帯基金」を創設することである。連帯基金
はキプロスの国民も賛成するが、預金課税は反対である。その難し
い条件を出すことで、ユーロ危機を演出できる。ユーロ危機になる
と、ユーロ安になる。このため、円もユーロに対して高くなり、ド
ル円でも94円に値上がりした。

ユーロ危機を、たった数十億ユーロの話で起こせるのだ。キプロス
の銀行が破たんし、人口80万人の経済が崩壊したとしても、あまり
に規模が小さく、その他の欧州諸国には直接的な影響は与えない。

ユーロ圏がキプロスへの支援規模を100億ユーロ(約1兆2300億円)
に圧縮するため、キプロスの銀行預金者から58億ユーロを捻出する
よう求めるには裏がある。それがユーロ危機の演出である。預金課
税とは、具合的には10万ユーロ超の預金に対し、10%以上の課
税を行うことである。

欧州中央銀行(ECB)は21日、支援合意なしにはキプロスの銀
行への資金供給を25日までで停止すると警告。資金繰りを全面的
にECBに頼る同国の銀行にとっては「最後通告」に等しく、金融
部門の崩壊阻止には同日までの法案成立と支援獲得が不可欠となっ
た。

しかし、預金課税が通りそうになり、追加でメルケル首相は条件を
増やしている。メルケル首相は22日、キプロスの年金基金を国有
化することは、同国が国際支援を受けるための財源の穴を埋める方
法として容認できないとの考えを示したのだ。

しかし、ここでメドベージェフ露首相も出てくる。キプロスには、
「ロシアの経済的な権益があるのは明確だ」と指摘した。金融危機
の解決に向け、「扉は閉めない」として協力するという。

キプロスのサリス財務相は、モスクワで、銀行預金課税の代替策と
して、銀行・天然ガス分野の投資や、ロシアからの既存融資の延長
について協議を進めている。

キプロスはロシアからの既存の25億ユーロの融資を5年間延長す
ることと、金利の4.5%から2.5%への引き下げをロシアに求
めている。

金融・政治関係者は、実物資産を担保に最大58億ユーロ(75億
ドル)を新たに手当てする方向で、ロシア開発対外経済銀行(VE
B)が支援に関与する可能性があるとしている。担保資産は後に売
却される可能性があるという。

このようにロシアの援助ができると、58億ユーロは捻出できるが、
欧州中央銀行(ECB)は、キプロス議会が預金課税案を否決すれば、
資金引き揚げに踏み切ると警告している。ECBがキプロスの銀行に供
給している流動性を打ち切れば、ユーロ圏離脱は現実に起こり得る
話になる。

キプロスが離脱すれば、ECBは残りの16カ国を囲い込む劇的な防衛措
置を講じることだろう。いずれにしても、ECBもユーロ圏も未知の世
界に飛び込むことになるだろう。

ドイツの陰謀が、思わぬ方向にいく可能性が出てきたことになる。

ロシアは、混乱するシリアの海軍基地をキプロスに移転して、地中
海での権益を守りたいのだ。キプロス先端にあるロシア海軍監視の
英国の海軍基地がどうなるのか、世界の勢力図が変わる可能性も出
ることになる。

さあ、どうなりますか?

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EU、日本との首脳会談を延期 キプロス危機対処で
2013.3.23 08:50
 欧州連合(EU)のファンロンパイ大統領は22日、キプロスの
金融危機に対処するため、25日に東京で開催予定だった安倍晋三
首相との首脳会談を延期すると発表した。

 首脳会談で日本とEUは経済連携協定(EPA)の正式交渉入り
を宣言するはずだったが、地中海の島国キプロスの危機の影響で先
送りされる事態になった。

 財政難のキプロスは、25日中に支援策をめぐってEUのユーロ
圏諸国などと合意できなければ、欧州中央銀行(ECB)による緊
急融資を打ち切られ、金融システムが破綻する恐れが出ている。
(共同)
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財源調達へ基金設立=キプロス議会可決−預金課税は持ち越しも
 【フランクフルト時事】キプロス議会は22日、ユーロ圏からの
金融支援の条件である自主財源調達策の一環として、「連帯基金」
を設立する法案を可決した。同国の破綻回避に必須な支援合意に向
けて前進した形だ。ただ、ユーロ圏が最も強く求めている銀行預金
への課税についてはなお反発する意見もあり、結論は23日に持ち
越される可能性もある。
 ユーロ圏は預金課税の導入なしには支援に同意しないとみられる。
ユーロ圏の中央銀行である欧州中銀(ECB)は支援合意に失敗す
ればキプロスへの資金供給を25日を最後に停止するとしており、
同国金融部門の崩壊を食い止めるには、同日までに預金課税にも同
意することが必要となりそうだ。(2013/03/23-07:51)
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キプロス、預金10万ユーロ超に10%以上の課税検討=与党幹部
2013年 03月 23日 03:34 JST 
[ニコシア 22日 ロイター] キプロス与党幹部は22日、銀
行預金課税をめぐり、欧州連合(EU)、国際通貨基金(IMF)
、欧州中央銀行(ECB)の3者で構成されるトロイカとキプロス
指導部が協議していることを明らかにした。

10万ユーロ超の預金に対し、10%以上の課税を行うことが検討
されているという。

また約6億ユーロ規模とされるキプロス・ポピュラー銀行の年金基
金の保護を目指していると述べた。
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「裏金庫」キプロス混乱で焦るロシア(真相深層) 
2013/3/23 3:30日本経済新聞 電子版
 地中海の島国キプロスが預金課税で混乱に陥った。欧州連合(E
U)が金融支援の代わりに求めた措置だが、これにロシアが神経を
とがらせている。キプロスの取り付け騒ぎからはロシア経済の不透
明さや、地政学的な影響力を巡る争いが浮かび上がってくる。

■3分の1を保有
 ユーロ圏がキプロスに最大9.9%の銀行課税を導入するよう求めた
のは15日。EUの支援頼みではなく自力でも資金を捻出させるため
だったが、これを伝え聞…
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欧州委委員長「時間を失ってはいけない」 キプロス政府に
2013.3.22 23:16sankei
 キプロスの金融危機をめぐり、22日、モスクワでメドベージェ
フ露首相と会談した欧州委員会のバローゾ委員長は、ユーロ圏の支
援獲得にむけ、銀行預金課税の代替策を審議しているキプロス政府
に対し、「われわれはかたときの時間も失ってはいけない」と早期
の決定を呼びかけた。委員長は「欧州連合は、事態の正常化のため
に可能な全ての策を試み、決定を行う用意がある」とも述べた。

 一方、露首相はキプロスには、「ロシアの経済的な権益があるの
は明確だ」と指摘。金融危機の解決に向け、「扉は閉めない」とし
て協力を拒まないとの姿勢を示した。(モスクワ 佐々木正明)
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キプロスの年金基金国有化は容認できない=独首相
2013年 03月 22日 18:02 JST 
[ベルリン 22日 ロイター] ドイツのメルケル首相は22日
、議員に対し、キプロスの年金基金を国有化することは、同国が国
際支援を受けるための財源の穴を埋める方法として容認できないと
の考えを示した。複数の議会筋が明らかにした。

また、2人の与党議員によると、首相は「信頼性」の問題だと指摘
し、債務の持続可能性と銀行業界の再編がキプロスをめぐる新たな
合意の中核にならなければならないとの認識を示した。

メルケル首相は議員に対し、キプロスにはユーロ圏にとどまって欲
しいとしつつ、自国のビジネスモデルが破綻していることにキプロ
スはまだ気付いていない、と述べた。複数の議会筋が明らかにした。
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物価2%、時間かかる=「責任押し付け間違い」?麻生財務相
2013年 3月 22日 11:02 JST 
 麻生太郎副総理兼財務・金融相は22日の閣議後記者会見で、政
府・日銀が掲げる2%の物価目標について「日銀が金融緩和したと
しても、財政出動や経済成長など全部が動かないと物価(上昇)ま
で行くには時間がかかる。そんなに簡単にはいかない」との認識を
示した。
 2%目標に関し、日銀の黒田東彦新総裁は「2年程度」で実現す
る考えを表明している。麻生財務相は目標を達成できなかった場合
の責任について、「日銀に責任を押し付けようなんていう発想は間
違っている」と述べた。 
[時事通信社]
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キプロスを1段階格下げ=債務不履行リスクで−米S&P
 【ニューヨーク時事】米格付け大手スタンダード・アンド・プア
ーズ(S&P)は21日、地中海の小国キプロスがデフォルト(債
務不履行)に陥るリスクが高まっているとして、既に投機的水準に
ある同国の長期信用格付けを1段階引き下げ、「CCC(トリプル
C)」にしたと発表した。デフォルト級まで残り3段階。見通しは
「弱含み」で追加引き下げの可能性があり、状況は一段と切迫化し
てきた。(2013/03/22-09:30)
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キプロス政府が基金設立法案提出、炭化水素開発・債券収入など原資
2013年 03月 22日 06:36 JST 
[ニコシア 21日 ロイター] キプロス政府は21日、金融支
援を受けるため、「団結基金(solidarity fund)」を創設する法案
を議会に提出した。炭化水素開発や債券、その他の資産から得られ
る収入を財源とする。ロイターが法案を確認した。
基金の規模については言及していない。
キプロス議会は21日夜、銀行への資本規制導入など複数の法案を
審議する見通し。
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キプロス財務相、ロシアからの融資獲得に関し「ノーコメント」
2013年 03月 22日 06:25 JST 
[モスクワ 21日 ロイター] キプロスのサリス財務相は21
日、ロシアから融資を獲得したかどうかについて、コメントを差し
控えた。

ロシアのシルアノフ財務相と2日間にわたり協議したサリス財務相
は、ロシアから融資を確保したかとの質問に対し、「ノーコメント
だ」と応じた。

サリス財務相はモスクワで、銀行預金課税の代替策として、銀行・
天然ガス分野の投資や、ロシアからの既存融資の延長について協議
を進めていた。
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キプロス、支援獲得へ前進=財源確保の基金設立で合意
−ECBは「最後通告」
 【フランクフルト時事】キプロスの各政党代表者は21日、ユー
ロ圏からの金融支援の条件とされる自力での財源調達策について、
基金の設立で賄う案に合意した。金融支援をめぐる混乱の収拾に向
け、前進した形だ。ただ、基金の設立だけで58億ユーロ(
約7100億円)の必要額に達するかどうかは不明で、いったん議
会で否決された銀行預金課税関連法案の扱いなど不透明な部分も残
る。
 欧州中央銀行(ECB)は21日、支援合意なしにはキプロスの
銀行への資金供給を25日までで停止すると警告。資金繰りを全面
的にECBに頼る同国の銀行にとっては「最後通告」に等しく、金
融部門の崩壊阻止には同日までの法案成立と支援獲得が不可欠とな
った。
 基金設立案は法制面の精査を経て、キプロス議会に提出される。
議会審議は21日午後に予定されているが、採決が同日中に行われ
るかは不透明。キプロス中央銀行のデメトリアデス総裁は「25日
までには支援策が決まるだろう」との認識を示している。
 欧州メディアによると、修正案に含まれる基金は、年金基金やキ
プロス正教会の資産を担保として活用する形になるという。
(2013/03/22-00:43)
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アングル:黒田日銀、主な緩和手段の論点整理
2013年 03月 21日 22:43 JST 
[東京 21日 ロイター] 黒田東彦総裁率いる日銀の新体制で
想定される主な金融緩和手段の論点は以下の通り。

<国債の年限長期化、量拡大に不可欠>
量的な拡大を大胆に進めていくには、市場規模の大きい国債の買い
入れが中心とならざるを得えない。現行の基金による国債買い入れ
は残存3年以下が対象となっているが、5年程度までの金利が0.1
%の水準に低下する中で、さらなる対象年限の長期化が不可欠だ。
新正副総裁が年限の長期化に柔軟な姿勢を示していることに加え、
6人の審議委員の中にも前向きな委員がおり、さらなる長期金利低
下と量的緩和拡大の双方の観点から、決定会合で承認が得られやす
いとみられる。市場も5年程度までの長期化をほぼ織り込んでいる。
一方、年限を長期化すれば、満期到来に伴う資産残高の圧縮が進ま
ないことから、出口戦略における金融政策の柔軟性が低下するとの
懸念もある。

<避けられない銀行券ルールの見直し議論>
基金による国債買い入れとは別に、市場の資金需給を均す金融調節
上の手段として、対象年限に制限を設けていない国債買い入れ(輪
番オペ)も実施されている。基金で買い入れる国債の年限を長期化
すれば、輪番オペとの境界は一段と曖昧になる。白井さゆり審議委
員は、3月の金融政策決定会合で両者の統合を提案したが、反対多
数で否決された。ただ、国債の大量購入を進めるとみられる新体制
では統合議論が高まる可能性が大きい。

輪番オペには、日銀による国債購入が財政ファイナンス(穴埋め)
とみなされないよう、日銀保有の国債残高を銀行券の発行残高以内
に抑える、いわゆる「銀行券ルール」が歯止めとして設定されてい
る。基金と輪番を統合する場合、すでに両者を合わせた国債保有残
高は銀行券発行残高を超過しており、同ルールの見直し議論は避け
られない。黒田総裁は、日銀が自主的に金融政策手段として市場か
ら国債を買い入れている限り、同ルールの有無にかかわらず、財政
ファイナンスの懸念が高まることはないと主張している。

<リスク性資産の拡充、損失負担のあり方も焦点>
現在、基金では国債以外に、社債やコマーシャルペーパー(CP)
、ETF(指数連動型上場投資信託)、J−REIT(不動産投資
信託)などのリスク性資産を購入している。黒田総裁は、質的緩和
の拡充の面からも、リスク性資産について「市場の状況などを踏ま
えて十分議論する」方針。もっともリスク性資産を増やせば、市場
価格が下落した場合に損失も大きなものとなる。2月の金融政策決
定会合では、複数の政策委員が「損失が生じた場合、政府に損失を
分担してもらう可能性は考えられないか」と問題提起しており、リ
スク性資産の購入拡充に向け、今後、政府・日銀間で損失負担のあ
り方が議論される可能性もある。

<無期限緩和の前倒し、黒田総裁「検討する」>
日銀は1月の金融政策決定会合で、資産買入基金による資産購入を
2014年から「無期限」(オープンエンド)方式とする事を決定
した。金融資産を毎月一定額、期限を定めずに購入し続けるもので
、これについても白井委員が3月の会合で速やかな導入を提案した
が、反対多数で否決されている。これに対して黒田総裁は「無期限
」緩和について「前倒しであろうと何でも検討する」と前向きな考
えを表明している。

<当座預金の付利撤廃、賛否両論>
日銀当座預金の超過準備に付されている利息(付利、現行0.1%
)の撤廃は、昨年12月の会合で石田浩二審議委員が提案したが、
反対多数で否決された。背景の1つには、欧州債務問題などを背景
に逃避先として円需要が高まりやすい状況を是正する狙いがあった。
しかし、現在はリスク回避姿勢の後退などもあり、為替市場では円
高が急速に是正されている。さらに付利を廃止すれば、金融機関が
当座預金に資金を預けておくインセンティブも低下するため、資金
供給オペで札割れが発生し、量的緩和の拡大に支障を来す恐れもあ
る。黒田総裁は付利撤廃について「賛否両論ありコメントできない
」と珍しく明言を避けている。中曽宏副総裁は、過去の量的緩和政
策時代に無担保コール翌日物金利がゼロ%まで低下した当時を振り
返り、「市場が死んでしまった」と表現。市場機能を維持する重要
性を強調している。

<可能性低い外債購入>
日本経済が長引く円高に苦しんでいた中で、中央銀行が為替相場に
直接働きかける手法として、議論が高まった。ただ、日銀法では為
替操作を目的とした金融政策は認められておらず、政府・日銀は法
律上不可能との立場。黒田総裁も「為替安定の責任は財務省にある
」とし、「為替に影響を与えること自体、(為替市場)介入になる
」と日銀による外債購入を明確に否定している。最近の円安進行を
受け、海外から円安誘導との批判も高まりやすく、日銀が外債購入
に踏み切る可能性は当面ない。
(ロイターニュース 伊藤純夫 編集 橋本浩)
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キプロス、ロシアと銀行・天然ガス分野での協力について協議中
2013年 03月 21日 22:37 JST 
 [モスクワ 21日 ロイター] キプロスのサリス財務相は、
銀行預金課税の代替策として銀行・天然ガス分野への投資について
ロシアと協議していると明らかにした。

 同相は、ロイターに対し「銀行セクターはわれわれが受ける支援
の最終的な対象となる。したがって銀行への直接支援になるか、そ
うでなくとも他のセクターを通じて得る支援は銀行に振り向けられ
る」とし、「銀行の資本再編がわれわれにとって最大の課題だから
だ」と述べた。

 また、ロシアとの協議において障害となる問題はないとした。

 キプロス向けの既存融資を延長するようロシアに求めているとも
語った。

 同相によると、キプロスはロシアからの既存の25億ユーロの融
資を5年間延長することと、金利の4.5%から2.5%への引き
下げをロシアに求めている。

 金融・政治関係者は、実物資産を担保に最大58億ユーロ(75
億ドル)を新たに手当てする方向で、ロシア開発対外経済銀行(V
EB)が支援に関与する可能性があるとしている。担保資産は後に
売却される可能性があるという。

 モルガン・スタンレーのモスクワ在住エコノミスト、ジェイコブ
・ネル氏は、融資がいずれエクィティに転換される可能性があると
の見方を示し、「ロシアとベラルーシやウクライナの間で先例があ
る」と指摘した。

 ロシアのシルアノフ財務相は、協議はさらに続くと述べた。

 VEBはコメントを控えたが、キプロスに対するエクスポージャ
ーはないと表明した。

 海洋ガス田への投資に対しては、ガスプロム(GAZP.MM: 株価, 企
業情報, レポート)などが関心を持っている。ただ経済論理上、投資
が正当化されるかは不透明だ。
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一からわかるキプロス問題─なぜ地中海の小国がユーロ危機を招くのか
By STEPHEN FIDLER
2013年 3月 22日 13:33 JST
 ユーロ圏の将来が、たった数十億ユーロの話で危機にさらされて
いる。

 キプロスが金融支援を要請してから8カ月後の16日、ユーロ圏の
財務相たちは、同国のユーロ圏加盟維持を危うくする賛否両論の支
援計画をまとめた。

 騒ぎの発端は、ユーロ圏がキプロスへの支援規模を100億ユーロ
(約1兆2300億円)に圧縮するため、キプロスの銀行預金者から58
億ユーロを捻出するよう求めたことだった。

 問題の深刻さと、選ばれた「解決策」のリスクの程度の間には、
大きなミスマッチがある。どうしてこうなったのか。

 為政者の一部の間にはキプロスの問題はユーロ圏の金融システム
を揺るがすシステミック・リスク(市場全体に及ぶドミノ倒しリス
ク)ではないとの確信があった。

 それは、キプロス危機が発生した時に金融市場が平静だったこと
が示すように、ある程度は正しい。キプロスの銀行が破たんし、人
口80万人の経済が崩壊したとしても、あまりに規模が小さく、その
他の欧州諸国には直接的な影響は与えない。

 確かに銀行預金者のポケットに手を突っ込むというタブーを犯し
たことで、スペインやイタリアの預金者が動揺してもおかしくはな
い。しかし、これまでのところ、いずれの国も落ち着いている。

 キプロスがシステミック・リスクを引き起こさないと予想されて
いるのは、同国がユーロ圏にとどまると想定されているからだ。同
国がユーロ圏を離脱すれば、すべてがだめになる。欧州中央銀行
(ECB)がキプロスの銀行に供給している流動性を打ち切れば、ユー
ロ圏離脱は現実に起こり得る話になる。ECBは、キプロス議会が預金
課税案を否決すれば、資金引き揚げに踏み切ると警告している。

 ゼネラル・エレクトリック(GE)の主席エコノミストであるマル
コ・アヌンツィアータ氏は「キプロスが無視すれば、ECBは警告を実
施に移すだろう」と指摘、「その結果、キプロスは本格的な金融危機
に見舞われ、ユーロ圏を離脱せざるを得なくなろう」と予想する。

 そうなれば、ユーロ圏は未踏の領域に入る。ユーロ圏は不可逆的
な通貨同盟であるにもかかわらず、便宜上の偽装結婚になってしま
うからだ。1つの国が離脱できるのであれば、他の国も離脱できるこ
とになる。アヌンツィアータ氏は「欧州の政策立案者は一定の環境
下でユーロ圏からの離脱を容認することを、マーケットは考慮にい
れなければならなくなる」と話した。

 キプロスが離脱すれば、ECBは残りの16カ国を囲い込む劇的な防衛
措置を講じることだろう。いずれにしても、ECBもユーロ圏も未知の
世界に飛び込むことになるだろう。

 ユーロ圏財務相たちは16日の会合で、キプロスへの預金課税の決
定が、そのようなロシアンルーレットに似た危険な賭けになると覚
悟していた節はない。

 ドイツなどは、国内の有権者や議会を説得しやくするため、自国
の負担を軽くすることが主眼だった。また、ゲームのルールを厳し
くして規律をもたせることも重要だった。キプロスに低利の融資を
供与するという安易な策を施せば、他のユーロ諸国も政策の失敗の
責任を負わなくても済むというシグナルを送ることになる。その結
果、すべてのユーロ圏諸国が将来、システミック・リスクを抱える
ようになる。

 キプロス人は、実際にどんなルールを自分たちが破ってしまった
のか戸惑っているかもしれない。キプロス政府は債務を低く抑え、
同国の銀行は経済規模に比べれば確かに大きすぎるかもしれないが
、気まぐれな金融市場に依存せずに、安定した預金に恵まれてきた。

 キプロスがユーロ圏にとどまったとしても、離脱したとしても、
キプロスの国民にとってはめでたい話にはならないだろう。いずれ
にしても、金融機関の危機と深刻な経済縮小は避けられそうもない
からだ。
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キプロス問題 原因と破綻
2013年3月22日金曜日
http://funshoku.blogspot.jp/2013/03/cyprus-mondai-genin-kongo.html

キプロス問題の原因は、財政破綻と銀行破綻のリスクでしたが、政治
的な問題で銀行封鎖が長期化することが加わっています。キプロス問
題は、銀行預金に預金課税を課すことで、財政破綻の可能性がある国
に、銀行預金を行うリスクが意識されそうですね。

(1)キプロス倒産危機と預金封鎖
国家倒産キプロスで銀行預金封鎖の理由
キプロス預金封鎖理由と倒産回避
キプロス破綻危機で国債利回りが高い
キプロスは財政悪化と金融システムの不安定化により、倒産危機であ
ることが市場の認識でした。キプロスは破綻危機に対して、ユーロ圏
からの財政支援と、銀行預金に封鎖と預金課税により乗り切る予定で
した。

キプロスには、預金課税のための法律がないため、預金封鎖を行うこ
とで、その期間に法律の立法と預金課税を行う予定でした。

(2)預金封鎖の期間が長期化
キプロスは銀行預金の課税を行うための政治的な動きが始まりました
が、キプロスショック破綻と預金課税でまとめましたが当初の想定が
甘かったようですね。

キプロスは少数与党のため、野党の協力が不可欠ですが国民の反発が
強く、預金課税成立の法案に遅れがでています。キプロスは、預金封
鎖の延長を発表していましたが、短期での預金課税のための法案成立
の目処がたっていません。

(3)銀行休業が10日間に延長
キプロス問題の原因と今後について、2013年3月21日の時事通信が、
キプロス銀、25日まで休業延長=生活への影響深刻にと報じているの
で見てみましょう。
キプロス財務省は20日、同日までとしていた銀行の臨時休業を、22日
まで延長するよう指示した。同国は週明け25日が祝日のため、取り付
け騒ぎ防止のため実施している銀行休業が10日間に及ぶ異常事態となる。
キプロスの銀行休業期間が延長されましたが、その内容について見て
みましょう。
2013年3月15日金曜日 夕方にキプロス国家倒産回避の支援策を発表
2013年3月16日土曜日 休日
2013年3月17日日曜日 休日
2013年3月18日月曜日 キプロスの銀行が休業、高額預金引き出しできず
2013年3月19日火曜日 銀行預金が目減り←銀行休業、預金封鎖の延長に変更(1回目)
2013年3月20日水曜日 銀行休業、預金封鎖の延長に変更(1回目)
2013年3月21日木曜日 銀行休業、預金封鎖の延長に変更(2回目)
2013年3月22日金曜日 銀行休業、預金封鎖の延長に変更(2回目)
2013年3月23日土曜日 休日
2013年3月24日日曜日 休日
2013年3月25日月曜日 祝日
キプロスは当初、2013年3月19日まで預金課税を終えて、銀行営業を
再開している予定でした。キプロス問題は、預金課税の法案成立失
敗しており、預金封鎖が延長されていることが分かります。

(4)預金課税の法案が否決
キプロス議会は19日、ユーロ圏から金融支援の条件として要請され
た預金課税による58億ユーロ(約7100億円)調達のための法案を否決。
預金削減への不安から顧客が銀行に殺到しないよう、銀行は16日か
ら休業となっている。
キプロス問題長期化の理由は、キプロスの政治的な問題が理由の一
つであり、ユーロ圏の小国が世界経済に悪影響を及ぼしている点が
特徴的ではないでしょうか。
キプロスは預金課税の法案がない
キプロス問題は少数与党であるため、野党の協力が必要
キプロス議会は預金課税法案は否決
キプロスの銀行預金課税が意識されており、預金課税の法案成立前
に預金封鎖を解除すると預金流出は、ほぼ確実なため銀行営業を全
面再開できないことが現実ですね。

(5)キプロスから銀行預金10%流出の可能性
キプロス中央銀行のデメトリアデス総裁は、銀行の営業再開後、全
預金の10%が数日で流出すると警告している。
キプロスはロシアからの支援取り付けなど代替の資金調達案を検討
しているが、具体案の合意はできていない。 
キプロスは銀行預金課税を行った後に、銀行預金流出が確実視され
ていますが、10%近くの流出を考えているようですね。

キプロス問題の原因は、財政破綻と銀行破綻の可能性を意識したこ
とですが、少数与党のため預金課税の法案成立が遅れているのも理
由の一つのようですね。


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