経済学を確たる理論があるとの議論があるが、経済学は大衆心理学 であり、時代と共に変わる可能性がある。金融理論も同じである。 その現実を見ないで、白川日銀総裁は苦悩したように感じる。 日銀が確固たる理論の上で、通貨を管理したいという思いはわかる が、そのようなものはない。心理に根ざした読みが必要なのである。 2010年秋には長期国債などを大量購入する「包括緩和」に踏み切っ たが、デフレ脱却の道筋をつけたとは言い難い。短期的な成果を求 める政治や市場との対話にも苦慮した5年間だったが、ほとんど成 果がなかった。 白川総裁の「中銀が言葉で市場を思い通りに動かすということであ れば、危うさを感じる」という言葉に限界を感じる。この意味は、 確固たる理論の上で通貨量を操作する必要があるということだ。 金融緩和で、円安やインフレになることは市場心理、大衆心理に働 きかける必要があり、白川総裁の心情とは違う種類の人間ではない とできないことである。 このように、危機の時代には、黒田次期日銀総裁のように「市場の 期待」への働きかけを重視する必要がある。市場心理を読む必要が あるということである。 効果的な金融緩和を行うことが、今後の日銀総裁の役割であるが、 市場心理は難しい。国債を無制限に買うと財政ファイナンスと見な されて、極端な円安になり、外債を買おうとすると、通貨操作と見 なされ、国際的な非難を受け、手足を縛られた状態で金融緩和を効 果的に行うことになる。いろいろな人の心理を読む必要があるとい うことだ。 日銀の通貨管理の仕事を大衆心理、市場心理を読むことと喝破して 欲しいものである。心理を読み、その心理ににビックリさせたり、 期待通りにしたりという演出をすることは日銀総裁と政府経済閣僚 のお仕事であると、思って欲しいですね。 新総裁に期待したいと思います。 さあ、どうなりますか? ============================== 「めったにないこと次々と」 白川日銀、苦悩の5年 2013/3/20 0:44nikkei 19日に退任した日銀の白川方明総裁は、リーマン・ショックや急 激な円高、欧州債務問題と相次ぐ経済危機への対応に追われた。2010 年秋には長期国債などを大量購入する「包括緩和」に踏み切ったが 、デフレ脱却の道筋をつけたとは言い難い。短期的な成果を求める 政治や市場との対話にも苦慮した5年間だった。 「リーマン・ショック、東日本大震災、2度の政権交代と、めっ たにないことが次々起きた」 白川総裁の5年間は円高との戦いだったといえる。就任直後の08 年9月にはリーマン・ショックが発生。同年8月には1ドル=110円 だった円相場が東日本大震災や欧州債務危機が追い打ちをかけて、 11年10月には75円32銭まで円高が進んだ。 19日の記者会見では「円高が日本経済の下押し要因との認識を強 く持っていた」と白川総裁は明かした。海外の需要減と円高が重な って企業収益が急減。2%を超えていた物価上昇率も瞬く間にマイ ナス圏に沈んだ。「米欧に比べ日銀の緩和姿勢が弱い」とみなされ たことが円高の一因だが、海外との緩和競争には「従来以上に難し さがあった」と吐露した。 「中銀が言葉で市場を思い通りに動かすということであれば、危 うさを感じる」 黒田東彦氏ら次期日銀首脳部は「市場の期待」への働きかけを重 視し、就任前から積極的な緩和姿勢を表明して株高や円高修正を誘 ってきた。白川総裁はそうした手法に疑問を投げかけ「デフレの根 本的原因は潜在成長力の低下」と指摘。日銀の金融緩和とともに政 府の成長戦略が不可欠と繰り返し主張した。 岩田規久男新副総裁らリフレ派とされる経済学者は「日銀がマネ タリーベース(資金供給量)を増やすだけでデフレから脱却できる 」と主張する。ただ白川総裁は、資金供給量がすでに過去最高に達 していることなどを念頭に「マネタリーベースと物価のリンクは断 ち切られている」と反論した。 「政策効果だけでなくリスクも説明するのが、民主主義下で中銀 に求められる誠実な対応だ」 「趣味は金融政策」とまで評された白川総裁が、最後の記者会見 でもこだわりをみせたのが中央銀行論だ。金融緩和と同時に政策リ スクも説く白川総裁のスタイルには、政治や市場から「緩和姿勢が 中途半端」との批判もあった。記者会見では「(市場や政治の要求 は)長い目でみた経済の安定と必ずしも一致しない」と改めて強調 した。 白川総裁は中銀の役割を「経済の安定に必要なアンカー」とも表 した。リーマン・ショック時には「最後の貸し手」として大量に資 金供給し、金融システムを維持した成果があるためだ。ただ財政政 策や成長戦略の手詰まり感から、世界的に中銀の金融政策への期待 がさらに高まる。「経済の主導役」になりきれなかった苦悩がにじ んだ。