4610.米国の強制財政削減でどうなる



3月1日から強制歳出削減が始まった。オバマ大統領も法律の規定
に従い強制削減を発動する大統領令に署名した。この検討。
                    津田より

0.国防費の強制歳出削減
米政府の支出を2021会計年度(20年10月〜21年9月)ま
でに計1兆2千億ドル(約110兆円)削減する。2013会計年
度(12年10月〜13年9月)では850億ドルが対象。

この内、国防費の強制削減額は10年間で約5千億ドル(約46兆
円)で、今年9月末までの2013会計年度だけで約460億ドル
(約4兆3000億円)に上る。削減額の半分が国防費である。社
会保障費を減らさずに、国防費を大幅に減らすことになる。

もう1つ、国防総省はこれとは別に、2021会計年度(20年10
月〜21年9月)終了までに計4878億ドルの国防費を削減する
としている。

国防費としては、平均で年間800億ドル(8兆円)削減すること
になる。年予算は70兆円程度であり、15%程度の削減となる。

このため、ヘーゲル米国防長官は4月以降、米本土を母港とするロ
ナルド・レーガンなど空母4隻の運用を一時停止するほか、所属の
航空団の訓練や偵察作戦を休止させる方針を表明した。

米海軍は上陸作戦を専門とする海軍、海兵隊で構成し、強襲揚陸艦
などを擁する両用即応部隊の出動延期を検討。海兵隊仕様の垂直離
着陸型最新鋭ステルス戦闘機F35も開発を遅らせる。また、4月
以降、整備要員ら75万人に及ぶ文民職員に22日間、無給での自
宅待機を命じる方針だ。

ただ、国防総省は「同盟国に対する防衛義務は果たす」(ヘーゲル
氏)姿勢は崩さず、アフガニスタンでの軍事作戦と核戦力について
は予算削減の対象から除外する構えだ。このため、中東以外の地域
の軍備を削減することになる。

中東地域に関係する予算は国防予算の80%を占めるので、他の削
減は限度がある。特にアジア関連予算の削減に日本や東南アジア諸
国は注意が必要である。

1.国防費以外の強制歳出削減
国防費以外でも、一部の米政府機関では職員らに対し、一時的な自
宅待機の通知を開始した。実際に待機が始まるのは4月以降とみら
れるが、対象は教育、捜査・警備、航空管制など多方面に及び、国
民生活への影響は必至だ。

ただ民主・共和両党が削減または増税策で合意に達すれば、いつで
も停止することが可能である。

オバマ大統領は、「共和党は無駄な税制優遇措置の廃止などに一切
応じず、発動を選択した」と厳しく非難したが、共和党のベイナー
下院議長側も、「議会は大統領が求めていた増税を(年明けに)認
めている。今は歳出削減に集中する時だ」として、増税による歳入
増を求める大統領の姿勢を批判した。

そして、今後追い打ちをかけるように、27日には2013会計年
度(12年10月〜13年9月)の暫定予算が失効。新たに予算が
組まれなければ、政府機関の閉鎖という事態に直面することになる。

5月半ばには債務上限に達して、新規国債発行ができなくなる可能
性がある。今後、オバマ政権を財政面の懸案事項が次々と襲う。

2.金融・経済の影響は
しかし、これまでのところ、金融市場への影響は限定的だ。米株価
は2月の米ISM(供給管理協会)製造業景気指数が2011年6
月以来の高水準となったことを受け、市場の取引ではプラス圏で推
移している。また、2月の米製造業購買担当者景気指数(PMI)
改定値は、54.3。速報値は55.2、前月は55.8だった。
50が拡大と縮小の分岐点であり、景気は拡大している。

ニューヨーク連邦準備銀行が2月28日発表した2012年第4四
半期の全米家計負債調査によると、期末の総債務残高は前期比0.3
%増の11兆3410億ドル(約1050兆円)となった。増加は
11年第1四半期以来、7四半期ぶり。新規住宅ローンや自動車ロ
ーンなどが伸びた。

これは、所得税、不動産関連税のブッシュ減税失効を前にした駆け
込み需要であるが、この消費が景気を底上げしている。

このため、米連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ議長は2月26
日、米上院銀行委員会で証言し、3月1日に迫った「歳出の強制削
減」の発動期限について「米経済の著しい逆風になる」と議会に停
止を求めた。

同議長は強制削減で2013年の米成長率が0.6ポイント低下するとの試
算を示し、「緩やかな景気回復に対し、著しい重荷になる」と強い
懸念を表明。成長鈍化の結果、財政赤字削減も打撃を受けるとの見
方を示したうえで、「より長期的な削減策に置き換えるべきだ」と
行動を促した。このため、今後も金融緩和で景気を維持するしかな
いとバーナンキ議長は覚悟をしている。

英マーチン・ウルフ氏も欧州の緊縮財政は失敗であり、米国の緊縮
財政も危ないとご託宣である。

どちらにしても、景気が減速しないと、手が打てない状況であるが
、米国は、今シェールガス・オイル革命で鉱工業分野の経済規模拡
大が起こり、景気が拡大している。もしかすると、税収入が増えて
くる可能性もある。

3.日本の方向
一番、影響が大きいのは、日本やアジアであろう。米国の国防費が
削減されると、米国は日本に多くの支援を要請してくるし、日本も
米国の核の傘にいるので、無碍には要請を断れない。フィリピンや
インドネシア、ベトナムへの軍事支援の要請も米国ではなく、日本
にくることになる。

もう1つが、TPPなどのような経済的な関係を強固にして、米国経済
の拡大を目指そうとしてくる。米国の主な輸出品は農産物と軍備な
どであり、その分野での軋轢が増えることが考えられる。

しかし、もし米国の要望を聞かないと、日米同盟の弱体化や米軍の
撤退という脅しが来ることになる。

日本が全ての防衛力を持たないために、中国の戦争の脅しを受けて
も米国の核の傘にたよるしかない。この米国の核の傘の値段が上昇
することになる。

自国の防衛を自国が全てを行う体系にしないと、他国を頼りにする
と大変なことになるという教訓を日本は痛いほど分かることになる
ようだ。

また、米国は、シェール革命でエネルギー産業の復活ができ、かつ
軍事費の80%を使用している中東からの撤退を可能にすることが
できる。

しかし、日本はまだ、中東の石油を85%以上も依存している。こ
のため、米国の中東撤退になると、この石油供給が不安定になる。

この対策は、自動車の燃料を水素にして、高温ガス炉で水素をつく
り、中東からの石油に頼らないエネルギー政策を確立することであ
る。それまではシーレーン・防衛を自前で行う必要が出てくる。

どちらにしても、自国の広範な防衛を他人任せであった時代が終わ
り、自国の広範な防衛を自分で行うためには、どうするかという議
論になることを期待したい。

その中には、核武装も含めることである。

さあ、どうなりますか?

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米、財政の懸案次々と=暫定予算失効も迫る
 【ワシントン時事】オバマ米大統領は1日、与野党が強制歳出削
減の回避策で合意できなかったことから、法律の規定に従い強制削
減を発動する大統領令に署名した。早期に解除策が講じられなけれ
ば、米経済は深刻な打撃を受ける。追い打ちをかけるように、27
日には2013会計年度(12年10月〜13年9月)の暫定予算
が失効。オバマ政権を財政面の懸案事項が次々と襲う。
 当面の最大の焦点となるのが、強制削減を解除するために必要な
財政赤字削減策とともに、暫定予算の失効による政府閉鎖の危機を
回避できるかどうかだ。
 強制削減発動に先立ち、ホワイトハウスで行われたオバマ大統領
と与野党幹部の最終協議は、平行線のまま決裂したものの、出席し
た共和党のベイナー下院議長によると、少なくとも「暫定予算失効
による政府閉鎖は回避すべきだ」との認識では一致した。
 政府閉鎖を回避するための方策は二つ。9月末までの予算を成立
させるか、暫定予算の延長で急場をしのぐかだ。この問題で先に仕
掛けるのは共和党。米メディアによると、同党は近く、歳出を強制
削減と同程度圧縮した9月末までの予算案を下院に提出する。同案
は強制削減の代替措置となり得るが、民主党が求める税制改革を通
じた歳入増が含まれていないため、支持が広がるかは不透明だ。
(2013/03/02-18:11)
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政府職員に自宅待機通知=強制削減、市民への影響必至−米
 【ワシントン時事】強制歳出削減措置に伴い、一部の米政府機関
では職員らに対し、一時的な自宅待機の通知を開始した。実際に待
機が始まるのは4月以降とみられるが、対象は国防や教育、捜査・
警備、航空管制など多方面に及び、国民生活への影響は必至だ。
 米メディアなどによると、司法省は検察官を含む約11万5000
人を対象に通知を始めた。4月下旬から9月末までの間、無給での
14日以上の自宅待機を求めているという。米政府によれば、
約1000件の犯罪訴追が見送られる可能性がある。
 また、労働紛争の調査などを行う全米労働関係委員会(NLRB
)でも通知が始まった。さらに、軍関係者80万人や国境警備職員
、教職員、税関職員らにも影響が出るとみられる。
(2013/03/02-18:15)
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安保により大きなリスク 歳出強制削減でヘーゲル米国防長官
2013.3.2 18:41 sankei
 【ワシントン=佐々木類】ヘーゲル米国防長官は1日の記者会見
で、政府が歳出強制削減に突入したことを受け、「強制削減が長引
けば長引くほど、より大きな(安全保障上の)リスクを抱える」と
述べ、オバマ大統領と野党共和党の早期妥結を強く求めた。

 ヘーゲル氏は4月以降、米本土を母港とするロナルド・レーガン
など空母4隻の運用を一時停止するほか、所属の航空団の訓練や偵
察作戦を休止させる方針を表明した。

 米海軍は上陸作戦を専門とする海軍、海兵隊で構成し、強襲揚陸
艦などを擁する両用即応部隊の出動延期を検討。海兵隊仕様の垂直
離着陸型最新鋭ステルス戦闘機F35も開発を遅らせる方針だ。

 ただ、国防総省は「同盟国に対する防衛義務は果たす」(ヘーゲ
ル氏)姿勢は崩さず、アフガニスタンでの軍事作戦と核戦力につい
ては予算削減の対象から除外する構えだ。

 国防費の強制削減額は10年間で約5千億ドル(約46兆円)。
国防総省はこれとは別に、2021会計年度(20年10月〜21
年9月)終了までに計4878億ドルの国防費を削減するとしてい
る。今年9月までの13会計年度では約460億ドルに上る。
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米政府支出の強制削減が発効 今後10年で110兆円分
朝日新聞デジタル 3月2日(土)10時55分配信
 【ワシントン=山川一基】オバマ大統領は1日夜(日本時間2日
午前)、米政府の支出を2021会計年度(20年10月〜21年
9月)までに計1兆2千億ドル(約110兆円)削減する大統領令
に署名し、強制削減が発効した。米予算が内容を問わず一律に削ら
れる前代未聞の事態となった。オバマ氏は議会に対し、影響の軽減
を検討するよう呼びかけた。

 オバマ氏はこれに先立つ同日午前、野党共和党のベイナー下院議
長、与党民主党のリード上院院内総務ら議会幹部とホワイトハウス
で発動回避に向けて約50分会談したが、議論は平行線に終わった。
富裕者層に追加増税する一方、支出の削減幅は圧縮して景気や行政
サービスへの影響を軽減すべきだと主張するオバマ氏と民主党側に
対し、共和党は一切の増税に反対し、支出削減幅は変えずに中身を
見直すべきだと主張した。

 オバマ氏は協議後の記者会見で、「ばかげて身勝手な支出削減」
と呼び、週明け以降、影響をなくすか軽減するために議会に働きか
けていく考えを示した。
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有事の部隊展開力低下=米国防総省「長期にわたり打撃」
−強制歳出削減
 【ワシントン時事】米国防総省は、国防費を中心とした強制歳出
削減により、「長期に及ぶ深刻な打撃を被る」としている。いった
ん兵器の整備・修理の中断や部隊の訓練削減に踏み切ると、原状回
復に時間を要するためで、有事の部隊展開能力が従来の水準以下に
落ち込むのは不可避とみられている。
 「戦闘機乗りが訓練を中断すると安全に飛行できなくなる。結局
、能力を回復する長い道のりに戻らなければならない」。カーター
国防副長官は1日の会見で、支出カットに伴う空軍の訓練時間短縮
の悪影響をこう説明した。修理施設での艦船の修理・改修計画は数
年先まで決まっており、ひとたび空白が生じると、再開しても後れ
を取り返せないとも強調した。
 国防費の削減額は、今年9月末までの2013会計年度だけで約
460億ドル(約4兆3000億円)に上る。このため国防総省は
、4月以降、整備要員ら75万人に及ぶ文民職員に22日間、無給
での自宅待機を命じる方針だ。
 また、海軍はペルシャ湾で「イラン有事」を警戒する予定だった
空母1隻の展開を既に中止。4個空母航空団が4月以降順次、活動
停止を迫られ、上陸作戦を担う海兵隊主軸の「水陸両用即応群」の
展開も遅れるとしている。
 訓練削減の波をまともにかぶるのは、陸軍と空軍だ。さらに、日
本の次期主力戦闘機であるステルス戦闘機F35の空軍仕様機の
13年度調達数が19機から17機に減り、開発の遅れも懸念され
る。(2013/03/02-17:42)
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2月の米製造業PMI改定値、小幅下方修正 生産は約1年ぶり高水準
2013年 03月 2日 01:18 JST 
 [ニューヨーク 1日 ロイター] マークイットが発表した2
月の米製造業購買担当者景気指数(PMI)改定値は、速報段階か
ら小幅下方修正された。海外からの需要の減退が景気の拡大を抑え
るなか、生産は約1年ぶりの高水準となった。

 PMI改定値は54.3。速報値は55.2、前月は55.8だ
った。50が拡大と縮小の分岐点となる。

 内訳では、新規受注が55.4と前月から鈍化。海外からの受注
は50を割り込んだ。一方、生産は57.3と2012年3月以来
の高水準となった。

 マークイットの首席エコノミスト、クリス・ウィリアムソン氏は
、生産が底堅いことから「鈍化の動きは一時的とみられている」と
指摘。海外需要の減退については、中国の春節(旧正月)に伴う影
響が例年よりも大きかったことが一因となった可能性もあるとの見
方を示した。
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強制歳出削減、発動へ=与野党幹部との協議決裂−米大統領「国民
の痛み現実に」
 【ワシントン時事】オバマ米大統領は1日、ホワイトハウスで与
野党幹部と会談し、期限日を迎えた強制歳出削減の発動回避を要請
したが、野党共和党側は拒否、協議は決裂した。これを受け、大統
領は同日中に強制削減を発令する。国防や教育など幅広い分野で大
量の一時解雇や経費削減が予想され、国民生活への悪影響が懸念さ
れる。
 強制歳出削減は10年間で1兆2000億ドル(約110兆円)
、2013会計年度(12年10月〜13年9月)では850億ド
ルが対象。回避策がまとまらない場合、大統領による発令が法律で
規定されている。
 大統領は会談後に記者会見し、「共和党は無駄な税制優遇措置の
廃止などに一切応じず、発動を選択した」と厳しく非難。「強制削
減で国民の痛みが現実になる」と述べ、事態収拾に向けた協力を引
き続き議会に求めていく考えを示した。
 米財政をめぐっては、27日に期限が切れる暫定予算への対応や
債務上限引き上げなど課題が山積しているが、大統領と共和党の溝
は深く今後も厳しい交渉が続きそうだ。
 一方、会談に出席した共和党のベイナー下院議長側も声明を出し
、「議会は大統領が求めていた増税を(年明けに)認めている。今
は歳出削減に集中する時だ」として、増税による歳入増を求める大
統領の姿勢を批判した。(2013/03/02-07:28)
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米歳出強制削減は瀬戸際での回避ならず、金融市場反応薄
2013年 03月 2日 04:34 JST 
[ワシントン 1日 ロイター] オバマ米大統領は1日、この日
が発動期限となる歳出の強制削減問題をめぐり、ホワイトハウスで
議会指導者と会談したが、事態を打開することはできなかった。

大統領は会談後の記者会見で、発動を回避できなかった責任は共和
党にあると批判し、影響は中間層や米経済全般に及ぶとの見方を示
した。

土壇場での発動回避が実現しなかったことを受け、大統領は法定に
従い、午前零時までに政府機関に対し歳出削減を指示する必要があ
る。

大統領は「削減が実施されても、決して景気回復の腰を折らないよ
う、全米の国民は懸命に働くだろう。だが議会が状況を困難にして
いるのは確かだ」とした。

合計850億ドルの強制削減は、翌2日から10月1日の7カ月間
かけて実施される。ただ民主・共和両党が削減策で合意に達すれば
いつでも停止することが可能。

大統領は「誰もが削減の痛みをすぐに感じるわけではない。だがそ
の痛みは現実のものだ。今週から多くの中間層の生活が著しく阻害
されるだろう」と指摘。「われわれはこれを乗り切る。世の終末で
はない」と述べた。

また、一斉削減の発動後も引き続き歩み寄りを模索するとしている。

ただこれまでのところ、金融市場への影響は限定的だ。米株価は2
月の米ISM(供給管理協会)製造業景気指数が2011年6月以
来の高水準となったことを受け、当初の下げから切り返し、中盤の
取引ではプラス圏で推移している。

歳出の強制削減をめぐる協議では、主に富裕層や大企業向けの税の
抜け穴封じを通じた歳入増を盛り込むべきとする民主党と、増税に
断固反対する共和党の主張が最後まで折り合わなかった。

共和党のベイナー下院議長は、オバマ大統領と議会指導部の会合に
出席後、「歳入に関する議論は終了しているというのが私の考えだ。
問題は歳出への対処だ」と述べ、増税による歳入押し上げは選択肢
にないと言明した。

また、9月末までの暫定予算案を下院で採決する考えを示し、「政
府機関が閉鎖に追い込まれる事態に対処しなくて済むことを望む」
と述べた。

政府機関の閉鎖を回避するためには、現在の暫定予算が切れる3月
27日までに9月末までの予算案を可決する必要がある。
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米上院:歳出削減回避法案を否決 強制削減を発動の見通し
毎日新聞 2013年03月01日 10時48分
 【ワシントン平地修】米議会上院は、1日に発動される歳出の自
動削減を回避するために与野党がそれぞれ提出した法案採決のため
の動議を2月28日に否決した。オバマ大統領は1日、与野党の指
導部と最後の協議に臨む予定だが、両党の歩み寄りは困難な情勢で
、同日中の強制削減発動は避けられない見通しだ。

 与党民主党は、富裕層向けの実質増税などで強制削減を先送りす
る案を提案。一方、増税に反対する共和党は、強制削減の代替とし
て、より柔軟に歳出を削減できる権限を大統領に付与する案を提案
したが、いずれも法案採決に必要な60票を確保することができな
かった。

 歳出の強制削減は、今年9月末までの13会計年度で850億ド
ル(約7兆8000億円)に上る。国防や教育、医療・福祉関連費
用などが一律に削減されるため、安全保障や国民の生活に広く影響
を及ぼす恐れがある。

 オバマ大統領は上院での否決を受けて声明を発表し、「雇用を犠
牲にし、回復を鈍らせる強制削減で経済が脅かされる」と、民主党
案に反対した共和党を非難。「米国の中間層は政治の機能不全の代
償を払い続けることはできない」と、1日の与野党指導部との協議
で回避のための合意を迫った。

 しかし、増税などを巡る両党の意見の隔たりは大きいままで、1
日の協議が決裂すれば同日中にオバマ大統領が強制削減を発令する
ことになる。
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米歳出強制削減、米・世界経済見通しに悪影響=IMF
2013年 3月 01日 13:39 JST WSJ
 【ワシントン】国際通貨基金(IMF)は2月28日、米国の強制的な
歳出削減が発動された場合、米国とその主要貿易相手国の2013年経
済見通しを下方修正する可能性があると明らかにした。

 IMFのマレー副報道官は定例記者会見で「米国と活発な貿易取引の
ある国々は(同国の)歳出強制削減の影響を受けるだろう」と語っ
た。

 この歳出削減がどの程度実施されるかはまだ不透明で、IMFは事態
を静観していると、同報道官は述 …
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米家計負債、7四半期ぶり拡大=新規住宅、自動車など増加
 【ニューヨーク時事】ニューヨーク連邦準備銀行が28日発表し
た2012年第4四半期の全米家計負債調査によると、期末の総債
務残高は前期比0.3%増の11兆3410億ドル(約1050兆
円)となった。増加は11年第1四半期以来、7四半期ぶり。新規
住宅ローンや自動車ローンなどが伸びた。
 米家計負債は08年第3四半期(12兆6750億ドル)にピー
クに達したが、金融危機の発生で、その後は下落傾向が続いている。
NY連銀のエコノミストは今回の結果について、「4年間続いた消
費者のローン圧縮サイクルが終わりに近づきつつある兆候を示して
いる」と指摘した。(2013/03/01-06:57)
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[FT]緊縮財政の悲劇的な記録 
2013/2/27 22:30nikkei
(2013年2月27日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
 2010年6月、トロントで開かれた20カ国・地域(G20)首脳会議
は緊縮財政の必要で一致した。ギリシャ、アイルランド、ポルトガ
ルが債務危機に陥る危険が高まっていたことが理由だった。だが、
これは必要でも賢明でもなかった。

 ベルギーの経済学者ポール・デ・グラウエ氏は欧州中央銀行(E
CB)の政策の失敗がユーロ圏債務危機の原因だと主張する。EC
Bが最後の貸し手としての役割を果たさなかったために借り入れコ
ストが上昇した。その後ECBはOMTと呼ばれる新たな国債購入
プログラムを実行。それによってドイツ連邦債とほかのユーロ圏諸
国の国債の利回り差(スプレッド)は縮小してきた。

 ポール・クルーグマン氏も緊縮政策が良くなかったとみる。国際
通貨基金(IMF)によると、09〜12年に引き締め度が強かった国
ほど国内総生産(GDP)の落ち込みが激しい。

 ECBが新国債購入プログラムをもっと早く実施していたら利回
りの差は広がらず、緊縮政策も実施されず、パニックを防げただろ
う。

 英連立政権がパニックのあおりで長期の緊縮財政を打ち出したこ
とは間違いだった。景気回復が止まり、なかなか赤字を解消できな
いでいる。英国債格下げの動きも不思議ではない。

 英国は、自国の非金融部門がなぜ構造的に余剰資金を内部に抱え
込んだままなのかを考えるべきだ。景気動向に応じた歳出抑制、民
間投資を促す構造改革、銀行の資本増強も必要だ。政府は今の金利
水準を考えると公共投資を増やす極めてまれな機会に恵まれている
ことを認識すべきだ。

 長期的には英国は財政赤字を解消する必要がある。短期的には成
長率を上げる好機にあり、それを生かすべきだ。米国も同じだ。
By Martin Wolf
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与野党幹部と1日会談=強制歳出削減の回避断念か−オバマ大統領
 【ワシントン時事】米メディアは27日、オバマ大統領が3月1
日に与野党幹部と強制歳出削減について協議すると報じた。報道が
事実であれば、強制歳出削減発動後の会談となり、大統領は事前の
回避策を事実上断念したといえそうだ。
 議会が回避策を講じなければ、強制削減は1日午前0時に発動さ
れる。ただ、「米経済に直ちに大きな影響はない」(バーナンキ米
連邦準備制度理事会=FRB=議長)とされ、早期に回避策で合意
できれば、経済への打撃は抑えられると判断した可能性もある。
(2013/02/28-03:15)
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FRB議長、歳出強制削減は「著しい逆風になる」 
2013/2/27 0:19nikkei
 【ワシントン=矢沢俊樹】米連邦準備理事会(FRB)のバーナ
ンキ議長は26日午前(日本時間同日深夜)、米上院銀行委員会で証
言し、3月1日に迫った「歳出の強制削減」の発動期限について「
米経済の著しい逆風になる」と議会に停止を求めた。焦点である量
的緩和政策の出口論には直接の言及を避けたが、雇用回復へ緩和継
続の構えを強調した。

 強制削減を巡っては発動期限を前に与野党で大詰めの協議が続い
ているが、今のところ回避のメドが立たない状況だ。

 同議長は強制削減で2013年の米成長率が0.6ポイント低下するとの
試算を示し、「緩やかな景気回復に対し、著しい重荷になる」と強
い懸念を表明。成長鈍化の結果、財政赤字削減も打撃を受けるとの
見方を示したうえで、「より長期的な削減策に置き換えるべきだ」
と行動を促した。

 米国債購入などでFRBの資産を膨らませる量的緩和策が住宅刺
激に効果を発揮する一方、「金融の安定性を損ないかねない」とも
指摘した。低金利下で投資家が過剰なリスクを取るためだ。

 同議長はさらに「現時点で景気刺激と雇用創出という利点にまさ
るような(緩和の)費用はみられない」とも指摘。労働市場の回復
が遅れるなか、現行の量的緩和を続ける必要があるとの認識をにじ
ませた。
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コラム:米国の「日本化」が望ましい理由
2013年 02月 26日 10:05 JST 
By Zachary Karabell
過去数年、米国を日本と比較する論調がますます喧しくなっている
。それらは好意的な見方ではなく、日本が過去20年たどってきた
道、つまり「終わりの見えない停滞」を米国も進むのではないかと
いう悲観論だ。

米国が日本化しつつあると考えてみよう。経済成長はほとんどゼロ
で、巨大な公的債務を抱え、金融システムは壊れている国だ。実際
それは、どれほど悪いことなのだろうか。日本化するのは本当に最
悪のシナリオなのだろうか。

日本の過去20年は「失われた20年」と言われる。政府債務残高
は対国内総生産(GDP)比で200%を超え、慢性的なデフレに
悩み、雇用は停滞し、少子高齢化が進み、経済成長は1─2%で行
き詰まっている。政治は安定せず、行ったり来たりを繰り返してい
る。依然として世界第3位の経済大国であるにもかかわらず、つい
最近まで、1980年代や90年代のように日本の問題が経済ニュ
ースのトップを飾ることはほとんどなかった。デフレを考慮すれば
、日本の経済成長は1992年以来、ほぼ止まっているも同然だ。

米国に目を転じてみよう。公的債務は膨れ上がり、デフレや成長鈍
化が懸念され、失業率は高止まりし、政治は硬直している。まさに
「日本化」の様相を呈しているように聞こえる。

確かに、そうした数字を見れば「日本化」の指摘は概ね正しいが、
そこには公平な現実描写が欠けている。まず初めに、日本は「失わ
れた20年」といえども、国民は極めて健康な生活を送っており、
平均寿命は世界第3位に位置する。平均寿命が日本を上回るのはマ
カオとモナコだけであり、事実上世界一の長寿国といって差し支え
ないだろう。暴力犯罪は比較的少なく、民主政治は秩序正しく機能
し、官僚機構は市民の安全やインフラ、教育、住宅、医療などの問
題に高いレベルで効率よく対処している。国は平和で、国民は豊か
だ。中国との緊張関係などを背景に防衛力は増大しているものの、
1945年まで社会を支配していた軍国主義の影はもはや跡形もな
い。

仮に米国が日本化しつつあるとして、それがなぜ、何が何でも回避
しなくてはならない運命と言えるのだろうか。国民の多くが優れた
教育や医療、十分な衣食住を確保できる社会の安定や豊かさをなぜ
憂う必要があるのか。人類の歴史上、こうした状況は恐れるべき運
命ではなく、むしろ理想郷とされてきたはずだ。

それこそ、われわれの「日本化」のとらえ方だ。日本の公的債務残
高は非常に高水準まで膨れ上がっているが、まだ崩壊はしていない。
それは、米国にはない極めて高水準な個人貯蓄に支えられているか
らだ。低成長の経済は長期的には持ちこたえられないと言う人もい
るが、日本経済が過去20年にわたって低成長で持ちこたえてきた
のも事実だ。「日本化」を心配する声には、社会の安定、優れた公
共サービス、全体的な豊かさは考慮されていない。

こうした肯定的な側面を差し引いて考えたり、無視したりするのは
問題だ。もちろん、多くの日本人は自国の経済モデルにひどく幻滅
しているが、それは概して、海を隔てた中国が台頭している一方、
日本経済が進化や適応を止めているからに他ならない。しかし、米
国における日本軽視の論調は、より単調だが安定した成果に対する
われわれの目を曇らせているのではないか。

確かに、米国の経済システムが進化し、ダイナミズムとイノベーシ
ョンを発揮できればもっと望ましい。しかし、「日本化」の懸念を
ヒステリックに喧伝し、医療・教育・社会福祉の充実を伴った低成
長や成長鈍化への道を拒絶するのは、米国にとって得策とは言えな
い。

もし本当に日本が米国にとって最悪のシナリオなら、われわれは待
ち構える将来が極めて安定的である幸運を祝福すべきだ。われわれ
が向こう10年の道に迷うなら、日本には米国が目指すべき何かが
あるのではないか。少なくとも日本には、米国にはまだ迷いが見ら
れる社会的セーフティーネットへの強いコミットメントがある。そ
うしたセーフティーネットには、社会不安を未然に防ぐ役割がある。

理想的ではないにせよ、許容できる結果として日本のような地位を
受け入れられなければ、米国にとっては「日本化」より難しい問題
が待ち構えることになるだろう。
(22日 ロイター)
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米歳出強制削減、発動前・発動後に予想される展開
2013年 02月 26日 14:18 JST 
[ワシントン 25日 ロイター] 米財政問題における当面の焦
点である「歳出の強制削減」の発動期限が3月1日に迫った。歳出
削減は、あたかも誰も阻止できないかのように、「強制的」と表現
されている。しかし、歳出削減を阻止することは、理論上、依然と
して可能だ。

それには抜本的な財政赤字の削減策で合意する必要があるが、オバ
マ大統領が歳出削減と富裕層増税を主張する一方、共和党は社会保
障費を中心とした歳出カットによる赤字削減を要求。与野党の溝は
なお深い。

与野党双方にとって歳出削減発動に伴う政治的なリスクは高いが、
実際にどの程度のリスクになるのか特定するのは難しい。国民は数
週間、あるいは数カ月間は、歳出削減の影響を感じないかもしれな
いからだ。

米歳出削減をめぐって、向こう週週間に想定される展開は次の通り。

<3月1日まで数日間の駆け引き>
歳出削減の発動期限である3月1日までの数日間、上院は歳出削減
を回避するための努力を続ける見通し。2件の提案が出される公算
だが、両方とも党派色が強く、可決に必要な票を得ることはできな
いだろう。

民主党は、農業向け補助金の一部廃止、国防費の後年の小幅削減、
富裕層増税を柱とする歳出削減回避策について、採決を要求する見
通し。

上院共和党はまだ、提案内容を公表していない。共和党が検討して
いるとされる策の1つは、歳出削減は実施するが、その実施におい
てオバマ政権に一段の柔軟性を与えるというもの。別の案は、歳出
削減の代わりに、自然減を通じて連邦政府の職員を10%削減する
というものだ。

取りざたされている第3の案は、均衡財政を義務付ける憲法改正案
について、採決を実施すること。しかし、たとえ議会を通過したと
しても、十分な数の州が憲法改正に同意するまでに、何年もかかる
だろう。

一方、共和党が主導権を握る下院は、歳出削減の代替案を昨年すで
に可決したとして、3月1日の発動期限まで静観を決め込むとみら
れる。

<発動後は妥協案模索>
上院で2提案の採決が終われば、議員らは妥協案を探ることになる。

3月1日の歳出削減発動に際して、オバマ政権は、連邦政府職員に
対して、一時帰休について30日前に事前通知する見通し。航空管
制官や沿岸警備隊、空港の保安担当官、国立公園の管理者、食肉検
査官、連邦捜査局(FBI)捜査官は勤務時間が減らされる見通し
で、政府は、国民に多大な不便を強い、重要な政府サービスに影響
が出るとしている。

生活への影響について国民の不満が広がれば、与野党は、国民の怒
りの矛先が相手に向くよう画策するだろう。そして、非難合戦の勝
者が明らかになれば、負けたほうが、解決策を模索することになる
だろう。

3月27日、もしくは3月22日が、解決策を探る上で新たな期限
となる可能性がある。3月27日は、暫定予算が失効する日。新た
に予算が組まれなければ、政府機関の閉鎖という事態に直面するこ
とになる。

政府機関閉鎖は、与野党の双方にとって当然、望ましくない展開だ。

しかし与野党は、政府機関が閉鎖に追い込まれる可能性をちらつか
せて、歳出強制削減や、より広範囲な財政赤字削減について、合意
を取りまとめようとするかもしれない。合意には、上院が3月1日
に向けて検討していた、増税や歳出カット案の一部が盛り込まれる
可能性がある。

ただ、本当の期限は、議会が春休みに入る3月22日かもしれない
。休暇のスケジュールが狂うのを嫌う議員は、休会入り前に、暫定
予算と歳出強制削減の両方について、合意を目指す可能性が高いと
みられる。

<歳出強制削減を再び延期も>
歳出強制削減の影響としては、フライトの遅れや国立公園の開園時
間短縮、国防総省の文官の一時帰休、医学研究費の削減、公立学校
の予算削減などが予想されている。しかし、こうした影響が実際に
出るには数週間、あるいは数カ月かかる可能性がある。もし、歳出
強制削減が発動されて数週間がたっても、国民生活に目立った影響
がなく、国民の不満もとくに高まらない場合には、先行きの見通し
は変わる可能性がある。

共和党は、歳出強制削減をこのまま続けることを主張するかもしれ
ない。増税を伴わない歳出カットは、もともと共和党の持論だから
だ。

ただ民主党のみならず多くの共和党議員の間でも、何の柔軟性もな
い歳出強制削減はやり過ぎとの見方は強い。そのため、歳出強制削
減を一時的に延期する方向で合意を探る可能性がある。議会は1月
1日に可決した「財政の崖」回避法で、歳出強制削減の発動を一度
延期している。

<予算振り替えで対応も>
ホワイトハウスおよび政府機関は、予算の小幅な振り替えを通じて
、影響を最小限に抑えることも可能だ。そうすれば、歳出削減を秩
序立って進めることができる。ただし、合意に向けて議会への圧力
を維持したい政府は、予算振り替えの可能性について、表立っては
触れていない。

与野党の立場の違いはこの一点に集約される。つまり、民主党は財
政赤字削減に向け富裕層増税を望み、共和党はその阻止を表明して
いる。

共和党は、社会保障給付やメディケアなど社会保障費を中心とする
一段の歳出削減を求めているが、民主党はほとんど関心を示してい
ない。

合意への圧力が強まれば与野党それぞれの主張に沿った方向で小幅
な措置がとられるかもしれないが、それも容易な道のりではないだ
ろう。

それに、今年の歳出強制削減問題が解決したとしても、すぐに次の
歳出削減に対応しなければならない。というのも、歳出強制削減は
1年限りのことではなく、合わせて1兆2000億ドルに及ぶ10
年間のプログラムだからだ。より広範囲な財政赤字削減策で合意で
きなければ、議会はいずれ、来年の歳出強制削減の問題に直面する
ことになるだろう。


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