4600.米中関係:第2期オバマ政権への政策提言



昨日、7人の米国・中国専門家たちのパネルディスカッションを聞
きに行った。経済、技術、環境・エネルギーや安全保障、外交の中
国専門家であり、面白かった。その議事録である。

この人たちは北京には頻繁に行っているが、東京には来ていない。
そのため、笹川平和財団が、有能な中国専門家の提言・意見を日本
でも披露してもらい、また日本の意見も聞いてほしいと東京に招い
たと。茶野常務理事からの話である。

1.経済・技術・環境・エネルギー
SCISSORS:中国経済は3つの進路がある。1.ストップする。2.拡
大する。3.このまま維持。この3つの進路を見けるのは、人、資本
、イノベーションであり、これらは経済成長のためには必要である
。特に農業の拡大が必要であるが、耕作面積が減少している。
イノベーションは、特定分野では国役割が大きいが、しかし、広範
囲のイノベーションには競争が必要である。しかし、現在中国には
競争がないか少ない。
資本はどうか?2013年段階で地方債務、企業債務が増大して、
不良資産化している。5Kg体重は増えたが、健康ではないメタボの
ようであり、体力も弱めている。
労働はどうか?高齢化が迫り、しかし労働生産性は高めることがで
きないでいる。
改革はする気があるのか?できるのか?資本の自由化は必要である
が、選択できないでいる。できないとストップする。資本自由化と
いう改革ができれば、今後25年程度の成長が可能になるとみる。
中国の統計は御伽ばなしであり、信用できない。中国に改革をする
ようにオバマ大統領に提言する。

党幹部は、7年程度の成長を持続させてミドルクラスの人口を増や
し、高齢化して革命気分をなくさないと共産党の存続ができないと
真剣に考えている。思想的な改革はもっての外であり、2020年
まで持たせようと祈願している状態である。財政拡大はできない。
もう限界に近い。

AHRENS:世界的な経済危機の中、中国は経済成長したように見える。
空母、半導体、通信技術などで中国は飛躍的に技術力をつけてきた
ように見える。2011年中国は第2位の経済大国、第1位の特許
出願数となっている。中国政府は長期の技術開発に取り組んでいる。
しかし、5つの産業の5つの企業を調査すると、持続可能な技術開
発がない。全て欧米日からの借り物である。民間会社にはあるが、
国有企業にはイノベーションがない。欧米日との合弁企業の技術で
あり、技術が移転していない。中国は技術を依存している。
中国企業が諸外国企業を買収している。しかしここでも競争のイコ
ール・パートナーかどうかで諸外国政府と揉めている。
自動車では商業的には成功しているが、上海自動車のような国営企
業は海外企業の技術を吸収していない。

日本は早くTPPに参加して、ルールを作るサイドになるべきである。

MART:エネルギー・環境分野が専門であり、今、米中は知的財産権
で紛争が起きている。温家宝の息子の会社であるサイノベル社が米
国企業の風力発電技術を盗んだとして米中間では不信感が出ている。
このような問題が出て、米中間の協力ができないような状態にある。
中国は知的財産権を理解していない。しかし、政府レベルでは協力
しようとしているが、現場は不信感がでて、できない。

米国のシェールガス輸出は、3つのグループが反対している。環境
団体、価格上昇心配派、製造業の再生にデメリット派。このためTPP
に日本が入らないと、シェールガスの輸出は難しいと思う。

私のイノベーションを米中で行なっているのではないかという質問
に対して、新規の原子力発電はシェールガス火力に負けて、研究費
を出せず開発できないため、金を出す中国の原発開発で米国人を育
てるしかない。また、中国の自主開発では安全面で心配であり、関
与していると。

TURNER:環境活動を中心にしている。中国では大気より水の問題が
大変である。3000万人が水不足になっている。中国は今、石炭
開発を積極的にしているが、すすで大気が汚れるより、水の汚染の
方が問題である。

米国はまだ中国に教えているのでないかという質問に、対外政策と
して、もうすでに米国は中国に教えようとしていない。米国の国益
を考える。しかし、中国は米国に対してオープンではある。

2.安全保障、外交
RATNER:米国は軍事的なアジア回帰ではないし、中国に対するモノで
もない。アジア経済は世界的にも大きくなり、そのため重視するだ
けで中国を封じ込める意図はない。米中は協力を強化して安定的な
関係を作るしかない。アジアシフトは多面的である。軍事だけでは
なく、経済面でも関与する。

EASTON:中国の軍事力についての見解は割れている。2つの要素が
あり、1つが反中か親中かという要素、もう1つが解放軍のどの部
分を見るかで変わる。陸軍、空軍はあまり脅威がない。海軍は強い
部分と弱い部分がある。しかし、第2砲兵、サイバー、宇宙には脅
威を感じ、危機感が強い。
中国が戦争する可能性を増している。朝鮮半島、尖閣、台湾などで
あり、もう1つが中国の崩壊による混乱などでの国内戦争である。
社会不安が広がっているし、政治改革が進むことを望む。政治改革
はできる。その証拠に台湾人は中国人であり、民主化し成長してい
る。
このため、中国に対するヘッジも必要である。特にミサイルに対す
るシェルターは重要だ。

中国の核能力がわからない。核の輸送能力は優秀であると見ている
が、核ミサイルの数も正確にはわからない。ターゲットに当たる確
率も高い。核兵器と同程度に効果があるミサイルも持っている。

MSTRO:中国の戦略を分析すると、米中関係で中国は一極になること
を目指して、米国の影響を弱めようとしている。このため、A2AD戦
略を取るが、彼らからすると防衛網の整備であるが、対米に対して
4つの面で戦略を持つ。1.地理的に戦闘領域を広げ、時間をかけさ
せる。2.通常兵器の拡大。3.政治的に弱体化させる。4.抑制させる。
撤退させる。
これに対して、1.米国は地理的な拡大をする。2.最新のシステム導
入。3.関与を強める。4.安全を確保するという決意を固める。

中国はリスクを増大させ、エスカレーションさせて、米国を撤退さ
せようとしている。これに対して、米国はエアシーバトルで統合的
な作戦をして、海空のノード間の連携をさせ能力を増す戦術を取る。

中国も核軍縮会議に参加しているが、核ミサイル削減を提案もでき
ない状態である。米軍はブルートフォースはできない。中国はスポ
ンジである。コストを考えると上陸作戦はしない。リソースをリミ
ットして、中国の攻撃を抑える。

RATNER:リバランスは米中間の不信感を増大させた。米中関係のバ
ランスが必要になっている。米中関係では緊張関係をなくすように
してきた。より協力的なものにしている。現在、地政学的な問題が
起き、悪化しているが枠組みはできている。2つの国のリーダーは
、この枠組みを重要と認識している。

沖縄についての質問に対して、MSTROさんは沖縄は同盟国の領土であ
るが、中国はミサイルが飛んできても米国は戦争に参加しないと見
ている。EASTONさんは、沖縄基地には100機近くの飛行機がいるが、
シェルターは15しかない。復旧の要員もいない。戦線を拡大させて
いる。米国は今、様々な国に拡散している。力の拡散に日本も関与
することが必要である。

平和の構築はどうすればよいのか?の質問に、RATNERさんは、米国
は中国と協力することになる。平和の環境を整備する。MASTROさん
は、米中関係の緊張を共産党幹部は望んでいない。人の交流は高い
レベルで行なっている。

尖閣問題で平和が維持できるのか?の質問に、MATROさんはリスクと
緊張の関係は抑止できない。中国は3戦を仕掛けてくる。武力、法
律、世論の3つであり、それに日本も対応することである。RATNER
さん、米国は同盟関係を変化させない。日本は尖閣での防衛力を強
化させることである。日本はもう少し大きく見て、地域の規範を確
立させることが必要である。国際法を盾に訴えることも必要である。

米中間には、本当にホットラインはあるのか?という質問。
MATROさん、ホットラインはある。しかし、危機時に中国が出ないこ
とがある。中国がエスカレーションさせようとするときには出ない
し、危機管理システムをシッカリする必要がある。
RATNERさん、東京ー北京のホットラインを設けるべきである。対応
出来ることが重要。その上に対話できる雰囲気、環境を作ることで
ある。

私の感想として、米国の中国専門家は、中国経済や社会については
弱気であるが、軍事では、特にミサイルでは中国の実力を高く評価
しているし、中国との関係を敵対的にできないと見ている。米中で
アジアや世界を取り仕切るG2関係と見ているようだ。

米国は軍事面だけの同盟ということからアジアでは多面的な関与を
志向しているのに、日本はTPP反対で軍事的な同盟を強化しようと
しているが、それは米国の考えとは大きく違う。この考え方である
と、首脳会談は成功しない。

その意味ではタイムリーな時期を笹川平和財団は選択したことにな
る。


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